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光を受け継ぎし者 ―追放された光は導かれ再起す―  作者: ネオ他津哉
第二章「彷徨う継承者」編
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第29話「堕ちる継承者の過去と迷いの始まり」

※土日と平日の投稿時間を変えてみました。ご意見などありましたら、お気軽にどうぞ。

 あれから俺は部屋に戻るとベッドを堂々と占領している従妹様おバカを見るが熟睡している。申し訳なさそうにしている流美を見て二人で寝てろと言って俺は隅のテーブルに着いた。


 そして先ほどスカイから受け取った『神の一振り』を包んだものを見る。チラチラと流美が見て来るが、この神の一振りの気配に気付いて無い時点で俺達術士との力の違いは明らかだ。それだけ確認すると俺は机の上で頬杖を付きながら目を閉じ過去を思い出していた。




 俺は二年前のあの日からアイリスを救うために世界各地を転戦していた。そして忘れもしない出来事が起きたのはそれから約一年後の事だった。


 神の血をダークウィンドーとの死闘で何とか手に入れた後、残り二つの素材の場所を必死に探索して既に一年が経っていた。


「この施設も外れか……皆、無事か?」


「はっ!! 継承者様!!」


「レイで良い、てかこの場合は係長で良いだろ……ま、皆の献身に感謝している。なんせ諸君は俺の初めての部下なんだからな?」


 焦ってはいたが光聖神の宣託により俺の地位が光位術士間では神と等しい立ち位置になっており、このように俺は部隊を任されるようになった。つまり初めての部下だ。


 年上の術士も居たが日本とは違い実力主義でもあった英国では俺のような実績だけでのし上がった人間は逆に若くしても尊敬はされど敬遠される事は無かった。


「レイ係長、現在はSA3ウォルター課長から特別の指示入ってません」


「そうかワリーから連絡無しか……じゃあここで解散だな、各自このまま休息に入ってくれ、明日は一日オフだから明後日のヒトマルサンマルにオフィスで」


 そう言って部下のジェイクに指示を出すが俺の部下の四人は動かなかった。彼らはSA2から臨時派遣された人員で今はSA3所属になっている。当時の俺はアイリス救出のための特務部隊の隊長をしていた。


「そして隊長は一人で任務続行でもするんですか? ダメっすよ?」


「そんな事はしない、ただ少し周囲をブラブラするだけだ」


「そりゃアイリス様ラブなの分かりますけどぉ、休まないとダメでしょ?」


 他の三人も同意見なようで俺はそのまま四人に無理やり連れて行かれて近くの飲み屋に連れ込まれる。まだ日は高いがそんな事はお構いなしに飲み会を始めようとしている四人とは一緒に働いて早くも半年以上だ。


 アイリスを失って一時は取り乱していた俺だが、この頃は少し落ち着いてきた俺を見たサラ義母さんとアレックス老が四人を部下にと付けてくれた。


「クロエ、やめろって……ジェイクもブラントも笑ってないで止めてくれ!!」


「ま、諦めて行きましょうや隊長。俺も少し飲みたい気分なんですよ?」


「おい!! どうせ俺の奢りだろ!?」


 俺より十歳上のブラントと俺と同い年のジェイクの男衆二人に両脇を固められて先導するのはメガネっ娘のクロエだ。ブラウンの髪を三つ編みにしている文学少女風なのに無駄に活動的で会った時はそのギャップに驚いた。


「当たり前じゃないですか~!! だって役付きで御曹司様ですからね~!!」


「諦めましょ? レイ隊長……一六○○か、少し早いですが、今日くらいは良いと思いますよ。ここ一ヵ月は内偵だけで皆ストレス凄かったですしね?」


 そう言って後ろから付いて来るのはもう一人の女性隊員のミラだ。彼女も俺より年上で二十代中頃のベテラン隊員だった。


 最初はクールなブロンド美女といった感じだったが二ヶ月もしたら案外付き合いやすい常識人なのが分かって俺にも気安く付き合ってくれた。少し年の離れた弟が居るらしく俺への扱いもそう言う感じだった。


