【口裂け女】其の三 ー結末ー
ふむ・・・・・もしかしなくても確実に【口裂け女】の住居だよな。そう考えるとどっと疲れが出てくる。さらに探索を続けようとした時だった。部屋中に渉の悲鳴が響き渡る。
すぐさま渉の元に駆けつけると、渉がへたりこんでおりその目の前には大振りの鉈が突き刺さっていた。敵襲か?だがそれにしては被害が少ない、罠?
「大丈夫か?」
「う、うん」
人まずは大丈夫そうだな、鉈の突き刺さった方向を見るとそこにはお姉ちゃんと丸字で書かれたプレートがかけられていた。
「これは…」
「お、お兄さん」
そんな様子を見て渉は、疑問を持ったのか話しかけてくる
「どうしたの?」
「あぁ、どうやらここは【口裂け女】の住居らしい」
「え!?」
「ほら、これを見ろ」
そう言って渡された書類を見ると、渉の顔は見るからに青ざめていった。
「お、お兄さん、ここ大丈夫?」
「さあな、よく分からん」
「も、もしかしてこれって【口裂け女】のかな?」
そう差し出されたのは、元々は花柄だったのだろうか?差し出された手帳のような物は、埃を被っており、酷く汚れていた。名前は、先ほどの二人とはまた違う名前だった。
開いてみると先ほどのお姉ちゃんと書かれていた文字と同じような女の子らしい丸字で、日記がつけられていた。
普通の日記かと思いパラパラと進めてみると一つだけ血に汚れているページがあった。
(これは・・・・・・・・・・・・)
そこには、赤い文字でーーーーーーーー
許さないーーーーーー
許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない何で私の口を裂いたの?許さない許さないお姉ちゃん絶対に許さない、っと最初とは全く違う荒々しい文字で書かれていた。
(どういうことだ?三人目?それにお姉ちゃん絶対に許さない?口を裂いた?どういうことだ?)
その先のページは、破りさられもう分からなくなっていた。
「お兄さんどんなことが書かれていたの?」
そうやって身を乗り出す渉に日記を差し出す、そんな風に家を探索している時だった。
「誰?」
そんな声が聞こえてきた、反射的に振り返るとそこにはいた。
三人目の【口裂け女】が・・・・・
「つっ!」
思わず後ずさる、三人目の【口裂け女】は、幼い少女だった
先ほどの二人の【口裂け女】とは、年が離れており、花柄の服をきた少女だった。元はかなりの美少女だろう、しかし大きく裂かれた口は、やはり血に濡れていた。そして、何より違和感を感じるのはトレードマークであるマスクをつけていなかった。
「ねぇ、貴方達、誰?」
再び投げかけられる質問・・・・・答えられずにいると少女は、
渉の持つ日記に気づいた
「ねぇ、それ私の、返して・・・・・」
とても逆らう雰囲気ではなく、渉は日記を差し出す
「ありがとう・・・・・でも貴方達、誰?敵?敵かな?敵だよね?そうだよね?なら切り刻まないと・・・・・・」
そう言って少女の【口裂け女】は、一瞬にして無空の前に現れた
その小さな体からは、考えられないほどの力が出ていた。
「お兄さん、死んで」
そう言ってどこからか大きな斧を取り出し無空に斬りかかった。
重量、強度、そして、威力その全てがそろった斧は、異様な雰囲気を纏っており、避けた先のテーブルを叩き切った。
(どいつもこいつもバケモノかっこいつらは!?)
霧を纏い、戦闘態勢をとるも、目にもとまらぬスピードで斬りかかる【口裂け女】に、後手にしか回れない。
「なんで、死なないの?死んでよ、ねぇ、死んで、死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んで死んでよ」
(精神異常者か!?こいつは!?)
