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光を受け継ぎし者 ―追放された光は導かれ再起す―  作者: ネオ他津哉
第三章「歩み出す継承者」編
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第88話「語られる過去と真実(前編)」

更新を一時再開します。三章終了まで更新予定です。よろしくお願いします。


後書きの下に他作品へのリンクが有りますのでよろしくお願いします。



「それで二人だけで話とは何ですか、炎央結界の話なんて嘘ですよね」


 実の所、炎央結界については水森家に出張前に既に準備は終わっていて後は発動させるだけの段階まで来ている。つまり炎央結界の話なんてする必要は無い。


「ええ、分かった上で来てくれて感謝するわ」


「それで本題は何ですか、そんなにアイリスに聞かせられない話ですか?」


 二人だけで会いたいと言われ向こうが指定して来たのは南邸だった。だから俺は南邸の庭にある見通しのいい東屋を集合場所にと言った。


「ふっ、そこまで警戒しなくても何もしないわ」


「何事も備えあれば患いなしです世の中何があるか分からないですから」


「そう……ね、今はもうそんな関係ね私たちは……」


 俺が言うと珍しく愁いを帯びた表情で何か言いたそうな顔をしていたが今はそれより聞かなければいけない事があった。


「はい、なので本題をお願いします」


「ええ、まず母様の事を調べてくれて感謝するわ黎くん。その上でお願いがあるの今夜、お父様たちから真相を聞き出す協力をして欲しい」


「はい、そもそも俺が受けた話なので協力はしますが、いきなりですね何か算段が有るのですか?」


「無いわ……だけど、さっき母様のお墓参りに行って来たわ」


 いつだったか疎遠になる前に一緒に叔母さんの墓参りに行った。その時に聞いた話で迷ったら墓前で相談すると言っていた事を思い出した。


「分かりました……では夕食後に、アイリスには俺から伝えておきます」


「あの子も来るのね……炎央院の話だから出来れば身内だけでしたいのだけど」


 そう言った炎乃海姉さんの顔は初めて見る複雑な顔をしていたが俺は少し考えた後に口を開いた。どうやら根底から認識が違うようだ。


「何か勘違いしてるようですが俺は既に炎央院の人間では無く外部の人間です。なので今日参加するのはレイとしてであって死んだ黎牙では有りません」


「黎くん今はそういう話を――――」


「すいません。ですが俺は俺の考えを……三年前のケジメを貫きたいんです」


 俺は過去の出来事によるいさかいは徐々に無くして行きたいと思っている。だけどそれは光の継承者としてであって炎央院の元嫡子としてではない。それが俺なりのケジメだ。


「でも……」


「大丈夫、アイリスは……俺の妻は肝心な所は口が堅いので安心ですよ」


「そう……それさえも許されないのね」


「どういう意味ですか? 俺はあなたの髪を斬った時、それと日本支社の発表のプレゼンの時に全てあなたとの因縁は断ち切りました。なので隔意はありません」


 俺が言うと炎乃海姉さんはフッと笑うと深い意味は無いとだけ言ってため息をついて沈黙した後に一言、分かったと了承してくれた。


「では私がお父様たちには事前に招集をかけるから二人で来て、真炎と炎乃華には気取られないようにお願いね」


「分かりました。何度も言いますけどアイリスは炎央院の家名を傷付けるようなことはしませんから大丈夫です。ああ見えて空気は読んでくれるんですよ」


「ええ、でしょうね……ここ数週間でよく理解したわ……」


 その後、二人で打ち合わせを済ませると時間をずらして東屋を離れた。





 あの後、戻って炎乃華と鍛錬で軽く汗を流しアイリスと戻って来ると先ほど決まった話をしていた。


「と言うわけでアイリス、たぶん向こうは当主と補佐の二人が出て来るだろうから基本的には俺と炎乃海姉さんがメインだから証人みたいな立ち位置になると思う」


「う~ん、了解だよ。でも私は嬉しいけどレイ……参加して良いのかな」


「大丈夫、恐らく家の秘密や自分の母親のことを外部には漏らしたくなかったんだと思う……だけどアイリスに隠し事はしたくないんだ俺は……」


「レイ……うん。分かったよ」


 それにアイリスには全幅の信頼を寄せている。出逢ったあの時から、七年前に命を救われた時から、そして三年前に俺を救うために昏睡状態になった時から俺の命は彼女に捧げると決めたし離れる事は無いと誓った。


