第56話「悪夢再演-トラウマ-」
◇
「この空気、あの戦いを思い出す……」
「あの戦い……エディンバラ消失未遂事件か……」
アイリスを失った戦いを否が応にも思い出す。先ほどから幾度もPLDSに通信が入り、朱家の人々が全力で闇刻術士と戦っている戦況が伝わる中、俺たちは先に進んでいた。
ちなみに光位術士以外の連絡手段は涼風家の楓、かえちゃんが構築した風聖師を中心とした聖霊間通信を行っている。
通常の聖霊間通信では闇刻術士がジャミングをかける恐れが有ったので風聖師を中継地点として強化を図った。通信系統に関しては風聖術の右に出る者はいないので順当な役割だと言える。
「さて、ここまでは問題無い、正面は俺とエレノアさんのツートップで行く、基本的に光位術士の三人は他のメンバーの補佐をしつつ闇刻術士の対処を、美那斗は出来る範囲で戦え。それ以外の下位術師は基本は結界展開後に悪鬼、妖魔を結界外に逃がさないような対応と可能なら闇刻聖霊の足止めを!! それと真炎と楓を最優先で護衛してくれ!! 何か質問は!?」
質問は無いので俺は先頭に立ち駆け出した。既に目視で数十体の闇刻聖霊が居るのだ。悠長にやってられなかった。
「行くぞ!! 突撃っ!! 俺に……続けっ!! 闇刻聖霊は皆殺しだああああ!! レイブレード・ディヴィジョン!!」
俺の変わりように光位術士と清一以外は皆、ドン引きしているが、こうして闇刻聖霊を十体斬り刻んで戦闘は開始された。
◇
数は多いが術士がかなり少ない代わりに闇刻聖霊がかなりの数が居る。しかも厄介なのは奴らは自立型でまるで人間のように動き、時には術士のように悪鬼や妖魔を利用して戦っている点だ。戦いながら俺はこの聖霊に覚えが有るのに気付いた。
「まるで聖霊が術士になったような感じか……どうした? 継承者?」
「いえ……こいつは以前報告に上げた俺の部隊を全滅させた個体に似ています。喋らないだけで動きや行動パターンは、あの聖霊にソックリなんです……」
俺は背後に回ろうとして奇声を上げていた通常の闇刻聖霊をレイブラスターで浄化しながら率直な感想を言う。そして正面から迫る二体をレイブレードで切り裂いた。
「そうか……なら例の闇の牙にも気を付けた方が良いだろうな? 朱家からの戦場での謎の回復不能の攻撃と来ているのはそれだろう……そうか、私は運が良い!!」
そう言うとエレノアさんは敵の闇刻聖霊をレイブレードで串刺しにした後に蹴り飛ばして反対の手でレイランスを展開し投擲した。普段は冷静な彼女にしては珍しく声を大にして叫んでいた。
「弟と、その恋人の仇を取れるのだからなぁ!! 行くぞ!! レイブレード・ダブル!!」
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これは戦争だ。今までの私たちは任務で討伐や討滅などを行って来たが、この惨状を見てからはただの見回りに等しかったと理解させられた。
「数が多過ぎる!! 姉さん、琴音!! 無事!?」
「ええ、でも炎乃華、先行し過ぎよ!! 指揮官の炎乃海さんの指示に従って!!」
そう言われても姉さんも自衛しながら真炎と一緒に遠距離から牽制をするだけで数が全然減ってない。これじゃ戦場で活躍して黎牙兄さんに認めてもらえない。
「でもっ!? くっ……了解っ!!」
実際に、反対側では勇牙とクリスさんがコンビで上手く戦ってるし、さらに奥では清一さんと志炎家の奉公に来てた美那斗って子が一緒に戦っている。
ぱっと見は彼女が先行して戦ってるように見えるけど実際は逆で闇刻聖霊を相手にしているのに清一さんの方がスコアが高い。
(同じ黎牙兄さんの弟子の私だって頑張らなきゃ!!)