「仕方ねぇな……行くか!!」


「「「「おお~!!」」」」


 こんな感じで俺は部下たちに囲まれてアイリスを失ったショックも少しづつだが持ち直していた。ちなみにその日の飲み代は全部俺持ちで経費で落とそうとしたらワリーとベラに思いっ切り怒られた。





 そしてその知らせは何の前触れも無く来た。二つ目の素材『秦代流銀』の生成と複製、そして保管をしていると言われている闇刻術士の組織の尻尾を掴んだと言う情報だ。


 どう言うわけか奴らも俺達と同じく万能薬の素材を探していて素材の研究をしていた光位術士が襲われた事も有った。なので今は奪われた素材や人員を追ってこちらが仕掛けようと動き、この半年は情報収集をしていた。


「隊長!! 別な施設が発見出来たようです!!」


「本当か!? 場所はどこだっ!?」


「ジェイクが言うには……その……」


 言い淀むクロエとミラを見て俺は残りのブラントを見るとベテランの彼は少し迷った後に俺に言った。


「隊長、場所は……エディンバラ……です」


「そうか、済まないな……皆に気を使わせた……だが、今の俺ならば問題は無い!! ジェイクは地下駅か? 行こう!!」


 俺は早口にまくしたてるとすぐに社の地下の駅で待っているジェイクと合流すると俺達はエディンバラへと向かった。戦力的状況から施設へは二手に別れて行動となるために、俺とクロエの組、ジェイク、ブラントそしてミラで別れて動いて行動となった。


「クロエ? 状況は?」


「あっちも問題無いそうです。じゃあ私が行きますね!! レイブレード!!」


 研究施設に突入すると四人の術士が居たが即座に二人を制圧する。そのまま俺も後ろからレイブレードを伸ばして残りの二人を気絶させる。


 四人の制圧が完了すると、俺達の突入して来た方とは反対の壁を突き破ってジェイクが突入して来た。


「あらら……もう終わったか?」


「さすが継承者様ですね?」


「ちょっと!! 私が二人は捕まえたんだけど~?」


「お前ら、気を緩めるな……まったく、隊長。裏は抑えましたが、二名と少なかった……ここははずれかと」


 ブラントが他の三人の態度を嗜めるが本来なら隊長である俺の役割だ。こう言うところはベテランの彼に世話になる事が多い。


 何だかんだでクロエの明るさにも救われるし、ジェイクの強引さやミラの冷静な着眼点でも救われる事があった。本当にいい部下達だ。それは今でもそう思う。


「分かった。ではそいつらを封じて……ん?」


「まだ奥が、これは……地下室が有りますね……どうします?」


「よし、じゃあクロエと俺で奥を調べる。三人は現場の確保を!!」


「「「了解!!」」」


 そして奥を調べるとそこに居たのは男女二人の子供だった。おそらくは十歳前後で恰好は黒いローブ……闇刻術士の服装の子供だった。二人は兄妹らしく両親はおらずここで研究の手伝いをしていたらしい。


 処遇は本社のワリーと相談し、本社へ連れて行くのは危険なので捕虜の大人の術士とは分けて二人を俺の部隊で保護する事になった。まずは隊で借り上げているホテルに二人を連れて行く事になった。





「ジェイク、それとクロエも、どうだった?」


「はぁ、それが……あの子達は術士では有りませんでした……先週まではストリートチルドレンだったみたい」


「そんで実験体だったみたいです……それと三日前までは子供は六人いたらしいぜ……本人らに自覚は無いのが救いだけど……」


 闇刻術士の実験、そもそも術士はかつて歴史の裏で錬金術師とも関りがあって実験にも術を行使し協力をしたりとしている内に錬金術自体を取り入れて独自に実験などをしていた。


