第21話「水の試練、現在と過去と幼き日の思い出と」
◇
あれから俺と当主令一氏の会談は大枠で合意し終わった、そして今度は会食だ。今は用意された客間で会食での服装をどうしようか悩んでいたが正装で出る事にした。
光位術士としての正装は隊服だ。アイリスのローブは外していく万が一にも汚したら大変だからだ。清花さんとの別れ際の話では懐石料理の形式に近い和食料理が出されると聞いた。
「ふぅ……ヴェインお前また勝手に出て……あ、緑茶か。ありがとう」
『……』
昨日は盛大に問題を起こしてくれたヴェインが何事も無かったような澄まし顔でお茶を淹れてくれた。澄まし顔と言っても顔は隠れて見えないのは相変わらずだ。
しかしコイツに盛大にぶった斬られた祐介はどうなったのだろうか。闇刻術士以外で光位術を対人で、ぶつけた事は無かったのでああなるとは知らなかった。
「いくら自衛のためとはいえやり過ぎた。一応その辺りも清花さんが令一氏に言ってくれてるだろうが……なるべく水森家にはもちろん、あの家にだけは貸しを作りたく無い……」
いつの間にか、お茶の用意だけしてヴェインは消えていた。それを飲んで少し落ち着いて一息付いた時にタイミング良く襖の向こうから声がかけられる。会食の用意が出来たとの事、俺は返事をして案内人の後に付いて行った。
「失礼します。お待たせしました」
「っ!? い、いや失礼、席に着かれよ……お客人」
「黎牙さ、じゃなくてレイさん……その格好は!?」
この白を基調とした隊服は、やはり目立つ、基本色は光位術士のイメージカラーの白だが一部黒と金のラインが入っている。かなり目立つから普段はこの上に目立たないように上着を着ている。そのせいで夏は暑いし蒸れるのが欠点だ。
「凄い……黎牙さっ、じゃなくてレイさんのそれは対魔布、いやそれ以上の材質ですね。あと動きやすいように設計されてますね……凄い、海外はそれが基本装備なんですね!!」
「オホン!! 清一よ落ち着かないか、みっともない。レイは客人だ次期当主として……」
「お父様大丈夫ですよ~♪ レイさんなら黙っててくれますし――――「そう言う問題では無いわ!! まったく躾の面は本当に、あいつが居たら……」
水森家は俺が炎央院の家から追放される数年前に奥方が亡くなった。当時は母親が亡くなった事で荒れていた清一を剣のみで制圧し事情を聞いた俺がついでに次期当主つまり嫡子としての心得を俺が教えていた。
『お前は立派な嫡子になれる資質が有る、ならば父上を安心させてやれ、それが出来るんだから』
出会いは偶然で俺は当時、聖霊力も無かったから剣だけが強い男と勘違いされていて清一にはそれ以来、剣の師の扱いだ。そしてそれは俺が無能と差別されている事がバレた後からも変わる事は無かった。
『だって、黎牙さんより剣の強い人なんて居ないじゃないですか!!』
当時から剣術バカで令一氏にも俺との付き合いを止めるように言われても全く聞かず、さらに興味を持って後を付いて来たのが妹のひなちゃん、氷奈美だった。
『二人とも凄い、それに黎牙さんか、術も使えないのに凄いね――ちゃん』
『――――だよ。えんお~いん君は――――だから』
なお清花さんはその時は家に置いていかれて、お世話係の人に面倒を見てもらっていたらしい。炎央院の支配圏、つまり関東に訪れていたのは三ヶ月に一回くらいで、その時には必ず《《四人で》》稽古の真似事や遊んだりと色々していた。
「そう言えば清花で無ければ、あの女の子は……誰だったのでしょうか?」
「あぁ、そう言えば居たな。氷奈美と同い年くらいの子だったよな」
「居たか? 俺はあまり覚えて無いな。あの時は清一に負けないように裏では必死だったからな」
その後も過去の話や俺の今の話をしながら光位術について少しだけ話しをする。これには水森家の人間以外のその場の術師の使用人たちも驚きと疑惑の目を向けていた。だから俺は実際に実力を見てみませんかと提案していた。
