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魔剣使いとライクルの街


「着いた!!街だ!!」


2日後の朝、あの森を抜け、俺たちは念願の街にたどり着いた。


「ふむ、やっとか。待ちくたびれたぞい」


「いや、本来はもっとかかるからね。アズガレナの力がなかったらこんなに早く着いてないから」


「ふむ、それで、妾のスピードにはもうなれたかの」


「だいぶね」


あのベスタートルを倒してから、アズガレナにはずっと魔剣の状態になってもらって、俺はあのスピードになれる練習をしていた。

おかげでだいぶ慣れてきた。


「それで、どうするのじゃ。街には着いたようじゃが」


「とりあえず、冒険者登録かな。お金を全く持ってないから、稼いでおかないといけないし」


「ふむ、お主の記憶から冒険者という職業がモンスターと戦う職業なのは知っておる。妾たちにあっている職だと思うし、良いと思うのじゃが、なぜ、お主はそんなに悩んでおるのじゃ。ここの冒険者ギルドがヤバイのか?」


「いや、そういうわけじゃないんだけどね」


このライクルの街は冒険者になろうとする人はある程度くる街ながら、冒険者の数はそれほど多くない、とても冒険者を登録するには目立ちすぎないぴったりの街。それを知ってて、俺はこの街に来たんだ。

俺を悩ませているのはアズガレナのことだ。

冒険者ギルドで登録するにあたって、出来れば絡まれることは避けたい。

だけど、目立つ剣の状態で登録すると、「にいちゃん、新人のくせにいい剣を持ってるじゃねえか」などと言われること間違い無いし、かといって人間形態で行くと、「にいちゃん、ここは子供の遊び場じゃねえんだよ」とくる奴がいる。そして、残念ながら、俺の今の服装は半袖短パン。アズガレナを隠す場所はない。

絡まれること確実である。


「アズガレナ、人間形態と魔剣の状態、どっちで行きたい?」


「人間の状態に決まっておろう」


「ああ、わかった」


なら、後半ルートか。

シュミレーションしておこう。


「おい、行かぬのか?」


「行くよ」


アズガレナに手を引っ張られながら、俺たちは街へと入った。



「うぁ〜〜!!!」


街に入った途端、アズガレナが感嘆の声をあげる。


「そんなに珍しい?」


俺からするとよく見る木の建物に時々、レンガの建物が混じっている少し大きな街ぐらいの印象だ。


「妾が最後に外の街なるものを見たのは三千年前じゃぞ。全てが珍しいに決まっておろう。それに、戦場にずっとおった妾にとってはこういう街の賑やかな感じを味わうのはほとんどなかったことじゃしな」


「‥‥‥‥‥‥‥‥‥」


アズガレナは三千年前は戦いの日々だったに違いない。それはアズガレナの過去を聞いてわかる。ほぼ、戦闘だけの毎日。辛いことだってたくさんあったと思う。

そんな戦いを経験してない俺が簡単にうなづいていいことでは無い気がする。


「何、しょぼくれておるのじゃ。三千年前が悪かったとはいっておらんじゃないか。昔は昔。今は今じゃ。妾は今を楽しむだけじゃよ。それでお主、なんだあれは?」


「あれは、リゴンの実のクレープかな。今、ちょうど朝市の時間だから、屋台が出てるのかも」


周りには美味しそうな匂いが漂っている。

俺は先程、外でモンスターの肉を焼いて食べたのでお腹は減って無いけど。


「うむ、甘いのかそれ」


「うん、甘いかな。気になるのか?」


「いや、いいのじゃ。金がないことはわかっておるからの、妾も無理強いする気はないのじゃ」


アズガレナは少し諦めきれないのか、その屋台の方を2、3度見る。

でも、アズガレナの言う通り、金がないのも事実。

でも、アズガレナに少しでもいい思いをさせてあげたい。


「うーん、あのくらいなら作れるかな」


「お主、あの感じの作れるのか!!


「まあ。材料と道具さえ揃えられれば。材料はあの屋台の値段より安く済むから頑張れば今日中にでも」


1人で冒険者をしていた時、暇つぶしで料理は少し深くまで嗜んでいた。   


「ぜひ、頼むのじゃ!!妾、凄く頑張るから」


「わかった。お金が残ったらだけどな」


「ありがとうなのじゃ」


俺の腰に手を回し、飛びついてくるアズガレナ。

こんな行動をみると、ほんとうに子供のように感じる。魔剣とは思えない可愛い子だ。

まぁ、アズガレナのゴシックの服装と相まって凄く目立ったけど。ギルドへの予行練習だと思おう。



上機嫌のアズガレナを連れて、その20分後、街の中央にある冒険者ギルドについた。

さて、戦いはこれからだ。

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