第58話「それぞれの戦い、だから一人でも戦える」
◇
新しくなった暁の牙、その改良型のVer.2.0を握りしめながら俺はエレノアさんが来日した翌日の朝を思い出していた。
「朝から何ですか? エレノアさん?」
「ああ、少し頭が痛いが……昨日の宴会で連絡事項を忘れていたんだ継承者。君は備品申請をしていただろう?」
そうして渡されたのが『暁の牙Ver.2.0』だった。何度か英国に対して出していた報告書の中で暁の牙が壊れた事を報告していた。その後に神の一振りをヴィクター義父さんが、直接はフローなのだが、届けてくれたので忘れていた。
「これは……暁の牙!! 折れたのは預けてるし……まさか一から鍛えたんですか!?」
「ああ、英国にも刀匠は居る……と、言いたいが実際は設計図を中国の朱家に持ち込み、そこの刀匠に頼んだ。幸い中国刀だけではなく日本刀も打てる方でな」
「ですがエレノアさんは急遽こちらへ派遣されたのでは? それではまるで……」
「元々帰還予定だったのは事実だが備品申請されて英国から同型を作り直し送るよりも設計図のデータを送ってなるべく近い場所から送る方が早いだろうと当主、アレックス様の命令さ」
エレノアさんの話によると数週間前の報告書を出した時点で既に準備に入り朱家に伝達して鍛え始めていたそうなのだが、そのすぐ後にジョッシュとフローが英国を立つ事が急遽決まり、ヴィクター義父さんが独断で『神の一振り』をフローに託したそうだ。その後、先に着いたのは『神の一振り』の方だった。
「今さらとは思ったが一応持って来たのさ」
「ありがとうございます。って、義父さんの独断なんですか!? でもアレックス老はそんな事……」
「アイリス様、光の巫女の件のためと言われ強くは反論なされなかったそうだ」
なるほど確かにタイミング良く俺の所に神器が来たから真炎の覚醒にも対応出来たし炎央院の妖魔・悪鬼の襲撃なども退けられたから結果オーライなのだろう。
「いざと言う時に使えると思いますし、このローブの裏に縫い付けておきますよ」
「ああ、それが……巫女の、アイリス様の? 絶対に血の一滴も付けずに今日まで戦って来たと言う?」
「ええ、彼女だと思って……傷つけないように大事にしているだけですよ……」
本当はアイリスの匂いが落ちるから洗いたくないとジョッシュとフローに言ったら本気のトーンで自分たち以外には本人も含めて絶対に言わないようにと言われ、以来この言い訳をしていた。
アイリスに包まれていると思って俺は付けていただけなのだが、二人のあのドン引きした顔は今も忘れられない。
「そう言えば、折れた方の聖具はどうした?」
「ああ、研究用にと人に貸与しています……その、実は本社に申請してなくて……」
「そうか、君でもそのような事を、だが君が信用しているなら問題無い、なんせ光の継承者の権限は下手な申請用紙よりも重いからな」
言えない、貸した人間は俺をこの家から追放した女だなんて言えない……あの時の約束で炎乃海姉さんに言われ俺はPLDSを貸せないのに安請け合いしたから仕方ないので折れた暁の牙を差し出していた。
ちなみに本人は大喜びで、すぐに地下の研究室に回収され真炎ですら入れない研究室に安置されていると聞く。
◇
そうして様々な要因をもって暁の牙Ver.2.0は俺の手に有る。目の前の敵は俺が刀を持つと言う意味、それを理解していない。奴らの前で刀を使った事は無く、暁の牙を使っての戦闘はダークブルーしか知らない。
「なるほどな、光位術以外も手に入れたのか!! しかも炎の力!! お揃いとは嬉しいねえ継承者ぁ!!」
「俺に火は因縁が有り過ぎる……行くぞ!! 四卿!!」
「刀勝負……なら俺の領分だ!!」
