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光を受け継ぎし者 ―追放された光は導かれ再起す―  作者: ネオ他津哉
第二章「彷徨う継承者」編
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第15話「岩は光に触れ無様に砕かれる、そして始まる不毛な会議」


 俺は目の前の少女、清花とカフェで同僚の出した論文について話していた。あれからランチを一緒にと清水氏と彼女の二人を誘ったがそれを清水氏に「お二人でどうぞ」と言われてしまい、こうして俺は水森家のお嬢様とテラス席で話し込む事になっていた。


「ですから、ターナー先生の学術論文は凄いんですよ!!」


「あ、ああ……フローは確かにあの分野の研究は得意だが……」


「愛称で呼んでいるって事はお知り合いなんですかっ!?」


「あ、ああ同僚……だし」


 目の前の少女は今は俺の部下で元教育係のフローことフローレンス=ターナーに憧れているらしい。彼女は英国の最高峰の大学や研究機関から何度もオファーがあった才媛なのだが、そもそもスカウトは彼女に限った話ではなく聖霊使いは割とスカウトを受けている。

 当たり前だが製薬方法が聖霊の力を借りているから半分イカサマなので、当然ながら他機関への出向などは原則NGだ。そして何を隠そう俺も二度ほどスカウトが来ていたりする。


「同僚……って待って下さい。レイ、レイ……ああっ!? 有りました、この論文ですね!?」


「あぁ、それは俺が助手と一緒に研究していたものだ、懐かしいな」


「共同研究者になってますね。えっと、イーリスさん?」


「いいや、読み方はアイリスだよ。俺の……大事な人だ」


 胸がズキンと痛む、だけどそれ以上に彼女の存在がこんな所に残されていて、これから一部とは言え人の目に留まる場合も有る。


 もし仮に居なくなっても名前は残る……。いや、こんな考えだけはしてはいけない。こんな弱気でどうするんだと内心で葛藤していたら清花はいつの間にかランチのカルボナーラを完食し食後のコーヒーを飲んでいた。


「それにしても水森さんは当社の事を色々とご存知ですね」


「ええ、だって、これ()()()を応用してますよねレイさん?」


 今までとは違ってこちらに挑むように見て来た彼女の目は澄んでいたが先ほどまでの純粋なものとは違っていた。

 半信半疑で好奇心旺盛な無垢な瞳。令一氏の娘と言っていたから清一の妹か、純粋な所は似ているようだ。


「精霊? 確かに父と子の名において聖霊にも祈る事も有りますが」


「ふ~ん。やっぱり隠しますか……あの、では別の話題なんですけど、世界では今、どれだけ聖霊学が進歩しているんですか?」


「さあ? 私個人としても何の話か全く理解が追い付かず困惑しています」


 術士である事はバレるのは論外だが術師と勘違いされるのもマズい、あくまでイギリスから来た一般人のフリをしなくてはいけない。

 しかし水森家は国外に興味が無かった筈なのにこの子は考えが違うのだろうか。


「やはり簡単には無理ですか……では私の、っ!?」


「んっ!? どうしました」(何だこの聖霊力は? 街中だぞ!?)


 清花が何かをしようとした瞬間に付近に別な気配が出現して生意気にもこちらに敵意をぶつけて来た。そしてこちらに攻撃の術を展開して来た。バカなのか、ここは街中だぞ。


 術師同士なら目立たない場所か結界を展開してからの襲撃が基本、現に今も俺の光位術のグリムガードが無ければ辺り一帯に被害が出ていた。そして光の壁に阻まれたのは岩の破片と泥の塊だった。


「どうなってるの!? ここは中立の、しかも炎央院の支配圏のはずなのにっ!?」


「どこのバカだ。街中で術ぶっ放すアホはっ!?」


 思わず悪態を付く俺に答えるようにどこか軽薄な声が辺りに響いた。そして同時に結界が展開される。土臭い、土聖師の結界かと俺は立ち上がると横の清花は少しビク付きながら辺りを探ろうとしてるが聖霊力を温存しているのか嫌に弱い力で探知術を使おうとしている。


