魔剣使いとボーリックボスウルフ
ボーリックウルフを倒し終わったので、牙を回収する。
「あの、ありがとうございました」
後ろで少女たちを守っていた少年がお礼を言いにくる。
礼儀正しいのはいいことだと思う。
「いいから、君も早く、回収した方がいいよ。そこの四匹の牙」
「いえ、助けていただきましたし。これもあなたが回収してください」
「俺も今日の分の稼ぎはあるし、その四匹を倒したのは君達だ。それに譲られる側が良いと言っているんだから、もらって良いんだよ」
冒険者が手伝ってもらった際、何か譲るのは暗黙の了解としてある。
だけど、譲られる側が何も求めなければ例外だ。
「いや‥‥‥すみません、頂きます」
彼は一瞬、躊躇しだが、お礼をいうと、少し嬉しそうな顔でボーリックウルフから牙を取る。
ボーリックウルフに苦戦する低ランクパーティーはかなりお金が足りないことが多い。ボーリックウルフはこのランクのモンスターではかなり高値で売れるので、それは嬉しいだろう。
俺は、1人だし、売る量が多いので何も問題ない。
2分ほどで、2人とも回収を終えた。
「ありがとうございました。僕はカートといいます。ランクはEです。剣士です」
「あたしはエバ。魔法使いね。ランクはE」
「ユナといいます。回復担当です。わたしもランクはEです」
3人が各々自己紹介をしてくれた。
「俺はリューズ。見ての通り、剣士だ。ランクは君たちと同じEだね」
「えっ、嘘!!同じランク」
「信じられない!!」
エバとユナが感嘆の声を上げる。
同じランクが自分たちが苦戦していたモンスターを一瞬で倒していたら、それは驚くよね。
「落ち着いて、2人とも。リューズさん、失礼かもしれませんが、登録はいつからですか」
「10日前からかな」
「あー、なるほど。最近登録したばかりなのか」
「それでも、Eランクってすごいですね。私たち、Eランクになるまでに半年。Eランクになってからも1年近く経っているので」
この1年半近く冒険者をしているのに、ボーリックウルフにやられかけたということは、この3人は堅実に冒険者として過ごしているのだろう。
あと、ランクアップのペースとしてはいいぐらいだ。Eランクから中級のDランクに上がるまで時間がかかるのは当たり前のことだ。
ちなみにキースはEランクになるまでに9ヶ月、Dランクになるまでに2年かかった。
それにしても、あの戦いとこの歴戦の勇者みたいな顔立ちが上位ランクに見せたにちがいない。
『まだ、言っとる』
アズガレナの呆れたような声が聞こえてくるけど無視無視。
「Eランクとはわからなかったですけど最初にリューズさんが来てくださったとき、リューズが使っている剣を見て、僕は強い人が来てくれたと思いました。本当に助けていただいてありがとうございました」
‥‥‥‥‥‥えっ、剣?
「本当に凄い剣持ってますよね。あたし、魔法使いなんで剣のこと、全くわからないんですけど、その剣を見た時からなんか引き込まれるっていいますか」
‥‥‥‥‥‥あっ、そう。
『ほれ、やっぱり、妾じゃないか。そりゃ、伝説の魔剣である妾なのじゃ。精巧なる真紅の魔剣。引き込まれないわけなかろう。お主の美的感覚とは違うのじゃ』
とりあえず、アズガレナの夕食の野菜の量、増やそうかな。
「わたしはその剣も凄いとは思うんですけど、その顔立ちがイケメンで、眼帯がかっこよく、強そうに思います」
よくわかってるじゃないか。
ほれ、見ろ。わかる女の子だっているじゃないか。
はい、隣の彼女、「エーーー」っていう顔しない。
『顔は妾が作ったから、当然じゃとして、眼帯をかっこいいと思う、お主やあのおっさんと一緒の美的感覚とはかわいそうじゃな』
よし、絶対、野菜を増やしてやる。
「それにしても、本当に助かりました。ありがとうございます」
「あー、でも、助かったていうのは早いな」
「えっ」
カートが驚くのと同時に一体のボーリックウルフを大きくしたようなモンスターが茂みを踏み倒して姿を見せる。
ボーリックボスウルフ、ボーリックウルフが呼ぶ時に時々出てくるモンスター。討伐推奨ランクはC以上。
「ヤバイわよ、カート。早く、逃げましょう」
「わかってる。リューズさんも急いで」
いや、逃げるのは無理だ。
ボーリックボスウルフはボーリックウルフと同じで動きはかなり素早い。
俺は逃げきれると思うけど、3人は確実にお陀仏になる。
「大丈夫だから、3人は茂みに隠れてて」
「いや、でも」
「いいから」
「はい」
3人は急いで茂みに身を隠した。
まぁ、本当ならこんな目立つCランク推奨モンスターを倒すことはしたくないんだけど。
ここで、あの3人を見殺しにするのは絶対したくない。俺の知り合いのAランク冒険者がやっていたし、割り切ろう。
『妾たちなら余裕じゃな』
『アズガレナがいない時も倒したことあるし、大丈夫でしょ』
向かっていく俺らを見て、ボーリックボスウルフをやる気になったのか、「グルルル」と唸り声を上げると俺に向かって飛び込んでくる。
大きく鋭い爪が俺に向かってくる。
昔より、断然素早く余裕を持って交わすと、弱点を探るため、ボーリックボスウルフの飛んでくる前足に剣を当てる。
そのまま、ボーリックボスウルフの足が飛んだ。
探る意味ないじゃん。
切れ味、おかしいなぁ。
機動力を失った、悲しいボスをあっさり倒して戻ると、3人、特にカートの目が異様なほど、輝いていた。
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リアルが忙しいので、明日から1話ずつしか投稿出来ないかも。