そう思うと自然と力が湧いて来て私は連続で妖魔を切り裂く、そして実体の無い悪鬼には炎聖術で牽制して後退する。
「いいタイミング!! バラバラになりなさいっ!!」
私が後退したタイミングで入れ替わるように、ほぼ滑空しながら琴音が両腕の神器を輝かせ真空波を飛ばす風聖術『風鳴り』を放つ。
風聖術は火力は少ない術が多いが、この術だけは初歩の術ながら威力が凶悪で音が聞こえた瞬間には対象を粉微塵にして血すら噴き出る暇も与えない。風が鳴った時には全てが終わっていると言う意味で名付けられた術だ。
「少しは減ったようね、炎乃華、琴音さん!! 二人ともこちらに下がって、闇刻聖霊が近いから光位術士と交代して!!」
後ろからやっと姉さんからの指示が入ると私たちは姉さんと真炎の付近まで後退する。そして入れ替わるように白い装束を着た光位術士のマークさんが前面に出て闇刻聖霊にレイアローと呼ばれる光の矢を三連射し倒していた。
「嫌になるわね……光位術士か、そりゃ私たちは下位術師なんて言われるわけだ」
「う、うん……強い。なんて強さ……」
強い、エレノアさんの部下で光位術士でも精鋭のSA1と言う部隊の人間らしく黎牙兄さんも一目置いていると言う。しかし彼らは全員口を揃えて黎牙兄さんが最強だと言う。
さらに奥の戦場を見るとそこでは黎牙兄さんとエレノアさんの二人が背中合わせに戦っているのが見えた。そして瞬く間に数十の闇刻聖霊が消えていた。圧倒的な力がそこには有った。
「炎乃華どうしたの? そろそろ水分補給を……あぁ、さすがね黎くん。凄まじいわね。あれと戦おうなんて私もバカだったわ……それに……」
「それは私もだよ姉さん。ね? 真炎は戦わせないの? 戦力としてはたぶん炎央院の家では最強でしょ?」
「黎くんに言われるまで気付かなかったんだけどね。この子、聖霊力は圧倒的だけど反対に聖霊の扱いはまだまだ甘くて下手に聖霊に攻撃を命じたら敵味方関係無く攻撃するのよね……」
「たまに失敗するだけだもん……」
そう言えばエレノアさんにも土日で訓練を受けていた時にはそこを注意されていたけど黎牙兄さんが仲裁に入って甘やかされていた、羨ましい。とにかく強いけどコントロールは未だ未熟なので切り札として考えていると姉さんは言う。
「ふぅ、とにかく炎乃海さん、それと炎乃華? こっちは何とか遅延戦闘は出来ているけど……数は減った様子無いわよ……結界と、あの機械のおかげで何とかなっているみたいだけど……」
『琴音、あれは試作試験型PLDSよ? 機械なんて安っぽい言葉を使わないで……半径5キロ直径10キロ圏内に簡易結界を発動し約六時間連続稼働が可能な上に自動防衛機構も搭載、妖魔や悪鬼の類とも戦闘が可能な素晴らしいものよ!!』
そう語る楓さんはここから少し後方に光位術士の人と二人でその機械を守っている。同時にそのPLDSを利用して聖霊間通信を強化しているらしい。
この機構を利用しようと前から考えていたようで先ほど提案された黎牙兄さんは驚きながらも納得してすぐに了承していた。
「ま、使用後は聖霊力貯蔵バッテリーは使い捨てだし、聖霊力を充填するのは半日もかかるからコスパ面ではイマイチなのよね……それに……」(これが本格的に使われるようになったら私たちがお役御免だって分かっているのかしら黎くんは?)
