第59話「闇の真実、継承者の最後の輝きと……」
※お知らせ
文章の構成や誤字脱字の見直しをするため週末まで更新を停止します。
◇
レイがダークフレイと再度戦闘に入ったタイミングで岩壁家の者達の戦いは佳境を迎えていた。
「くっ、さすがは四大家の土の当主、だけど僕は負けない!! 愛するクリスティーンのために!!」
「クリス、クリィィィィィィス!!」
既にバーナビーは覚醒した勇牙の秘奥義とジュリアスの槍で葬り去られ残りはアイザムだけとなっていた。
「パパ……ごめんなさい。期待に沿えなくて、女に生まれて何度も後悔してた……でも、今ハッキリ分かったの!! 私は勇くんと生きます!! 岩壁家もロックウェルの家も私達が護ります!! お願い、『愛宕の護り』!! 勇くんを守って!!」
そして彼女、本名クリスティーン=R=岩壁の聖霊力も高まっていた。岩壁家の人間の神器の多くは盾でありロックウェルに介入される前までは護国を重視していた守りの一族だった。
その誇り、その血脈はしっかりとクリスの中でも生きていた。そして今、勇牙と言う愛する男を護る選択をした事で彼女の中の力はついに目覚めた。
「ガアアアアアア!! コ、コノチカラハ……アアアア、シショウ!!」
アイザムもまた土塊の人形となり果てながらも思い出していた。米国で術師の扱いは低く、殺し屋紛いの仕事ばかりでジュリアスと兄弟二人で必死に生きていた。そんな中で日本で請けた仕事に失敗した時に拾ってくれたのが先々代の岩壁家の当主で自分の義父となってくれた人物だった。
その人に報いるために必死に強くなり、ついに当主の娘を嫁にもらい認められた。しかし義兄、つまり妻の兄に命を狙われ骨肉の争いの中ですっかり過去の自分や信念を忘れ今日まで生きていた。その事に今、自分の娘の土聖術を見て思い出していた。
「パパ?」
「アア、ソウカ、タノム……クリス、ジルゥ……アトハマカセタ」
「分かった……兄さん……いやアイザム……今度こそ俺の手で送ってやる!! 二人とも行くぞ!!」
勇牙とクリスに声をかけると無防備になったアイザムにジュリアスの槍と聖霊力を全開にした土聖術の秘奥義『世界への反逆』で貫き防御を崩す。そこに勇牙の目覚めた秘奥義『仁愛炎護の拳撃』を叩き込み、そこにクリスが神器『愛宕の護り』で突撃する。アイザムはバラバラに砕け散る瞬間に微笑んでいたようにクリスには見えていた。
「クリス……よく頑張った」
「叔父さん……」
「クリスティーン、その……何て言ったら良いか」
そう言いながらクリスをドサクサに紛れて抱き寄せている勇牙は中々手慣れていてジュリアスは叔父として非常に複雑だったが突如、上空で闇が立ち込め始めそれどころでは無くなった三人は急いでその現場へと向かい炎乃華達と合流する事になった。
◇
「そう、そっちも残念だったね……琴音?」
「うん。正直、清一さんが来てくれなければ父さんと母さんに殺られてたよ」
そう言って涙目の琴音を慰めながら後ろでボロボロになった早馬さんと楓さんを見る。二人を運んで来たのは清一さんとエレノアさんで話を聞くと戦意喪失し戦えなかった琴音を二人がが守る形で戦っていたが、隙を突かれた楓さんを庇い早馬さんが倒れ、危機に陥った三人を助けたのが清一さんとエレノアさんだったそうだ。
エレノアさんはあの数百体のゴーレム術師を全て一人で倒した後で、清一さんは遊撃隊として戦場を縦横無尽に駆け回っていた所、二人で琴音たちを救援したらしい。
「ああ、だが私の部下も全滅した、美那斗が無事で良かった。レイから見出された君を失う訳には行かなかったからな。そうなれば彼に申し訳が立たない」
「そんな、エレノア隊長。でも、部隊が……それに皆さんが……」
「戦場では良く有る事だ。継承者も……レイも経験済みだ。それでも彼は先に進んだのだからな」
もしかして例の女の人、アイリスさんの事なのだろうか? 失ってそれでも戦うなんて黎牙兄さんはどれだけ強いんだろう。
たった一人になっても戦い続けるなんて、なら私が少しでも支えられられたらと、思ってしまう。そんな考えを中断させられる声が響いた。それは私の姪の真炎の悲鳴だった。
