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光を受け継ぎし者 ―追放された光は導かれ再起す―  作者: ネオ他津哉
第三章「歩み出す継承者」編
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第86話「過去、そして新たなる謎と疑惑」

後書きの下に他作品へのリンクが有りますのでよろしくお願いします。

「お手柔らかにお願いしますよ……せんせ?」


 この年でまさか学生扱いとは……俺は八年振りに炎央院の道着を着ていた。普通に背広で来たら着替えろと言われこうなった。ちなみに炎央院の術師はこの上にプロテクターや特殊な上着などを着ている。


「よろしい。ではテキストの……今日は43ページね真炎、読みなさい」


「は~い」


 そして順番に当てられて行くので俺も読む流れかと思っていたら急に、そこまでと言うと古めかしい黒板に何かを書き出した。


「では、今までの復習よ黎くん。風聖霊の好物そして日本での群生地を答えて」


「いや復習って、俺は今日が授業の初日なんですけど?」


「はぁ、情けないわね……そもそも教室に来る前にテキストを見る気は無かったのかしら?」


「すいませ~ん……って、どっかで聞いた事有るやりとりだな」


 俺は若干の違和感が有ったがテキストをんで驚いた。日本では出羽三山が群生地という衝撃の事実を知ったからだ。大雪山じゃねえのかよ。涼風家なんで東北じゃなくて拠点が北海道なんだよ。


「じゃあ次の質問よ、土聖霊の力を上げる岩は何かしら?」


「は? そんなの有るのか……」


「ふぅ、光の継承者というだけでは、どうにもならないものね立派なのは称号だけなのかしら?」


 クスクスと周りが笑っているが俺はこの状況に怒るよりも謎の違和感を感じていた。これ、この状況を知ってるぞ俺どこかで読んだ。


「う~ん……なんだったかな……」


「黎くん、もう一つ質問よ聖霊の竜型と爬虫類型の違いは分かっ――――」


「あ~!! これイギリスの有名な魔法使いの小説じゃねえか!! 何やってんだよ炎乃海姉さん!!」


「ちっ、もう気付いたか……頭は相変わらず回るわね。仕方ない……黎くん、態度が悪いわ五点減点よ!!」


「そこもパクるのかよ!!」


 俺の叫びが西邸の離れに響き渡り教室中は笑いに包まれた。どうやら他の生徒と俺を打ち解けさせるためのレクリエーション込みの自己紹介という演出だったらしい。





「じゃ、お先にレイさん」


「私も次は実技なんでレイさん、また明日!!」


 授業は三〇分刻みで三回分、休憩時間込みで二時間弱の授業はあれから俺を適度に弄ったりしてる内に終わっていた。


「おう、実技頑張れよ~」


 あの後から授業は普通に進行し何だかんだで炎乃海姉さんの指導は的確だった。そして俺の事を親兄弟や親類から化け物だの凶悪な人間だと教えられている世代だから緊張を解こうとして今回のような扱いをしたと授業後に種明かしされていた。


「なら先に言ってくれよ」


「悪かったわね。あなたに教えるのも久しぶりで少し興が乗ってしまっただけよ」


 そう言って本題に入った。もちろん俺の聖霊学の基礎を固めるのも大事だが今回は冷香叔母さんの死の真相を調べる事だ。そしてタイミングを見計らったように扉が開かれ入って来たのは俺もよく知る者だった。


「失礼します。志炎美那斗入りま~す。あ、本当にレイ様がいる……」


「お前が伝令役か」


「確かに家中だと光位術士の美那斗が一番信用出来るわね」


 これはアイリスの人選かと聞くと頷く美那斗に、もし俺なら炎乃華あたりを指名してどこかに情報を漏らしそうだと炎乃海姉さんに言われ反論が出来なかった。


「違うかしら?」


「その情報をかっさらうのが得意でしたね……美那斗、状況は予定通りか?」


「レイ様がやり込められてる……。はい、現在アイリス様とエレノア隊長が衛刃様と刃砕様を治療の説明で足止めしてるので今の内にとのことです。私はこの後、楓果様の見張りに戻りますので」


 そして俺達は当主の旧私室、つまりは西邸で叔父夫妻が使っていた私室の調査だ。そこは衛刃叔父さんが封印した場所で家中の誰も入室が許されていない。入れるのは叔父さんとクソ親父だけと言う話だ。





