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光を受け継ぎし者 ―追放された光は導かれ再起す―  作者: ネオ他津哉
第二章「彷徨う継承者」編
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第28話「葛藤、二つの過去と苦悩する継承者」



 目の前で黒髪の少女が泣いている。俺の恰好は……昔日本で着ていた私服、それがピッタリな時点で俺は気付いた。なるほど……これは過去の夢か。視点は低いし今ほど背も無いから恐らくは小学生くらいだと思う。


「また泣いてるのか?」


「泣いてない、ですっ!!」


 相手は小さい自分よりも更に幼い……年下の子なのだろう。顔がぼやけている事から俺の記憶が無いのだと思う。場所も見覚えが有って、おそらくは俺がサボりによく使っていた近所の公園だ。


 ここで俺は清一や氷奈美ちゃん、そしてこの少女の四人で遊んでいた。そして、この子は確か一番最初に友達になった子だったはずだ。


「今日はどうした?」


「お婆ちゃんに怒られたから逃げて来たの……」


「なるほど、俺も家から逃げて来たんだ」


 いくらやっても術が使えず、鍛錬と称した公的なイジメの毎日。反対に学校生活では文武両道で小、中学校では人気が有ったほどだ。その家と学校の落差で祐介や他の同期の人間は余計に俺を憎んでいた。


 なんせ俺は術さえ使わなければ優等生。当たり前だが一般人の前では術は使えず、暴走する恐れが有るので15歳までは外に出る際は封印が施されるのが俺を含めた一門全ての子供たちの決まりだった。


 つまり術のサポート無しで奴らの常識が通じない学校で俺をイジメたり文句を言おうものなら逆にドン引きされ、爪弾き者扱いにされるので奴らはそのフラストレーションを家での鍛錬にぶつけていた。