「母様ぁ!!」
「くっ、だいじょ……うぶよ、真炎。ふっ、さすがに、罰が当たったわね……」
合流したの涼風家以外も居て、先に合流した真炎たち三人はエレノアさんにフォトンシャワーを掛けてもらっていた。その後姉さんは意識を取り戻していた。左腕を失った状態でだ。
「術は使えるし、コントロールは効くわ。運が良いわ。それにしても良くやったわね真炎……さすが私の娘ね?」
「でもぉ、母さまの腕……」
◇
合流の少し前、炎乃海と流美は辛くも祐介の撃退に成功した。そう思っていた。
「やったわね……ま、自分の手で蹴りを付けられたのは……嘘でしょ?」
「兄さん。本当しつこ過ぎる」
炎核の術は強力な術として作られた術で破壊力だけなら凄まじい。だから二人は爆風で吹き飛ばされ少しの間は動けなかった。炎障陣を何重にも展開した上で特別な防具や聖霊力の込められた聖具を使って二人は何とか防いでいた。しかしその中で祐介は生き残っていた。
「レ、イガァ……」
「流美、マズイわ。もうネタ切れよ」
「私も……ですね……ぐっ!?」
そうして手負いの獣と化した祐介はまずは近くに居た流美を蹴り上げるとそのまま右足を黒い炎を纏った腕で貫いた。
「があっ!? ぐっ……うっ」
それだけで血がドバドバ出て、流美はその場で気絶した。そして今度は炎乃海に向かって突進して来た。
「くっ!! 速い!?」
「アアアアア!! コノニオイ……アア、オレノモノ、レイガカラウバッタ、俺のオオオオ!!!」
「祐介、まさか意識が!? がはっ……くっ!?」
しかし本当に一瞬ですぐに暴走状態に戻った祐介は炎乃海を空中に放り投げる。そして落ちて来た所を先ほど流美に使った黒い炎の手刀で串刺しにする気だ。
「なら、やるしか無いわね……引導を渡してあげるわ……祐介!!」
「レイガアアアアアアアア!!」
そう言うと炎乃海は自由落下し、そのまま心臓を串刺しにされそうになる所で体を捻る。炎乃海は聖具は武具は使わないが、代わりに防御や補助に大量に使う。
全身ジャラジャラと付けているのは殆どがそれだ。それで落下軌道を少しずらし、結果的に左腕が肘から下が斬り落とされた。
「ぐっ、ああああっ!! つぅ……ううっ、くぅ」
「レイガアアアアアアアアアアア!!」
祐介はまた咆哮を上げて黎牙の名を叫ぶ、それは毎回攻撃後にする事で勝利の雄たけびのようだった。その瞬間が最大の隙になる。
「ふっ、単純な……脳筋ね……真炎!! 今よ、打ち込みなさい!!」
「うんっ!! 母様から離れろおおおおおお!!」
そして先ほどから何度も参戦しようとしていた真炎を聖霊間通信で抑えていた炎乃海はついに自分の切り札を投入する。破壊の化身の聖霊王『鳳凰』その体当たり。その炎に巻き込まれ焼き尽くされる祐介。それは炎の巫女の力も相まって完全に浄化され尽くし消えて行く。
「あっ、お、俺は……炎乃海、真炎?」
「まだ生きてる!! トドメ!! ほーちゃん!! 焼き尽くせえええええ!!」
「ま、待て、俺はあああああああ!!」
こうして里中祐介は今度こそ本当の意味で表舞台からだけでは無くこの世からも消滅した。最後に一瞬だけ理性が戻ったが、そんな事は誰にも気付かれずにひっそりと消えて行った。
◇
その後、姉さんはその場で自分の傷口から出る血を止めるために真炎に自らの傷口を焼かせた。属に言う焼灼止血法だ。その決断力にエレノアさんですら驚いていた。その激痛で気を失った姉さん達を泣きながら運び込んで真炎はここまで辿り着いた。
「ホノカどうした? ゴーレム共は落ち着いたがまだまだ悪鬼も妖魔も居る。それに『四卿』をレイ単独で抑えるのも限界が有るはずだ。彼には今、対になる者が……彼女さえ居れば……」
「それって、アイリスさんと言う人ですか?」
「ああ、何だ知っていたのか、そう、彼女こそが光のみっ――――!?」
しかし私達は上空で更なる闇の広がりと脅威を感じ、会話を中断していた。
◇
時間は少し戻り、俺はダークフレイと再び戦闘中だった。しかし今度はダークウィンドーが重傷を負ったせいでフレイの援護が難しい状態での二対一、こうなれば二刀流の俺の敵ではない。