『やはり弱い結界が有る。解除は出来ますか?』


『難しいわね。破壊が簡単なとこがミソね』


『じゃあ私が壊しちゃう~?』


『ダメよ真炎、覚えて起きなさいこれは起動型だから壊したらバレちゃうのよ?』


 俺は元より炎乃海姉さんや真炎ですら西邸への出入りは監視されているらしく一度俺達は南邸に戻った後にシャインミラージュで再びこの部屋まで戻って来ていた。


『それにしても光位術というのも意外と万能じゃないのね?』


『仕方ないだろ。これは本来一人用なんだから効果範囲は限定的なんだよ』


 そして今の俺達の状態は真炎を右腕で動かないように抱っこして左腕には炎乃海姉さんがピッタリ抱き着いている状態だ。シャインミラージュの効果範囲は一人分、つまり俺の周囲だけしか効果は無いからこうなっていた。


『でも効果範囲を知れたのは大きいわ。最近は炎聖術で同じような術を作ってる最中なのよ』


『んな事してるんですか……相変わらずですね』


『せっかく聖霊力も上がったから有効活用しようと思ってね……それと、もっと近寄ってくれないと私がはみ出るんだけど?』


 そう言ってさらに左腕に抱き着く力を強くされた。アイリスとは英国でもこちらでも良くやるが、この人相手だと落ち着かない。いつ不意を突かれるか分からないし真炎も側にいるからだ。


『分かりました。それと腕を必要以上に組むのは動き辛いので離してくれると』


『あら、もしかして恥ずかしいの? 昔はよくやったでしょ?』


 そう言いながら俺は炎聖術の結界の穴を見つけて解除を開始する。補助には炎聖霊獣のアルゴスに出てもらい慎重に解除して行く。


『別にそう言うのじゃなくてですね……』


『あら? その割には随分と瞬きが多いわね~?』


 やり辛い、そりゃ俺も男ですから左腕の双丘の柔らかさに意識は奪われそうになるから、その度にアイリスの笑顔を思い出して耐えているのに何言ってるんだこの人。


『レイおじさん?』


『あのですね集中させて下さい……よし、解除完了です入ります』


 そしてアルゴスを戻して俺達が入って内側からカギを閉めると、やっと落ち着いて二人を離した。


「あら残念ね真炎?」


「うん。男の人の抱っこ初めて~」


 そうなのか父親は、祐介はしてやらなかったのだろうか。流美や炎乃華の話では可愛がってはいたと聞いてたのだが、それより仕事が先だ。


「俺が探すのもあれなんで警戒と見張りをしておくので炎乃海姉さん探して下さい。何か見つかればすぐに南邸まで戻りますから」


「分かったわ。でも見当はついているの。母様の日記、そこに何か絶対に書いてあるはずよ」


 その勘は当たっていて冷香叔母さんの日記を数冊、そして当時の写真や叔父さん達の若い頃のアルバムや当時の出来事をまとめた炎央院の略式年表なども回収して帰りと同じようにシャインミラージュを展開して戻る。


「真炎もしっかり持ちなさい」


「は~い。少し重いよ~」


「頑張れ真炎。にしても炎乃海姉さん何で真炎の顔を風呂敷で隠してるんですか? これじゃ昭和の泥棒スタイルだ」


 真炎はアルバムを一冊だけ持って顔には唐草模様の風呂敷を被らされていた。もう完全に泥棒ですと言わんばかりの格好だ。


「ふふっ、可愛いでしょ私の娘。あとで写真も撮ってあげたくてね」


「はぁ、一応は隠密なんですから……」


「真炎可愛くない?」


「はぁ、もちろん可愛いぞ。じゃあ二人とも掴まって下さい。行きますよ」


 そして同じようにシャインミラージュを展開した帰り道では見回りとニアミスしながら何とか南邸まで戻って来れた。そのまま炎乃海姉さんと真炎の部屋で持ち帰ったものをすぐに調べ始めた。