 俺の今の実家のL&Rグループなんかはそれを発展させて世間にバレないように製薬会社として世間に馴染んだくらいなのだ。


「ま、我が社と違ってあいつらは人理に反してまで闇を求める集団だ……そのためには何でもするからな……」


「ええ、今はミラが見てますけど……どうします?」


「捕虜からは何か聞き出せてないんだよな?」


「はい。連行した先で尋問はしているはずなんで、その結果待ちですね」


 二人の話を聞いてもここは俺が判断するしかないようだ。ワリーに相談しても良いのだがこの程度なら俺の裁量で動ける。


 そこで俺はダミー用のアパート、以前に俺の生死を確認しに来た炎央院の家の者達を欺くのに確保していたものを利用した。


 そこに二人を匿い、事情が分かったらグループの保護下の孤児院へ送ろうと考えた。当時はこれがベストだと俺は思っていた。


「う~ん、少し警戒した方がいい気もするんだけどなぁ……」


「私は正直このままポイは可哀想だと思うから助けたいかな?」


 クロエとブラントは賛成してくれたがジェイクとミラは少しだけ渋い顔をしていた。下手に一緒にいたら幼い兄妹を巻き込んでしまうのでは無いかと懸念してだったが最後は納得してくれた。


 ブラントも安堵したように兄妹二人を見る。さすが二児の親だけは有るな。俺もいつかアイリスと……なんて考えてしまう。


「ま、俺は子供は好きですからね。うちにも子供が二人居ますから」


「そうか……だが、万が一は俺が責任は取るさ。メディカルチェックは終わってるんだよなミラ?」


「ええ、指定の聖霊病棟と普通の病院にも連れて行きましたが問題は何も有りませんでした。少し栄養失調気味だったので帰りにホットドッグとフィッシュアンドチップスを買ってあげたくらいですね?」


 それも経費で落としておくと言うとミラは善意なので構わないと言われた。その後も俺達は任務の傍らにその幼い兄妹の世話も見る事になっていた。


 本社にも今回の事件が終わるまでと釘を刺されたが、万が一の時は俺は二人の保護を申し出るつもりだった。十歳と八歳の二人を見捨てる事は俺には出来なかった。


「見捨てられるわけねえだろ……」


 俺は自室でアイリスの写真を見ながら呟いた。十五で家を追い出され失意の中で行き場を失った俺には他人事になんて思えなかった。しかも彼らは更に年下で、二人だとしても保護が必要な年齢だ。


 それに二人は実験の影響で記憶が無く名前だけしか分からないと言われた。ビリーとナンシー、そう呼ばれ実験に協力していたらしい。


 その後はエディンバラからロンドンに拠点を動かし転戦と内偵を続け、一ヵ月もしたら二人とも少しづつ回復し喋れるようになっていた。


「レイにーちゃん、おかえり~」


「ああ、帰ったよ……ナンシー……ってクロエも居たのか」


「ええ、おかえりなさい、ア・ナ・タ、なんちゃって~♪」


 まったく、おかえりなんてアイリスに言われて以降は言われてなかったのにな……自然と笑顔になってしまう。どうやら二人でファッション誌を見ていたらしい、クロエが毎月買っているもので二人で服やらアクセサリーやらを見ていたそうだ。


 ビリーの方はミラとジェイクと外に出ていて数分後には戻って来た。週に二回は二人の様子を見に部隊が集まるのが恒例になっていて、今日はブラントを除いて俺達は全員が非番だったのだが、そういう時に限って緊急出動がかかった。本社につめていたブラントが緊急招集を受け取り俺達は全員が出撃する事になった。





