【口裂け女】其の一
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都市伝説......それは各地で囁かれる奇妙な噂、現代の世の中で、いつの間にか耳にする出所がハッキリとしておらず、真偽も不明な噂話。この世界は、多くの都市伝説に溢れている。
そんな都市伝説は今のところ噂として広まっている、もしも噂ではなかったら?もしかしたら本当にあったことなのではないか?本当にあったのならば、その驚異から人々を守るための機関、団体が必要である。そのために作られたのが都市伝説管理委員会。人々が正常で健全な世界で、疑問なく生きていく為に、都市伝説管理委員会は異常な存在 都市伝説に立ち向かい、人々の目から遠ざけ管理、あるいは殲滅しなければならない。恐怖から逃げ出してはいけない、管理委員会にとって都市伝説は手も足もでない存在ではない、人ならざる者達は同じく人でないもので対処しなければならない。魔法使い、超能力者、異能力者など人ならざる者達で構成された五人のメンバーで構成された都市伝説管理委員会が都市伝説を管理するのだ。人々に恐怖と脅威を与える都市伝説を管理せよ、それが都市伝説管理委員会の目的である。この物語は人々にとって驚異の対象である都市伝説を管理する都市伝説管理委員会の知られざる調査記録である。
曇一つ無い晴天、不気味なほど青い空と眩く輝く照りつける太陽。気温はまだ温かく、生温い風が吹き抜ける。いつも通りの風景、歩きなれた通学路、いつもと変わらない日常に飽き飽きしながら過ごしている、そんな時だった。
「なぁ!出たんだってよ!【口裂け女】が!!」
「はぁ?【口裂け女】?」
「そう!【口裂け女】!」
授業が終わり、放課後になり下校しようとしたとき、友人の一人である中村から不意に声が掛かる。そんな話振られても馬鹿馬鹿しいとしか思えなかった、友人の中村、今日に限って遅刻してきて、授業中もあまり話さなかったくせに何故今こんな話を?いや、それより小学五年生にもなってそんな与太話を信じているなんて恥ずかしいとそう思っていた。
「隣のクラスの音羽が見たって!」
「信じられない」
「いや、ほんとだって!」
そんな風に話していると他の小学生達が次々と集まってくる、様々な小学生、ひょろ、がり、デブ、メガネなどクラスに一人はいそうな小学生から、そこそこ顔の整った者や、数年後はイケメンと呼ばれるような者など、いずれも共通してるのは男子という事だろう、全員がクラスのムードメーカーである中村の友達だと言うのだから驚きだ。
「本当にいるのかよ?」「音羽がみたのか!?また!?」「いや、いないっしょ」「兄貴も見たって言ってたぞ」「いるのかな?」「絶対にいないって」「いない、いない、いるわけないじゃん」「いないと思う」「絶対いない」
色々な意見が交錯するがどれも否定的で信憑性がない、面倒くさいと思いながら中村の方を向くと薄ら笑いを浮かべながらこう言った。
「だって【若瑠羅徒穂手符】くんがいるって言ってたし」
その瞬間、稲妻がはしった。音速を超える速さで、脳裏によぎるのは、同じ人間とは思えないほどの美男子である【若瑠羅徒穂手符】の顔だ、何か月か前に急に転校してきた【若瑠羅徒穂手符】は、あっという間に学校の人気を独り占めしていった。何故かオカルト的な知識が豊富で、【若瑠羅徒穂手符】は、以前、校庭にUFO?らしきものを呼び出し学校を騒がせた事で、有名だった。
「「「「「「「「「なら、いるな!!!!」」」」」」」」」」
全員の声が重なった瞬間だった。否定的な意見は瞬く間に消え去り代わりに手の平返して肯定的な意見に切り替わる。
「いるな!」「ああ、兄貴も見たって言ってたしな」「異議なし」「いるな!絶対」「いると思う」「絶対いる」
はぁ、やっぱり馬鹿馬鹿しい。付き合うのも面倒くさくなり帰ろうと人混みの中から抜ける。時間はまだ三時にもなっておらず空は明るいままだ。帰ろうと門を抜けようとすると、「お~い」と中村に遠くから声が掛かる。
「もう帰るのか?」
「うん、またな」
「そうか....うん、楽しんでこいよ」
「は、何が?」
そう問い掛ける時には、中村は人混みの中におり、笑っていた。
その顔はとてつもなく気味が悪かった。
あんなくだらない話、なんで信じられるんだろう。
早く帰ろう、そう思い走る、あたりに広がるのは見慣れた通学路、今日のおやつは何かな~なんて、考えながら黙々と進んでいく、(今日は、何が出るかな?サルミアッキかな?あれ、おいしいけど三日間同じだと飽きるんだよね。マリベルは美味しかったなぁ、けどWITTAMERとか美味しいし・・・・)
それから十分後だった、違和感に気づくのは....