「えんおーいん君も、また逃げて来たの~?」


「うっせ……今日は清一も、ひなちゃんも来れないからまた二人だな。何する?」


 そうだった、この子とそして水森家の二人と遊んでいられた時だけが俺の数少ない癒しだった。二人に再会するまで幼少期の大事な思い出すら俺は忘れていた。


 ちなみに学校では術師の関係者は勇牙と炎乃華以外は誰一人として声はかけて来ない徹底ぶりで逆に安心していた。


「う~ん、お勉強したい!!」


「相変わらず真面目だな。まだ学校には行けないのか?」


「うん。お婆ちゃんもお爺ちゃんもダメって……」


 顔すら思い出せないこの子だが境遇は覚えている。何か持病と言うか大病を患っていて普段は家でジッとしているかベッドで寝ているらしい。


 たまに外に出ていいらしいが、その時も原則は同居している祖父母と一緒なはずだが、週に二日くらい祖父母のガードが甘くなるそうで隙を突いて出て来ているらしい。


 家でも勉強をしていて家庭教師も週に1回は来るらしいがイマイチ合わないと言う話だ。


「分かった。教科書は? 持って来たかエライな。じゃあ算数の教科書出して」


「えっ? 社会とか国語とか……」


「苦手なものを伸ばさないとダメだからな? 今日は算数と理科だ」


 人にこんな事を言っておいて俺は術の訓練から逃げて剣の扱いばかりを練習していたから目の前の少し生意気だった少女を使ってストレス発散をしていた。


 今思えば気になる女の子に意地悪すると言うアレに近い。しかし最終的には彼女の身になったのだから問題は無いだろう。


「うっ、分かったよ。頑張る!!」


「よしっ!! じゃあ前々回の続きか……62ページからだな?」


 そんな言い訳染みた感想を夢に持ちながら、このまま続くと思いきや今度はアイリスにスペルの添削をしてもらっている場面に切り替わっていた。


 今度は逆に生徒になっている感じで、やはり夢は関連性の有るものを選んで見せているのだろう。どこまでも懐かしく温かい思い出だ。


「レイ? またここスペル間違えてるよ~? 良いのかな~? 高校生に書類のミス直されちゃって~?」


「うっ……敵わないな。でも三ヵ所かだいぶ減ったな……ヴェイン達に見てもらってるから大丈夫だと思ってたのにな」


「そもそも聖霊たちに丸投げなんてダメだよ? ね? これから私と一緒に勉強しない? だって全部ここは英語だから一緒に教科書見るだけでも勉強になるよ?」


「ああ、ぜひ頼むよ。じゃあ今日からよろしくな? 先生?」


「うんっ!! ()()()私が先生だよっ!!」


 なんて……なんて、懐かしく輝いていた日々だったんだ。俺はあの地で大事な物を一度は手に入れたのに……少しだけ心が温かくなったと同時に視界が白くなる。


 そうか、目が覚めるのかと思った瞬間に俺は辛い現実へと戻る。幼い日の思い出も、懐かしい最愛の人との一コマも現実には待ってはいないと思いながら。





 目を覚ますとホテルのベッドの上、視線を動かすとレオールが炎乃華を見張っていてヴェインが俺に膝枕をしていた。


「はぁ、いやさ……指示は守れよ……」


『…………っ!!』


 何か言ってるようだが相変わらず分からない。光聖神同様に喋れるのかと思えば聖霊帝はそこまで万能では無いらしい。


 取り合えず二人に戻るように指示を出すと不可視になり消えた。それに気付いて部屋の隅のテーブルに座って話していた二人がこちらを向いた。


「起きましたか? レイ……さん」


「ああ、すまない待たせたようだな」


「いいえ、何か飲まれますか?」


「そのような――――「話し合いの最中に喉の通りが悪いのは問題では?」


「ちっ――――分かった。頼む」


 本当に小賢しいが同時に心地よくも感じてしまう。打てば響くと言うか英国に居た頃にはこの感覚は無かった。言わなくても動いて察して、しかもこちらを悪い気分にさせず勝手に動かす。


 向こうでは自分で常に先へ先へと動いて成果を出していた。やはり俺は日本人なのだな……。そしてそんな郷愁をすぐに忘れようと俺は、より詳しい状況を二人に聞く事にする。


「なるほど、あの封印牢か、懐かしい……故に厄介か」


「そうでしょうね、レイ様には懐かしい場所でしょうから」


 なんせ過去に封印牢には何度も入れられたからだ。封印牢は実は聖霊力に反応して牢屋のセキュリティが上がる術がかけられていて、あの家なら炎央院刃砕か今入れられている俺の叔父の衛刃殿の二人の場合がセキュリティが最大限になるはずだ。


 つまり強い人間ほどロックが強くなる。逆に言えば俺は嫌がらせで最下級の強さしか発揮でない牢に入れられ、そこからコッソリ脱出したりを繰り返していた。


「え? そうなんですか? 黎牙兄さん?」


「まあな。それとミス炎乃華? 俺の名はレイだ。今度その名で呼んだら衛刃殿の救出も含めて考え直す事になる」


「え、でも私にとって――――「俺は、お前も含めて炎央院の家とは一切合切、完全に手を切りたい。可能なら二度と会いたく無かったのを衛刃殿と水森家のために仕方なく顔を突き合わせている。その事を理解しろ」


 おそらく目の前の従妹には悪気は無いのだろう、だが心の傷やトラウマと言うものは受けた側は永遠に忘れない。傷つけた側はアッサリ忘れてもな……世間では俺のような人間は女々しいと思ったり過去に拘っている情けない人間なんて思うかもしれない。


 だけど人の気持ちに、その思いは一生他人には分からないし理解されない。だから俺はトラウマとは関わり合いにはなりたくないと言う結論に達した。またしても俺の思考をいち早く読んだ流美が炎乃華の説得に入っていた。


「炎乃華様、現状ではレイ様、あ、レイさんの言う通りです。私達だけでは衛刃様の解放及び救出は不可能なのですから。どうかここは」


「でも……私はっ!?」


「こちらが協力する上で条件は二つ、俺の、違うな炎央院黎牙と呼ばれていた人間の炎央院家への帰参の永遠の取り消し及び、今回の件で水森家への攻撃行動の禁止だ」


 これ以上、炎乃華に付き合っている暇は無いのだから俺はさっさとこちらの要求を伝える。この手の交渉の時に後でグダグダ言われる前に先に決めておいた方が良い。


「やっぱり、もう黎牙兄さんは戻って来てくれないんですか? どうしても?」


「逆にどうして俺が戻るとでも思った? 俺は英国で上手くやって来た。仲間も戦う力も得た。ならば後は向こうで骨を埋めて生きて行く。それだけだ、道はもう八年も前に分かたれた。違うか?」