「それに?」
炎乃海姉さんが何か言おうとして言葉を引っ込めた。少し気になったけどペットボトルの水を飲み終えるとすぐに思考を切り替える。残りのメンバーも終わったようで今度は勇牙たちの場所と交代だ。
「いいえ、今は関係無いわ、休憩は終わり!! 行くわよ!!」
「ね~母様~!! 周り味方居ないなら鳳凰出してい~い? れんしゅ~!!」
「う~ん……仕方ないか……分かったわ真炎、勇牙たちと交代でまず前面に鳳凰を出して辺り一面は焼き払っていいわ」
「わ~い!!」
サラッと言うが私の姪のスペックは相変わらず底が知れない。黎牙兄さんが居なければ止められる人間は意外と少ないそうで光位術士と同等かそれ以上の力も出せると聞いて驚いた。そして勇牙と一緒に戻って来るクリス君を見るがどこか違和感が有った。
何か分からなかったけど二人と護衛の光位術士の人と交代して真炎が前に出た。いきなりの大出力で妖魔が蒸発し、実体の無い悪鬼は消し飛んでいた。
◇
「人工聖霊は今ので最後……ですね?」
「ああ、やはり闇の牙は厄介だな……隊服に掠めただけで威力がこれほどなんて……しかも隊服の自動回復まで阻害されるとは」
「ええ、あれは厄介です。一応はグリムガードで防御は可能ですけどフォトンシャワー有りきで戦っていたら危ないです。少なくとも、この戦いは戦線離脱するしか無いですね」
人工聖霊の群れを何とか倒し切った俺とエレノアさんだったが、やはり負担が大きい。俺はまだ余裕が有るけどエレノアさんは少し怪しい。これでもかなりの強さで、SA1のオリファーさんの次くらいには強いのではないだろうか。
そうなるとSA1ではローガン師を覗けば二位の実力者だ。その猛者でもこの戦いは厳しいのだ。現に彼女の部下や美那斗は既に数回休憩を取っているが俺たち二人は未だに取っていない。
「ふっ、しかしこれだけ前進しているのに朱家の術士と会わないのは少し不気味だな……」
「ですね……幸い後ろか炎乃華たち後続部隊は付いて来てますし、術師だけの部隊も妖魔と悪鬼を良い感じで潰しています」
そう言ってPLDSを確認するように見せると凄い速度で悪鬼・妖魔の反応が消えて行く。試作型の大型PLDSの力も有るが基本的に日本の聖霊使いは好戦的だ。
英国の聖霊使いはサポートや補助に特化する訓練を受けているが日本ではそれが無いので戦闘技術だけを見れば英国側よりは強いのだ。
「ふむ、では私たちも一度本陣に……これはっ!?」
「第二陣!? にしては聖霊力が異常ですね……行けますか?」
「少し心許無いが最悪の場合はレイウイングで私一人だけでも逃げさせてもらうさ」
絶対にそんな事しそうに無いけど俺たち二人は目標地点に向けて走り出した。そしてそこで俺達を待っていたのは因縁深い相手だった。
「この気配は朱家の二人か!?」
「レイ!! 来るな!!」
見ると朱家の二人が相手にしているのはロード、土のロードのダークソイルだった。俺は遠目に見た事が有るだけで、このように接敵するのは実は初めてだった。新代のダークソイルは俺が倒したのだが旧代のこいつとはついぞ会わなかったのだ。
「継承者!! ああ、まさか先にあなたと戦えるなんて!!」
そう言うとダークソイルは土の壁を出現させて俊熙と凜風を吹き飛ばすと俺の方に向かって来る。俺は即座に神の一振りを振り抜き奴の土壁と新たに出現した岩壁を破壊する。そして爆散したそれをグリムガードで防ぐ。
「くっ!? 過去に戦った新代とはケタが違う!?」
「ああ、そう言えば彼の仇は貴方でしたか!! そうでしたねえ!!」
奴はゆったりとした歩みの中でも次々と岩石を砲弾のように連射する。そしてその中に闇の気配を感じ俺は即座に神の一振りでそれを爆発させる前に浄化した。
「ふっ、何だ今の嫌な感じは!?」
「凄い凄い!! さすがは継承者、この国の土聖術師のアメリカ人とは比べ物にならない!! やはり雑魚だったのですねえ……奴は」
