表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
光を受け継ぎし者 ―追放された光は導かれ再起す―  作者: ネオ他津哉
第三章「歩み出す継承者」編
91/121

第78話「北の地のサプライズと戦いの始まり」

 しかし俺の思いとは裏腹に最短で動ける空路は利用出来なかった。季節外れの台風の影響で飛行機は立てず、仕方なく俺達は涼風本家の函館まで新幹線を利用して向かう事になった。


「本来なら直接札幌に行く予定だったんだがな」


「私達が行くまで突入はしないんだし、落ち着いて行こう?」


 アイリスが俺の隣でミカンの皮をむいて「あ~ん」としてくれたから食べる。ちなみにこのミカンは水森家から昨日ダンボール箱で送られて来たものだ。


「みかん甘くて美味しいです氷奈美様」


 そう言えば流美はみかんが好きだった。こっそり二人で隠れて食べてたなと思いながら横からアイリスにもう一つ口の中に入れられる。心なしか視線が痛いのは俺の心が読まれたなんて事は無いと思う。


「いえいえ。たぶん水鏡家の親戚の農家の方からだと思います。末の娘さんは一般の普通の家庭に嫁いだそうですから」


 ひなちゃんの話によると水聖師の女性で何度か悪鬼や妖魔も払った事の有る中々の実力者だったそうだ。


「珍しいな。そんな名うての聖霊使いを手放すなんて」


「それが……その、授かり婚だったそうで……」


 そう言うと、ひなちゃんは少しだけ頬を染めると俺の正面に座る流美まで顔を真っ赤にしていた。そして隣のアイリスも何か呟いていた。


「赤ちゃん……か」


「それで氷藤さんが私も続けと言い始めて……その風潮が水森家全体で広がってて今回のような騒動に……」


 なるほど、だけど本当にそれだけなのだろうか。俺の考え過ぎではないと良いのだが俺の勘では恐らく……。


「どうしたのレイ?」


「い、いや何でもない。それより先はまだ長いし向こうに着いても涼風本家は車で一時間はかかるらしい、だから今の内に寝といた方がいい」


「そっか、でもレイこそ最近は少し様子が変だよ? 何か、やっぱり……」


 そう言って周りを見ると女性陣が三人揃って俺を見て来た。まさか、ひなちゃんを色々見てたのがバレたのだろうかと本気で焦った。浮気じゃないし男なら大なり小なり目は向くものだと頭の中で言い訳の言葉が浮かんでは消えていく。


「い、いや俺は――――「ダークフレイ……あいつが生きてるかも知れないんだもんね。そりゃ心配なのも分かるよ」


「ええ、レイ様も最初は圧倒されていましたし今思えば奥様を奪った相手ですものね……当然ですよね」


「私は直接見てないのですが浄化の際の聖霊力の残滓だけで凶悪だと……そうですよね、レイさんが動揺するのも当然ですよね」


 曖昧に頷いて大丈夫と言ったが俺の内心は罪悪感でいっぱいだった。まさか妻の親友の淫らな夢を見て悩んでたとか言えない。


「ああ、皆には隠せないな。色々と不安なことが多くてな……悪い。少し気分転換にトイレ行って来る」


 その後は俺が戻ると三人が酔っ払いに絡まれていたのを退散させたり、アイリスが聖霊を飛ばしていたら置き引きを見つけ駅員に突き出したりと四時間以上もあった新幹線の旅は意外と濃厚だった。





「そして、最後は新函館に着いたらこれとか……笑えないな」


「そうね。レイ……行こうっ!!」


 俺は眼前の光景、まるで待ち構えていたかのように何百体と居る悪鬼と妖魔を睨みつける。考える前に聖霊間通信で三人に指示を出す。流美には涼風家への連絡及び警告そしてアイリスと俺が前衛で後衛をひなちゃんに任せる。


「敵は悪鬼と妖魔のみ……自然発生したのか? それにしては数が多い」


 俺は独り言を確認するように言うと周囲を確認すると隣の妻に呼びかけられた。


「レイ、二キロ先、二人戦ってる人が居る。援護に行こう!!」


「了解だ……レオール、アルゴス!!」


 俺は光の狼と炎の犬の聖霊を呼び出し先導させる。既にスカイは上空に展開しているが気付かなかった。


「囲まれて弱ってるから気付かなかったんだと思う。私も蝶たちの視覚情報を共有して分かったから」


 二人で周囲の妖魔を切り裂き悪鬼は術で吹き飛ばす。幸い日も暮れて周囲に人が少ない時間帯なのも幸いし一般人は少ないので好きに暴れられるのは大きかった。だが同時に疑問も有った。


