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光を受け継ぎし者 ―追放された光は導かれ再起す―  作者: ネオ他津哉
第二章「彷徨う継承者」編
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第19話「水の誘い、炎の真実と裏切りと」



「ふぅ、聞いてはいたけど出雲の蕎麦は美味しい。ちゃんとした日本食は久しぶりだ……日本に来てから飯はレストランかファストフードだったからな」


 俺は翌朝、久しぶりの日本食を堪能していた。昨日は新幹線を乗り継いで、その後も追手をまくため色々と動いたせいで目的地の島根県は出雲市に到着したのは夜の十時を越えていた。


 レイウイングで飛ぶ事も可能では有るが問題は清花さんの存在だった。間違いなく無事では済まないので陸路での移動となった。


「そうだったんですか日本は、え~っと八年振りなんですよね? もっと和食とか食べれば良かったんじゃないですか?」


「時間が無くてね……色々忙しかったんだ」


「あっ、そうでしたね。列車の中で聞いたんでした」


 空路は確実に炎央院家の者に見張られてると考えて真っ先に除外した。空港に入った瞬間に補足されるか降りた先で何か仕掛けられると警戒した。


 だから陸路で水森家や岩壁家の勢力圏まで逃げれば、すぐに追手を出す可能性の有る炎央院家も簡単には動けないと読んだのだが正解だった。


「勢力図が変わって無くて良かった。これが『そば湯』か、これに蕎麦汁を入れて良いんだよね?」


「はい。そのまま飲む人も居ますけど普通は入れますよ」


 昨夜は出雲に入り適当な宿を探そうとしたら清花さんの知人のホテルに事情を話して宿泊させてもらえた。今は少し遅めの朝食を摂りながら今後の方針を二人で話している最中だ。


「ふぅ、おいしい。さて、これからのことなんだけど清花さん」


 恐らくあの女(流美)に見つかったからには本家に報告が行っているはず、祐介の話では俺の写真を持ち帰ったり報告をした事で本家や当主からの信頼度は高いと言う事だ。

 そして今は勇牙に付いているなら叔父さんの援護も有るはずだから厄介だと話した。


「つまり、俺の生存が実家にバレたって事で動き辛くなった……」


「ですね。でも正直、兄さまや姉さまは喜ぶと思いますけど、お父様の反応だけは気になります」


 俺はそば湯を飲み干すと手を合わせて『ごちそうさま』と言ってお土産に蕎麦せんべいも買う。イギリスの仲間に送るのでも良いし後で自分で食べるのも良いだろう。


 それとは別に水森家への菓子折りを買いたいと言うと清花さんは近所の和菓子屋の羊羹が良いだろうとアドバイスされたので、それを購入して水森家へ向かう事になった。


「一応は連絡を入れたんですけど……もしかしたら少し待たされるかも知れません。お父様達も昨日、東京から帰ったばかりらしいので」


「え? 水森家の当主が東京にいたの」


「四大総会ですよ。本当は今日までだったのに総会の初日に誰かさんが岩壁家の嫡子を倒したせいで日程が完全に飛んで延期だそうですよ?」


 そう言って俺をニヤニヤしながら見る彼女は最初の頃のような清楚さは欠片も無かった。完全にお嬢様モードを演じていたんだろうと思って郊外まで歩いて来ると、やはりそこには元実家の炎央院の邸に勝るとも劣らない日本家屋が塀に囲まれ存在していた。


「凄いな。東京の炎央結界と違ってこちらは強度を保っているのか……キチンと修復した痕が有る……整備も行き届いてるみたいだし施した術師たちは優秀だな」


 そしてかなり強力な大型の結界『水聖結界』が張られていた。確かにここは東京ほど人が多いわけでも無く結界への負荷は少ないだろうが、それでも同じ耐用年数は経っているのにここまで違うのはキチンと誰かが整備していたからだろう。英国でも水の術だけでここまでは強くは出来ない。