「状況は!?」


「隊長!! こちらですっ!!」


 潜伏先のビルの包囲は完了していて、そこに素材の一つの情報と拉致された研究院の術士が居ると言う話だ。


「確かな情報なのか?」


「SA3のワリー課長からの直接の情報ですので確実かと」


 ブラントが本社で受けた情報はワリーの部下からの情報で、尋問により引き出したものだと言う事だ。それを聞いて俺は即座に行動に移す。


「よしっ!! 行くぞ!! 今日は……」


「いつもの通りでいいと思うんすけど? 隊長は?」


「そうだな、じゃあ俺とクロエ、後はブラントが二人を頼む!! 行くぞ!!」


「「「「了解!!」」」」


 そしていつもの通り二つに班を分けると正面と裏口からそれぞれ突入する。しかし抵抗らしい抵抗は少しも無く、すぐにビルの内部で合流する事になる。


「捕虜は?」


「居なさそう……ですね……」


「ああ、無駄足なのか?」


 俺達が諦めかけた時に闇刻聖霊の気配を感じた俺は即座に反応する。それは屋上からだった。


「屋上に何か居る!?」


 そして俺達はすぐに屋上に到達するとそこには闇刻聖霊と、さっきまで全く気配を感じなかった闇刻術士が居た。


「いつの間に……全員で行くぞ!!」


「はいっ!!」


 すぐにクロエが答え、ジェイクとミラもレイランスとレイブレードを展開して闇刻術士に挑みかかる。そして俺もレイブレードを展開して奴の連れている闇刻聖霊を見る。


 あまりにも異質で、いつぞやの聖霊爆弾に似た化け物だった。それが二柱、凶悪な聖霊だ。それには俺とブラントが対応する。


「爆発の可能性も有る!! ブラント!!」


「分かっています!!」


 それは黒い靄に包まれていて人間の子供くらいの大きさの球体に両手両足が生えている化け物だった。闇刻聖霊は黒いだけの聖霊なのだが、目の前の聖霊は過去にダークフレイが用意した球体に目玉の付いていた聖霊爆弾を、より悍ましい姿にしたような存在だった。


 しかし結局はその聖霊は俺のレイブレードで簡単に浄化出来たし、闇刻術士はその場で三人に浄化された。ブラントは一瞬ためらった時に奴らの闇刻の靄を浴びたようだが、ミラのフォトンシャワーで回復している。


「少し厄介でしたね。今回の術士、変な靄の術、一応はフォトンシャワーで回復はしたけど……目くらましとは……」


「闇刻術士にしてはタクティカルだったよな……ま、三対一で戦ったからかもしれないけどよ」


 そう言ってミラとジェイクを見るが二人とも少し隊服が汚れていたが別段問題は無さそうだった。それを確認すると俺はフッと息をついて問題が無いのを確認してこの後の事を考える。少し気になる事も有るから本社に戻りたいと考えていた。


「任務完了か……よし、帰還する。社への報告は俺がしておくから、誰かあの二人の面倒見といてくれ。報告書だけで今日は俺は行けそうにないからな?」


「了解です。んじゃ俺が行きますよ」


「では私も、ジェイク一人では心配なので」


 ジェイクとミラが行ってくれるようで安心していたらクロエが二人を見てニヤニヤし出す。ムードメーカーなのは助かるが任務が終わってすぐに油断のし過ぎだ。


「そんな事言って二人で居たいだけじゃないの~?」


「程々にしておけクロエ、では隊長、面倒なので四人で行きますよ。俺もあの二人の顔も見たいので」


 結局は四人で向かう事にしたようだ。しかし今回も空振りか……レイウイングは英国内では戦闘時以外は使えないので少しだけ歩く事にする。そして俺は一週間振りの本社に報告に来た。最近はブラントかミラに任せていたので久しぶりだった。





「お疲れさん。ワリー……今日のとこもガセっだった……ってどうした?」


「レイ!! お前、一週間も潜入ミッションなんて聞いてないぞ!! 報告はしっかり上げろ、心配したじゃないか!!」


「は? 報告なら副長のブラント、あとは補佐のミラが毎日してるだろう?」


 ワリーが珍しく大声で怒鳴る。それだけ余裕が無いのだろうか?それに補佐で副長のベラと他の分室所属のジョッシュとフローまで驚いたように俺を見ていた。


「そんなもの貰ってないぞ!! 全く、こちらは新種の聖霊爆弾の対処で手一杯なのに勘弁してくれ」


「なんだ? その情報、俺はそんな事……」


「レイ、少したるんでるのでは? お嬢様の事で焦るのはよくないですが、ここ最近のあなたは少し……」


 ベラも少し俺を非難するような顔をする。情報共有が出来て無いのは致命的だがそもそも俺は情報を貰っていない。だが、そこで畳みかけるようにフローまで俺の想像だにしない事を言い出した。