「何で人気ひとけの少ない時間帯にこいつらが!?」


 そして現場に到着すると深緑色のプロテクターを上半身から右腕にかけて装備した満身創痍の男女二名を見つけた。


「大丈夫ですか!? 今助けます、レイ!!」


「分かってるアイリスは二人に結界を!! 一気に決める……レイフィールド!!」


 俺は全身から光の聖霊力を放出し周囲を浄化する。この術の凄い所は妖魔、悪鬼だけでは無くて闇刻聖霊をもダメージを与え消滅させられる上に敵の結界内からも聖霊力次第では打ち破れることだ。


「えっ? 救援なのか? でも見た事ない術だ……」


「あんまり動かないでね? あれに当たると普通の術師も浄化されちゃう可能性が有るから危険なの」


 後ろで二人を庇うアイリスの言う通り欠点も有る。威力が強いから光位術士以外の聖霊使いにも反応して消滅させてしまう場合が有るのだ。だから結界を張って後ろの風聖師たちを守ってもらった。


「七割殲滅。闇刻聖霊は確認できずか……このまま残敵掃討に移行する。アイリスはそのまま二人を回復してやってくれ。ひなちゃんと流美も連れて来る」


 その後、敵を全て浄化して二人の方に行くと巻き込まれた一般人を介抱していた。外傷も無さそうで気絶しただけのようで駅のベンチに寝かせておく。これで悪い夢でも見たと勘違いしてくれるだろう。


「記憶処理やら口封じは使いたくないからな」


「そうですね……こんな世界、知らない方がいいですから。それではアイちゃんの元に参りましょう」


 ひなちゃんに促されて戻ると風聖師の二人は全快に近い状態に戻っていた。相変わらずアイリスのフォトンシャワーは良く効くようだ。


「あっ、レイ、おかえり~。二人も大丈夫だった?」


「ええ問題有りませんアイちゃん」


「私の方も大丈夫です。奥様」


 全員で無事を確認し合うと回復した男女二人が、ひなちゃんと流美を見て驚きの表情を浮かべていた。


「うっそ、氷麗姫と里中の……じゃ、じゃあ、お姉さんが本物の光のっ!?」


「マジかよ。じゃあこっちが、あっ!? い、いえ、あ、あなたが光の継承者様っすか? いや、ですかっ!?」


「別に堅苦しい敬語は結構だ。君達は風聖師だな、所属は涼風か?」


 俺がそう言うと二人の男女、たぶん高校生くらいの二人組は姿勢を正して跪いて臣下の礼のような態度を取り始めた。人気が無いとはいえここは街中だぞ小僧。


「はい、自分は涼風家の旧第七隊三班所属の旋賀せんが雄飛ゆうひです!!」


「おっ、同じく妹で旋賀翔子です……」


 目立つからすぐに二人を立たせると事情を聞き出すが大した話は聞けなかった。彼らが言うには俺達の迎えに三人で来たが一人は戦闘中に先行し探しながら行動していたら囲まれ追い詰められていたそうだ。