「そ、それは黎牙さ、レイさんと本気の戦いが遂に出来るって事ですか!?」
「えぇ~、兄さま止めておいた方が良いよ……いやほんとに瞬殺だよ」
男性陣が互いに語り合う中で清花は冷静だった。俺と炎央院家の交戦を見ていたのだから術士と術師の力の差が分かっているからだろう。対して男性陣は二人供が水聖師としては最高位の二人だ。
「確かにレイが言う光位術、それほどのものなら是非、私も見せてもらいたい」
清一は喜んでいるだけだろうが令一氏は完全に舐めてかかっている……ように見える。だから俺は色んな意味で分からせてやろうと少しイタズラっぽく考えてしまう。
「あの、レイ、さん。兄さまは手加減を知らないので、その、なるべく」
「分かってるよ、ひなちゃん。だけど俺にも少しだけカッコつけさせてよ。無能がどれだけ強くなったか見てもらいたいんだ」
「レイさん……はい。私もレイさんのカッコいいところ……見たいです」
そんな氷奈美の笑顔に癒されながら会食は進んで行った。俺も今日は逗留し明日、腕試しと言う事になった。そしてその夜更けに俺はまた令一氏の書斎に呼ばれていた。
どうやら家の誰にも知られたくない極秘の会談のようだ。親族の人間ではなく側近の術師が呼びに来たからだ。
◇
「どうされたのですか?」
「ああ、夜分遅くすまんなレイ。君から見て清一はどうだ、あれから成長したか?」
「あれから、と言うのが俺の追放前なら少しだけ落ち着いたようにも見えます」
俺は再会した弟子の現状について正直な感想を述べた。何度もしつこいが俺は光聖神に封じられていなかった能力としては剣術の才能、そして術への感知能力、最後に視る事だ。
つまり相手の聖霊力が有る程度分かる。そもそも聖霊力が無かった頃の俺は周りの人間の全てが格上状態だったので変化には敏感だった。
「ふむ、やはりまだ至らぬか」
「闘気は上がっていると思いますよ。それに聖霊力も」
「しかしレイ、君の聖霊力には気付いておらん様子だ。その圧を感じれば少なくとも会食の時にあそこまで脳天気な事は言えんだろう」
そう言ってため息を付く令一氏は先ほどの清花に見せた親バカっぷりとは違う次期嫡子を思う親の姿が見えた。この人は外の人間には厳しいが身内には甘い人間のようで本当に羨ましい。
少なくともこの家に世話になっていれば今のような俺は出来上がっていなかったのかも知れないと思ってしまう。
「だから先ほどは乗ったようなフリを?」
「ああ、私は勝てぬ可能性の有る戦いも状況次第で仕方なくする。だが負けると決まっている戦いは絶対に避ける。そしてそれは君との戦いもだ」
「大変無礼とは存じますが、その程度のお話なのですか?」
まさか世間話や旧交を暖めたい、もしくは縁を持ちたいなどと言う類の話を今更する間柄では無い。それに俺は既婚である事を伝えているから、ひなちゃんの件を蒸し返すような御仁では無いのは分かっている。だから暗に本題をぼかしている事を指摘した。
「うむ。済まない年を取ると話が多くなってな。実は先ほど水聖結界が微弱な拒絶反応を起こした。最初は君の存在かと思ったのだが、どうも違う。それと呼応するかのように炎央院との連絡が途絶えた。間者からの連絡も含めてな……」
「それを俺に話して良いのですか腐っても元は炎央院ですよ?」
「清花を守ってくれた時点で信用はしている。それに私は炎央院衛刃と刃砕と言う人間をよく知っているからな」
そして話を聞くと炎央院の家でかなり大きな動きがあった事、その動きの後に炎央結界の過負荷が増えたと同時に連絡が不通になった事、最後に間者と情報提供者の双方と連絡が取れない事などだ。
「間者や情報提供者の名前は?」
「それは言えん……ただ情報提供者の方は君なら分かってるんじゃないか?」
「……やはり叔父さんなんですか?」