「さあ、蹴りを付ける!! 炎皇流、炎輝一閃!!」
「くっ!! ぐああああああ!!」
こうして俺は四卿たちを圧倒した。フレイを掴んでソイルの方に投げつけ、そのまま神の一振りに聖霊力を集める。レイブレードを最大出力にし三人同時に浄化する。
過去の継承者は慈悲深く封印という方法で改心を促したそうだが俺は甘くは無い。その時、背後にゾワッと嫌な気配を感じ、俺は咄嗟にその場を離れていた。
「惜しい!! これで仕留めきれないなんて!!」
「居ないと思ったら、ここで来たかっ!? ダークブルー!!」
内心でやっと来たと思った。これで四人とも同時に仕留められる。奴らは過去数度戦い、俺より圧倒的に強くアイリスと二人、またはSA3のメンバー全員で立ち向かってやっと戦えた。
しかし今は違う。アイリスや仲間と共に戦い抜いた五年間、そして一人で戦った数年間、必死に強くなろうとした俺の力は四卿を凌ぐ強さとなっていた。
「やはり強い、さすがは光の継承者……本当に人の理に縛られながらも忌々しい成長力ね……だから、悪いわね皆、犠牲になって」
そう言った瞬間にダークブルーは一瞬でダークソイルの背後に移動して、その胸部を氷の柱で串刺しにしていた。明らかな致命傷だった。
「がっ!! ダーク……ブルー? なっ……ごはっ……どう言うつもり、ですか?」
そしてそのまま回復中のウィンドーと動けないでいたフレイにも同様に致命的な一撃を与えて行く。気付けば三人の四卿は大地に倒れ伏していた。
「がはっ……貴様、乱心したか!?」
「てめえ、女狐ぇ!! 光側にでも、寝返るのかっ!?」
あまりにも鮮やかな手際に俺も戸惑いながら地上に降りて警戒していた。裏切りなのか? いや違う、目の前のダークブルーの目は未だに狂気を孕んだ異常な瞳の輝きを宿したままだ。
「いいえフレイ、違うわねルーン=オーウェン、それに上杉義風、そしてハリー=アダムズ、あなた達は尊い犠牲になるのよ……神の供物に!!」
「まさか、てめぇ!? 神降ろしを!?」
「そうよルーン。だってあなた一人じゃ半端な神しか降ろせなかった。だから私は降ろすのよ!! 完璧な神を!! あの方のために!!」
そう言うとダークブルーは何か呪詛のような黒い、暗い、邪悪な言霊を紡ぎ出す。闇の聖霊が妖魔や悪鬼が踊り狂うようにざわめき出す。
「これは、まるで巫女の奏上!? 四卿でも出来るのか!?」
「ああ、そう言えば……もう、バラしてもいいわね」
そう言って奴は黒のローブを捨て去る。その下は、いつもの煽情的な黒いドレス姿で、胸の谷間が強調された衣装だったが問題はそこでは無かった。ローブで隠されていた首から胸にかけてタトゥーのような謎の文字列が掘られていた。
「なっ!? 闇刻神の邪印だとっ!?」
「バカな……では、あなたは何者……ですか!? それは闇刻神から直接与えられた文字通りの神の聖痕!?」
邪印、闇の使徒、過去の闇刻術士の一部の特権階級の者達が闇刻神から直接与えられた物だとユウクレイドル家の古い蔵書に載せられていたのを記憶している。
「貴様は水の四卿では無い!? そうだ……封印された時には、そもそもダークブルーなど居なかった!? ダーク・ウォーラだった!?」
そして突然、思い出したようにダークウィンドーが衝撃的な発言をした。ダークブルーは四卿では無い? 俺が激しく混乱している中でダークブルーと名乗っていた女が狂った笑みを浮かべながら言い放った。
「ええ、彼女は邪魔だから消したの……この『闇の巫女』に反旗を翻した罪でね」
「闇の巫女だと?」
「そうよ。あなたの愛した光の巫女、それに対するのが私、闇の巫女よ? そうだったわ、光の継承者、改めまして闇の巫女、ブルー=F=ジャーラカンよ。よろしくお願いするわ。そして、さようなら」
そう言った瞬間に闇の巫女のブルーは四卿の三人の心臓を同時に貫いた。
「「「ぐああああああ!!!」」」
「さあ、闇刻神……供物は三つ!! 全て捧げます!! そして多くの術士と術師、聖霊、妖魔、悪鬼、多くの魂の散った戦場と言う名の墓標!! 神が降りるに相応しい死と狂気に溢れた楽園です!!」
