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光を受け継ぎし者 ―追放された光は導かれ再起す―  作者: ネオ他津哉
第二章「彷徨う継承者」編
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第18話「決別への第一歩、我が名はレイ=ユウクレイドル、光の継承者だ!!」



 俺は頭上から降りて来るトラウマを見る。里中祐介……かつての同門で、そして俺への敵対心を隠す事無く常に俺と敵対して来た男で、かつての許嫁を最終的に俺から奪った男だ。


「それも今は虚しいだけ……か。いや、少し悲しくなったのか? かつては復讐したいと思った時もあったのにな」


「レイさん……」


「勝負だ……ん? お前……え? いや、だが……あの写真と、お前、ま、まさか黎牙なのか?」


 颯爽とこちらに降りて来た時の勇ましさと打って変わってポカンとした顔をしている祐介に俺は呆れていた。敵の正体も確認せず戦闘に臨んだと言うのか。


 確かに祐介には炎聖師としての才能はあったが、その戦法は力押しがメインで才能に頼り切ったごり押しだった。だからより才能も有り鍛錬も欠かさなかった年下の勇牙や炎乃華には勝てなかった。


「つまり自分より格下の相手にしか勝てない……弱い者イジメ専門ってわけだ」


「は? お前、その言い草は本物っ……でも何でだっ!? どうしてお前が生きてんだよ!! お前のせいで俺はっ!?」


「俺のせい何の話だ? こっちは急いでいる。来るならさっさと来い。それともここで倒れているコイツらと同じ目にでも遭うか?」


 そう言って俺は足元に居る一人に暁の牙の鞘で小突いた。微かに呻き声が聞こえたので一応は生きているようだ。


「なっ……お前達、まさか無能のお前がコイツらをやったのかよ!! ありえないだろっ!? だって雑魚の黎牙だぞ炎央院の恥晒しが!?」


「一つ訂正をしておく……俺の名は、炎央院黎牙では無い……その男は死んだ。そして我が名はレイ=ユウクレイドル、光の継承者だ!!」


 俺の聖霊力を軽く入れたオーラに腰を抜かした祐介がペタンと座り込む。周りの数名は気絶したまま吹き飛ばされた。見ると祐介の顔は最初の時とは違い顔色は真っ青でカタカタと歯を鳴らしている。


「オイオイ、まさか……戦う前に戦意喪失か?」


「あ、ああっ……何だよ、何なんだよ!? 今の力は……お前は無能なんだ!! そのはずなんだよっ!! それが何で、どうしてっ!?」


「お前も統二と同じか、炎央院の家はバカが多いから、そこが懸念事項だった。衛刃叔父さんだけでは頭の悪い当主を支えるのも大変だろうからな?」


 そう言うと震えていた祐介の目の色が変わった。炎央院の家の特徴の一つは絶対なる忠誠で主君と仰いだ相手には絶対服従する。そのように幼少期から教育を受ける。当主への忠言ですら問題になるのに俺がしたのは当主への侮辱だ。


「当主を、刃砕様への侮辱は許さない!! それに黎牙、お前にとっては父君なはずだろうっ!?」


「ああ、俺を捨てた男だろ? それがどうした? 血筋的には父親になるな……吐き気がする……」


 そう、俺にとって父とは……いや父さんとは剣の勝負でやっと勝てるようになった人で、無理やり酒飲まそうとして二人で裏道で吐いたりして肩を叩き合って笑い、そして自分の娘であり俺の妻を愛して今も遠い異国で戦っている人の事だから。俺を追放した人間など、もう父とは呼ばないし呼びたくもない。


「レイさん……そこまで……」


「おっと失礼。個人的な雑事など今はどうでも良い。あの子(アイリス)を救わなくてはいけないんだ……言いたい事は終わった。清花さん行きましょう」


 清花さんが俺の方を心配そうに見つめて来る。大事な取引相手を不安にさせてはいけない。全てはアイリスのために……そうして気合を入れ直した時に目の前の腰を抜かしていた男が立ち上がって喚きだした。