「その人が俺達の班の新しい指揮官だったんですが……」


「先行して行方不明と……少し迂闊だな。日本の聖霊使いは実戦慣れしているから問題無いと思ってたんだが」


 俺が言うと二人は一瞬何か言いたそうにした後に小さく申し訳ありませんと声を絞り出すように言った。何か有るのかも知れないし涼風の家に行って確認した方が良さそうだ。


「ま、まあ良いじゃない。取り合えず涼風家まで案内してもらえると助かるかな?」


「はっ、はい……ですが、その……」


「俺、いえ自分達は免許持って無くて……」


 アイリスが話を聞くと二人も乗せて来てもらった案内役だそうだ。案内にしては人数が多いと思ったが、これは楓の人選らしい。


「まあ見るからに中高生だもんな……お前ら」


 二人は高校二年生と一年年生の年子だそうで来年には二人揃って東京の研究院に出て来る予定だったそうだ。


「それで車はどこだ?」


「はい。予備のキーは俺、いえ自分が預かってますんで……」


「じゃあ俺が運転する。こっちに慣れてないからナビしてくれるか?」


 二人に言うとそのまま駐車場まで案内された。車はワンボックスカーで中々いい車だ。ここで炎央院みたいにリムジンとか外車を出されたら蹴りを入れる所だった。

 乗りやすくて助かると思いながら運転席に着くと助手席にはナビの雄飛に座ってもらい後ろが女子、前が男子という配置になった。





「涼風の本家がここまでなんて……アイちゃん?」


「酷いね。これは……何か弱い結界だったものは有ったみたいだけど……」


 結局、途中で休憩を取って二時間もかかって涼風家に到着した。そして到着した涼風本邸は見た目こそ広大な土地に平屋の武家屋敷のような造りだったが、聖霊力の面では完全に無防備で正門に悪鬼が群がり、妖魔などが堂々と壁を壊しているような情けない状況だった。


「アイリスは結界を、ひなちゃんも周囲の悪鬼を祓ってくれ。流美は全域での索敵を!! 二人は俺について来い!!」


 正門に取り付いた大型の悪鬼を浄化すると涼風の敷地内には妖魔の天狗型、堀には河童型が出現した。だが出現と同時に俺は即座にレイブラスターで消滅させる。


「す、凄い河童を一撃で……」


「ボサボサするな!! 戦えないなら俺の後ろにいろ!!」


「い、いえっ、戦えます。行くぞ翔子!!」


 二人も風聖術で対抗し出したが明らかに弱い、確かに悪鬼を祓うのは出来ているが実体の有る妖魔相手には及び腰に見える。


「落ち着け悪鬼を中心に叩けばいい。俺がフォローする。聖霊は出せるか?」


「聖霊を実戦中に呼び出すなんて……」


 妹の方の翔子は短刀型の聖具に聖霊力を通しているが小刻みに震えている。兄の雄飛の方はそうでも無いが、もしかしたらこの娘は……。


「ヴェイン!! 二人の面倒を見てやれ一気に俺がっ――――」


 ヴェインを呼び出し俺が指示を出した瞬間、屋敷の反対側から聞き覚えの有る声が聞こえた。凛としていて強い意志を感じさせる俺の戦友の声だ。


「それには及ばないわ!! 第二隊一班から三班は悪鬼を祓って、妖魔は私と琴音が相手をする、決して二人一組を崩さないで!!」


「「「「了解!!」」」」


「楓姉ぇ、私はこのまま奥伝で中央突破を試みます!!」


 涼風の防衛部隊のようだ。それを指揮するのは涼風の姉妹の姉の方の涼風楓、そして中央から飛び上がり上空から真空波を叩きつけるのは妹の琴音だった。二人を見るとプロテクターが少し欠けていて既に数度の戦闘後に見える。


「二人は俺の後ろに!!」


 旋賀の二人が無言で俺の後ろに付くのを確認して俺は久しぶりにこの術を使う。


「行くぞ、輝く戦刃……拡がれ、レイブレード・ディヴィジョン!!」


 レイブレードを両腕から展開しそれを各指に纏わせ十本の細かいブレードにし、さらにそこから細かく何本も分裂させ最後は糸のように細くなった数百本の光の軌跡を生み出し、それを一気に動かした。


「すっ、凄い……」


「きれい……」


 光の糸のように細くなったレイブレードが次々と妖魔を貫き行動不能にし、悪鬼は触れるだけで浄化していく。そして行動不能の妖魔には楓の率いる部隊が殺到して次々とトドメを刺して行った。