その【口裂け女】の力は、どこから出るのかそんな疑問が過ぎるが、伝わってくるのは激しい殺意と憎悪。
「敵は・・・・・殺さなくちゃ」
(くっ、一瞬でも掠ったら、肉が取れる!あれを使うしかないか!?)そう考え、ポケットから鍵を取り出す。
「「鍵?」」
渉と【口裂け女】の声が被る、無空は、鍵を手に取り、自分に突き刺した。
「「!?」」
突き刺さされた鍵は、体の中に入っていき、そして、ガチャと心臓の辺りで音が鳴った、そしてゴトッと言う音が鳴り響く
重く地面に響きわたる音ーーーーーー錠前は解かれた。
ーーーーーーーー第一解放〖虚無〗
そのとたん、無空の回りに霧が集まる、生まれて集まり、生まれて集まる、どんどん霧が生まれて集まっていく。
圧縮された霧は、渦巻き蠢いていた。
(なにあれ・・・・・とてつもなく嫌な感じがする)
真っ白な霧を見てるとまるで自分が消えてしまうような感覚に襲われる、真っ白な霧は、無空の回りを飛び回る、そして、回りの物質をどんどんも消していった。
それは、まるで絵を描いたキャンバスに真っ白い絵の具を塗るように、周りがどんどんと消えていく。
「なにそれ?どうして?なんなの?なんで?なにそれ?ねぇ」
どんどん消えていく周りに、【口裂け女】が、驚きを呟く
そして、その球体は、少女の【口裂け女】に、向かって・・・
行くことはなかった。それより先に後ろからメスが投擲される
「!?」
球体は、消えて、無空は、その場から離れる
「いつの間に・・・・」
こうして、【口裂け女】が二人そろったのだ
「あれ?お姉ちゃんは?」
少女の【口裂け女】は、もう一人の【口裂け女】に対して言った。そして、「死ンダ」っとそう短く返す
「そっか・・・・死んじゃったんだ、お姉ちゃん」
そう俯いて、悲しむ少女の【口裂け女】の顔は、三日月に裂けて笑っていた。
そういうことか…………無空は呟いた、三人目の【口裂け女】の敵は俺たちではない、そう考えれば納得がいく、味方である【口裂け女】にも向けられる殺意と憎悪。そして日記、さらに三日月に裂けた笑顔。
再び霧で球体を型どり、一人の【口裂け女】に叩きつける、それを避けた【口裂け女】だったが後ろから振り下ろされた斧に避けることが出来なかった。そう味方である【口裂け女】の斧に、
斧は首を断ち切り一瞬にして【口裂け女】は、絶命した。それに霧の球に吸い込まれ、白いワンピースに曲がった腕を持つ【口裂け女】は、苦悶を漏らすことなく、悲鳴を上げる暇すらなく、この世界からちり一つ残らず消えていった。
それを打った後、無空は、貧血のようにふらっと倒れかかれる
その隙を逃すことは無かった、少女の【口裂け女】は、斧で無空の首元にふりさげられる、渉の悲鳴が響きわたる
首が吹っ飛ぶことはーーーーーーー無かった、斧を直前に止めて【口裂け女】は、無空に対してこう言った。
「ありがと・・・復習に手を貸してくれて」
感謝だろうか?未だに少女の目には、殺気と憎悪が籠もっており
本当に感謝しているのは、分からなかった。
しかし、行動に移すだけの理性はあったのだろう。
「どういたしましてって所か・・・・」
「で、どうするの?やっぱり私も消す?」
明らかな殺気が籠もった声に、こう返した
「いや、俺達の仕事は管理だ、殲滅する事じゃない、それにまだ理性が残ってるようだしな、だが、人間を無差別に襲おうというのならその時はまた来るがな」
「そう・・・次は、止めないから」
「分かってる」
そう苦笑いを零し無空は立ち上がる、【口裂け女】は、斧を背中にに背負う、
「そうだ・・・ここから出る方法を知らないか?」
「ここから?さぁ、門は見つけたけど開かないから」
そう興味のない雰囲気を醸し出しながら言う
「私たちを連れてきた奴が作ってった門、変な紋様とアルコールがぶっ掛けられててすぐ分かると思う」
「そこまで、案内してくれないか」
「・・・・・・・わかった」
少し沈黙があったものの【口裂け女】は、引き受けた。
そう交渉をしてる中、蚊帳の外だった、わ・・・・わた、渉は、
