幕間 聖剣使いとその後 1
キースが死んだと報告してから、レインたちは王城の訓練場で特訓を重ねていた。
「あー、暑い。やってられないわ。私、休憩」
「なら、我も休憩するとしよう」
「回復魔法を撃つ相手がいないので私も休憩します」
「なら、俺らも休憩だな」
「はい、そうしますか」
とは言っても、1時間軽く剣で打ち合ったり、魔法を撃ったりしているだけで、1日の大半は日陰でお菓子を摘みながら、楽しくお喋りをして過ごしている。
「いいんですか。皆さん、もっとやらなくて」
キースの代わりに入ったフウガが皆を咎めるが、
「いいの、いいの。どうせ、レインが聖剣の力をしっかり使えるようになれば、私たちなんてほとんど要らなくなるし」
「当然だな」
「だから、私たちはレインさん待ちなので。それに今でも私たちは十分強いのにこれ以上、特訓する意味はないじゃないですか。それよりもフウガさんも一緒に食べましょう」
「フウガだって、俺が認めた超一流の剣士だ。だから、大丈夫だって」
「わかりました」
結局、他の4人に流されて、彼自身も特訓をやめてしまう。
彼も元近衛騎士なので、王子の言うことには基本的に肯定する。
「それより、レイン。まだかかるの?遅すぎじゃない。もう2週間よ」
「しょうがないさ。あの元勇者の追悼などの無駄な式がいっぱいあったんだから。あのキース並みに時間が使えていれば、とっくにキースなんか超えてるよ。それに、少しぐらい遅れていたって、アッシュの力を扱えれば今まで倒せなかったモンスターもすぐ倒せるようになるさ」
「その通りです。僕は聖剣の中でも最強の聖剣ですから。レインが使えば、基本的にどんなやつだって倒せますよ」
「そうですよ、ルージュさん。レイン様はあの暇人と違って忙しいんです。気長に待ちましょう」
「そうね。わかってるわ。ちょっと、成果が出なくて焦っただけ。忘れて」
ルージュは気を落ち着かせるために目の前にあった紅茶を飲んだ。
「それで、キースって死んだのよね」
「俺が雇っている暗殺者集団に殺させたから間違いないな。あいつ、暗殺者四十人から三十分
近く逃げたらしいぜ」
「火事場の馬鹿力ってやつですね」
「あんな奴でも、死ぬ気になればできるんだな
」
「まぁ、最後は逃げた洞穴で足元が崩れ、そこの見えない穴に真っ逆さまだって。それに毒入りのナイフが当たってるから、死んだだろうって。一応、その入り口を1日監視したけど、誰も出てこなかったってな」
「穴に真っ逆さまに落ち、生きていても暗くて誰もいない中で死ぬ。フフ、ずっとひとりぼっちのあいつには相応しい死に方じゃない」
「でも、死体は確認してないでしょう。なら、生きているって可能性も」
「なぁ、フウガ。なら、お前は毒が回っている状態で底の見えない穴に落ちて、生きてられるか?」
「無理です」
「俺にも無理だ。なら、あいつには絶対に無理だ。わかるな」
「はい‥‥‥」
「なら、この話は終わりだ。誰か他の話題はないか」
そう言うとリオンはクッキーを無造作に掴み、口の中に放り投げた。
「そういえば、1週間前、魔剣が出たらしいですね」
「我も聞いたぞ。ライクルの街だったな」
「あー、あったなそんなこと。俺らに伝わる前に終わっていたらしいな。運良く、近くに他の聖剣使いでもいたか」
「それが、1人の冒険者によって倒されたそうです。なんでも真っ赤な剣を持った冒険者らしいです」
「なによ、それ。魔剣は聖剣を持った者でしか、まともに戦えないんじゃないの。上位の冒険者でもないんでしょ。その言い方じゃ」
「はい、名前なんか、全く出てきません」
「なら、デマだ。デマ。大方、魔剣だと誰かが勘違いして、それを倒したのが、その赤い剣をもった奴なんだろ。第一、ただの剣を持った冒険者が倒せるやつじゃねーよ」
「そうですよね。それじゃあ、この話もおしまいです」
そうそうにその話題を切り上げる、レイン達。
その近くで、
「真っ赤な剣。いや、まさか。あれを使える者がまた存在したなんてことは、いや、ないですよね」
というアッシュの呟きには誰も気がつかなかった。
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