そう言いながらもダークフレイは後方から黒炎を振りまいて来るし、ダークソイルは不敵に笑いながら先ほどの岩の砲弾を撃ち込んで来る。俺は神の一振りでそれを全て破砕すると、その陰からダークウィンドーが上段で斬りかかるのを暁の牙で受け止める。
「くっ!! 聖具と侮っていたが中々これは……俺の神器『嵐冥の大太刀』の一撃を受け流すとは……んっ!?」
「炎皇流、『返しの舞炎』!!」
俺は敵の上段の一太刀を暁の牙の刀身で滑らせるように受けて力を下に逃がし、剣先に触れる瞬間に聖霊力を一気に爆発させる。剣先に触れ離れる刹那にカウンターの炎の聖霊力を爆発させ素早くその場を離脱する。
「ぐっ!? やってくれるな。しかし剣技だと……そんな技いつの間に!? 数年前のギリシャで、クレタ島ではそんな技など……その刀か!?」
「今の技は八年前まで俺が使いたくても使え無かった技だ……この技を使う条件は二つ、一つは武器が刀で有ること、もう一つは炎聖術を使える事だ!!」
俺は日本で、炎央院の家で十年以上は鍛え続けた炎皇流の技を実戦で使うのは今日が初めてだ。稽古でエレノアさんや清一相手には何度も試してはいた。
俺の剣の師は俺が剣技の型を習得し、その後に術が使えないと判明すると俺を早々に見限りどこかへ消えてしまった。だから最後は俺はこの剣技を一人で完成させるしか無かったし、これが実際に正しい技なのかは分からない。
「それでも、これが俺だ!! 行くぞ炎皇流……炎刃裂破!!」
俺の聖霊力で上がった炎の一撃が奴の腕を捉える。もちろん炎聖術なので過度なダメージは期待出来ないがそれでも俺の聖霊力なら少なくとも隙を作るくらいの一撃としては充分だった。そこにさらに俺はアレンジした技を放つ。二刀流で八年前に得意としていた技を放つ体勢に入った。
「ぐっ、なにっ!? なんだその構えは……何なのだっ!? 貴様ら援護を!!」
「聖霊使いが、なぜ、その名で呼ばれているか知っているか!?」
本能的に危機を感じた奴はフレイとソイルに救援を求めるが肝心の二人の周りにはスカイとレオール、それにアルゴスがまとわりついて巧みに妨害をしていた。
特にスカイは上空からの妨害術で術のコントロールなどで徹底的に混乱させていた。そう、聖霊と共に戦うのが聖霊使いだ。術を行使するだけではただの術士なのだから。
「くっ!! 聖霊か!? いつの間に!!」
「よそ見をしている余裕など有るのか!? 炎皇流……炎牙双極斬!!」
炎牙双極斬は以前にも説明したが上段の斬撃と下段の突きをほぼ同時に放つ技だ。俺は当時、聖霊力無しで一般人で出せる限界まで技を極めた。しかし教えた炎乃華や他の門下の人間はそれを炎聖術の強化と聖霊力の補助で俺より早く、そして的確に習得していた。
俺自身は限界まで鍛えたのに使いこなせない。それが悔しくて俺はその時に考えたのが上の斬撃と下の突きを同時にするのなら、そもそも刀も一本じゃ足りないのではないか、そう考えた。
「二刀による斬撃!! なるほど!! どちらかは必ず当たるか!! だが継承者!! お前は決定的なミスを犯している!!」
つまり炎牙双極斬は、そもそもが斬と突きの二つを極めた技では無く、二つの剣を同時に扱うのを極めた技では無いかと言う疑念で……それに対し俺なりの回答が二刀流で技を繰り出すという事だ。
「それは……どうかなっ!!」
左手で上段の斬撃を神の一振りで、そして右手で突きを暁の牙で同時に放つ。これで本当の意味で同時だ。そして奴は避けられないと理解し上段の神の一振りを防いだ。その瞬間に暁の牙が奴の心臓に到達……せずに奴は左腕を犠牲にして俺の突きを防いでいた。
「ぐぁ……くっ、だがっ……先ほどの貴様の斬撃でその刀も貴様の炎聖術も底が分かっている!! その威力では俺の闇刻術の壁は越えられない!!」
やはりそれを選択したのか……全て俺の予想通りに推移したのを確認すると、カチャっと俺は暁の牙の向きを変え、そして一瞬だけ聖霊力を解除し一気に振り抜いた。