「ヒュ~!! 俺の術を弾くとは水森家も中々の護衛を雇ったじゃないか。無能のお姫様には過ぎた術師だ。おい、そこのお前いくらで雇われた。俺の方に付く気は無いか」


「あ、岩壁家の……」


「街中でバカみたいに術を使う人間が雇い主とは頭が痛くなる。それに頭の悪いアメリカ語がチラチラと混じっているのも腹が立つな、岩壁家の人間か?」


 そして五人ほどの大学生風の男女が現れる。真ん中に立っている金髪碧眼のワイルド系が俺に声をかけて来た奴だ。両サイドには女子二名とさらに男子二名。どこのジョックだよ。

 両脇の女は差し詰めクイーン・ビーってとこかね。ちなみに挨拶は汚いアメリカ語だった。間違っても俺が使っている英語では無いと断言しよう。


「ああ、そうさ、俺はバーナビー=ロック()ウェル()、日本語だと岩壁場孔備射(バーナビー)だ。それにしてもその態度、流れの術師か」


「オッサンよ、バーナビーは岩壁家の嫡子だ、口の聞き方気を付けろよ。流れの術師風情が」


 その後も日本語で喋る側近の戯言を聞いていると事態が把握出来た。なるほど、本当にこれは校内ヒエラルキーの問題だった。日本的に分かりやすく言うとスクールカーストの問題だ。

 まず俺の知らない間に四年ほど前から日本では術師の子弟を集めて教育する機関『日本術師研究院』なるものが創設され、こいつら五人と清花さんは同級生らしい。


 ちなみに年齢はバラバラで所属するための条件は術師の子弟である事だけ。そこでは上から数名が優秀者として選ばれていて、目の前のガキもその一人と清花から説明を受けた。


「それで? クラスメイトに挨拶する感じには見えないんだが?」


「いやいやオッサン、挨拶のつもりだぜ? この店は岩壁家の援助してる店だから心配はいらない、だから術師の挨拶、術のぶつけ合い!! バトルだっ!!」


 頭が悪過ぎて付いて行けない。だが聖具を今持って無いのはマズいな……手加減が出来ない。レイブレードだと間違えて浄化して消してしまう可能性があるからだ。


 特に術師は弱いからディヴィジョンでも消してしまうかもしれない。せめて微弱な聖霊力を纏わせた刀で戦えれば制圧も簡単なのに思っていた時だった。鳥の鳴き声が聞こえ空を見上げるとそこにはスカイが居たのだが……。


「え?」(なんで焼き鳥みたいに炎をまとってる? まさか偽装してくれてるのか?)


 そして一声鳴くと刀を入れている居合刀袋を俺の下に落とした。俺はそれを受け取って素早く黒の刀身を持つ俺専用の聖具を取り出す。


「炎聖霊、炎聖師か!! やる気満々じゃん? まずは誰か――――「五対一でいい、オッサンが遊んでやるよクソガキ共」


「バーナビー!! アタシが潰しても怒らないでね、行くわよ!!」


「待って、私も行きます!! バーナビー様、見ててね!?」


 まずは女子の術師が二人同時に構える。聖具はグローブともう一人は短刀、さすが肉弾戦が得意で防御自慢の土聖術師。俺は暁の牙を峰打ちの状態にすると微弱な聖霊力を纏わせる。まさか虫けら共(闇刻術士)と同じ対応を子供には出来ない。


「遅い」


 一人が殴りかかりながらグローブ全体に岩石を纏わせ岩の砲弾のような一撃を振り下ろす。さながらハンマーのような一撃。だけど遅過ぎる。


「なっ!? だけどっ!!」


「援護するわっ!!」


 そしてもう一人の短刀の方が地面に短刀を突き刺し一言呟くと俺の周りに岩の壁を出現させる。俺はそれを蹴り一つで粉々にした。


「そして、脆い……ふぅ」


「嘘でしょ、リンの防護術を一撃で……」


「しかも聖具すら使わないで蹴りだけ……有り得ない、そんなはず!!」


 そう言うと短刀の方、リンと呼ばれた少女が短刀を投擲した。俺はそれを手刀で軽く弾くと今度は続け様に三度連続で短刀が投げ込まれる。それはよく見ると土と岩の混じったもので、それを俺は暁の牙で一度で斬り伏せる。