「やはり百を越えると威力が落ちるな……十本だと闇刻術士も動けなくなるレベルまで上がるんだが……まだ改良の余地有りだな」


 そして両腕をパッと離した瞬間、解放された聖霊力が爆発を起こし連鎖的に悪鬼と妖魔だけを次々と浄化していく。


「さすが、やるじゃないレイ君。でも巻き込まないでくれると助かったんだけど?」


 一応は敵だけをピンポイントに倒していたが聖霊力の余波で吹き飛ばされ隣に着地した涼風楓、かえちゃんが文句を言って肩を小突いて来た。


「二人なら避けられるだろ? それに心配しなくても大丈夫さ」


 そう言うと涼風家の他の術師たちは不可視の光の結界で覆われ守られていた。


「レイ、指示はもっと早く出してよ。皆を守るのも一苦労なんだよ~」


「ああ、そう言うこと……私らのボスは凄いわね本当に」


「だろ? 俺の嫁さんは可愛いだけじゃないんだぜ?」


「惚気ないでよ私の家、崩壊寸前なんだけど?」


「そっちも対策済みだ。この屋敷周辺に、ひなちゃんに結界を張っている最中だ。流美も補助に付いてるから暫くしたら安全になる」


 それを聞いた瞬間に横の楓はストンと座り込んでしまった。どうやら見た目以上に疲弊しているようだ。


「あはは……力抜けちゃった」


「楓姉ぇ!!」


「「楓様っ!!」」


 すぐに部隊の人間と琴音、それに俺の後ろにいた旋賀兄妹が楓の元に殺到した。琴音の肩を借りて何とか立ち上がって俺と目が合うと改めて会釈をされる。


「この度は当家への支援感謝します。継承者殿」


「よしてくれ、かえちゃんと俺の仲だろ? 気にしないでくれ。それより今は状況を知りたい」


「ええ、そうね……では奥の間に行きましょう。皆は引き続き警戒と休みを交代で回して」


 テキパキと指示を出して横の琴音も肩を貸しながら俺達を見ると案内役二人に気付いたようで口を開いた。


「あなた達、臨時班の……そうかレイさん達のお迎えだったわね……って、早吾叔父さんはどうしたの?」


「その……凪沢なぎさわ早吾そうご班長は……行方、不明です」


 その瞬間、涼風家の術師達の間でざわめきが起きた。


「早吾叔父様が……行方不明?」


「誰なんだ? 俺達が到着した時には二人しか居なかったが、確か先行して敵陣に突っ込んで居なくなったんだよな?」


 俺が旋賀兄の方に聞くと思い出すように話し出したが俺が聞いた時とあまり変わらない内容だった。


「は、はい。早吾さんに来るなと言われて二人で一般人除けの結界を張ってました。でも作業中に襲われて、そこを継承者様たちに助けて頂きました」


「そうだったの……ありがとうレイ君。二人はまだ実戦経験が無くてね。今回もお迎えだけだからと出したんだけど」


 やはり実戦未経験者だった。特に妹の方は妖魔を怖がってたから、あれは聖霊使いなら誰もが通る道だ。ちなみに俺はそんな余裕無くていきなり四卿との対人戦だったから怖がる暇すら無かった。


「どうかしたの?」


「いや兄の方は割と戦えていたからな。初実戦で妖魔相手に怯んでなかった。少なくとも表には出さずに俺の後ろに付いて来れてた」


 俺は率直な感想を言って次の話に移ろうとしたが、かえちゃんからの反応は予想していたものとはだいぶ違った。


「えっ!? 良かったじゃない憧れの継承者様が褒めてくれたわよ雄飛くん?」


「憧れって……日本で俺が? かえちゃん何を言って――――」


 英国では尊敬された事も有ったが日本では真逆でそんな事は無かったし、継承者になってからは日本の術師界隈を盛大にかき回してる自覚は有る。だからマイナスイメージしか持たれてないと思っていて困惑した。


「う~ん……その、この二人……実はレイ君の従兄妹なのよ」


「はい?」


 俺の親友というか戦友が何か今とんでもない事を言ったせいで俺の思考は完全に停止した。


「レイ君と我が家の関係上あんまり歓迎出来ないかもしれないけど二人のお母さんは嵐野家の四女、つまり……楓果さんの妹なの」


「あぁ、そうなんだ。私はレイの妻のアイリスで~す。改めてよろしくね二人とも」


「お、恐れ多いです巫女様……」


 アイリスが翔子と握手しているが俺はそれ所じゃない。つい数日前の凍夜殿のことでさえ驚いたのに今度は俺の知らない従兄妹で、しかもあの女の妹の子……あれか、宝くじ当てたら親戚増えた的な状況なのかと錯乱した頭で考えていた。


「えっと、今の話ってマジ?」


「マジっす。その……継承者様のお母様の楓果様は俺の母、旋賀流姫(るき)、旧姓が嵐野流姫の実の姉だそうです」


「そ、そう……なのか……なんつ~か、ま、まあ挨拶はさっきもしたが……その、よろしく?」

誤字報告などあれば是非ともよろしくお願い致します。


ブクマ・評価なども有ればお待ちしています。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 更新ありがとうございます。これからも楽しみにしてます。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