道ばたにある物が落ちている事に気づいた。
それは、キーホルダーだったよくあるヒーローのキーホルダー
それに、見覚えがあった渉は、不思議そうにしながら裏面を見た
そこには、しっかりと中村 智輝と書かれていた。
(中村のじゃん、何でこんな所に?後で返しとこっと)
「どうした?行くぞ」
「あ、うん」
そう言って二人と【口裂け女】は、歩き出す
歩き出して数分たった時だった、急に【口裂け女】が話しかけてきたのは
「あと、あの鍵...一体何なの?」
「はぁ、やっぱり話さないと駄目か.....」
ため息をつきながら無空は、話し始める。
「で、あの鍵何なの?」
「......セーフティだ」
「セーフティ?」
「そう、セーフティだ、俺達都市伝説管理委員会は、メンバー全員が強力な力をもっている。それは俺達自身でも制御出来ない物もある、特に俺の霧はそうだ。」
霧を出しながら話す
「その能力を隠したり制御するために作られたのが鍵、ちなみに俺の能力は生まれつきだ。もういいだろこれぐらいで」
「分かった」
鍵・・・・・正式名称:銀の鍵 会長が、都市伝説管理委員会のメンバーの能力を制限するために作ったもの。メンバーは一つでは十分に制限出来ないため五重、六重多い人は十二重してる者もいる。
「逆に俺からも聞こう、ここにどうやって入ってきた?」
「・・・・・変な少年、よく分からない人から君たちにピッタリの場所があるって連れてこられた。そこからだった、姉たちが人を殺し始めたのは・・・・」
「前は殺していなかったのか?」
「うん...今まではただ驚かしたり、最悪でも傷をつけるぐらいだった。あの変な少年が来てから積極的に人を殺すようになっていって、私も体を保には殺すしかないし、けどあのときの姉たちは、あきらかにおかしかった。」
そう少し顔を青ざめながら話す【口裂け女】
「そうか....で、今後はどうするんだ?また、人を殺すのか?」
「・・・・・・・ううん、もう疲れたからいいや。探すだけだから」
「何を?」
「私の行き場のない憎悪と殺意、姉たちを殺しても収まることのないこの感情。きっと何か理由があるはずだから...」
「そうか。」
そう覚悟を決めた顔をし、話ていた。
歩き出してから幾分か時間がたったころ、大きな紋様の書かれていた門にたどり着く、門は固く閉ざされ、まるで一つの岩のように聳え立っていた。
「しかし、どうやって開けるのか?」
「分かんない?どうするの?」
そう言って相談していると、不意に携帯から電話がかかってきた
そこには、『28661089』とかかれた電話番号が・・・・
通話を押さなくても自動でオンになった電話からは、やはりあの声が聞こえてきた
『あ~はっははははははははははははははははははhhhhhh
ゲームクリアおめでとう!!!!個人的には最後まで殺し合ってくれたら良かったのに、まぁ条件もクリアした事だし、僕も満足したし、特別に出してあげるよ、感謝してよ?あっはっははははははははははははははははははhhhhhh』
また、荒々しくブチッと通話が切れ、門が音を立てて開く
「はぁ、もうあいつの声は二度と聞きたくないな、よし、行くぞ」
「う、うん」
そう言って渉は、キーホルダーの感触を確かめながら、門をくぐっていった。
「私も行こうかな」
斧を構え、そして、しっかりとマスクを着けて門をくぐった
そうして、二人と【口裂け女】は、この奇妙な空間から抜け出したのだった。
誰もいなくなった空間に、一人の少年がいた。その少年は笑みを浮かべながらこう話した
『ま、物語的には、ハッピーエンド、何だけど、ただのノーマルエンドだね、これじゃあ。渉くんだっけな?あの子、言ってくれれば良いのに、声が同じ学年の【若瑠羅徒穂手符】に似てるって、そうしたら真相に近づけたのに。あーあ、つまんない。この物語の主人公は、無空くんだけど、今回は、君なんだよ世迷 渉くん。あと、親友の敵打てなかったね、残念』
そう甲高い声で、少年は笑う。