第5話
風魔法の練度をしようと決心してから、4年くらいがたった。
俺ももう5歳だ。
あれから風魔法も練習して、氷魔法までとはいかなくても、だいぶ練度が上がった。
今なら一瞬で魔法を想像できるし、右手に氷魔法、左手に風魔法なんてことも出来る。
さらに魔法だけではなく、簡単な国の歴史や場所、武術なども習得した。
身体が小さく剣が振れないので、ナイフ術を学んだのだが、ぶっちゃけ小剣よりも扱いやすい。
(レイって暗殺執事だったりして…)
そんなしょうもないことを考えながら主義よしていたら、5年たっていた。
ゲームでは3歳くらいから魔法を使いだして、5歳で注9魔法を使ってたっけ。
(まぁ色々あって魔力がなぜか増えて上級魔法使えるようになったけど)
それはそうと、ゲームよりも早いのだが、もうお嬢様の家に執事として行くことになった。
5歳で執事が務まるのか? と思いはするが、どうせすぐ執事になることになるのだったら、早い方がいいだろうと思い決断した。
「行ってきます父さん」
「ああ……」
淡白な返事、別れを惜しむ様子もない。
(まぁいつもの事か)
俺はそう割り切り、お嬢様の家から来た使いの馬車に乗ってお嬢様の御屋敷へと向かった。
屋敷に着くと、メイドさんに連れられて採寸が行われた。
執事服を作るためらしい。
「あの〜レイ君って本当に男の子ですか?」
「え? 男ですけど……」
「嘘でしょ!?」「私たちよりも女の子してるわよ!?」「すごい美少女」「男の娘?」
採寸している時に、メイドさん達にそんなことを聞かれたが、そんなに女に見えるのだろうか。
そう思い、聞いてみると全員に頷かれた。
(レイだからな、仕方ない)
なんとも言えぬ気持ちだが、そんなこともよりも大事なことがある。
この後、お嬢様に会うのだ。
ゲームでは過去のお嬢様が描かれることは余りなかったため、どういう人物かが分からない。
流石に5歳で悪役令嬢に染まっているってことは無いと思いたいが、こればかりは会わないと分からない。
そんなことを考えていると、採寸が終わったようで執事服を渡された。
作るの早っ、と思ったが、ある程度の大きさで服は作っていたらしい。
後は微調整をするつもりだったらしいのだが、俺があまりにも華奢、細すぎたせいで採寸して、急いでスキル持ちが直したらしい。
(裁縫スキルって意外とすごいな)
一瞬で縫い直されていく様は、見ていて楽しかった。
「レイ君、この先でお嬢様が待っているわ」
「分かりました」
メイドさんに執務室の様な所まで連れてこられた。
「すぅー…はぁー……」
深呼吸をして、緊張をほぐす。
ぶっちゃけお嬢様に会うのはとても緊張する。
俺は人見知りなんだ。
メイドさんがノックをして、中にいるであろう公爵様に声をかける。
最近思い出したのだが、お嬢様は公爵家の令嬢だったのだ。
つまり、とてつもない地位にいて、権力を持っている。
まさに悪役令嬢にピッタリな設定だと呆れてしまったくらいだ。
「入れ……」
中から公爵様らしき人物の声が聞こえて来たので、俺は「失礼します」と声をかけて中に入った。
(ほぉ…!)
中は広く、美しい装飾が施されている。
「君がレイ君かね?」
「はい、私がレイです」
俺はすぐさま片膝をつき、返答する。
「楽にしたまえ、私は硬いのは好かんのでね」
公爵は笑いながら言った。
「それでは、お言葉に甘えて」
俺はその場に立ち上がった。
「うん、それでいい。 すまないね執務室に呼び出して」
公爵は申し訳なさそうに言ってきた。
「気にしないでください。 この執務室は、主張しすぎない程度での美しい装備が施されていて、素晴らしい部屋です」
俺は思ったことをそのまま口にした。
「そうかい? そう言って貰えると嬉しいよ」
「お父様、お話の途中申し訳ありませんが、そろそろご紹介くださいませんか?」
公爵と談笑していると、鈴を転がしたような心地の良い声が聞こえた。
声の方を見ると、そこには美しい金髪と海の様に深い碧眼をした美少女がいた。
「やぁ、すまないアリス。 レイ君、こちらは私の自慢の一人娘のアリスだ」
公爵がそういうと、アリスがこちらを見て微笑んだ。
「アリス・フローリアです、よろしくお願いしますレイ君」
幼さが残りつつも、大人の雰囲気を持つアリスは、妖艶で、それでいて妖精の様に可愛らしかった。
「私はレイと申します、よろしくお願いいたしますアリスお嬢様」
そう言うと、アリスはニコッと笑ってから聞いてきた。
「ところでレイ君は女の子ですか?」
「私は男です……」
アリスの質問に対し、そんなに女に見えるか? と思いながら返答すると、驚いたような顔で「そうなんですか? 可愛らしいお顔をされていたのでてっきり女の子かと」と言われた。
「ありがとう、ございます?」
そう返すと、アリスや公爵、公爵婦人がクスリと笑った。
「これからよろしくお願いしますね、レイ君」
「はい、お嬢様」
こうして不安だった顔合わせはい、良そう以上に良い結果で終わったのだった。