「に、逃がすか!! 俺は、俺はなぁ……お前のせいで未だに『里中』のままなんだからなっ!?」


「は? お前、あのまま炎央院炎乃海と結婚したんじゃないのか?」


「ああ、俺が二十歳になって後は婚姻の儀だけとなった時に……お前が死んだ。いや生きてるけど、だから――――「ああ、頭が悪いんだから喋らなくていい。事態は把握した。つまり俺が死んだから何か障害が出たと、まさか喪に服していたとか?」


 冗談で言ったら目の前の祐介は頷いた。俺はこの日初めて心の底から驚いた。俺は追放されていたし五年も経っていた筈だ。今さら炎央院の家が俺の喪に服すわけが無い。だがその疑問に目の前の男がすぐに解答を出した。


「衛刃様が……当主にお前の喪に服すように忠言された。クソ不愉快だったぜ。しかもその後にあの二人と……流美の役立たずが裏切りやがって……」


「流美、あの女か……そう言えばお前の妹、そして俺の追撃の実行犯か。どうしたんだ? 利用しようとして逆に利用でもされたか?」


「ああそうだ!! あいつ、兄である俺に楯突いて勇牙様の側に付きやがった。そして俺の失策を当主の前で……おかげで俺は本家において適性に問題有りの扱いで炎乃海とは内縁の夫婦止まりだ!! 炎央院の名を頂けなかったっ!!」


 そう言えば祐介は『俺は炎央院を支え、やがては率いる男になる』とか言ってたな。それが、まさか俺のせい、と言うよりはアイリスのあの新聞を使ったイタズラのせいで中途半端になって叶わなくなってしまったのか。


「それはそれは……傑作だな? 炎央院になれなかった祐介くん?」


「ううううっ!! うるざあぁぁい!! それに、お前が死んで無いとかどう言う事だよっ!? お前が死ねば完全に炎乃海は俺の物になっていたのに!!」


「おいおい。二人で仲良く俺を追い出して今さら何を言ってるんだ? それに今からでも祝言を上げるなり婚約の儀をすれば良いだけだろ恨むのも大概にしろ」


 俺の極めて正論な言葉にも祐介はまったく怯む事なく、口を開くと衝撃の出来事を告白した。


「それは、あの時は協力すれば炎乃海は俺の女になってくれるって……だけどお前が死んだ後は気分じゃないって……せっかく家族も増えたのに俺は未だ父親の認知すらさせて貰えないんだっ!?」


「はぁ、それこそ……お前ら夫婦の問題だろ。なるほど炎央院炎乃海はシングルマザー扱い? いや内縁の夫婦では有るのか……ま、複雑な関係だな、そう思わない清花さん?」


 何となく予想はしていたが炎乃海は思った以上に悪魔だったらしい。やはり利用されていただけなのかコイツは、あの人はそう言う人だ。強さのためなら何でもする。だから俺を捨ててコイツを取った。中々に愉快な話だから思わず後ろに居る清花さんに話しかけてしまった。


「そ、そんな重たい話こっちに振らないで下さい!! 他家のお家騒動に私を巻き込まないで下さいよ~」


「いやいや、だって聞いて下さいよ。コイツら共通の敵の俺を追い出したら内部がズタボロって中々笑えませんか」


 実際俺の追撃をしようとした祐介と流美が仲違いを起こして潰し合い、さらには勇牙を巻き込んでのお家騒動。そして夫婦仲は冷えまくっている。


 これは中々に傑作だ。そしてその原因が俺の妻のちょっとしたイタズラ。アイリスは、やはり最高の妻だ。早く目覚めさせて聞かせてあげたい。


「あ、ああああ!! そうだ、そうだっ!! お前が、お前が生きてるのが悪いっ!!」


「それで?」


「俺と勝負しろ!! 炎央院黎牙ぁ!!」


「嫌だ。俺の名はレイ、レイ=ユウクレイドルだ。そんな名では無いっ!!」


 これだけはハッキリさせなくてはいけない。なぜなら俺は炎央院家を追放されて、そして今は炎央院を捨てた人間なのだから。名乗る事は許されないし、名乗りたいとすら思わない。