「バカ野郎!! ウィンドー……おいっ!! 義風!! 奴の狙いは別にっ!!」
「どうせ炎の力を込めるのだろう!! その程度、腕に纏った聖霊力を凝縮した闇のオーラで……っ!? な? 何が?」
奴が勝利の宣言を言い終わる前にダークウィンドーの左腕が半ばからポトリと地面に落ちた。起きた事象はただそれだけだった。
「あっ、ぐっ、うがああああああ!! ぐっ!!」
「逃がさないっ!! レイブレード!! 伸びろおおおおお!!」
奴は何が起きたか分からないまま危機を感じ後退しようとした刹那、上段に構えていた腕に持つ神の一振りからでは無く、その腕に装着したPLDSから直接レイブレードを出力し極限まで伸ばす。神の一振りを本格的に使うまでは俺がよく使っていたPLDSによるレイブレードだ。
そして俺のレイブレードは良く伸びる。それが後ろに跳んだ程度では避け切れるはずもなく、今度こそ奴の脇腹を直撃し、そのまま光の粒子を爆発させ飛び散る。
「光位術士や他の術師なら何の問題無いが……闇刻術士の、しかも弱った今のお前なら効くだろ? シャインミストは?」
「ぐああああ……あがっ……ぐふっ……はぁ、はぁ」
そして俺がトドメに入る瞬間に血だらけになり致命傷を負ったウィンドーをダークフレイが引きずって、それを援護するようにダークソイルが地割れを引き起こし、そこから闇の刺を無数に射出した。
「だから言っただろうが!! ったく、世話かけさせる!!」
「今の内に後退を!! しかし今のは何なのですか!? ウィンドーよりも早い剣戟で見えませんでした。しかも炎聖術では闇の守りを越えられないはず……」
ダークソイルの困惑の言葉にダークフレイが一瞬こちらを睨みつけた後に苦虫を嚙み潰したような顔をして言い放った。
「あいつは炎聖術なんて使ってねえ……ただ斬った。それだけだ……」
「は? フレイ? ただ斬ったなど、なにを寝言を……っ!? まさか!?」
奴も気付いたようだ。気付いたと言うよりも理解したようだ。俺がやった事、それはただの斬撃。一瞬だけ聖霊力を込めて奴の闇の守りを削った後はただ斬った。
「クレタ島でもお前は最後は闇刻術に頼っていたな? それで島そのものを大嵐に巻き込み俺ごと消滅させようとした。だから今回も最後は術頼みだと俺は考えた。剣士が聞いて呆れる。だからお前は、ただの剣技に負けたんだ」
クレタ島で戦ったダークウィンドーは自分の剣技を誇っていたが、土壇場ではいつも闇刻術に頼り、そのような傾向が強かった。
「うっ、バカな……あれがただの斬……撃だと? ただの剣技? 俺が到達出来なかった……もの、だと!?」
だから最後の最後に奴は闇刻術で自分自身を守ると読んで俺は、ただの刀の一撃で奴を斬った。聖霊力を纏わなければ、そもそも力が反発する事も干渉し合って防御も出来ないから斬撃は素通りして奴に到達する。もし奴が術に頼らなければ戦いは続いていただろう。
「幼い頃から一人で戦って来た……。だから、俺は一人でも戦える!!」
幼い頃から術師に対して俺はただの剣術で何度も戦い、その度に敗北し悔しくて泣いていた過去の俺だ。その戦いの中で敵対した術師は誰もが最後は術に頼って俺を倒した。そしてその傾向はロードでも変わらなかったのだ。
「けっ、群れた俺らが悪いみてえだなぁ!! オイ!!」
「悪いとは言わないさ、むしろ……ふっ、とにかく最後は、血反吐を吐きながらも戦い抜いた昔からの経験が生きたってわけさ……」
「バカな……俺の六百年が、たかが二十年足らずのガキに……ま、負けた?」
深手を負わされた奴の回復をしようとソイルが岩の壁を展開し、そしてフレイが再び俺に襲い掛かって来た。
「俺には搦め手は効かないぜっ!! 継承者!!」
「だろうな……だからお前は全力で行く……」