「ミドルレンジの術か……精度は悪く無いが、それだけだな」


「もらったあああああ!!」


 そして背後から気配が来た。まさか隙でも出来たと思ったのだろうか。呆れながら俺は軽くバックステップをして逆に接近しながら後ろ向きのまま刀身で拳を受け止める。


「嘘でしょ? 完全な不意打ちだったのに――――」


「不意打ちなら声を出さないように、じゃあお休み可愛いレディ達」


 俺は暁の牙に少し聖霊力を込めて一閃すると二人を同時に気絶させた。そして更に不意打ちを狙っていた男子二名をレイ・フィールドを展開する事で動きを封じる。

 この術は場を浄化する以外にも光位術士以外の動きを阻害する効果も有る。それが下位術師なら余計に効果は大きくなる。


「う、動けなっ――――がっ」


「こんなはずじゃ――――うっ」


「女の子を囮に攻撃とはオッサンは感心しないなぁ……それっ!!」


 そして動けない二人に極小の威力で眉間にレイアローを放つ。それだけで二人は気絶した。たぶん死んでは居ないだろうが一応確認すると呼吸はしているから大丈夫だろう。そして一人青い顔して突っ立ているバーナビーを見る。


「お、お前何者だよ……水森家に清一さん以上の使い手がいるなんて話聞いてねえぞ!! お、お前本当に何者なんだよ!?」


「さっき自分で言ってたろ、流れの術師だよ?」


 何の感慨も無くポンと言葉が出た。普通はここでニヤリと笑ったり皮肉めいた一言でも言えれば良いのだろうけど雑魚相手にイキがるのは違うし子供相手に大人がやる事じゃない。なぜならこれは教育だからだ。


「お、お前のような流れ者いるかよっ!? やるしかねえのかよ……クソッ!!」


「お前が土下座して、ここの私の雇い主の清花お嬢様に許しを請い無様に謝ったら見逃してやるよ」


「ええっ!? なっ、何で私なんですかレイさん!?」


 テラス席の柱に隠れてこちらを見ていた清花が慌てたように文句を言って来たが無視する。俺は飽くまで彼女の護衛と言う立場を取っておく事にする方が無難だと判断した。利用できるものは何でも利用するのが俺の最近のスタンスだ。


「そんなのゴメンだ。こんな無能の劣等に俺が、この岩壁家の次期当主の俺が謝るわけねえだろ!」


 そう言った瞬間にバーナビーは両腕に平たいグローブのような物を装着し前面に構えた。はじめ見た時それはグローブのようだったが左右がピタリ合わさると中央に岩盤が生成され盾のように変化していく。


「ほう、面白いな……神器に近い聖具と言ったところか?」


「そうだ、これが俺専用の上位聖具『岩戸の盾』だ。この盾はどんな攻撃も通さずそのまま押し潰す攻防一体の俺の武器!! そして来い!!」


 今度はバーナビーの周りに土聖霊の牛、いやバッファロー型の聖霊が二体出現する。PLDSを見るまでもなく聖霊力から判断すると聖霊獣クラスの雑魚だ。

 王クラスならレオールは呼び出す気だったが、そう思って上空をチラリと見るとスカイは一声鳴くとその場で消えた。


「「なっ!?」」


 その行動を見てバーナビーと清花が声を上げて次の瞬間にバーナビーが激怒した。当たり前だ。あれは向こうの最高戦力で精霊を二柱、そして自分の聖具を最大で展開した。

 つまり本気も本気だ。それに対して俺は精霊を引っ込め暁の牙を納刀し杖のようにして立てたからだ。


「少し強いからってぇ……舐めるなああああああ!!」


「良いから来い……」(頭に血が上って実力差すら分からないのか……場慣れしてないだけか、それとも単にアホなのか)