「全ては()()()だった……()()()から徐々に私は、助けてお父様? これが母様の最後の手記……」


「凍夜殿おっしゃっていた助けを求める内容? ただ、あの日とは?」


「今読み込んでるけど曖昧過ぎるわ。これが最後の日付だからもっと前からね……」


「レイおじさん。これが母様? でも頭の色違う?」


 見ると真炎は昔のアルバムを開いていた。その横には冷香叔母さんと炎乃海姉さん、そして幼い俺が写っていた。


「その人が真炎のお婆さんの冷香さんだ。こっちの白い服を着てるのが炎乃海姉さんで……横が小さい頃の俺だ」


 そう、炎乃海姉さんの八歳くらいの姿で今の真炎にそっくりだ。もう少し髪が長くなれば瓜二つだろう。


「マホもこの服欲しい~」


「さすがにもう残ってないだろうな。今度お母さんに買ってもらえばいい。もしダメだったら、俺がこっそり買ってやるからな?」


「ほんと~? レイおじさん大好き~!!」


 そんな話をしていたら日記を読み終わった炎乃海姉さんが近付いて来てアルバムを取り上げた。


「おっと、何か分かりましたか?」


「そっちがサボってて私だけ作業ってさすがに酷くない?」


「ですが俺が調べても分からないですからね。当時の俺は無能でしたのでね?」


 俺が言うと目の前の人は目をそらして複雑そうな顔をするが、それには触れず立ち上がると俺は資料を持って炎乃海姉さんの横に座る。


「それは……」


「ふっ、冗談です。手伝いますから……気になったワードを書き出して行きますから炎乃海姉さんは引き続き作業を、真炎も手伝ってくれよ?」


「うんっ!! 分かった~」


 俺は年表と日記の気になった箇所に付箋を貼って同時にスカイに読み込ませる。こうすることでPLDSにもバックアップが出来る。


「スカイ、本社のデータベースと照合して暗号を含めたワード検索もしてくれ」


「本当に便利ね、それ……炎聖師でも使えるようにならないかしら」


「PLDSは光の聖霊力をリンクして通信も一部を光位術を使ってるんで難しいかと」


 何も俺達は光位術士だけを特別にしていた訳では無いが四大聖霊は下位の聖霊なので聖霊力的にも厳しいのだ。


「そうよね。やはり独自のシステムか何か構築するしか無いか……」


「幻崔堂では難しいんですか?」


「打診はしたけどPLDSをウォルターさんに見せられて絶望してたわ」


「実はあれはワリーの実家の工房で作られたのが原形なんです……あいつのお爺さんが作ってくれたらしくて自慢そうにいつも言ってくるんですよ」


 そんな話をしながら俺は略式年表を見ると四世代前まで、つまり俺の曽祖父の時代より前の歴史に触れてないのに気付いた。だがそれよりも気になる記録を見つけてしまった。


「やはり聖霊帝に出会う前の話は無しか、ここ六十年の話は細かいな……衛刃叔父さんの負傷した事件も載ってるんですが、これって……」


「そう言えば私もお父様の足の怪我って刃砕様を庇って負傷したって事以外知らないのよね。見せてくれるかしら……え?」


 そこの記載は俺や炎乃海姉さんが断片的に聞かされていた話とは違っていた。


「この記録の通りなら衛刃叔父さんが庇ったのは、あの女です。そしてクソ親父の方を庇ったのが……冷香叔母さんですよね?」


「ええ、どう言う事かしら? お父様が負傷したのは……この年表だと私が三歳の頃ね。全然覚えてないわね」


「まあ三歳なら覚えてないかと。それこそ俺は生まれてませんし、てか翌年に俺は生まれてますね。つまり……」


 この時に俺はあの女の腹の中に居た事になる。


「でも一つハッキリしてるのはお父様や刃砕伯父様、そして当時の今は隠居している長老衆はなぜか本当の事を隠したという事になるわ」


 俺が頷くと横の従姉は顎に手を当て思案に耽っていた。俺も考えようとしたら袖を引っ張られて気付くと真炎が見ていた。


「どうしたんだ真炎?」


「お腹空いた……今日はエッグなマフィンの気分~」


「いや、あれ朝だけだからだ無理だぞ?」


「二人とも今は……はぁ、私もお腹空いたし続きはご飯の後ね。あと真炎、ジャンクフードは昨日食べたからダメよ」


 そう言うと南邸の自室に戻るのかと思えば南邸の食堂に向かうと言われてしまったので向かうとそこには先客が二人いた。





「あっ、待ってたよ三人とも。ご飯の用意出来てるよ~」


「アイリス、見ないと思えばここに居たのか」


「レイ様それに炎乃海様、真炎様、お待ちしてました!!」


 南邸の食堂ではアイリスと美那斗がご飯の準備をして待っていた。エレノアさんは支社の方に行って今日はそのまま戻らないらしい。


「なんか報告とか有るから秘匿通信出来るとこに行くらしいよ~」


「それを堂々と話すのはどうなのかしらね」


 俺は白米に北海道土産の松前漬けを乗っけて食べながらアイリスを見る。確かに炎乃海姉さんの言う通り迂闊と言えば迂闊だ。ここはアイリスの守護結界を張って有るが、それでも何をして来るか分からないのが俺の実家だ。