「当たり前ですよ。だって、そうしろと言ってくれたのは……あなたじゃないですか黎牙さん。お久しぶりです……そして、よく、ご無事で……」


 正門が開くと、お付きを数名連れて出て来たのは長い黒髪に薄紫色の着物を着た和服美人だった。清花が深窓のご令嬢なら目の前の彼女は旧家のお姫様と言った感じで二人に共通するのはどちらも美少女だと言う事だ。


「ひなちゃん……いいや、水森氷奈美(ひなみ)さん。お久しぶり、と言いたいところだけど今の俺は少し違うんだ」


「清花から聞き及んでいます。まずは二人とも中にお入り下さい。ふふっ、兄さんが、兄の清一が待ちかねていますから」


 ひなちゃんに案内され俺は清花さんと水森家本邸に入る。正門を抜ける際に一瞬ひんやりとしたのが水聖結界に入った証拠だ。この感覚は今回で三度目で通過儀礼のようなものなのだが昔と違う所も有った。俺は過去二回は結界の聖霊力の強さに気圧されビクビクしていた。

 しかし今回は、それを全く感じなかった。これも俺が成長した成果だと思うと少しだけ誇らしい気持ちで俺は悠々と正門をくぐった。





「ここでお待ち下さい、今、兄を呼んで――――「黎牙さんっ!! あぁ、本物だっ!! 俺、本当に……本当によく、よくっ!! ご無事でっ!? 俺、ううっ……」


「清一、四大家の次期嫡子が簡単に感情を出すのはみっともないと言っただろ? 全く簡単に泣くんじゃない。相変わらずだな……元気そうで良かったよ」


「す、すいません。黎牙さんに、色々と心構えとか教えてもらっていたのに……俺、やっぱり剣術バカで、あっ、私は……」


 思わず苦笑してつい小言を言ってしまった。俺の悪い癖かも知れない。これが原因でもしかしたら……と、そんな事を考えながらも目の前で、いきなり部屋に入って来て男泣きしている水森家の次期当主の水森清一を改めて見る。そして当時から周りは誰も認めなかったが彼は俺の弟子だ。


「あれから俺は一度だって剣の鍛錬は怠ってませんよ!!」


「俺もさ、それに聞いたぞ。今世代でトップはお前らしいな? ま、予想はついてたけどな」


「はいっ!! ですが俺と実力が拮抗している。下手すれば数年後には危ないのが二人居ますんで……その、炎央院のあの二人が」


「ああ、炎央院の次期嫡子とその許嫁か……気にするな、あの二人の実力なら確かに納得だからな」


 そう言って俺は血縁上は弟である人間とその許嫁で妹のように思っていた少女を思い出す。あれで二人とも性格は真っすぐだった。勇牙なんかは真っすぐ過ぎて逆に俺の心が壊されそうなくらいだった。

 炎乃華は……あいつは自分にも他人にも厳しかったからな、実力が無いくせいに指導していた俺が気に入らなかったんだろう。炎乃海ほどじゃないにしても、あいつも実力主義者だった。


「だから簡単に利用されると忠告はしたんだがな……今のバラバラの炎央院の家を見ると俺の忠告は無駄だったようだな」


「それは少し違うと思いますよ? 逞しくなったんですよ特に炎乃華さんは今や誰もが認める炎央院の家の影の次期女当主なんて言われてるそうで」


「そう……か。ま、今の俺には関係無いさ、あの家がどうなろうともな……二人には改めて言うけど俺の今の名はレイ、レイ=ユウクレイドルだ。炎央院黎牙は三年前その存在ごと俺が消したからな」


 そう言った瞬間に二人の顔が曇った。確かに黎牙だった頃に二人とは親しくしていたから黎牙と言う人間の死を悲しんでくれるのは俺としては複雑で心苦しい。次に口を開いた清一が俺に言い辛そうに話したのは清花の災厄の話だった。


「それにしても清花が黎牙さん……じゃなくてレイさんを連れて来るなんて色々驚きました。その、清花の事なんですが……」


「災厄を隠すために無能認定したんだろ? 本人から聞いた……いい家だな」


 その後は積もる話に過去の話、俺の旅の話は簡単にして、イギリスでの話をしたら一番食いついて来たのは清花では無くて清一だった。特に俺の義父のヴィクターさんの話をしたら物凄い反応だった。手合わせや指導を願いたいとしつこかった。