「うおおおおお!! ロックシールド・フルチャージ!! お前達も同時にタックルだっ!!」


 三方向からの同時攻撃、土煙を上げての一斉攻撃で速さも悪く無い。だから俺は食らってみる事にした。何もせず聖霊力を体に少し回してただ立っている。後ろから清花の声が聞こえたが俺はため息を付くだけしか出来ない。


「はぁ……」


「レイさん!? あれは三期生で一番の威力の術です逃げて下さい!!」


「俺の技に腰抜かして動けないのかっ!? 行けえええええ!!」


 そして激突、二柱のバッファローも俺の左右から、そして正面からはバーナビーが盾を構え押し潰そうと来る。この技は背後に逃げたり上空への逃げ場が有るのには対策しなくて良いのだろうかと考えながら俺はその攻撃と正面衝突し辺り一面には凄まじい土煙が巻き上がった。


「レイさんっ!?」


「すり潰されろっ!! 生意気な流れ者がああああああ!!」


 そして聖霊力を込めて盾を更に硬質化させて俺を潰そうとしているようだが気付いていないのだろうか盾が削れて崩れ始めている事に……。そして土煙が晴れた場所には俺だけが立っていた。


「終わりか、まさか最弱の聖霊壁すら突破出来ないと思わなかった。一部術式も用意してたんだがな……これは落第だな」


 二柱の聖霊は俺に触れた瞬間に消滅し還され、肝心のバーナビーは俺の正面に尻餅を付いていた。そして彼の両腕の盾にそれぞれヒビが入り最後はバラバラに砕けた。


 実はこの聖具は彼の父、現当主が若かりし頃に修行で使っていたもので次期当主に一番近い者に与えられる名誉の聖具でも有った。もちろん俺はそんな事は知らなかった。


「まさか刀すら使わないで砕ける盾とは……矛盾と言うものを試してみたかったのだが、触れずに壊れる盾か中々笑えるな」


「あ、アアアアアアア!! ダディから貰った俺の盾がアアアアアアア!!」


「盾なら盾としての機能をパパに付けてもらうんだな、触れる前に粉々になるなんて不良品じゃないのかその盾。お前の本国アメリカなら訴訟もんだぞ」


 そして俺は暁の牙を抜くとバーナビーの首筋にピタリと黒い刀身を這わせた。撫でるように優しく触れていく。


「あ、ああ……うっ」


「さて、ではオッサン、いや今後はお兄さんの講義は……ん?」


 見ると白目を向いて失禁しているバーナビーが居た。嫌な匂いが漂うので俺はその場を離れて隠れている清花の方に行く。


「あ、あの……レイさん」


「今日の事黙っていられますか水森清花さん?」


「へっ? ええっと、その……」


 困惑しているようだが俺はこの状況を上手く利用しようと考えている。彼女は水森家の人間だ。色々と気になる点も有るが、せっかく出来た接点だから逃がすわけにはいかない。


 本来は1ヶ月くらいは覚悟していたが彼女と知人、友人になれれば水森本家に客人として堂々と入れる可能性すら有る。清一と会えればもっと早く済むのだが今の立場上会うのは難しい。だから今はどんな手でも使う。


「後日またお会いしましょう。もしアナタが黙っていてくれるならフローとネットでの会談の場にお呼びします」


「えっ、は、はいっ!! わたくし何も見て無いし、知りません。実家にも、そう報告致します。それとこれ私の連絡先です!!」


 話の分かるお嬢さんで助かった。そして済まないフロー、今回また迷惑をかけるのが確定してしまった。アイリスを救った暁には何でも言う事を聞くくらいはしないとまずそうだ。