「生まれながらに炎央院の名を持ちながら……捨てるのか!? 何でだよっ!? どうしてそんな事が出来るっ!?」


「隣の芝生は青く見えるとは言ったものだな……俺は炎央院の名前なんかよりも、お前も含めて遊んでいた、あの頃の、あの時間の方がよほど大事だった……力も術も関係無い子供だった頃が……」


 少しだけ感傷に浸りながら俺はそれだけ言うと黒い刀、暁の牙を抜いた。そろそろコイツを倒して先に進もう。愉快な話を聞かせてもらった礼に一瞬で倒してやる。


「しょ、しょせんは無能なんだ……昔みたいに相手をしてやれ!! 炎燕!!」


「そうか、やれ!! スカイ!!」


 炎の燕は一瞬で光の大鷲に補足され、その鋭い爪で引き裂かれ真っ二つにされた炎燕は消滅した。


「え? 炎燕何が?」


「戦場で呆けるとは……緊張感が無い……なっ!!」


 本当に無防備で突っ立ってるから思わず右頬に一発、右ストレートを叩きこんだ。それがきれいにクリーンヒットして祐介が軽く1メートルくらい宙を舞った。ちなみに今のは聖霊力すら込めていない素のパンチだ。


「うっ、くっ……何で俺にダメージが入るんだよぉ……おかしい!! 聖霊も一瞬で……どうして、どうしてなんだよぉ!!」


「ああ、それはな……お前が俺より弱いからだ……里中祐介、今の無能はどちらかな筆頭さん?」


「あっ、ああ……そんな筈は無い……俺は門下筆頭で……炎央院を継ぐために」


「無様だな……炎央院の名? そんなものくれてやる。今の俺には毛ほどの価値も無い、今はもっと大事な者が居て、大事な物が有る!!」


「うああああああああ!! 死ね!! 死ねえええ!! 黎牙あああ!!」


 大事な事はただ一つアイリスを救う事であって他に割く時間など無い。しかし俺はアイリスの笑顔を思い出し油断をしていた。また性懲りもなく祐介が攻撃をして来たから返す刀で弾くとその炎はフェイクで、もう一つ術を放っていた。


「えっ!?」


「ちっ!? 清花さん!! スカイ!!」


 俺に対しての攻撃だけでは無くて少し距離が離れていた清花さんに対しても奴は術を、奴の一番得意な聖霊術『炎走斬』を放っていた。


 ――――炎走斬、文字通り炎の斬撃が地を走り対象者に追いついた瞬間に炎で包み込んで炭化した部分がまるで斬撃を負わされたような傷口になると言う術だ。


『ッ!?』


「ヴェイン!? 助かった。呼び出さないのに良く来てくれた!?」


 スカイを呼び出すも間に合いそうにない。しかし次の瞬間、清花さんの前に俺の聖霊の中で最強の光位聖霊帝のヴェインが出現して、その炎の波を弾いていた。そしてこちらに向けてコクリと頷く。


 清花さんも驚いていたが再び腰を抜かした祐介は今度こそ絶叫を上げていた。ヴェインは光位聖霊の中でも光聖神に継ぐ聖霊帝の位、日本では存在が幻とされている位だ。その聖霊力は桁が違う。


「なんで、なんでなんだよぉ!? 人型の聖霊なんて……それこそ、おとぎ話の聖霊帝しかアリエナイだろぉ!? 何で、何でそんな強い聖霊が、こんな許嫁を寝取られてさぁ!! 一族からは無能扱いされ、雪の日に無様に追い出された無能がぁ!! なんでなんだよぉ~!!」


「ほんと嫌な事を的確に……ヴェイン?」


 見るとヴェインが指示もしていないのにフラリと祐介の前に現れ左手を掲げた。普段はヴェールが掛かっているので相変わらず表情は分からず、口元しか見えていない状態なのだが、口元が震えて怒っているように見えた。そのまま二年前の光聖神を呼び出した時と全く同じ人間には理解出来ない言語で呟いていた。


