元聖剣勇者と契約
今日はもう1話出す予定です。
戦闘を終え、仰向けに倒れた俺はもう身体のどこも動かせなかった。
集中力も切れ、視界もだんだんぼやけてきた。少しでも意識をもっていったら、もう戻ってこられなさそうだ。
「あと、3分ぐらいか」
冒険者という職業を選んだ以上、死ぬ覚悟は持っていて、幾度となく、死を感じたことはあったけど、こう、もう目の前まで来ると、やっぱりすこし怖さがある。
「おい、お主」
誰もいない部屋から突然声がする。
ぼやけているので、よくは分からないが、俺のことを覗き込んでいる幼い少女らしい者が見える。
「あぁ、天使か」
どうやら、本当にお迎えが近いようだ。
天使は実在するらしい。
「ふむ、天使呼びというのは些か気持ち悪いが、まぁ、いいじゃろう。お主、先の戦いは見事であった」
「あっ、どうも、ありがとうございます」
「それで、お主は自分の人生をどう思っている」
「‥‥‥えっ?」
「これまでのことじゃ。どう感じる」
田舎の農村に生まれて、10歳の時、モンスターに襲われ、家族が全員亡くなった。15歳の頃、養ってくれていた近所の家を飛び出し、冒険者になった。中級者冒険者になり、聖剣に選ばれ、勇者パーティーが作られ、そして裏切られ。
「壮絶だな。正直、俺ほど濃い人はなかなかいないんじゃないか」
「その人生、やり残したことはないのか?」
「やり残したことか‥‥‥‥‥‥‥‥‥たくさんあるようにと思えてくるな。多くの人を助けたいって、いう大きなやつから、家族が亡くなってから、育ててくれたあの叔母さんに会いたいっていう小さなやつまで、次々と。さっきまで、怖いと思いつつも諦めていたのに、やっぱりまだ生きたいっていう感情が湧き出してくるもんだな」
「まだ生きていたいか?」
少女が優しく問う。
「生きていられる、なら、まだ、死にたく、ないな」
動悸が早く、息も絶え絶えになってくる。
声もだんだんと弱々しくなってくる
「なら、本題じゃな。お主、妾と契約せい」
「契約?」
「そうじゃ。お主が死にそうだから急ぐが妾と契約すればお主はまだ死ぬことはない。ただ、妾との契約には代償もあるし、失敗もある。それでも、妾はお主が気にいったから聞いておる。どうする」
俺の勘は信用できると言っている。
それに生きられる可能性が少しでもあるのなら、俺はそれを掴む!!
「いいぜ。例え、お前が神だろうが悪魔だろうがなんだろが契約してやろうじゃないか。どうせ、死ぬはずだった身体だ。生き残れるならなんでもいい。契約だ!」
「ふむ、契約完了じゃな」
その声と同時に俺の意識はフェードアウトした。
どのくらいの時間が経っただろう。俺が意識を取り戻し左目が開く。目には最後に見たような茶色の天井が見える。
「生きているんだよな」
ということはあの契約とやらが成功したってことか。
「ふむ、起きたのか。寝てた時間は約1日半か。少し遅いが体調面は概ね大丈夫そうじゃな」
頭の上から意識を失う前に聞こえた声が聞こえてくる。頭を少し後ろに傾けると、赤い髪の少女が見える。
あと、頭の辺りが妙に柔らかい。
少し考えて気づいた、俺は少女に膝枕されていることに。
遂にメインヒロイン登場です。
いや、長かった。そして、お待たせしました。
作者としてもこれからキャラクター同士の掛け合いができるので楽しみです。
さて、評価ボタン、ブックマークなどしてくれるとただでさえ掛け合いが書けるとなって今は高い、作者のモチベがグググっとアップします。よろしければお願いします。