第4章 「友情の合体兵装」
会議室でのミーティングを終えた私達は、ミニバン仕様の武装特捜車に乗り込み、巡回パトロールに向かいましたの。
私と葵さん、そして西来天乃中尉の特命遊撃士3名は、個人兵装の収納されたケースを携えて中央列を占拠し、前列と後列は曹士の子達が席を埋めたのですわ。
天神川分隊の残る3名は、武装オートバイと武装サイドカーに分乗しているのですが、このうち分隊長の天神川久遠准尉は、全体の指揮を執る都合上、側車に腰を下ろされていますの。
武装特捜車1台に2輪車両が複数台。
普段の巡回パトロールにおいては、ポピュラーな車両構成ですわね。
もっとも、これが新人研修の一環で行われるパトロール研修になりますと、多少は構成が変化致しますわ。
武装特捜車が1台増えたり2輪車両が全て武装サイドカーに置き換えられたりといった、ほんの微々たる変化ですが、研修生を指導する先輩遊撃士や特命教導隊員も同席する都合ですわね。
何しろ3年前に河内長野市で発生した「サイバー恐竜事件」よろしく、パトロール研修に参加した部隊が事件に巻き込まれるケースも考えられるのですからね。
本隊到着までに現場での初動対応が恙なく出来るよう、指揮官候補要員を同行させて損はありませんわ。
さて、あんまり物思いに耽っているのも考え物。
意識を現実へと引き戻してみますと、運転席の後ろの席に腰を下ろした銀髪の少女が、興味津々とばかりに私達の個人兵装のケースに視線を注いでいるのに気づかされるのですわ。
「准佐の御2方の個人兵装には、合体機構が搭載されているのですね。」
声色の弾み具合から察するに、どうやら天乃さんは私達に好印象を抱いておられる御様子。
私や葵さんとも相応に打ち解けたようで、まずは一安心ですわね。
「そうだよ、天乃ちゃん!私のガンブレードとフレイアちゃんのエネルギーランサー。合体させたら、ガンブレードランサーとして運用出来るんだ。」
そんな殊更に胸を張って、葵さんったら随分と得意そうですわね。
卑近な語彙で形容するならば、「ドヤ顔」と申すのが適切でしょうか。
「だけど、私達2人の息がピッタリ合わないと、持ち味を完全には引き出せないんだ。私とフレイアちゃんの友情が大前提のピーキーなロマン武装なの。」
もっとも、私を憎からず思って下さる事を言葉の端々に含ませるのですから、私としましても葵さんの事を益々お慕い申し上げてしまいますの。
全く葵さんったら、私をソノ気にさせるのが御上手なんですから…
「ねっ!そうでしょ、フレイアちゃん?」
葵さんに可憐な笑顔を向けられますと、私の頬も自ずと緩んでしまいますわ。
その天真爛漫な朗らかさは、私にとっては魔性の甘露ですの。
「ええ!おっしゃる通りですわ、葵さん。私と葵さんが繰り出す『神雷断罪剣』、天乃さんにも間近で御見せしたい所ですわね。」
嗚呼、またしても私の悪い癖ですわ…
私ったら気が緩むと、ついつい大口を叩いてしまいますの。
先日の美術の授業でも、出過ぎた放言をしてしまったと言うのに…
もしも私が天乃さんや天神川分隊の方々に、「高慢で高飛車な尊大御嬢様」という色眼鏡で見られてしまっては一大事。
何とか、話題の方向性を転換致しませんと…