「そうですか……黎牙さん、ご結婚されたんですね……おめでとう、ございます」


「ありがとう。ひなちゃん。妻はイギリス人と日本人のクオーターでアイリスって言うんだ、今は事情が有って動けないけどいずれ必ず会わせるよ」


「そう、ですか……たの、しみですね……」


 その後、案内の者が部屋の用意が出来たと告げたので俺は客室に通され当主との面会は午後からとなった。その後は会食までするらしい。


 なんと言うか賓客扱いだな。清花さんの客とは言え本命は別に有る事はもう伝わってるはず。そして案内の人間と清花さんがやって来て俺はいよいよ水森家当主の令一氏との謁見となった。





「失礼します」


「…………ほぉ」


 部屋は会合などに使う部屋では無く当主の書斎だった。狭いわけでは無いが炎央院の家の奥の間のような会合が行われる場所では無くあくまでプライベートな場所の印象で驚いた。


 当主の令一氏は相変わらずガッシリした体格で、背も筋力も成長した俺よりデカイとか相変わらずの偉丈夫っぷりだった。


「お父様、ただ今帰りました!!」


「おぉ、清花。元気そうで何よりだ。都会の悪い男に騙されたりしていないか? 悪い友達などは作ってはいけないぞ? それと危険な事は――――「お父様、私だってもう大学生ですよ!! レイさんの前で恥ずかしいです……」


「あ、ああ。そうだったな……おっほん。まずは久しぶりと言えば良いのかな。炎央院の出来損ないと言われた無能の黎牙殿」


 やはりこの世代は実力主義がまかり通っているようだ。横の清花さんもビクッとしている。俺達の数代前の術師は力こそ全ての実力主義が基本だ。だからこそ当たり前のようにこのような言動をしてくる。そう言う人種なのだから仕方ない。


「はい。水森家のご当主、事前に連絡差し上げたと思うのですが私は炎央院では有りません。レイ、レイ=ユウクレイドル。今はしがない薬売りですよ?」


「その膨大な聖霊力を持ってそのような戯言を言うか……いや、煽りたばかったのはこちらが先か、ならば謝罪しようレイ殿、口が滑った。すまなんだな」


「お父様!! それは謝ってるとは言いません!!」


「いや、だが私としても当主としての――――「関係有りません。レイさんは私の災厄を直してくれるかも知れない方なんですからっ!!」


 そう言った瞬間に水森家の当主は目を見開いた。娘の言動があまりにも予想外で常識の外の言動で驚いたのだろう。


「清花……。レイ殿、今の娘の発言は何らかの妄言か何かでは無いのか?」


「レイで構いませんご当主。信じられないかもしれませんが私の所属する組織では無能や災厄をある程度のレベルまで術師の能力の底上げ、もしくは覚醒を促す事の出来る技術が確立しています。目の前の俺と言う存在が証明になりますが、いかがでしょうか?」


「確かに、レイ。君の能力は完全に無かった。あの刃砕なら無能ならば嫡子すら追放するとは思っていた……強さに全てに重きを置くからな、衛刃と違って」


「そして、あなたとも違うと? 正直驚きました。まさか水森家の、しかもご当主がそのようなリスクを犯すとは意外……でした」


 そう言うとフッと口元を自嘲するように歪める水森家の当主に俺は困惑した。てっきり嫌味の一つでも返されると思っていたからだ。


「笑いたくば笑えレイよ。私は、私はな……娘可愛さに四大家の掟を破ってしまったのだからな……愚かな当主なのだよ……刃砕の判断を支持しておきながら私はこの体たらくよ」