そう言うとコクリと頷き、独り言だと言って令一氏は語り出す。俺の追放後に水森家と涼風家そして衛刃叔父さんは密かに同盟を組んだ。
その同盟の目的は三つ、一つは米国が先代の土の宗家を潰し乗っ取った岩壁家への対応、そして炎央院の家の急進派への対応、最後に外国への術師への対応であった。
「待って下さい。それって……」
「ああ、衛刃に聞いた。君の案だそうだな?」
「正確には長老たちや祖父達から言われて、あの男、炎央院刃砕は余りにも力のみで協調性が無いと、おかげで家中は常に戦争みたいで落ち着かないと」
それは俺が独自に動いて叔父さんに色々と話していたものだ。令一氏はこの同盟がバレたのではないかと疑っているようだ。しかしそれは無いと断言出来た。
「それは有り得ないかと、この案を知っているのは俺と叔父さん以外居ませんから、後は、その《《間者》》でしょうね」
「なるほど。なら別の何かがあったと?」
「むしろ原因は予想が付いてます。十中八九、俺でしょうね」
そう言うと俺はため息を付く。俺が日本に来て俺がやったことは闇刻術士関連を除けば涼風家の直系と思しき人間を倒し、岩壁家の嫡子を教育し、最後に炎央院の実働部隊を四名を負傷させた。そして今は水森家に逗留している。
「自衛のためとは言え水森家を巻き込み、あちらの主力を負傷させました。これは普通に報復が有るでしょう」
「だろうな。刃砕が出てくれば私に勝ち目は薄い。私が勝てるのは技の多さのみだ……衛刃に取りなしてもらいたいが」
「なら俺が責任を取りますか?」
「どう取る、今さら氷奈美と縁を結んで我が家にでも入るか? 今の君なら文句も言えんし私も反対せんが?」
「申し訳ありませんが私には愛する妻がいますので、追放前ならひなちゃん、いえ氷奈美さんの伴侶なら喜んでなっていたでしょう」
互いに苦笑いしながら冗談を言い合う。こんな話が出来るならこの人を義父と呼んで、やって行けたのかもと有り得た未来の一つを夢想してしまう。少なくとも炎央院に居た時よりはマシだろう。
◇
そして令一氏の部屋を辞してその後は少し眠った。やはり水森家に逗留しているせいなのだろうか清一たちとの出会いから夢は始まった。
俺は家で無能扱いを受けていて外で時間を潰すしか無かった。そんな中で当時、母を亡くして荒れていた清一と出会い。そして黒髪の少女と三人で遊んでいた。
「年下ばっかだな……ま、仕方無いか」
「ししょーが一番年上ですからね」
「じゃあ、れ~君が一番エライの?」
「レ・イ・ガ!! 俺の名前は黎牙だって言ったろ――――も名前くらい覚えてくれ」
「ごめん。でも漢字難しいから……じゃあレイ君でい~い?」
その後は氷奈美も来るようになって四人で遊ぶようになった、その黒髪の子は氷奈美が増えた事で女の子の友達が出来て喜んでいた。
「なんで、あの子の顔も名前も思い出せないんだろう」
そもそも十年以上前の話だから仕方ないのかもしれない。今日は二人と再会したから偶然思い出したようなものだ。その後も俺は起きては別の夢を見てを繰り返し最後はレイ・エナジーで無理やり回復して翌日を迎えた。
◇
昨日と同じ会食の食堂に着くと令一氏、ひなちゃんと清花さんしかおらず清一が居ない。どうしたのか尋ねると朝の五時から起きてアップを始めて今は屋敷の周りをジョギングしているらしい。
「あんのアホ、二時間もアップしてるのか」
「それだけ兄様は楽しみなんですよレイさんとの本当の勝負が」
「レイさん本当に手加減して下さいね。兄さんは負傷させたらマズいですよ~」
二人のご令嬢にそれぞれ言われてるが、どちらも兄を思う気持ちだ。兄として慕われる……か、本当にこの水森の家には俺が欲した物があったんだな。
だけど俺の今の家も負けてない、そうだよなアイリス。だから俺はあの日々を取り戻すため日本に戻ったのだから。