そして目の前に現れたのは、二年前、あの戦いの時よりも明らかに強化された状態で顕現した闇刻神だった。その闇は余りにも濃く、黒い炎と疾風、そして全身を岩石の鎧を纏った化け物だった。
『アアアアアアア!! これが神の力!! 俺自身が神となった!?』
「その通り。三人には供物となってもらったけど同時に神の一部になる栄誉を与えたの……その力で光の継承者、レイ=ユウクレイドルを消しなさい!!」
『オオオオオオオ!! 感謝しますよ闇の巫女!!』
目の前の巨大な黒い巨人からは三人が混じり合った不気味な声を発していた。
「あの三人が混じっている訳か……つまり単純計算でも過去の三倍……行くぞ!!」
『経験の差だったか? 継承者!! ならこの圧倒的な術を受けよ!!』
奴の手で極大な竜巻、まるでサイクロン規模のものが生成され俺に叩きつけられた。それだけで全身がバラバラにされそうになり、俺は吹き飛ばされた。
「ぐはっ!? くっ……デタラメだな……」
俺は何とか着地するが今までと規模が違う、恐らくは紛い物の神なのだろうが、それでも有り得ない規模の力で驚愕した。
「黎牙兄さん!? 大丈夫!!」
「炎乃華か……生きていたか、良かったよ」
素直にそう言える位にはこの戦場は地獄だった。知り合いが無事でどこか安心している自分がいて驚いていた。
「はい。何とか皆も無事です。ボロボロですけど」
「そうか、ならすぐに撤退しろ……あれは神だ。相手が悪過ぎる」
そう言った俺の方にエレノアさんと美那斗も到着した。二人とも満身創痍だった。
「それは出来ない。闇を払い浄化するのが私たちの使命だ継承者」
「ですが……って、かえちゃん? 大丈夫か?」
フラフラになりながら楓が俺の前に現れた。涼風家はあれからどうなったのか、あえて聞かなかったが予想は付いた。見ると隅の方で早馬さんは気を失っていて琴音さんは泣き腫らして眠っている。
「レイ君。何か出来ないの? 試作型PLDSの結界も浸食され始めてる。何台かは壊れたし……このままじゃ、通信もメチャクチャで、結界が完全に壊れたら日本中にこの呪詛が広がっちゃうわ!!」
「ああ、分かってる。とにかく、あの化け物は俺が止めるさ……だから奥の手を使おうと思う……真炎、協力してくれるか?」
「私? でっ、でも母様が……」
「炎乃海姉さんが? そうか……じゃあ、たまには母様に付いててやるんだぞ?」
真炎の頭を撫でながら俺は内心喜んでいた。よかったよ炎乃海姉さん、あんたと違って娘の方はまだ炎央院に染まってない。なら封印は無理か……光聖神が言っていた風と土の巫女も結局は見つけられなかった。やはり最後は一人だ。
「炎乃華?」
「はっ、はい!!」
「真炎たちを守ってやれ……こっから先は余裕が一切無い、だから今度はしっかりやれ!!」
俺が見つめると炎乃華も俺の目をしっかり見つめ返した。この瞳、いつ振りだろうか? ちゃんと従妹の顔を見たのは久しぶりだった。
「はい!! 今度こそ、絶対に!!」
「ああ、それでこそ……俺の弟子だ!! エレノアさん、清一、後は任せた!!」
俺はレイウイングで飛び立つと一瞬だけ後ろを振り返る。日本での因縁と眼下の人々を見た後に俺は二つの剣を構えて突撃した。
◇
「初手から全力だっ!! スカイ! レオール!! アルゴス!! そしてヴェイン!! 全員で行くぞっ!!」
『来たか……遊んでやろう!!』
大竜巻が来るが俺はそれを斬り裂き前に進む。ヴェインの結界を前面に押し出しながらスカイの計算した軌道で竜巻を突破すると今度は巨大な溶岩弾が降り注ぐ。まるでこの世の終わりのような光景の中を突き進む。
「これで遊びとは……やるしか無いのか……光聖神!! 聞こえてますか!?」
すぐに頭の中に響く声、それに語り掛ける。こちらも神降ろしを使うしか、もはや方法は無い。
『方法は……しかし前回は巫女に助けられた貴方が今度、神降ろしを行えば今度こそ消滅は必定……よいですか?』
(はい。奴をここで解放させたら、それこそ日本中が地獄になる。そうなったら英国の同志達でも浄化は不可能になります。手遅れになる前に!!)