「そうよ、そもそもPLDS経由で聖霊爆弾の情報は……レイ、あなた、PLDSを外してるじゃない!?」


「いや、フロー、俺は光聖神の加護付きだから情報共有は神、つまり聖霊通信経由だけだって報告――――「え? だって、あなた一週間前にPLDSで情報共有するって報告書出してるじゃない……」


「そんな事……俺は出してないぞ!? 誰がっ!?」


「えっと、報告者はブラント=アイビン……ってなってるけど?」


「なんでブラントが? そもそも一週間前はあいつは家族と久しぶりに遊ぶって家に戻っているはずだ!?」


 そうだ。その時の定時報告はミラだったはず……。あれ?でも俺は子供達二人の相手をして報告を受けた覚えが……ない?どうしてだ?


「レイ、お前……何を言ってる? ブラントの家族は……四年前のロンドン橋の襲撃、例のお前が新代のロードを倒した時に彼の妻と子供二人が……犠牲になってる」


「え? だってブラントは家で子供がって……」


 何を言ってるんだ?ブラントの家族は……あれ?そう言えば他の隊のメンバーは家族に会ったけど、ブラントの家族だけは会った事が無い。


「おいおい、レイ!! マズイぞ。今そいつはどこだ!?」


「今は、あの保護した子達と、他のメンバーと一緒に」


「あの子達か、急ぐぞ……嫌な予感がする!!」


 すぐにジョッシュが動き出すと俺もそれに続くようにオフィスを出る。後ろではフローとワリーの会話が聞こえた。


「私も行きます!! いいわね? ワリー!?」


「ああ、頼む、ベラも付いて行ってくれ。ここは俺がやっておく」


 そして俺達四人はすぐに隊の詰め所のように使っていたダミー部屋へ向かった。だがそこで待っていたのは地獄だった。





「何よこれっ!? こんなに闇刻術士と聖霊がっ!?」


「中心はどう見てもあの部屋だ!! 行くぞ!!」


「あ、ああ……」


「レイ!! しっかりなさい!! あなたの部下が待っているんですよ!! 今のような腑抜けた態度、アイリスお嬢様が許すとでも!?」


「っ!? そうだった。すまないベラ……行こう!!」


 アパートの周りには二〇人以上の闇刻術士、だが俺はそれに脇目も振らずに部屋を目指す。三人が外を足止めしている間に俺は何とか部屋に到達した。そこで待っていたのは数名の闇刻術士と血塗れになって床に倒れている部下達だった。


「み、んな……っ!?」


「避けないで下さい。光の継承者レイ=ユウクレイドル……」


 斬撃が来るのを確認するまでも無く避けると俺は眼前の闇を睨みつける。黒いローブを羽織りながらも光の刃レイブレードを展開する目の前の敵となった男を俺は驚愕の顔で見ていた。


「ブラント……お前、その姿……」


「ああ、これで俺は良いんですよ……これが本当の姿だった。妻と子達に会うためにね……だって子供達は帰って来たのだから」


 そう言うと後ろにビリーとナンシーを庇うように立っている姿は狂気じみていた。完全に錯乱している。恐らくは闇刻術士に心が弱った所を狙われたんだ。


「ブラント、その二人はお前の子供じゃ……」


「いいやっ!! 闇刻術でこの子達は蘇った。そう……蘇った私の子達なんだっ!! レイ隊長……」


「なっ、何を……言って……」


「あなたなら分かるでしょう? 光の巫女をどんな手を使ってでも救い出そうとするあなたなら……だから俺の家族のために死んでくれ……光の継承者!!」


 俺は……どうすれば良いんだ……いや、決まっている。誰が何と言おうと関係ない……俺は『神の一振り』を鞘から抜いて眼前の敵となった部下に向けて構えた。

誤字報告などあれば是非ともよろしくお願い致します。


ブクマ・評価なども有ればお待ちしています。

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