「少し重いかもだけどさ……俺の決意は昔から色褪せないよ」


「うん。でも重さなら私だって負けないよ~」


 鍛錬後の少し汗のにおいがする妻を抱きしめながら同時に風呂に入ろうと決めた。たぶん俺も鍛錬後で汗臭いはずだ。そして、あっという間に時間となった。


「来たわね黎くん、それと光の巫女アイリス……今日はよろしくお願いするわ」


「お任せ下さい、お姉様……」


 俺は黙って頷くと炎乃海姉さんに続いた。この奥の間は俺がクソ親父に追放を言い渡された部屋で前と立場も状況も変わったが一番変わったのは横に最愛の妻がいるということだ。


「失礼する」「失礼しま~す」


 室内に入ると事前の打ち合わせ通り衛刃叔父さんとクソ親父と、あの女の三人がいて他の人間は居ない。


「では本日の話なのですが……」


 炎乃海姉さんが進行をするようで緊急の議題として話をしたいという前置きから始まり今日の俺たちの話、そして水森と涼風の家でのオフレコ話を機密に触れない程度で話していく。


「それで……なんですが……」


 炎乃海姉さんが俺をチラっと見た。場は温まったようで俺は頷くとアルバムから抜いてきた数枚の写真を取り出し畳の上に置いた。


「こちらの写真の女性についてお話を……お三方の話を聞きたいのです」


「これは冷香か……レイよ、どういうつもりだ?」


「はい、事情をお話します。私が一月ほど前に出雲に出張した際に去る方より話をされました……その方は俺に言いました『娘は炎央院に殺されたと……』俺にそう言いました」


凍夜(とうや)様か……すまないレイ余計な面倒を――――」


 叔父さんは深く頭を下げるが当然ここで終わらすことはしない。叔父さんが頭を上げるまで待つと俺はさらに本筋に切り込んでいく。


「それ自体は構いません、そして私は……いえ俺は水宝寺凍夜(とうや)殿に約束しました。娘さんの死の真相を聞き出すと」


「それは……出来ない。我が家の秘事だレイ、殿」


 そう簡単に話すとは思っていなかったから俺は事前の打ち合わせ通りことを運ぶことにする。再度、従姉を見ると彼女が頷くのを確認して口を開いた。


「そうですか……なら炎乃海殿の片腕が吹き飛びますがよろしいですか?」


「なっ、黎牙……いや、すまんレイ殿、冗談が過ぎる……」


「炎乃海殿には了承を頂いてますので」


「私も本気です……お父様、それを提案したのは私です」


 これも本当だ。二人で話した時に叔父さんが隠しているのは明白だったしアイリスの話や資料の秘匿ひとく具合で話したくないのも分かっていた。


「そんなブラフに乗るほど暇では無いのだ、いい加減にしろ二人とも」


「より本気を見せるのなら私はユウクレイドル家の力を使う事も考えてます」


「ふぅ、なら分かった資料を開示しよう……それを見てもらえば……」


 それも分かっていた。そして資料の持ち出しに気付いてないようだ。俺は目線を隣のアイリスに向けると頷いてアイリスは資料のコピーを差し出した。


「あの衛刃叔父さま、その資料ってのはこれですよね?」


「なに……それを、黎牙!! 炎乃海っ!! 二人ともそこに直れ!!」


 ビクンッと過去に叱られた記憶が蘇って俺も炎乃海姉さんも一瞬だけ姿勢を正してしまったがすぐに気を取り直して冷静さを取り戻す。


「……大声を上げたのは何かまずい事が有るからですか」


「まだ言うかっ――――「お父様、母様に何があったかを教えて下さい……お願いします」


 深く額を床に着けるように頭を下げた炎乃海姉さんを見て俺とアイリスも頭を下げた。そして沈黙が支配した室内で口を開いたのは叔父さんでも俺達でも無かった。


「衛刃よ……あれは事故だった。お前は何も悪くない、務めを果たしただけだ」


 口を開いたのはクソ親父だった。奴が喋り出したなら頭を下げる必要は無いから俺は顔を上げて見ると珍しく後悔しているような顔をしていて不思議だった。


「兄上っ!? ですが……」


「楓果、話すが……よいな?」


 さらに今度は横にいる女にも確認を取っている始末だ。今この場は奴が動かしているのは気に食わないが話してもらうまでは仕方ない、炎乃海姉さんは未だに頭を深く下げたままだった。