あれ?こんなに家遠かったっけ?最初に気づいたのはそういう素朴な疑問、特に気にすることなく歩いて行く。坦々と、そして吸い込まれるように。
(こんな公園...なかったはずなのに)
目の前には公園があった、開けた公園。違和感しか感じない奇妙な公園、先程まで遊んでいたような痕跡があるのに、人がいない。揺れているブランコ、中途半端に作られた砂の山、水の吹き出たままの水飲み場。そしてなお目につくのは三体の人形。
その人形は、一見普通の人形だった。人形は3体とも容姿が異なり、しかしどれも不気味な者だった。赤い服に身を包んだ人形、服にまるで車に引かれたような跡を持つ人形、そして二つの人形より小さいもう一つの人形があった。しかしどの人形にも共通しているのはどの人形にも大きく口が裂けていた。
気味が悪い....そんな風に思って公園から離れようとする、公園の名前は“三築公園”。やはり聞いたことがない。その場から離れ歩きだそうとした時だった。それに気づいたのは、どこもかしこも家の表札が見えない、ペンキで塗りつぶしたかのように名前の欄が消されている。見覚えのある家も見つからない。
帰らないと....半ばパニックになり、見間違いだと気のせいだと、自分に言い聞かせ走る。
走り続けてから三十分くらいがたった、しかし一向に家に着くことがない、(なんで、なんで、なんで、なんで、なんで、なんで、なんで、なんで、なんで、なんで、なんで!?)いつまでたっても家につかない、そんな不可解な状況にパニックになりながらも、通学路を進んでいく、なぜこんな事に?!どうしてつかない!?泣きそうになりながら走ると、急に涙が引っ込んだ。
落ち着いたから?‥‥‥‥‥違う...
家が見えたから?‥‥‥‥‥違う...
道を思い出したから?‥‥‥‥違う...
寒気がした、背中に氷塊を突っ込まれたようなような悪寒。辺りの空気は一気に凍った。吐息が白くなるほど空気が冷え、体が震える。後ろから伝わる濃密な気配が毛穴を押し広げ躙り入ってくる。
そして感じるのは後ろに誰かがいるような感覚。
自分の本能が全力で危険信号を放っている、ツーっと汗が頬を撫でる。今まで感じたことのない生命の危機、濃密に漂う死の予感、反射的に振り返る。そしてそこには....
・・・・・・・・・・・・誰一人としていなかった。そこに広がっているのは見慣れた通学路、生物が通った痕跡すらない。
よかった.....安心して振り返ると
”ベチャ...“
不意に肩に手をおかれる‥‥‥‥誰に?
人ではない何か‥‥何かって?
もう分かっている‥‥‥‥それは‥‥‥‥
「ワタシ‥‥キレイ?」
その姿は、余りにも異様だった。その姿は、赤い服に身を包み、赤いベレー帽、赤いハイヒールを身につけていた。全身を赤で統一しており身長は2メートルを超えている。赤い服はベッタリと血に濡れていた、誰の?肉片だろうか?赤いハイヒールには、何かの肉がついており、″べちゃ″と動くたび音がなった。そして、口元を完全に隠すほ大きなマスクをつけていた。
「ワタシ‥‥キレイ?」
再度問いかけてくる【口裂け女】、ニタニタと狂気と歓喜に満ち足りた笑みを浮かべているのがマスク越しでも分かった。どうしよう…………どうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしよう思考がまとまらない。早く答えなきゃという気持ちがさらなる焦りをうみ、また恐怖に呑まれていく。
「き、綺麗です…」
パニックになりながらも思考を纏めどうにか答える、震えた声、恐怖で身がすくむ、これでよかったけ?そんな疑問も湧いたがすぐに消え去る。
「コレデモ?」
そう言い【口裂け女】は、マスクを外した。そこにあるのはやはり耳まで裂けた口だった。耳まで裂けた口は、痛々しくも見るだけで気分が悪くなる、吐き気と恐怖に囚われる。有り得ないほど裂けた口は何故か血に濡れており裂けた口にそって赤い口紅が塗られていた。
どうして!?何で!?綺麗って言ったのに、嫌だ、何で!?どうして血に濡れている?食べた?人を?食べたから?!
