魔剣使いと冒険者登録
ギルドの扉を開けると、中にいた冒険者たちが一斉にこちらを見る。中にはこの時間からお酒を飲んでいる者もいた。
うん、絶対に終わった後、絡まれるなこれ。
アズガレナがいるのももちろん、俺自身も片目に傷があるなかなかの容姿だしな。
「すみません、冒険者登録お願いします」
1番、近くにいた受付の女性に話しかける。
「‥‥‥あっ、登録なんですね。わかりました。すみません、目の傷でてっきりクエストの紹介かなと思いまして。あっ、すみません。目の傷のこと言わない方がいいですよね」
「いえ、目の傷で何か思われるのは想定していたことなので大丈夫です」
「それでは、冒険者登録を行います。今回の登録はそこの彼女もですか?」
「いえ、俺だけですね。彼女はまだです」
アズガレナを登録させるか、凄く迷った。
ただ、登録してもアズガレナは俺の剣になっていることも多いので、この人間の姿ではいない。同じパーティーメンバーなのに戦闘の時にいつもいないのは怪しまれる可能性がある。
登録しないなら、それは彼女を何処かに預けていると思われる。
アズガレナも冒険者の登録には興味がないのか、俺の判断に従ってくれた。
「わかりました。それではまず名前をお願いします」
「リューズです」
「年齢は」
「22ですね」
「使おうと思っている武器があったら教えてください。もちろん、まだ決めてないなら大丈夫です」
「片手剣で」
「魔法の種類を教えてください」
「水魔法ですけど、ほとんど使えません。魔力少ないので」
基本的な魔法は使えないのだけど、この世に魔法を1つも使えない人間はいない。なので、『血は水が1番近い』と言う理論で水魔法を使えることにした。乱発はできないので魔力が少ないことにして‥‥‥‥‥‥あれ、これ、昔の俺の魔法欄と変わらないんじゃ。
「‥‥‥‥‥‥あの、これでしたら、他の職業をオススメしますよ。もちろん、今の勇者のキールさんとか、これで大成した方もいらっしゃいますが」
受付の女性が少し考えた後、申し訳なさそうに俺に提案してくる。
うん、わかってた。俺がキールの時も同じこと言われたから。
後、キールが死んだこと(殺した)ことはまだ知られてないんだな。
まぁ、あの事件があってからまだ3日後だし、当然か。
「大丈夫です。俺、強いんで」
「そう言う方、多いですけど、気をつけてくださいね。後、辞めたくなったら言っていただければ、職業を斡旋しますので。それでは、最後にこの欄に血を垂らしてください。これで、このカードがあなたの物になるので」
そうそう、最後に血を垂らすのだった‥‥‥これ、大丈夫か。
今の俺の血、普通の人とは違う青だぞ。
まぁ、やってみるか。アウトだったらすぐ逃げよう。
俺は受付の女性には見えない位置でサッと指を薄く切り、垂れた血をカードに垂らす。
「それでは、お預かりしますね」
カードを受け取った受付の女性はそのカードを機械にかけると怪訝そうな顔をする。
バレたか、これ。
「リューズさん、食生活大丈夫ですか?」
「えっ?」
「機械の数値がおかしな値を出してるんですよ。これって、登録する前日にお酒を飲みすぎていたり、食生活が偏ってるとおこるので、それで、昨日の食事は?」
「‥‥‥あっ、なるほど。えーと、肉だけです」
「ちゃんと野菜なども食べてくださいね。肉で身体を作りたいのはわかりますけど、体調管理は冒険者の基本ですから。それじゃあ、この数値からおかしな値を調整しておきますね」
受付の女性が機械をいじって数値を書き換えてくれる。
昨日もちゃんと森にあった木の実は食べてたから、食生活は健康なんだけど、そう勘違いしてくれるならそれに越したことない。
「それでは登録が完了いたしました。冒険者の簡単な説明を聞きますか」
「はい、お願いします」
聞かなくてもわかるけど、怪しまれないように聞いておこう。
「冒険者にはAからGまでのランクが尽きます。1番下がGランクで貴方はここですね。冒険者の仕事は討伐とクエストです。討伐はただモンスターを狩って、モンスターの部位を彼方で売ってくださるとそのモンスターにあったポイントが入ります。クエストはあちらの壁に張ってある依頼から自分が受けるやつを選んでください。成功すると討伐よりポイントは入りますが、ランクの制限があったり、失敗するとポイントが減ったり、賠償金を払わなければいけないものもあるので慎重に選んでください。あと、冒険者ギルドではパーティーを組むことを奨励しています。もし、パーティーを組む相手がいないなら、ギルド側が探すこともできますが」
「いいです。どうせ俺だと来ないし、欲しい人もいないでしょ」
「それは‥‥‥‥‥‥そうですね」
パーティーで欲しいのは魔法が多彩なやつと回復が得意なやつ、少し下がって守りが固いやつだ。誰が好き好んでただの物理アタッカーを欲しがるんだ。
「なので、1人で大丈夫です」
「わかりました。ただし、きつくなったすぐに言ってください」
「わかりました」
「それでは、こちらがあなたのギルドカードです」
受付の女性からギルドカードをもらう。
クエストはGランクだと、ほぼ簡単な討伐系だから適当に討伐して当たったらでいいかな。
それなら、早く行こう。
「ごめんね、アズガレナ。行こうか」
「うむ、やっとか。待ちくたびれたぞい」
俺とアズガレナは討伐に行くためにギルドから出ようとすると、目の前に巨漢が立ちはだかった。
「おい、にいちゃん。ちょっと待ちな」
はい、来た。
相手はこいつか。
横幅もデカくて、持ち物も斧。
典型的なパワーアタッカーか。
なら、アズガレナを先に行かせて、回避しておさらばで事足りるな。
「にいちゃんさ、こんな子供連れて、こんなところってさぁ。ちょっと、ふざけすぎじゃあねえか」
横目で周りを見ると、誰かが介入してくる様子はない。なら、さっきの方法でいこう。
「これは教育をしなくちゃあいけねえよな。冒険者の厳しさっていうのを」
「邪魔なのじゃ」
アズガレナの強烈な蹴りが、巨漢男の大事なところへヒットする。
「ぬぉ!!」
巨漢男はなすすべもなく崩れ落ちる。
ご愁傷様です。痛みはわかるぞ。
何はともあれ、面倒くさいのは終わった。
まぁ、この面倒くさいの繋がりそうだけど。
「ほれ、いくぞ、お主」
「はいはい」
俺らは冒険者ギルドから出るとさっきまでいた森へと戻る。
さーて、稼ぎますか。
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