「ですが親としては当然の事かと思います。私は……俺は正直、清花さんが羨ましいと思いました。秘密裏にとは言え親に庇ってもらえるのは嬉しいものですよ」


「レイさん……」


 そう言って俺も自嘲してしまう。散々とあの家と訣別し過去と割り切ったなどと口で言っていてもどこかで俺はあの家との繋がりを求めてしまっている。


「失礼。少し感傷に浸りました。続けて下さい」


 もう既に喧嘩を吹っ掛けたのにも関わらずだ。そして誰かに擁護し庇ってもらいたかったなどと郷愁に似た甘えに近い感情が湧き上がっていた。


「まずはレイ……いや、あえて炎央院黎牙殿に謝罪したい事が有る、その上でそちらの、レイ……殿の話を聞きたく思う。よろしいか?」


「謝罪ですか? 私は水森家とはそこまで隔意は無かったと――――「間に合わず済まなかった。衛刃との約束を守れず申し訳無かった……」


「え? 叔父さんの? い、いえ……衛刃殿との約束とは?」


 そして目の前の水森家の当主は深々と頭を下げた後に俺の追放の一日前からの話だと語り出した。それは俺の予想を越える話だった。




――――八年前、水森邸当主書斎――――



「令一殿、いや令一どうか私の、いや友として俺の願いを聞いてくれないだろうか。どうか頼む」


「衛刃、お前から何度も打診は受けていたから言い分は分かる。炎央院の将来に必要だと言うなら件の無能嫡子は相当な切れ者なのだろう。だが刃砕が、お前の兄が絶対にそれを許さない」


 話し合うために当時やって来たのは炎央院の次席でレイの叔父の炎央院衛刃だった。彼は過去の戦いで兄を庇った際に左足を失い、今は当主代理兼当主補佐をしている。そんな立場の人間が今月に入ってから既に四度目の来訪だった。

 車椅子生活となった今でも聖霊術のみなら兄の刃砕を凌ぐと言われていた衛刃だが、それでも当然ながら彼は日常生活は健常者よりも厳しく、ましてや長旅などの負担は相当だった。

 そんな彼が水森家に来た理由、それは黎牙の身の安全をこの水森家に頼むためだった。


「だから伏して頼む。どうか我が甥の黎牙をこの家で保護してくれ。私ではもう彼を守り切れん……彼は確かに無能だ。だが、それでも炎央院の家や我が娘のために様々な見聞を広め、さらに幾度も私も知恵を借りた。彼は炎央院に、いや日本の術師には無くてはならない存在だ」


「だが食客と言っても限度が有る。炎央院ほどで無くても我が家もそれなりに実力主義者が多く、何より私自身がそうだ。いくら旧友のお前の頼みとは言えな」


 実はこの二人は大学で、たまたま同じ学部、同じ学科でゼミまで一緒だった。親友と言うよりはライバル関係で、かつては共に研鑽した仲で衛刃とは、それ以外にも色々な縁があった。


「炎央院の家の当主しか知らない奥伝も彼は知識として記憶している。それを付けると言ったらどうだ?」


「そこまで買っているのか? ふむ、なら輿入れの形はどうだ? 氷奈美の相手はまだ決まっておらん。我が家に入るならば……それ位はしてもらわんとな」


 当然こんな条件を飲めるはずが無いと出した条件だった。黎牙は腐っても炎央院の嫡子だった人間でそれが他家の、しかも継承権の無い入り婿などあり得ないからだ。しかし衛刃は少しの思案の後に頷いた。


「行き場の無い彼に少しでも居場所が出来るのなら私が必ず説得する。だからどうか令一、頼む」


 そう言って衛刃は車いすから転げるように降りると土下座をした。他家の、それも仮想敵にも等しい自分に、いくら学生時代のよしみが有っても普通はしてはいけないし、出来ないものだ。

 しかし目の前のかつてのライバルは躊躇せずに床に額を擦り付けた。


「衛刃……分かった。お前の覚悟しかと受け取った。しかし迎え入れるのにも若干の時が必要だ。二日、いや余裕を見て三日もらおう。それでお前はどうする? こちらで迎え入れるか?」