「土聖師のアメリカ人? アイザム氏の事か!?」
「ああ、そんな名前でしたね……ふむ、その様子ではあの雑魚がこの国の四大家の長などと名乗っていたのは本当のようで……何とも同じ土使いとしては悲しくなる」
そう言って肩をすくめて奴は嗤っていた。余裕な態度に腹が立つが奴と俺の力の差を分かっている筈なのに、この余裕の態度なら何か策が有る。まずは合流した朱兄妹とエレノアさんの場所まで戻ると二人には余裕が無かった。
「すまない、部下たちと分断されてな……ダークブルーに誘導されて……」
「私も、申し訳ないです」
二人はご先祖様の仇の水のロード、ダークブルーに固執していたから深追いしたらしい。それで周りに部下も誰も居なかったのか、一瞬全滅したのかと思ったからまずは一安心だ。
「では四人で戦うぞ!!」
「それは少し困る……それに役者も揃って来たようだ……こちらも、そちらもね?」
そう言うと後ろから真炎や炎乃華たちの気配がする。後続が追い付いて来たようだ。さらに近くからレイウイングで近付く気配がするから見ると朱家の術士たちも次々と俺たちの周りに降り立つ。
『いいタイミングで合流出来たみたいね? レイ君』
「いいや、最悪のタイミングだ」
かえちゃんが後方からの聖霊間通信で俺に言うが間違いだ。なぜならダークソイルの背後から気配がする。巨大な二つとその後ろからもさらに無数の気配がする。
「黎牙兄さん? 今はどう言う……あれって……」
後ろからはダークソイルと同じ黒に金糸の入ったローブのロードが出現した。一人は刀を腰に差した侍風の男ダークウィンドーと、もう一人は青い髪をローブの隙間から出し、ローブの下には胸元を強調する漆黒のドレスを着たダークブルーが現れた。さらに後ろからは幽鬼のようにフラフラ歩いてくる黒いローブの集団が居る。闇刻術士にしては覇気も気力も無い不思議な連中だった。
「お待たせ、継承者……あなたから受けた傷の借りを返しに来たわ……」
「久しいな継承者、ギリシャでの借りを今日こそは返させてもらおう!!」
「二人ともいけませんよ? 彼は私の獲物です。早い者勝ちと言ったでしょう?」
三人がそれぞれ不敵な笑みを浮かべながら俺に宣戦布告するかのように言い合いを始めて俺を見て来た。
「これはこれは、モテる男は辛いな……三人まとめて相手になってやろう!!」
「くっ!! 継承者一人を戦わせるな!! 行くぞ!! SA1の意地を見せる!!」
「朱家の精鋭たちよ!! ここが、この戦場こそが歴史を決める場ぞ!! 今こそ継承者と共に戦おう!!」
エレノアさんと俊熙が鼓舞しそれぞれの麾下の部隊が気合を入れ直し、それぞれ聖具を構え、突撃した。だがそれを守るように後ろの謎の集団も動き出した。ユラリユラリと不気味な集団だ。
「敵の正体がまだ分からない!! 各員気を付けろ!!」
俺がそう言った瞬間、先行した朱家の術士が炎に包まれ、また有る者は風で吹き飛ばされていた。
「これはっ!? ぐっ!!」
「うわあ!! 闇刻術じゃないだとっ!?」
数人が見る影も無く倒れ込むとそれを囲むように一斉に、火・水・土・風の術が一斉に放たれ、その光位術士は絶命していた。
「今のは出力は高いが闇刻術じゃない!! 火聖術や水聖術……下位術!?」
「どうなっている。いくら出力が高いとは言え光位術士が下位術師に負ける? それではまるでロードじゃないか!?」
「落ち着け、朱家の……しかし継承者、これは……」
そう言って俺たちが敵の正体を掴みかねている時だった。後ろから震えて掠れた声が聞こえた。
「うそ……お父様、お母様……なの?」
「琴音? ど、どうしたの!?」
すると風を纏いながら槍を持った青年が後ろに到着する。それは現在の涼風家の当主の早馬だった。よく見るとクソ親父とジュリアスさんも合流していた。
「後ろから見たが、今のは風の奥伝の秘奥義……『風永の戟槍』まさか……」