「この中で裏切って情報漏らすとすれば、お姉様くらいなんで後で締め上げれば問題ありませんわ~」


「あんたねえ、この状況がバレたら私や真炎だって立場が悪くなるのよ!!」


「んふふ~、アイリス姉様、母様締めるの? やっちゃう?」


「三人供、落ち着け。アイリスは確かに警戒が薄い、炎乃海姉さんは言い方を考えてくれ、あと真炎は自分の母様をすぐに攻撃しようとしない」


 女三人寄れば姦しいというレベルじゃない。黙々と横でご飯を食べる美那斗が可哀想になって思わず声を出していた。


「だって炎皇神様が言ってたよ? えっと『言葉を理解できぬ愚かさ、今出て行った女と同じ』って」


 炎皇神か、そう言えば直接会ったことが無いな。今さらながら真炎は力の制御が出来ないだけで基本的に覚醒している。あとは導く者次第だと俺は向かい側に座る妻を見ると彼女は笑って答えた。


「マホちゃん、例え炎乃海お姉様が愚かでも攻撃しちゃダメなんだよ? 私は光の巫女だから良いのよ?」


「そうなの? じゃあ私も光の巫女になる~」


 俺の妻は思った以上にまずい導き手だった。これは後でおしおきが必要そうだと頭を抱えてツッコミを入れておく。


「はぁ、アイリスも煽るのは程々に、あと真炎は炎の巫女だから無理だぞ?」


 そして真炎の勉強をこの後から見る事になって、ついでに美那斗の中学の宿題も見ていると夜も更けて解散となって俺は自室に戻った。





「それでレイ、どうだったの?」


「ああ、真炎は小学一年生で九九を覚えている。あれは将来頭が良くなるな!!」


「そうじゃなくて冷香さんのことよ。順調に親ばかになりそうね」


「そっちか、それが色々と変でな、実は……」


 俺は先ほど調べた事を色々とアイリスに報告していたらアイリスは「なるほど」と呟くと自分のメモ帳を取り出して何かを読んでいた。


「それは?」


「実は冷香さんのことを問診中にさり気なく衛刃叔父様に聞いてみたの。もちろん事件の事を抜きに炎乃華ちゃんのお母さんってどんな人だったんですか~って」


 そこで聞いた話は俺の知る事と大差無かったがアイリスは一つだけ気になった事が有ると言っていた。


「冷香さんの体が弱かったって聞いたって話をした時に『あの時とレイの追放の時の二回が私の判断ミスだったあれさえ無ければ』って言った後に口を噤んでた」


「あの時ってのは冷香さんが亡くなった時って思ってたんだけどレイの話だと、もしかしたら……」


「ああ、クソ親父を冷香叔母さんが庇った時?」


 アイリスが頷くのを見て俺も恐らくその推測は当たっていると言ったが問題はここからだった。


「ここから先は誰かに話を聞くしか無い。俺の生まれる前で炎乃海姉さんは三歳じゃ、とにかく明日は朝一で炎乃海姉さんと資料の精査と相談を――――」


 と、俺が明日の予定を話し出したらアイリスが俺の唇に指を当ててムッとしていた。不思議に思っているとアイリスは口を尖らせて言った。


「レイさ、この家に戻って来てからずっと、炎乃海さんと真炎ちゃんの、ううん炎乃海さんの話ばっかりしてる!!」


「いや、それは今回の事はあの人と協力しないと」


「ふ~ん、良いけどね。それにマホちゃんはレイの子供じゃないんだよ?」


「悪かった。だけど、真炎は将来が気になってな……」


 どんな理由が有ってもあの子と父親を引き離す原因は俺が作ったようなもので、その母親は従姉だから。


「ま、レイが優しいのは私としても嬉しいんだけどね……。だ・か・ら!! 私もレイの子供早く欲しいかな?」


「アイリス……だけどこの家では……」


「大丈夫だよ。それに私だってたまには我慢出来ないから……しよ?」


 反対はしたが彼女に抱き着かれ布団に押し倒されては俺は抵抗出来なかった。色々と仕事も忙しく夜の夫婦生活もしていなかったから、その夜はお互い燃え上がって翌朝の十時まで二人揃って寝坊してしまった。

誤字報告などあれば是非ともよろしくお願い致します。


ブクマ・評価なども有ればお待ちしています。

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