白の剣と黒の刀を構えて俺は奴と相対した。そして俺たちは再び激突した。今度こそ決着を着けるために。
◇
戦況は五分五分、以前は簡単に倒せた祐介も闇刻術の力でこの通りとは恐れ入る。そんな態度が表に出ないよう私は内心でため息を付いた。そもそも自分が優れた炎聖師じゃない事は幼い頃から自覚していた。
だから力では家を手に入れられないと分かってからは目の前の男にも抱かれたし、どんな汚い事もやって来た。だが目の前の男の変容を見て初めて自分の思考に疑問を持った。例え力を手に入れられても、こうなりたくない、そう思ってしまった。
「まさかここまで強化されるとは……流美!? まだ生きているかしら!?」
「はっ、ご冗談を……この程度では!!」
索敵など補助術メインだった流美も前より戦闘向きとなり、私も、聖具を全身に装着し、私の聖霊の炎雀も英国から貸与された霊子兵装でパワーアップしたにも関わらずこれだ。幸いにして聖霊は使えず、聖霊術で戦いをするごり押しは昔とはあまり変わっていないので今まで対策は出来ていた。
「これも黎牙様のご指導のお陰です……」
「本当にね、黎くんにはこの戦いの後に、色々とサービスしないとね!!」
「レイガ、レイガアアアアアアアア!!」
それにしても祐介の奴は黎牙という言葉に反応している。他の戦場を流美が俯瞰しながら聖霊間通信で全員に戦況を知らせているけど他の三人は祐介ほど発狂はしておらず、呻きながら襲い掛かっているだけらしい。
「つまり、それだけ黎くんに対する執着が強いと言うわけね?」
「はい、兄は昔から……黎牙様に」
ええ、よく知っている黎牙と言うワードを出せばチョロかったのが里中祐介と言う男だった。だから利用したし私もされてあげた。お互いに利用し、されるだけの関係だったけど、ここまで拗らせているなんて思わなかった。
「なら黎くんの手を煩わすわけにはいかない……それにポイントも稼ぎたいからね? 行くわよ!! 炎雀!! 流美はアレを頼むわ!!」
流美と炎雀さらに流美の聖霊にも指示を出し四方向からの一斉攻撃の後に素早くポジションを入れ替える。そして流美に襲い掛かる祐介だったが流美は何をするでも無く、そのまま消えた。
「ガッ!! ドコダ!? ドコダアアアアア!!」
「こっちですよ兄さん?」
そして次々と周囲に現れる流美に攻撃するが全てが霧散するように消えてその度に炎聖術の爆発で少しづつ炎でダメージを受けている。英国の炎聖師から習得した炎聖術『フレイムダミー』だ。
この術は、さながらブービートラップのようで、私のようなテクニカルな術師とは相性が良いものだ。さらに後方から炎雀と炎狐による援護、そして私が炎気爆滅を放ちながら永続的にダメージを与える。これを何度も繰り返し奴が徐々に疲弊して行くのが分かった。
「グアアアアア!! オノレ!! レイガ!!」
「ま、少なからず責任は感じてるわ……悪かったわね!! だから私の手で消してあげる!! 炎陣散華!!」
そのまま祐介を炎の壁の中に押し込み後は流美と私の炎聖術を片っ端から撃ち込む。炎熱地獄と言う名のごり押しだ。その間にも私は次の準備をする。
「流美!! 誘導ポイントはここよ!! ここまで頼むわ!!」
「はっ!! お任せを!! さあ兄さん……こっちです!!」
しかし全然反応しない。流美が術を何発撃ち込んでも反応せずダメージを受けているのかすら怪しい。体は丸焦げながら未だに動いている。
祐介たちはゴーレム術師では無く肉体改造されただけのはずだから肉体へのダメージは有るはずだ。それが闇刻術で強化されていたとしても、無傷はあり得ない。
「まさか……いえ、試すべきね……ふぅ、ここに私の黎牙がいるわ~!!」
「レイガアアアアアアアアアア!! ソコカァ!!」
本当に嫌になる。一直線にこっち向かって来てるし、だから私はその場から素早く離れると同時に炎雀に突進をさせる。当然のように吹き飛ばされるが、その場に釘付けにするのには成功した。