 半分呆れて言うが残念ながら炎乃華の側からしたら根柢の価値観が違う。異文化コミュニケーションとは難しいものだ。


 問題はその問題点を俺が分かっていて少なからずこの従妹に同情してしまうところだ。最後の一線で俺が二人を切れない甘さこそが、正にそれだ。家族、血の繋がり、縁、本当に厄介なものだ。


「うぅ……でも、このままじゃ……」


「追放した人間に頼らなければ滅ぶほど弱い家なのか? お前の生家は? それよりも問題は衛刃殿の救出だ。炎央結界は健在なのだろう?」


 話題を変えるように流美の方に話を振るとすぐに察して状況の説明を続ける。炎央結界はやはり相当弱っているらしいが、それでも今なお東京を、何より炎央院そのものを強力に守護しているらしい。


 その後に少しだけ考える時間が欲しいと俺は休憩を取り頭の中を整理した。いつの間にかヴェインが出て来て今日は紅茶を淹れていて流美が少しムッとしていたのがおかしかったが表情には出さない。そして頭の中の整理が終わった。


「ふむ、なるほどな現状では厳しいな。せめて暁の牙が無事だったのなら方法はあったのだが」


「あの、黎牙兄さん……じゃなくてレイ、さん……の術で、黎牙兄さんの、じゃなくて、レイさんの聖具――――「ああっ!! もう仕方ねえなぁ!! 炎乃華!! あと流美も、話が進まないから公的な場以外では好きに呼べ!!」


 これは仕方ない事だ、そう、あくまで話の効率化を図るためであってそれ以上でもそれ以下でも無い。炎乃華は安心したのかホッとしているし流美なんかコイツ澄まし顔だが笑いを堪えてる。


 だから嫌なんだよ俺は……キチンと訣別すべきなのに中途半端だ。こんなんじゃ誰も何も守れないのに。この甘さが……俺が一年前に神の一振りを失う原因になったのに……何をしているんだ俺は。


「じゃ、じゃあ黎牙兄さん? いいですかっ!?」


「何だ? 俺の聖具はお前との激突で真っ二つだ。今は使えない」


「じゃあ、祐介を倒したりした光の刃の術は無理なんですか? あの切れ味と術の緻密さを見れば不可能じゃないと思うんですけど……」


「レイブレードなんて使ったら炎央結界ごと壊す事になるが良いのか? そもそもお前ら祐介がどうなったか知ってるだろ? どんな副作用出るか分からんぞ?」


 そうなのだ俺が懸念しているのは光位術の人体への影響だ。そもそもが闇刻術士特化の術で有り、歴史上でも奴ら以外には基本的に使ってこなかった。もしくは使ったとしても記録などは残っていないのが現状だ。


 フォトンシャワーなどの回復術は例外で光位術は闇の勢力や妖魔・悪鬼の自然災害にしか使わない。ゆえに俺達光位術士は聖具または神器に聖霊力を付与して光位術を介さないで戦う術を学ぶのだから。


「それなのですが黎牙様、良いでしょうか? 私の兄の祐介なのですが……術のコントロールが出来なくなり『災厄』認定を受けました」


「はっ!? そんな事が……しかし、レイブレードにそんな効果は無いはず……あれは闇を浄化し切り裂く術だ。腕が消失したのは浄化の効力なのだろうが、術の行使不能だと……有り得ないぞ」


「でも、聖霊病棟の診断でした。それを姉さんが高らかに宣言した後にそのぉ……」


 話しにくい内容なのは分かるがコイツが言い淀むと言う事は相当だ。炎乃華は元来は素直な少女だった故にコイツが話すのを渋るのならば、あまりにも理解出来ない事が起きたと見て間違いない。


