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少年と死者の森  作者: 柊 里駆
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死者の森へ

回想シーンは今回でとりあえず終わりです。デューイとザッケルの活躍をご覧下さい。(主人公そっちのけ)

「ザッケル、煙玉はいくつ持ってる?」


「10個…ですね。」


「よし、ではザッケル、俺の合図でまず煙玉3個を投げろ。アランの行き先を相手から見えないように煙で壁を作れ。アランは合図が出たら煙で姿を隠すようにしてあそこの草むらまで全力で走れ。幸いあの辺りは背の高い草が多い。少し屈めばあっちからは見えなくなる。だが……。」


デューイは続ける。その表情は真剣そのものだ。


「アランの事だから大丈夫だとは思うが、くれぐれも気を付けろ。兵士だけじゃない。死者の森はモンスターが出る。かなり凶悪なヤツもいると聞くからな。」


「君達はどうするんだ?」


「とりあえず俺達が囮になって奴等を引き付ける。俺達なら大丈夫だ。お前が敵の視界からいなくなったのを確認したら直ぐに逃げる。恐らく奴等もまさか死者の森に逃げるとは思わんだろうからな。」


「……ちょっと待って。死者の森って兵士ですら近寄らないほどに恐れられているの?ギルドでも恐れるほど?」


噂には聞いていたが、情報通なギルド副長にまで脅されると流石にちょっと怖くなってきたアラン。実はアランはクレスタン王国に住んで色々な場所に行ったものの、死者の森だけは入ったことがない。それは様々な人々に止められたから。


「まぁな。色々噂は絶えない。知り合いの幽霊に会ったとか、森で迷った人で帰った者はいないとか、凶悪なモンスターがいるとか。全部噂なんだが、森の奥まで行ったヤツが誰一人として帰ってきてないから、妙にその噂に信憑性があるんだよな。」


「……………。」


アランは何も答えられなかった。しかし、どんなに怖くてもここで引き返すわけにはいかない。アランは自分の両手で自分の両頬をバチンと叩き気合いをいれた。デューイはアランの肩を軽く叩き、不敵な笑みを浮かべる。


「大丈夫だ。骨は拾ってやる。」


「……デューイ、笑えない。」


アランは心底複雑な表情を返した。それを見ていたザッケルが不意に吹き出した。


「おっ、ザッケル珍しいな。お前が笑うなんて。」


「…お二人の会話が面白すぎるんです。」


ザッケルは直ぐに真面目な表情に戻った。デューイも気を引き締める。


「さぁ、いつまでもここで喋ってる訳にもいかない。そろそろ行くぞ!」


「あ、ちょっと待って。その前にこれを二人に渡しておくよ。」


アランはそう言って袋に入れられた白色の粉を数袋分渡した。


「これは?」


袋を受け取ったデューイが、怪訝そうにアランを見る。


「これは僕の研究所で開発した薬で、濃い瘴気の中に入っても黒斑病にかからない薬だよ。もっとも一日しかもたないけど。」


デューイとザッケルの瞳が輝く。


「それはすごい。いいのか?こんなに貰ってしまって。」


「まだ沢山あるから大丈夫だよ。」


「ありがとう、助かる。さぁ、そんじゃ、行くとしますか。」


そう言い、デューイが二人を見る。それに答えるようにザッケルとアランが頷く。


「……3……2……1……ゴー!!」


デューイに命令された通り、ザッケルがまず敵兵とアランの間に煙玉3つを投げ、敵兵の視界を遮る。それを確認してアランは二人とは違う方向へ全力で走った。


煙で兵士が身動きがとれないうちにデューイとザッケルは少しずつ敵兵の数を減らしていく。しかし先程から、どうも兵士達の様子がおかしい。皆両手で目を覆い、咳き込みながら泣いている者や地面に寝転がり、のたうち回る者もいた。


因みに、いつの間にかデューイとザッケルはゴーグルとマスクをしている。デューイはボソッと言った。


「ザッケル特製催涙ガス入り煙玉だ。」


草むらに到着し兵士から見えないように隠れながら、振り返りその様子を見ていたアランは、『容赦ないな。』と内心兵士達に同情し、先を急いだ。


暫く背の高い草を分けて進むと、いかにもな雰囲気の森の入り口にたどり着く。アランはその異様な雰囲気に飲まれ立ち止まる。まるで精神も肉体も入ることを拒んでいるようだ


「……この暗い感じはどう見ても『死者の森』って雰囲気だよなぁ。入り口からこれか。」


森は鬱蒼としていてほの暗く、その入り口は、そこだけポッカリと穴が開いたような漆黒だ。奧の様子は全く見えない。まるで地獄へ続くようなその道を、アランは意を決して一歩踏み出した。




「……ン……ラン……アラン!!」


アランがハッと気付くと、そこには心配そうに覗き込むカイの顔があった。


「……あ、ごめん。ちょっと考え事をしてたんだ。」


「そっか。急に動かなくなったからびっくりしちゃったよ。良かった〜。」


アランはカイの頭をワシワシと右手で強目に撫でた。カイは両手でそれをガードし、涙目でアランに訴える


「アラン痛いよ〜。」


「カイ、ありがとう。君がいてくれてよかった。」


カイは何の事かわからず、頭の上に?マークが5つ並ぶ。


「何でもないよ。」


アランは笑顔で答える。


過去に色々と辛いことのあったアランにとって、無邪気なカイは癒しになっていた。もし自分一人だけでこの森にいたら、恐らくこの森の雰囲気に飲まれて発狂していたかもしれない。


「さぁ、また明日も沢山歩かなきゃならない。そろそろ寝ようか。」


カイはそこらにあった木を枕、アランのマントを掛け布団がわりにして横になると、直ぐに寝息をたてる。その様子を見ていたアランは、カイはきっと何処でも寝られるタイプだな、と笑った。


……もしも、レイアがまだ生きていて、二人に子供がいたなら、カイのような子だったのかな。そんな、あるハズのない空想をしながら、アランは一人焚き火を片した。

今回で回想シーンは終わりです。デューイ、ザッケルコンビを書けなくなるのが残念です。しかし、アランの辛い過去編は終わりました。これから物語は加速していきます。これからもアラン達をよろしくお願いいたします。

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