「オペレーターなんてやってられないから来たわよ!! 今の技ってアニキ!?」
そう言うと目の前の黒ローブはフードを取ると精気を失った目を向けて来たが口は動いていた。俺は会った事は無かったが涼風家の三人の反応で察した。
「サンニントモ、ソウケンカ……ヒサシブリダナ」
「ヒサシブリネ…………」
「二人とも……その姿は……どうして?」
あの早馬さんですら茫然としている。当たり前だ死者が目の前にいるのだから。当然だった。
「感動的な家族の再会じゃないか。そう思わないか継承者?」
「これはどう言う術だ……ダークウィンドー!! いや、この手の悪趣味な術はお前の領分か? ダークブルー!!」
「あら、流石は継承者、私の事をよく知ってるわね? 照れちゃうわ……ただ私はダークソイルの土塊人形に漂っていた術師の魂を入れただけ。この準備が忙しくて表に中々出られなかったのよ」
俺の叫びにダークウィンドーとダークブルーがそれぞれ答える。コイツら死者の魂を土塊の人形に込めたとそう言う事か……。人工聖霊よりも質が悪い。
「それはそうさ、これは僕とダークブルーの共同研究のようなものだからね……だからね……君に最高の相手を用意したんだよ。僕達からのプレゼントを是非とも受け取ってくれよ……光の継承者!! 出番だ同士!!」
ダークソイルが歌い上げるように言うと俺の背筋がゾクッとした。そしてそれはすぐに表れ前方の土塊の死者の行進を吹き飛ばし、かき分けるように黒い炎が吹き荒れる。そしてそいつは現れた。
「くっ、凄い聖霊力の炎……しかも黒い炎なんて初めて見た何者なの……って、黎牙兄さん?」
「あっ、ああ……ああああっ、くっ……はぁ、はぁ……」
奴は片腕がハンマーのようになっていて生前のままだった。しかし両目は他の土塊人形のように紅く怪しく光っていた。そして俺を見てニタリと確かに嗤った。
「黎くん? あなた顔色が……大丈夫なの?」
「レイおじさん? あれだけは別格だよね? あれって……なに?」
真炎があまりにも不気味な聖霊力に気圧されて声を上げる。みんな俺の動揺に驚いているが光位術士たちはいち早く立ち直りすぐに戦闘態勢に入った。特に朱家の兄妹はレイブレードを展開して即座に斬りかかっていた。
「くっ、まさか……貴様は……仕掛けるぞ!! 凜風、続け!!」
「はいっ!! 今度こそ消えなさい!!」
「カラダガ……ナジマナイ……グオオオオオオオオオ!!」
しかし次の瞬間、その闇の炎を操る怪物は俊熙と凜風を容易く吹き飛ばし行動不能に追い込んでいた。
「嘘……あの二人が一瞬で……何なのよ、レイ君知ってるなら!?」
「やめろカエデ、継承者ここは私が行きまっ――――「俺が……行くさ……コイツは、コイツだけは俺が倒さなきゃ、ダメだ……そうだろ!? ダークフレイ!!」
エレノアさんを制して俺は奴を睨みつける。四卿の旧代ダークフレイを……まさか生き返ってまで俺を追って来るなんて……俺は目の前のトラウマに一瞬だけ全てを忘れそうになったが横に出現したヴェインが俺の腕をグイっと引っ張って正気に戻してくれていた。
「アア、アイタカッタ……ケイショウ者、ああ、ふぅ、よしっ……やっと体が馴染んだ……やっと会えたなぁ!! 四卿ダークフレイ!! ここに復活だぁ!!
アハハハハハハハハハハハハハハハ!!」
体が馴染んだと奴は言った。つまり時間が経てばこの土塊の仮初の体を持った連中は強く意識が戻るわけだ……たぶん奴は魂の純度が高かったから戻りが早かったのだろう。
俺は歯を食いしばり眼前を見据える。俺は、一人でも戦えるのだろうか? 一抹の不安が過るが俺は、その弱さを振り切り改めて神の一振りを構えた。
誤字報告などあれば是非ともよろしくお願い致します。
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