『その通りですが……今度こそ貴方は消えます』
(大丈夫です。覚悟は出来ています。それに俺は消えませんよ?)
『何か根拠が?』
「帰ると誓った!! 俺の最愛の人に!! だから頼む光聖神!!」
そして俺に神が降りた。あの時と同じ、瞳はヘーゼルに髪はプラチナブロンドに変わる。そして神器も変化していく『神の一振り』から『神の輝刃』へと進化した。
「単身で神を降ろした!? 有り得ない……闇の巫女たる私ですら場を整え、供物を捧げ、この場にため込んだ聖霊力と魂でやっと降ろした神をたった一人で!?」
「ああ、出来るさ!! それが光の継承者……世界を守り、闇を浄化する聖霊使いだからだ!!」
これで勝負は五分五分。相変わらず脳が沸騰するほどに供給される聖霊力、そして俺の生命量を食らい尽くすような消耗。だから一撃で、そして全力で駆け抜ける!! 今度は一人で!!
「一撃で決める!! レイブレード最大出力!! 全力全開!!」
『打たせるな!! あれはマズい!!』
『分かっている!! やらせるなあ!!』
『全ての聖霊力をぶつけろぉ!!』
闇刻神と同化した三人が慌てて術を連射してくるが回避は出来ない。チャージ中は完全に無防備になる。だから一番弱いアルゴスが自らを盾にして還って行く。続いてレオールが大嵐に突っ込んで相殺して還った。まだ聖霊力は完全に高まっていない。
「何をしているの!! 仕方ない私が!! くっ!! 聖霊帝か!?」
俺の周りに結界を張るだけ張ってスカイに後を任せるとヴェインがブルーに突撃していた。何度か交錯するが、奴がこちらへ氷の槍を放つのを見ると、その攻撃を防ぐため自らを盾にした。
『ッ!?』
そしてこちらを振り返ったその時、顔を口まで覆い隠していた御簾のようなものが吹き飛んでいて、その下の顔が見えた。
「えっ!? アイ……リス?」
『っ!! ……って!!』
その顔は見間違えるはずが無いアイリスだった。そして次の瞬間に還った。俺は混乱したがスカイが大声で鳴いた事で意識を取り戻す。その瞬間チャージが完了した。
「くっ!! 行くぞ!! 終わりだ!! 浄化されろ!!」
『うおおおおおおおお!! 消えるわけには!! 闇に消えろおおおお!!』
強大な力のぶつかり合いで両者の術が弾け飛ぶ。一撃で仕留められなかったが、すぐにもう一度放てば今度こそ勝てる。そう思った時に脳内に声が響く。
『これ以上は危険です。お止めなさい、まもなく――――』
「ここで終わらせる!! これが……俺の最後の輝きだ!!」
そして俺は二撃目を放とうと聖霊力を全力で込めた。奴は今、完全に隙だらけだ。そして二撃目を放った瞬間、前回と同じ現象が起き始めた。
俺の体が消える感覚……浄化されて消えて行く……やっぱりダメだったか。帰るなんて言ったけど無理みたいだ。これは怒られる。いや、もう……会えないのか……。
「ごめん、アイリス……俺はここまで……また、逢いたかったよ」
「それはダメだよ……レイ。お待たせ、あ・な・た」
「アイ……リス?」
誤字報告などあれば是非ともよろしくお願い致します。
ブクマ・評価なども有ればお待ちしています。