「何があったんだ? 正直に話せ炎乃華、今は情報が欲しい」


「え~っと……それが姉さんが、ですね……許嫁の黎牙兄さんが素晴らしいと太鼓判を押して家に戻そうって……話に……そのぉ……なりまして」


「あぁ……ま、予想は着いたが、まさか内縁とは言え自分の夫を切ったか……」


「あのお方らしい素敵なプレゼンでしたよ?」


 澄ました顔して言葉に悪意がにじみ出ているな、だが流美のこう言うところは助かる。いかにそのプレゼンで家が大混乱したのかはよく伝わった。そしてその後の流れもおおよその見当がついた。


「そして当主《脳筋バカ》はコロッと騙され、諫めようとした叔父さんを排斥したと、そんなところか?」


「ご慧眼恐れ入ります。ほぼそのような状況でございました」


「俺があの女の立場で野心持ちなら同じ事をするだけだ。利用しやすい脳筋バカ(当主)を利用してのし上がる。正にあの女が描く完璧なやり方だ」


 そう、完璧だ。あの人は自分自身が弱いのをよく知っている。だから他者を利用して徹底的に強くなろうとした。いらなくなれば捨てるという極めて単純な思考で動くだけ、それがあの女だ。現に俺は捨てられたのだから。


「それで炎乃華、お前は混乱した所を勇牙ともども説得されたってところか? そんで流美は最悪の事態に備えて衛刃叔父さんから指示を貰って俺との接触を図ろうと動いてたと……どうだ?」


「そ、その通りです……だって、姉さんがお父様の食事に毒を入れるって言うから……勇牙も諦めようって」


「あぁ……そりゃ百パー脅しだな。俺に対する切り札をあの人が殺すわけが無い。流美、お前が付いていながらどうしてここまで好きにさせた?」


「面目次第もございません。私は件の集会後にすぐに姿を消し衛刃様への周囲の警戒が低くなるまで隠れ、隙をついて衛刃様からの書状をお預かりしておりました。それを届ける事が最優先でしたので」


 よし、これで状況は分かった。流美は、まあ良いだろう衛刃叔父さんの指示に従った上で俺への接触を図るのは間違いじゃないし今の家の状況では外部に助けを求めるのが当然だ。


 しかし、目の前の俺の後釜で、すっかりメッキの剥がれたポンコツ(炎乃華)をどうするかだ。相変わらずの脳筋だったが昔に比べてメンタルが明らかに弱くなっているのが気になるが問題は今はそこじゃない。


「はぁ、なら明日の朝には殴り込みだ……」


「「はぁっ!?」」


「さっさと叔父さんを解放した方が良いだろ?」


「そりゃ黎牙兄さんは凄い強くなったけど、本家には200を超える術師とあの付近には門下や分家の家も有るんだよっ!? それに炎央結界は弱っても、家の結界は今は勇牙が構築してるから過去かつてないほど固くなってるよっ!!」


 そうか勇牙の奴が結界を、あいつも強くなったんだな。今思えばあいつだけは最後まで俺の追放に反対してくれたんだったな。俺は劣等感からあいつを苦手としていたからな会えたら話してみるのもいいかもしれない。


「へえ、まさか俺が出来ないとでも?」


「失礼ながら炎乃華様の懸念は当然かと……。私も黎牙様の今の力の一端を拝見致しました。ですが、それでも炎央院の200年に渡る最高傑作の結界を突破するのはいささか無理が有ると思います。これは術師としての力では無く龍脈からの補助を得ているあの本家の土地柄からの考察です」


 素晴らしい模範解答で、そして完璧な答えでもある……ただそれが術師同士ならと言う条件が付いて初めて正解となる。これは仕方ない事で二人は未だに俺を強い術が使える程度にしか理解出来ていない。