「はぁ、終わりよ祐介……今度こそさようなら。炎核の術、発動!!」
その宣言で地面に設置していた私の持てる最高の破壊力の炎核の術を使用した。私のような弱い術師、聖霊力の無い術師でも触媒と聖霊力の込められた道具さえ有れば圧倒的な破壊力を実現できる。
現にこの術で旅客機や下手をすれば空港の半分も破壊は出来るだけの破壊力は有り、私と流美は充分に距離を取るが、それでも爆風だけで吹き飛ばされていた。奴はその爆心地で断末魔の叫びを上げて炎上していた。
◇
「そんな闇の力に身を落としてまで力が欲しいのですか!? どうして!?」
「ウガア……アアアア!!」
私は自分の相手の火乃井陽一を神器で滅すると、すぐ近くで戦っていた光位術士の美那斗と大助の戦闘に遭遇した。志炎家の対決だった。別な方面では大爆発が起きていたけど何だったのだろうか? たぶん逆方向では伯父様とお父様が戦っている。そして眼前の戦場に動きが有った。
「やはり浄化するしか無い……行きます!! 光の戦刃、レイブレード!!」
目の前の美那斗が黎牙兄さんと同じ術を使って戦っているのが羨ましい。私も同じ力を手に入れたら昔のように扱ってもらえるのだろうか? 仲直りしてもらえるのだろうか。そんな考えが頭をチラつく。
「ウガアアア!! チカラチカラ!!」
「あんなに無気力だったのに……ですが私も光位術士となったからにはエレノア隊長や継承者様の……恩人のレイ様のために戦います!!」
そして一瞬の交錯の後に勝負は決まった。光の壁、グリムガードで防戦一方からレイブレードに切り替えてからの僅か二回の斬り合いで大助は簡単に倒されていた。
「ぐっ、ううっ……お、俺は……あぁ、美那斗?」
「叔父さん!! なんで、『無能』の私にも優しかったのに……」
「それは……罪……滅ぼし。だ、昔、兄弟子と慕ってくれた、のに……好……きな、じょ、せいを取られ……悔しく、おれ、は……」
その弟子とは黎牙兄さんだと思う。その後もポツポツと喋り終わると満足して最後に一言、彼は言った。
「スマン、黎牙……ほ、のみ……さん」
「叔父さん……バカな人です。母さんの言ってた通り、嫡子の許嫁を好きになるなんて……自分でも分かってたでしょうに、本当に……」
私は声がかけられなかった。これも黎牙兄さんが追放されたから起きた一幕だ。つまりそれに加担した自分や姉さん、それに多くの人間の犠牲が目の前の志炎大助と言う術師だ。確かに彼は道を踏み外したし、黎牙兄さんをイジメていて自業自得だったのかも知れない。
「それでも……これは、あんまりよ」
「炎乃華様……も、申し訳ありません。私の家のことで」
「いいの。ごめんなさい。あなた達は、十選師の家は私たちの下らない家督争いに巻き込まれただけ……。本当に、ごめんなさい。姉と他の親族に変わって謝罪します」
なぜか目の前の大助が憐れにしか見えなくて、家に仕えてくれた人間を無碍に死なせた虚無感と罪悪感が私を襲った。
「ありがとう……ございます。それよりも炎乃華様!! まだ戦いは続いてます!! 他の方の救援に!!」
そう言った瞬間に戦場に闇が立ち込める。異様な気配だった。見ると他の戦っていたメンバーが走り寄って来る。良く見ると泣き腫らした真炎と鳳凰の背には気絶している姉さんと流美が乗せられ運ばれていた。
混迷する戦局の中で闇の中心には新たに巨大な影と、それに立ち向かうように光の翼を輝かせた一人の剣士が見えた。それはもちろん黎牙兄さんだった。
「何がどうなってるの!?」
思わず叫んでいた。しかし、これがこの戦いの最終局面、そして上空の黎牙兄さんは、たった一人で上空の巨大な闇と対峙していた。
誤字報告などあれば是非ともよろしくお願い致します。
ブクマ・評価なども有ればお待ちしています。