「ふぅ、ご馳走様でした。味噌汁に鯖の塩焼きに白米に漬物……本当に美味しかったです」
「お茄子のぬか漬けはいかがでしたか?」
「ええ、凄く美味しかった……漬かり過ぎず、いい塩梅だったよ」
俺がそう言うと氷奈美が微笑んでいて不思議だったが俺もすぐに部屋に戻り、寝巻の着物から隊服へと着替える。清一が待ちかねているから予定を繰り上げる予定だ。
「さて、案内してくれる人は、ひなちゃんで良いの?」
「はい。清花は『結果が分かっているから見ない』そうです。余程レイさんを信用しているんですね?」
「目の前で俺の戦いを見せちゃったからなぁ……」
そう言って俺は稽古場、水森家の武道場へと向かった。道場は本邸から渡り廊下の先にあり武道場と言うより体育館のようだった。
「ここが当家の武道場です。どうぞ皆待ちかねてますわレイさん」
俺は、ひなちゃんに促されるまま清一の待つ中央へと向かう。充分に離れた場所では水森家の主だった人間と恐らくは主力と思しき門下衆が揃っていた。
「お待ちしていました黎牙さん、いえレイさん!!」
「ああ、待たせたな……それとアップに二時間はやり過ぎだ」
「落ち着かなくて、だって本当の師匠とやっと戦えるんですからっ!!」
「あの時も本当の師であると俺は思ってたんだがな? まぁ、いいさ……清一。全力で来い。俺の八年間の一端、お前に見せよう!!」
「お願いしますっ!! いざっ!!」
そう言って清一は白い道着に簡易的な青いプロテクターだけを付けて、本来は当主しか持てないし持つことが許されない水森家の至宝にして最高の神器『水龍の牙』を構えた。奇しくも今の俺の聖具『暁の牙』と同じく牙同士だ。
「その黒い刀、凄いですね……俺の神器と同等なんじゃ?」
「いいや、これ聖具だ。銘は『暁の牙』今の俺の心そのものさ……牙無きレイの新しき牙だ。さあ、後は剣で語り合おう」
「はいっ!! 俺の八年も見て下さい……師匠!!」
◇
清一は透き通るような空色の両刃の刀身の神器「水龍の牙」を油断無く構えた。形はレイが日本刀なら、こちらは古代の銅剣に近い両刃の剣。そこで清一は改めて相手を視た。
相手は聖霊使いとしては無能と呼ばれながらも剣の腕だけで何度も自分を追い詰め剣だけでは、ついぞ勝てなかった自らが師と仰いだ人物。
(剣だけであれほどなら術を使える今は相当強いはずだ。だけど俺だって)
それが戻って来ただけでは無く更に強く今度は全力で本当の力をぶつけ合える。これほどの喜びと興奮は無い。しかし彼はまだ半信半疑だった。だから弱い水聖術を使いレイをけん制した。
「凄い、水聖術を使っているのに本当に対応してる……ほんとに術師になったんですね!?」
「ああ、だがお前の思う術《《師》》では無く術《《士》》なのだがな。さて、これで心置きなく戦えるか清一?」
「はいっ、すいません。試すような真似をしました……だからここからは本気で行きます!!」
一方のレイは片手で清一の水聖術を軽々と対処すると水の力を光の壁で打ち消した。それは即ちレイが術を使ったと言う何よりの証だった。
「お父様、今の見えまして?」
「ああ……どの属性とも違う光の属性、確かに込められた聖霊力の密度が桁違いだ。しかしそれが本当に我らの知らない術なのか、それとも彼が規格外な存在になり戻ってきたか……まだ分からん」
しかし既に令一はこの時、自らの聖霊使いとしての勘でレイの使う術は別格で規格外そして別物なのだと言う事を本能的に理解してしまった。
(それに聞いていた以上だ。我が子びいきに見ても剣の腕がこの世代では圧倒的な清一が、まるで子供のようにあしらわれている)
なおも華麗な剣を打ち込む自らの嫡子に対して一歩もその場を動かず、全てを簡単に捌くレイを見てもその底が何も見えない。
昨晩見たあの圧は彼が見せていた力の一端だった。そして底が見えないくらいレイとの全ての能力において格差が有ると分かってしまった。