 視点が違うのだ。俺の事はおそらく優秀になった術師であって完全上位の術士であると分かって無いのだからこの考え方は決して間違いではない。


「ふむ、素晴らしい解答だな。だが、それでも可能だ……炎乃華、お前の火影丸を貸してもらうぞ」


「えっ!? で、でも兄さんには前貸しても鞘から抜けなくて反応すらしなくて……そのぉ……また」


 どうやら先ほどの戦闘の際の嫌味で完全に思い出して遠慮しているようだ。これくらいの方が大人しくて可愛げもあるのだが今は良いだろう。


「問題無い。貸してくれ」


「はい。どうぞ……」


「ふぅ、光聖神の代行、光の継承者が問う。我が願いに答えよ神器『火影丸』、汝の仮初の主たる我を受け入れよ」


――――カチャッ。


「えっ!? な、なんで火影丸が……神器は継承の儀が終わった後は絶対に主を変えないはずじゃ!?」


「ああ、だが何事にも例外や裏技が有るものだ。少し講義をしよう……神器とは何か分かるか?」


 これはアレックス老やアイリスに教えてもらい英国で知った情報だ。神器とは何か?その名の通り神から与えられた祭具・宝具の事だと答えよう。


 そして二人も答えると俺は更に話を続けていく、つまり神の持ち物ならば現在貸し与えられている人間よりも本来の持ち主の方が権限は上であると言う話だ。


「っ!? まさか……そんな……」


 流美は気付いたようで、俺の戦闘や先ほど受けそうになったレイブレードに今の話で俺の状態と言うか正体を自分なりに理解したみたいだ。本当に優秀で助かるな。


「黎牙兄さん。それじゃまるで神様になったみたいじゃないですか~!!」


「少し外れているが、ま、ほぼ正解だ。光の継承者兼現在は光聖神の力の一端を拝借しているからな、一部限定的では有るが神の力を行使出来る」


 あの日与えられた権能は今も当然に使える……ただ一つを除いて、それは神器の使用だ。俺は一年前のあの日に、自ら神器『神の一振り』を封印したのだから。


「えっ……本当……なんですか?」


「ここで嘘言ってもしょうがないだろ?」


 表情が固まった炎乃華に火影丸を見せると自分が解禁した時よりも反応が強くなっていると気付いてしょんぼりしている。少し胸のつかえが取れて皮肉の一つでも言いたくなった自分に驚いた。案外、俺も昔の事に拘っていたようだ。


「ま、権限的には俺の方が上だから仕方ない」


「私の相棒取られた……」


 俺が握りを確認していると横からジト目で炎乃華が恨みがましく見て来る。ま、本人からしたら10歳の頃からの相棒をアッサリ俺に取られたんだから仕方ないかもしれない。俺も同じ状況になったらこうなるだろう。


「結界を中和するのに使うだけだ。それが終わったらすぐに返してやる。それにこの神器じゃ弱過ぎる。二、三振りしたら折れるかもな」


「ええっ!! 今まで折れた事無いんだから……折らないでよっ!?」


「ま、少し力を込めたら俺の聖具の二の舞になるからな……さすがに神器壊したら面倒だから気を付けてやる」


 そんな事を話しながら俺は二人に詳しい作戦を話していく。そして俺はそのまま二人を残して部屋を出る。ある気配を察したからだ。散々話して今は夜の20時過ぎ、俺はホテルのフロントを抜けて外に出た。


「来たか……よくやってくれたな? スカイ?」


 羽ばたきの音と猛禽の鳴き声をさせ俺の前に降り立つ。普段は俺の肩か腕に留まるのに変だと思ったら何かを右の足に掴んでいる。細長いそれを俺は手に取らずとも分かっていた。


「なん……で、これを?」


 よく見るとその細長い包みには手紙が添えられていた。字を見るとだいぶ乱雑だったのでおそらくはヴィクター義父さんだろう。そこには色々と書いてあったが最後の一言だけが俺の心に突き刺さった。


『今のお前なら再びこれを使えると信じている。我が息子よ』


「ああ、状況的には最高だよ……だけど、俺に使えるのか……?」


 そう、この細長い包みの中身は俺の最強の装備にして七年前に神が直接俺に渡した原初の神器……『神の一振り』だった。

誤字報告などあれば是非ともよろしくお願い致します。


ブクマ・評価なども有ればお待ちしています。

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