元聖剣勇者と暗殺者1
初めて感想と評価を頂きました!
感想が来ていますの表示を見た時、久しぶりにガッツポーズが飛び出しました。
ぜひ、1番下の☆で評価してくださったり、感想をくださると作者は本当に喜びます。
マジです。
『夜の森を1人で歩くべからず』
これは自分が冒険者になって村にいた時も冒険者になるためにギルドに登録した時にも口酸っぱく言われたことだ。
夜の森はまず何と言っても視界が悪い。そして、夜はモンスターが活発に活動する時間でもある。
夜の森でモンスターに遭遇して戦っていたら、いつも間にかモンスターに囲まれていたことなんてよくある話だ。1人なのに寝るなんて頭のおかしいやつしかやらない最悪の行為だ。
だから、必ずパーティーを作る。自分が寝ている間の安全の確保と囲まれた時に戦いやすくするために。
そして、俺は絶賛追放されて、夜の森を1人旅中。強力なモンスターと戦った後で疲れているけど、寝るなんて論外だ。
「こりゃ、今日は徹夜コースかな。明日になれば、近くの村に着くし。そこで、モンスター討伐でもしながら、どこからの行商人の馬車の護衛でも引き受けて帰るか」
モンスターに気づかれないように気配を隠して歩く。
1度も戦闘することなく、2時間ほど歩いた。聖剣に選ばれるまでは1人でモンスター討伐などをしていたので、時々、夜の森を歩くこともあったが、ここまで一切モンスターとの戦闘がないのはかなり珍しい。
「これは、ラッキーかな。追放されて不運な分、ここでしわ寄せが来た感じか」
ふっと、一息つこうと思った時に、俺の左足に殺気を感じる。急いで、森の中に回避すると、さっきまで俺がいたところにナイフが突き刺さる。ご丁寧に毒と思われる緑色の謎の液体も付いている。
「毒付きのナイフ。暗殺か!」
「ほう、流石に聖剣に選ばれていたことはあるか。はっきりと毒付きのナイフだとわかるとわな」
低く伸びるような声が俺の頭上から聞こえてくる。
「このぐらいできなくちゃ、1人で冒険者なんてやってられないよ」
洞窟、夜、暗い場所は冒険者をやっていればいくらでもある。明かりを持つことをやめるためにはこのくらいの芸当はできなくちゃダメだ。
「なるほどな。我々も少し君のことを甘く見ていたようだ。でも、きっちりと仕事は果たさせてもらう」
そう相手がいうと、俺が回避したところに正確にナイフが刺さる。
さっきの会話中に移動していてよかった。
暗殺、誰からの指示だ?聖剣使いを抹殺しようとするやつか。いや、さっきあいつは「聖剣使いだった」と言った。
ということは‥‥‥なるほど、どうやら、本当にあいつは俺に生きていて欲しくないらしい。当然だよな、俺から聖剣をほとんど無理矢理奪ったなんて少しでも噂になれば印象悪いし。シナリオは強力なモンスターに会って、俺が死んで、その意志を受け継ぐような形で自分は聖剣アッシュに選ばれたみたいな感じか。
「見つけたぞ」
「やば」
少し考えすぎたようだ。居場所がバレた。そのまま、逃げたと思ってどこかへ行ってくれるほど甘くなかった。
ギリギリで回避すると、森の奥深くに向かって走る。
街道沿いは待ち伏せに遭う確率が高いので無し。森を通って周辺の村に行くのは、行った村に迷惑かけるし、村に先にレインの手の者が待っている可能性があるので危険。となると、暗殺者のテリトリーだし、モンスターもいるけど、森の奥に逃げてまくのが正解だよな。
森の奥へ走る。その周りからいくつもの毒付きナイフが四方八方、俺を捉えにくる。
やっぱり、1人じゃないか。
抱いていた淡い期待がうち砕かれたが、生き延びるために急所に来るやつを持っていた鋼の剣で落としつつ、当たらないように逃げる。
アッシュを持った後でもちゃんと手入れしておいてよかったな。今、十分役に立ってる。
スペアとして持っていたかつての相棒に感謝しつつ、逃げ続ける。
30分、逃げ続けた時、俺の体には10箇所もの軽い切り傷ができていた。逃げ始めてから約10分後に初めの切り傷を負い、体内に毒が周りはじめてから、どんどん体のキレがなくなり始めている。毒などの状態異常はリシアが(多分、嫌々ながら)治してくれていたから、持っていない。それに今、身体を蝕んでいる毒に利くのはマンリンデ草ぐらいで、あれは薬草の中ではかなりの高級品だ。追手の人数も俺の足が遅くなるほどに増えているのがわかる。
あと少しで死ぬな。自分の身体は自分が1番よくわかる。
死を覚悟した俺の目の前には洞窟があった。