「う、うわわわわわあああああぁぁぁぁああああああああああ」
悲鳴を上げながら走る、わかってはいた、わかってはいたがとても耐えられるものでは無かった。恐怖で脚がもつれそうになる、横腹が痛くなるほど走り、過呼吸になりがらも走った、そして【口裂け女】が見えなくなるほど走り。限界にさしかかろうとしても何とか耐えて走り抜いた。もうこれ以上足が動かなくなった時、それは起こった。
「はぁ・・はぁ・・はぁ・・はぁ・・はぁ・・はぁ・・はぁ・・」
振り切ったかな?そんな甘い考えが最悪の展開を催す。
「ワタシ‥‥キレイ?」
そこには当たり前のように【口裂け女】がいた。先程までとは違い鈍く光る身の丈程ある鋏を携えて、同じようにニタニタと笑いながら、『逃げられないぞ』と伝えているようだった。
「なんで…………」
そんな呟きが虚空に響く、いつの間にか空には暗雲がたちこみ重い空気に包まれていた。早く綺麗って答えなきゃ、と答えようとした瞬間だった。まるで自分が自分でないかのように、答えようとした言葉の逆の言葉を呟いた。
「綺麗じゃない・・・・・え?」
一層笑みを深くした【口裂け女】は、「アナタモ、ソウシテアゲル」と告げ、鋏を振り上げる。死ぬ……逃げようと足を動かす、しかし恐怖に囚われた足は地面に突き刺さったかのように動かない。
サァーっと血の気が引いていく、だんだんと死に近づいていくのがよく分かる。
嫌だ死にたくない、嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ。なんでこんな事に、後悔だけがのこる、死にたくない…そんな気持ちは絶望によって塗り替えられていく。
目の前に死が迫る、そして目に希望はなく絶望が映るその瞬間。
それは起こった。
鋏を振り下げようとしていた【口裂け女】を何者かの拳によって吹き飛んだ。思わず振り返るとそこには一人の青年がいた。真っ白い制服に身を包み、白い手袋をつけ、灰色の髪が特徴的な青年だった。どこか虚ろな目をしておりそこが途轍もなく不気味だったが、その瞳はしっかりと自分をとらえていた。
真っ白な制服・・・その制服は特徴的で左側に鷹の目を模したようなマークがついていた。そんなマークが付いている制服の学校は一つしかなかった。私立七建学校、国中で最も有名な進学校の生徒がなぜこんなところに?そんな疑問が浮かんでいるところにその男は話しかけてきた。
「大丈夫か?」
心配してくれるんだ・・・・そんな失礼なことをして考えていたら、虚ろな目を向けていた青年が再度話しかけてきた。
「大丈夫か?名前は言えるか?」
「あ、うん・・えっと世迷 渉って言います。あ、あの、あなたは?」
まだあの恐怖が、抜けておらず震えながらその青年に問いかける。
「ん?俺か?ああ、自己紹介がまだだったな、俺は思都高等学校生徒会副会長、白貌 無空だ。」
そう話す無空の制服には生徒会副会長を示す銀色に輝く勲章が輝いていた。
簡単な都市伝説説明
【口裂け女】
口元を完全に隠すほどのマスクをした若い女性が、学校帰りの子供に 「ワタシ、キレイ?」と訊ねてくる。「きれい」と答えると、「……コレデモ……?」と言いながらマスクを外す。するとその口は耳元まで大きく裂けていた、というもの。「きれいじゃない」と答えると包丁や鋏で斬り殺される
【若瑠羅徒穂手符】
分かる人は分かる