「お好きに、私には何も言うべきことは有りません」


「兄上、当主として……今の私は……」


「衛刃頼む……」


 三人だけの会話が続き最後にクソ親父の一言で叔父さんはついに折れたようでこちらに向き直る。そして口を開いた。





 衛刃叔父さんはあれは二十三年前、その日は炎央院の中でも本家の人間の一部にしか知らされていなかった極秘の儀式が執り行われる予定だったと話し始めた。


――――二十三年前


「衛刃、俺が一人でその山奥の結界内に行ってコイツを置いて来るんじゃだめなのか……完全に年寄り連中の嫌がらせだろ」


「兄上、これは父上も言っていたように立派な儀式です。兄上はそもそも当主としての教育を受けて無かったので知らないかも知れませんが炎央院の初代から続いている儀式なんですよ」


「だがな……身重の楓果まで連れて行けというのはな」


 当時、当主としては聖霊力、人望など様々な面から衛刃叔父さんが推されていたが武者修行に出て問題を起こした炎央院刃砕はこの時点で責任を取る形で当主に内定していたらしい。


「別に問題有りません……私も、そしてこの子も柔ではありませんので」


 そしてその問題の原因の一つが俺だった。いや俺は全く悪くないぞ悪いのはクソ親父だ。


「でも今の楓果さんのお身体はそれこそ炎央院の至宝にも等しいのですから……これと同じように」


「冷香……お前もそれを落とさないでくれよ。それには文字通りの炎央院の至宝が入っているのだからな」


 そして山道で三人の少し後ろから付いて来ていたのは当時は元気だった炎央院冷香さん、炎乃海姉さん達の母親で俺の叔母に当たる人で、その人は大事そうに木箱を抱えていたらしい。


「分かってます。ですが人の命より重い物など私には無いようにも思いますので」


「ふっ、さすがは水森の肝煎りで懐刀と言われた水宝寺家のご令嬢、私のような分家の傍流とは違って素晴らしいお考えですわね」


 ちなみにこの女は俺が腹にいる前からこんな感じだったらしい。昔から性格はいけ好かない女で冷香叔母さんとは大違いだ。


「あら、私また何か余計なことを?」


「いいえ、休憩はもういいので参りましょう。私が足を引っ張って儀式が遅れては刃砕様の沽券に関わりますので……」


「本当にいいのですか? お腹も目立って来ていますし、もう少し休まれても……」


「問題無いと言ってます!! 参りましょう」


 クソ親父の沽券が云々などと言ってるけど実際はこの女のプライドや冷香叔母さんへの対抗心だろう。叔父さんは否定したがクソ親父が目を反らしていたので多分当たっていると思う。


「冷香も心配は無用、俺が楓果と腹の子は守る。その子は将来の炎央院の中枢を担う大事な後継ぎとなるべき子。俺とは違って正当な嫡子だ」


「兄上……今は兄上こそが正当な炎央院の当主なのですから、それを託された時から炎央院刃砕こそが当主であると上の者は皆、納得させられています」


 叔父さんが言ったのは叔母さんが持っていた箱の中身だった。その箱の中には炎央院の中でも特に重要な至宝が収められ運んでいたらしい。ちなみに箱と言っても小さな木箱だったそうだ。


「あの小屋、と言うか寺社のような建物でしょうか刃砕様」


「ああ、すぐに置いてさっさと帰ろう、山の天気は変わりやすいしな」


「兄上……奉納の儀をキチンとしなくては、これはっ!?」


「あなた、来ますっ!!」


 そして現れたのは悪鬼と妖魔の大群だった。真っ先に気付いたのは冷香叔母さんで水聖術で結界を作りつつ自身の聖霊を呼び出しながら身重の女を守っていた。


「くっ、私も戦えますっ!!」


「ダメです楓果さん、そんな体で動いたら中の子が危険です。経験者の私が言うんですから聞き分けて、何のための護衛だと思ってるんですか!?」


 俺はあの女が戦った所を一度も見た事が無いが結婚前はクソ親父に真っ先に向かって行ったらしく武闘派で有名だったらしい。俺を追放したり裏で色々と仕組んだりと奸計に優れた一般的な風聖師だと思っていたが違うみたいだ。