「ああ、そうだな。黎牙を連れて何度も行き来するよりもこちらで待つのが正解か、すぐに連絡を取って、こちらに呼び寄せる」


「そうか。なら今夜は祝杯と行こう。お前も久方ぶりに羽を伸ばしたいだろう?」


「では少しだけ、だがその前に黎牙への連絡を取りたい。出来るか?」


「分かった。手配しよう。件の無能が本当に無能か私の目で見定めさせてもらおう」


 しかし、この密談は叶わなかった。衛刃の動きに合わせるように刃砕を始めとした当主派と、更に門下一同は衛刃が家を空けたこの日に黎牙に炎の祠での試練を受けさせた。


 実は衛刃の動きを読んでいた刃砕とそれを進言した有る人物によって衛刃が家から出るのを待っていたのだ。そしてその日から五日間、炎央院は外部との連絡の一切を断った。


「衛刃!! 炎央院との連絡が一切付かん……まるで炎央結界に阻まれるように通信も文も出せないと報告があったぞ、どうする!?」


「…………っ!? まさか、いや、いくら兄上でもそこまでは、すまん令一。明日は朝一で戻る事になりそうだ」


 その状況に気付いた衛刃は即座に炎央院の家に取って返したのだが、その時にはもう時すでに遅し、黎牙を中国までは追ったが、それ以降はぱったりと足跡を辿る事が出来なかった。

 彼はその後も私費で中国を何度も調査させ黎牙を探索した。そして衛刃が何より想定外だったのは兄の行動だった。


「まさか、兄上がそこまで……仮にも自分の息子を……どうして、なのだ……」


 その日以降、当主刃砕と補佐の衛刃の仲はギクシャクし出す。更にはこの奸計に自分の娘たちが関わっていた事を知り彼は激怒し頭を抱えた。黎牙と言う聡明な甥を、将来の炎央院の頭脳となるべき人材の喪失を嘆いた。





「俺が、この家に……来ていた可能性が?」


「ああ、衛刃にあそこまで言われれば我が家で匿う予定であったのは確実だ。後で聞いたら涼風の家にも当たりを付けていたらしくてな。あちらの楓嬢に断られて我が家に来たそうだ」


「それは……なんと言うか、私の前の実家の騒動に水森家も、そして涼風家も巻き込んでしまい申し訳無かったです。そうか叔父さんの腹案とはこれだったのか。でも俺は両親や炎乃華たちの言葉で完全に頭が真っ白になって逃げるように日本を後にして、ました」


 あの日フラフラと歩いていたら途中で雪が舞い出し震えながら少しでも早く街を離れようとしていた。十五歳当時の俺が寒空の元、震えてカプセルホテルを見つけて入ったのを今でも思い出す。

 あれも今思えば光の蝶の幻覚を見て入ったような気がする。あの時からアイリスは俺を……。


「でも計画が上手く行ってたらレイさんは今頃は私のお兄さんだったんですか、お父様?」


「ああ、そうなる」


「更には清一の義弟か……年上なのにな」


(あっ、それで氷奈美姉さまが残念そうにしてたんだ……明らかにレイさんが既婚だって聞いて落ち込んでたからなぁ……)


 そこまで聞いて俺は確信した。やはり叔父さんは、いや衛刃殿は俺を買ってここまでしてくれていたんだ。俺が冷静に動いていれば……。


 だが冷静な判断が取れないように追い込んだのは恐らく俺の心情を最も分かっていた人間の仕業……つまり親族と一門を動かしたのは……。


「炎央院炎乃海、やっぱりあの人か。やけに納得したよ。俺を追放した黒幕中の黒幕ってわけか」


「炎央院炎乃海って炎乃華さんの姉の……あの?」


「何か含みが有るね清花さん。あの人の噂とか有るの?」


「うん。あんまり良い噂じゃない、かな……」


 その後も少し話し合った後に俺の方の本題の草薙の霊根については一言で許可を貰えた。しかしその後が問題だった。輸送方法の問題だった。

 だがそれには俺は腹案があった。だから俺は交渉を始める。当主との交渉はここからが始まりだ。しかし、この裏で俺の実家でも動きが有った事を俺はまだ知らなかった。

誤字報告などあれば是非ともよろしくお願い致します。


ブクマ・評価なども有ればお待ちしています。

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