『ユルサナイ』


「ひっ!? ああああああああ!!」


 そしてレイブレードのような光の刃を出すと一切の躊躇無く切り裂いた。そして闇刻術士達を浄化した時と同じように斬られた部分が光の粒子となって消えた。それは祐介の右腕だった。肩から先が綺麗に消えている。まるで最初から無かったかのように血すら出ずに消滅していた。


「ヴェイン……お前、何を……」


「う、腕が、俺の腕がああああああ!!」


「なっ……今の何ですかっ!? レイさん!!」


 更にヴェインは光弾のような術を放つと今度は祐介の体内にそれが入り込んだ。一瞬の事で俺が止める暇など無かった。その後に何か起こるかと思ったが特に何も起こらず隻腕の状態の祐介が気を失っただけだった。


「気を失わせた……だけ?」


「そう、みたいだ……ヴェイン!! お前、ここまでしなくても……」


『…………』


 俺が言うと少しばつが悪そうにしてヴェインは消えた。精霊王や聖霊獣のスカイやレオールと違って聖霊帝は意思が特に強く、たまにこのように勝手に動く事が有るらしい。精霊帝を従わせているのは、この時代では俺くらいで生態がそこまで明らかになっていないそうだ。


「では清花さん、今度こそ行きま――――「えっ……れ、黎牙……さま?」


「レイさん、お知り合い……ですか?」


 声の聞こえた方向を見るとそこに居たのは三年前、俺の最後を確認しにイギリスまでやって来て写真を持ち帰った女、里中流美だった。背中がゾクッとして嫌な汗が頬をつたう。俺はその姿を振り払うように素早く動いた。


「っ……知らない人間です。清花さん、このまま飛びます掴って下さい!! レイ・ウイング!!」


「あっ!? 待って、待って下さい黎牙様っ!! お待ち下さい!! 私です、流美です!! 里中流美ですっ、あなたの――――」


 それ以上は聞こえなかった。聞きたくも無かった。俺は清花さんを抱えたままレイウイングで空へ飛翔した。何かから逃げるように……咄嗟の行動で、とにかく不快なあの声を聞きたく無かった。


 しかし高速で飛んだせいで軽く酔ってしまった清花さんを介抱してすぐに行動を開始する。俺の正体がバレた以上、予定を早める必要が有る。すぐにでも水森家に行かなくていけない。俺と清花さんは一路、島根県は出雲へと向かう事になった。




「あのお姿、お声、間違いない。黎牙様が生きてた。ご無事だった……ううっ……良かったぁ。本当に……良かった」


 彼女は炎乃華と勇牙の指示に従いすぐに動いていた。炎乃海サイドの動きが慌ただしくなったので炎乃華と勇牙はそれぞれホテルと空港の現場に行き、自分は兄が率いていた部隊の後を追っていた。


 そしてそこで強い力の奔流を感じ、戦闘が終わるまで待機していた。炎乃華の読みでは確実に祐介は負けるので敵の戦力や情報を可能なだけ持ち帰るようにと言われていたので、戦闘の終わりを確認して様子を見に来た時にレイと遭遇した。


「うっ、うう……」


「あ、兄さん。う、腕が……何が、あったの?」


 彼女が呻き声に気付くとレイが飛び去った後の惨状に気付いた。彼女はすぐにカフェの聖霊使いに炎央院の名を出して協力を仰ぐ。


 水森家の関係者だそうだが、今日は本家の令嬢が借り切っていたので他に客は居なかったらしい。


「ではすぐに聖霊病棟に連絡を、結界は私が、後の連絡をお願いします」


 そして彼女は自分の聖霊獣の炎の狐を呼び出し辺りを探索すると兄を含めて六人が倒れているのを確認した。兄といつも一緒に居た人間ばかりだ。


 つまり炎乃海の配下では有るが直属では無い。その証拠に全員が男の術師しか居なかった。炎乃海の直属の術師は全て女性で男手が必要な場合は内縁の夫である祐介の手勢を使っていた。