「兄上、深追いは!!」


「問題無い、全て蹴散らしてやるっ!! 炎鎧亀、炎瑞王来い!! 奥伝解放!!」


 そしてクソ親父こと炎央院刃砕は全盛期の聖霊力で敵を蹂躙した。その時の光景は圧倒的だったと当事者の二人は語った。


「さすがは兄上だ……」


「聖霊力ならお前の方が上だ、俺は体だけは丈夫だからな……衛刃よ楓果を頼む。俺は戦闘では視野が狭くなる、お前が見ていてくれ」


 さっきまでの俺が守るとか言っておいて戦闘になると守りより攻撃なのは昔からのようだ。そして全てを殲滅した時、突然見た事も無いような敵が現れた。


「ぐっ!? なんだコイツは……聖霊力が皆無? いや有るのに無い?」


 そして巨大な亀と鳥の聖霊王が同時に、その半透明な限りなく無色に近い白の細長い蛇のような化け物に襲い掛かったが一瞬で還されたらしい。


「馬鹿な、最強の聖霊王が二柱も一瞬で……だと……」


「刃砕様危ない!! 氷鋭麟きなさい!!」


 全力の攻撃が通用せず逆に自らの聖霊が倒され隙が出来てしまった炎央院刃砕だったが、それを咄嗟に庇ったのは冷香叔母さんと聖霊だった。


「これでも氷麗姫の二つ名も賜った水森の影の護衛です!! 舐めるな魑魅魍魎め、このまま封じます!!」


「う、うむ頼むぞ冷香よ……これで決める、炎の断罪を受けよ炎滅紅覇の一拳、うおおおおお!!」


 封印で動きを止められた化け物は秘奥義の一撃の直撃を受けて動きを止めたかに見えたが次の瞬間、爆発し周囲に飛び散った。そしてその一部は固まったまま二人を飛び越え後方に向かったらしい。


「あ、危ない刃砕様!! きゃああああ!!」


「くっ、冷香!! この動き……まさか狙いは楓果と衛刃の方か」


 敵が飛び散った際の爆発からクソ親父をまたしても庇った冷香叔母さんは動けなくなったそうで、その場に座り込んでしまったらしい。


「行って、下さい刃砕様……楓果様とお腹の子は、何としても……」


「すまん、二人を連れてすぐに戻る!!」


 そして当時のクソ親父は一瞬躊躇した後に二人の救援に向かった。そしてそこで見たのは先ほど倒した敵と同じ謎の化け物が二人を襲っている光景だった。


「楓果、衛刃!! 無事か」


「兄上、こやつら術がまともに通りません」


「刃砕様、風聖術も通じません……意思を持たぬ敵のようです……このままでは」


 二人も健闘したらしいが全盛期の叔父さんでも俺が腹の中にいた状態のあの女を守りながらでは、かなり不利な状況だったらしい。


「衛刃、その中身は確か神器だったな?」


「はい……まさか、これを?」


 二人が見るそれは先ほどまで守っていた木の箱で冷香叔母さんが、あの女、炎央院楓果に預けていたものだった。


「うむ……この状況も危険だ、それに冷香も早く救出せねばなるまい」


「冷香が、ですが今はお二人の安全が最優先で、その次が神器です!!」


「ふぅ、なら私の嫁入り道具が役に立つのでは? 刃砕様お使い下さい」


「しかし、あれはお前の、いや正確には迅人のものだ」


 だが、あの女は木箱を開けると中に収められていた神器を二つとも取り出していた。それが涼風家の三つ有る神器の一つ『断空ノ破迅拳』、そして炎央院の家に伝わる神器の一つ『獅子の涙』だった。


「四の五の言わずにお使い下さい。右手は神器ではなく限りなく神器に近い聖具と聞いてます。なので神器の右手の甲に獅子の涙を、それが発動条件と聞きます」


「迅人が……やつが言ったのか?」


「はいっ、迅人様が私に託してくれました物です。お使い下さい!!」


 そして神器の甲の窪みに獅子の涙を装着した時に炎風が巻き起こった。

誤字報告などあれば是非ともよろしくお願い致します。


ブクマ・評価なども有ればお待ちしています。

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