「分かりました。早ければ明後日には社の方に伺います。では失礼します」


「はい、レイさん!! また後日!!」


 そうして俺はその場を悠々と後にした。途中で待機していたスカイに焼き鳥みたいだったぞと言うと突かれた。炎聖霊なんかに偽装したお前が悪い。もし炎央院に目を付けられたらどうすんだと、そんな懸念を抱きながら俺は帰路へ就いた。

 しかし俺は、この時この裏で大きな動きが有った事をまだ俺は知らなかった。





 一方、少し時は戻り、ここは東京某所、聖霊使い四大家総会議、通称『四大総会』は荒れていた。議題は昨日の羽田空港での黒い妖魔との戦闘と謎の術師の暗躍による責任の所在だった。


 その会議室には円卓が有り、東西南北の位置に各家の当主が坐していて、隣に各家のナンバーツーが傍に控えている。つまりこの会議室には今、八名の人間が居る。


「今回の件はやはり炎央院家の管轄で起きた事ですので差し控えたい、ただ私の娘の琴音が善戦した事は各々方にはキチンとご理解して頂きたい」


 まず発言したのは北の位置に坐する涼風家の当主の迅人だった。線は細いがこの中で一番の聖霊力を誇り術の純粋な強さなら彼が最高だろう。その彼が眉間に皺を寄せて書類の内容を見て不満を告げた所から今回の会議は始まった。


「確かに、いや確かに涼風家の琴音嬢は大変善戦されたようですな。そして謎の術師に一瞬で敗れた。いやいや失礼、一瞬では無く一撃だったか?」


 涼風家の当主、迅人はやとが娘の弁明をすれば横から口を出したのは紺色の紋付き袴を着た偉丈夫、体格は190センチを超えている水森家の当主の水森令一は、せせら笑うように迅人の言葉を一蹴する。二人の視線が合わさり敵意を隠そうともしないのは有る意味清々しいほどだった。


「Hey,落ち着きマショウ皆さん。今回はワタシがギチョウです。ここは今回の責任のカンカツの炎央院さんに話してもらいマショウ」


 そして西の位置に坐しているのはこの中でも異質な米国人のアイザム=ロックウェル、漢字では岩壁愛咲矛(アイザム)と書く。先々代に気に入られて先代との熾烈な当主争いをして現在の地位に就いた者で今見せている温和な表情とは裏腹に腹の中は真っ黒だ。


「ふっ、異国人風情が貴様は進行だけをしておれば良いのだ。しかし彼奴の言う事も一理ある、我が家の方針も話そう」


 そして東の位置に坐しているのが炎央院刃砕だ。つまり令一は南の位置に坐している。これが日本の術師のトップの四大家で、それぞれが互いをけん制し合っているのだが、実は炎央院と涼風は表向きは敵対しながら四家の中では密約を交わしているのでこれはパフォーマンスだ。この事実を他の二家は知らない。


「――――と、言うのが我が家の分析だ。顔は分からんが空港での調べ更に状況を鑑みて当家の不始末と言うよりは対外的な勢力、例えば中国、もしくは岩壁家に所縁のある米国……などが怪しいと考えるのだが?」


「HAHAHA!! なるほど、さすがは炎央院家デスね。このタイミングで我が家に責任を擦り付けて来るのデスカ」


「ですが、当家としても納得が行きます。少なくとも件の術師は我が家の、ここに居る早馬や娘の楓に含むところが有るらしい。対外部門で競合する事の多い岩壁家が何らかの関りがあっても違和感は有りませんな?」


 そこで畳み掛けるように迅人がアイザムに言った事でピクンと少し眉が動く、するとすぐに隣に控える彼の義理の弟のジュリアスがゴホンと咳払せきばらいをしてアイザムに目線を配りながら落ち着くように見ていた。


「弟が優秀なようだな岩壁の、して返答はどうだ?」


「これはこれは手厳しい……では……」


 他の三家のプレッシャーを物ともせずにアイザムは内心の動揺を隠しながら静かに口を開いた。四家の不毛な争いはまだ始まったばかりだった。

誤字報告などあれば是非ともよろしくお願い致します。


ブクマ・評価なども有ればお待ちしています。

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