「炎乃海様の直属が居ない? まさかっ!? もう報告に?」


 そう考えた流美はすぐに炎乃華に連絡を取る。いつもは聖霊を通した通信だが今回はスマホで連絡を取る。若い術師同士だとこちらの方が早いのだ。


「炎乃華様っ!! すぐにお屋敷にお戻りください。おそらく炎乃海様が!! ご当主に報告してしまいますっ!!」


『どうしたの? 流美? 落ち着いて報告――――「黎牙様が……生きておられました……生きて、おられました……うっ、ううっ……」


 ここで流美はついに嗚咽を抑えきれずに静かに泣き出してしまった。キチンと報告するのが側役の仕事なのにそれが出来ない。彼女は本当の主君と自分が仰いでいた人間の無事な姿を他人に話す事で我慢が限界を迎えてしまっていた。





「は? 流美どう言う事なのっ!? 黎牙兄さんが生きていた? キチンと報告して!! とにかく勇牙にも連絡するから、あなたも急いで――――」


 そう言った瞬間に頭に聖霊を通しての通信が入る。招集権限は最上級で当主からの通達。至急一門及び、次席以下親族及び分家当主も全てが招集される事態になった。


「どう言う事なの? こんな招集……それこそ黎牙兄さんの亡くなった時以来じゃない。流美はおかしな事言ってるし姉さんは相変わらず裏で勝手に動いてるし、勇牙は頼りない……私はどうすれば良いのよ!!」


 現在、炎央院の家の事を考えて動いている数少ない人間の炎乃華は目まぐるしく代わる状況にイライラがピークに達していた。そして先ほどの流美の言う事が錯乱していた結果の妄言で無いのなら助けて欲しいと思ってしまう。


「黎牙兄さん。助けてよ……私一人じゃもう……無理だよぉ……」


 そんな弱音を吐いて少し落ち着くと彼女はすぐに次期嫡子の許嫁の顔に戻り自らの聖霊を呼び出し即座に帰還する。おそらく勇牙も戻っているはずだから自分が遅れる訳にはいかない。

 自分の聖霊「炎虎」に乗って屋敷に戻ると正門は親族や門下でごった返していたので、急いで自室に戻ろうとすると廊下に見覚えの有る子供の姿があった。


「炎乃華姉さま。お帰りなさいませ」


「真炎、どうしたの?」


「緊急招集で大人がみんな忙しそう。だから、お待ちしてました~」


 自分の姪で既にこの年で聖霊と契約している規格外の少女。数年後には自分をも凌ぐ逸材と目されていて、なぜか母親よりも自分に懐いている。


 父親の祐介は女遊びでたまに帰ると猫っ可愛がりだけして甘やかすだけ、母親の炎乃海は苛烈なまでの鍛錬と言う名の体罰に近い教育をしている。何度も注意をしても姉は止める気配が無い。


 そんな境遇だからなるべく相手をしてあげたいが、今は緊急招集だから上手く言って納得してもらおう。賢い子だから聞いてくれるはずだと考える。


「あのね、真炎。残念だけど私もこれから――――「レイおじさんが西に向かったみたいだよ。追わなくて良いの?」


「え? 真炎あなた何を言って……」


 この間、迷子になった真炎を助けたイギリス人か、また聖霊術でも使って人を見ていたのかと思って見ると真炎は真剣な目をして見ていた。何かを期待するような大事な事を伝えたいように思えた。


「じゃあ教えたからね。私も出るようにって母様が言うから出席しないといけないんだ~。だから一緒に行こう姉さま」


「ええ、分かったわ……後で詳しく教えてね」


 真炎がレイおじさんと呼ぶ人間と炎央院黎牙が同一人物だと知るのは、この後の緊急招集である事をまだ炎乃華は知らない。そして廊下の向こうから慌てた様子の勇牙と流美が走ってくる。


 良い報告では無さそうだと嘆息すると横の真炎は「大丈夫だよ」と言う。なぜか妙に納得させる貫禄がこの六歳児にはあった。


 そして遂に今日この日にレイ=ユウクレイドルの存在は日本の術師に知れ渡る事になった。

誤字報告などあれば是非ともよろしくお願い致します。


ブクマ・評価なども有ればお待ちしています。

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