「さて、次はこちらから行くぞ……はっ!!」
「ぐっ、それは……分かってますよ!! ぐあっ!!」
「分かっていても受けられなければ意味が無い、もう一度だ!!」
今度はレイが一歩踏み込んだ。それだけで清一は簡単に剣先が鈍り弾かれ、防御の構えが崩されてしまった。レイはそのまま間合いに入り光位術の一つレイアローの極小威力を至近距離で放ち吹き飛ばした。またざわめきが術師たちから上がる。
「いっ、今のが光位術、光の術……なんですか? 衝撃が凄い、ですねっ!?」
「ああ、水流陣を容易く貫通しただろ?」
水流陣――――水聖師の使う防御術の一つで体を薄い膜のような状態にした水で覆い攻撃を無効化または軽減するもので、特に炎聖術に関しての効果を発揮する。その術を容易く貫き自分にかなりのダメージを与えた術に清一は驚愕した。
「だけど、それでも……水聖流『水・破・刃』!!」
「ほう、凄いな、だがっ!!」
水聖流とはその名の通り水聖師の間で使われる武術の流派の一つで、その技の中位の技が水破刃だ。刀身に水を纏わせ斬撃を飛ばすものだ。
その威力は容易く人体を切り刻むほどで清一の技は威力・精度とも最高クラスでこれを打ち破った者は未だ居ない。少なくともこれまではそうだった。
「やっぱり、簡単に……ならっ!!」(水聖流・奥伝『氷撃破城斬』で)
「来るか清一」
普通の術師相手、例えば土の次期嫡子程度の実力者なら暁の牙の強度など気にしていないが恐らくは次は必勝の一撃、ただの聖具なら厳しいかもしれない。
(PLDSは使えない。つまり俺の聖霊力のみ暁の牙頼むぞ)
それが例え相手が下位の術師であってもだ。なぜなら目の前の清一は下位術師である前に一流の剣士だからだ。本来の神器が欲しいと思うが今の彼の手元には存在せず、何より今のレイには使う資格が無かった。
「ふっ!! 奥伝・氷撃破城斬!! はあああああああ!!」
水龍の牙から溢れる大量の水流が中空で一瞬で凝固して巨大な氷の剣が出来上がる。そしてそれを対象に叩きつける。一見すると巨大な刃を叩き落とすだけのように見えてそれは圧倒的なスピードと正確性を持ってレイを襲う。
「これが、奥伝か……凄いな……っ!?」
レイは一撃目を避けたが巨大な刃が自分を追撃するのを見た。縦に下ろしただけでは無く、今度は横薙ぎに振るわれる氷の刃にたまらず暁の牙で防いで弾き返した。
「はぁ、はぁ……それでも届かないんですね……」
そう言った瞬間に奥伝で強化された氷の刃にヒビが入り砕かれた。それは光の刃で蒸発しバラバラに砕かれていた。
「いや、誇れよ清一。お前は俺にレイ・ブレードを使わせたんだからな。しかもディヴィジョンじゃなくてレイ・ブレードそのものをだ」
レイは暁の牙で二撃目を抑えた後にすぐに変化に気付いた。暁の牙に少なからず刃毀れが生じた。そこで仕方なく暁の牙にレイ・ブレードの威力を抑えた状態で展開し巨大な氷の刃を砕いたのだ。
「それが光位術、聖具に付与出来るんですか。神器でも無いのに……」
そう、当たり前のようにに術《《士》》たちが使っている聖霊術を武具に付与するこの技術は術《《師》》は奥伝と呼ばれる術や神器かそれに準ずるクラスの武具を用いてしか使用は出来ない。むしろ術師の聖具は術のコントロールや防御そして聖霊避けに使われるのが一般的だ。
「さて、じゃあ光位術も見せた事だしな。ここからは術込みで英国流に俺が指導をしてやろう清一」
「はいっ!! お願いしますっ!!」
眩しい笑顔で俺に剣を構えて突っ込んで来る相手にレイは改めて最弱設定でレイブレードを展開した。ニヤリと笑ってレイは清一の水龍の牙とレイブレードを鍔迫り合いさせる。これが師弟の本当の再会の挨拶なのかも知れないとレイは、そう感じていた。
誤字報告などあれば是非ともよろしくお願い致します。
ブクマ・評価なども有ればお待ちしています。




