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ベタ過ぎる出会い

読んでくれたら、とても嬉しいです。直した方がいいところがあったら指摘してくれると助かります。

 厳栄軍の本部には意外なことに図書室がある。何故悪の組織の拠点に図書室があるのかというと、大幹部に無類の読書家がいるからである。その男は今日も図書室で、椅子に座って興味のわいた本を熱心に読んでいた。ちなみに本は心理学に関するものだ。


(やはり本は素晴らしいな。本を読んでいる時間は嫌なことを忘れられる)

 本の楽しさは、先日聖戦の巫女を捕獲する特務を失敗したことを忘れさせてくれる。できればずっと色んな本を読んでいたい。そう思っていた時…

「おいっ!頭脳派気取りのクソッタレバランシャ!」

 ずっしりした低い声が、図書室の心地良い静寂をぶち壊した。声の主はがっしりした体格で、ずかずかとバランシャに近寄ってくる。その男はバランシャと同じ厳栄軍の制服を着ている。ギザギザの眉毛からは男の凶暴性を感じ取れた。


「何か用か?能無しのゴミクズギリオレーク」

「今日も図書室で読書か?飽きねえな」

「…」

 バランシャは暇さえあれば図書室にいる。それは周知の事実だ。

「得体の知れない女に妨害されて、聖戦の巫女を捕らえる大任をしくじったらしいな。女に負けるなんて情けねえ野郎だ。同じ四凶士として恥ずかしいぜ」

 ギリオレークはニヤニヤと笑いながら、嬉しそうに悪口を言う。

「そう言うお前は未だにドノアを攻め落とせてないらしいな。同じ四凶士として恥ずかしいぞ」

 バランシャも負けじとニヤニヤしながら、悪口を言い返す。


「チッ」

 ギリオレークはイラッとして舌打ちをする。

「厳栄様に気に入られてるからって、調子に乗るんじゃねえぞ!てめえやグリルノートなんかより俺の方が上だってことをそのうち証明してやる!」

 大嫌いなバランシャに大言を吐き終わると、ギリオレークは図書室から立ち去った。

「血の気の多い男だ。至福の時を邪魔しおって。死ねばいいのに」

 大嫌いなギリオレークを小馬鹿にしたような笑みを浮かべながら、大好きな読書を再開するバランシャだった。

「今週中に二冊は消化せんとなあ」



 レープルーツ村を出て五日経ち夏希達は馬車と徒歩での移動を繰り返して、メリーポビーという都市に到着した。メリーポビーはレープルーツ村とは比べものにならないくらい大勢の人々でごった返していた。

「すげえな。メリーポビーは都会だって聞いてたけど、こんなにたくさん人がいるのか」

 ナックスはメリーポビーの人口の多さに驚く。

「メリーポビーはシャルレーゼ国の中でも三番目に栄えてる都市だからね」

「こんなに人が多いと修学旅行で行った東京を思い出すわね」

 夏希が小学生の時に修学旅行で行った場所は東京だった。本来なら友達と一緒に楽しんで一生忘れられない思い出になるはずの修学旅行だが、悲運にも東京で発生したテロ事件に巻き込まれてしまったのだ。当時現役の魔法少女だった夏希はテロ組織を能力で鎮圧し、事件解決に多大な貢献をしたのは甘酸っぱい思い出だ。


「じゃあ今日泊まる宿を探そうか」

 ナックスが歩きだす。

「そうね」

 他の二人はナックスの後をついていく。人混みに入って歩いていると、すれ違う通行人は夏希とセラリスに見惚れる者が多い。夏希とセラリスの美人二人は、やはりどこにいても目立ってしまうのだ。


「出店がたくさん並んでるなあ。いい匂いが半端じゃない」

 出店にはナックスの食欲をそそる匂いと見た目の食べ物が置かれている。

「美味しそうだけど、無駄遣いしない方がいいわよ。路銀だってたくさんあるわけじゃないんでしょ?」

「でもよ、ここら辺の食い物はボリュームが多い割に安いぜ」

 夏希は出店に置かれてる食品の値段を一瞥する。

「確かにそうね。じゃあここら辺で昼ご飯を買っとく?」

「決まりだな。俺はあの肉巻き骨付き肉にしようか」

「アンタ肉好きね。アタシはあっちのエビとホタテの串焼きにしようかしら」

「セラはどうする?」

 ナックスは後を向くが、そこにセラリスはいなかった。

「あれ?セラ…?」

 ナックスは辺りを見渡すが、どこにもセラリスは見当たらなかった。

「もしかしてセラリスとはぐれちゃったの?」

 実は通行人の多さが原因で、セラリスとはぐれてしまっていたのだ。


「やべーよ!セラがいねえ!やべーよ!どこではぐれたんだ?やべーよ!セラがいねえと俺もう生きてけねえって!やべーよ!」

 超絶大好きな女の子とはぐれてしまったので、ナックスは絵に描いたようなパニックになる。

「落ち着きなさいナックス。アンタ『やべーよ!』を4回も言ってるわよ」

 夏希はこれでもかというくらい動転するナックスに呆れる。

「『やべーよ!』を4回言っちまうくらい深刻な事態だろコレ!」

「どこに厳栄軍の刺客がいるか分からない以上あの子を一人にするのは確かに危険ね。急いで探しましょう」



「困ったなあ。迷子になっちゃった。夏希さんとナックスはどこに行ったんだろう…」

「ねえねえキミかわいいねー。俺達と遊ばなーい?」

 セラリスが困惑していると、三人の男が気安く話しかけてくる。男達はタトゥーやピアスなどをしている教科書通りのチンピラだ。

「すいません。わたし今人を探してるんです」

 チンピラ達を見たセラリスは怯えた表情になる。


「かたいこと言わないでよ。俺達君に一目惚れしてんだからさ」

「誰を探してんのか知らないけど、俺達と遊ぼうよー。その方が絶対楽しいって」

 チンピラの一人がセラリスの肩を馴れ馴れしく掴んで、どこかにつれていこうとする。

「きゃっ」

「おい、この女巨乳決めこんでんぞ」

「やっぱ女は顔とカラダだよなー」

 チンピラ達がヘラヘラ笑いながら、下卑た会話をしていると…

「やめろ」

 一人の少年が止めに入った。少年は髪が青く中性的な美形だ。

「あァ?なんだ?てめえ」

 チンピラは少年を目で威嚇する。

「今すぐその女から離れて消えろ。命が惜しければな」

 青髪の少年はチンピラ達ににらまれても怯む様子はない。


「こいつアレじゃねえか?ちょっとツラが良いからって調子に乗ってる系のガキだろ。イケメンによくいるんだよな。こういうバカが」

「人生の先輩として、こういう生意気なガキは教育してやんねえとな」

「暴力という名の教育をな。ギャハハハ」

 チンピラの一人が指の骨をボキボキ鳴らした後、少年に近づいて左手で胸ぐらを掴む。そして、右腕を振り上げる。

「死ねクソガキッ!」

 チンピラは少年をぶん殴ろうとする。…が、殴れなかった。なぜならチンピラの右腕は凍って動かせないからだ。

「な、なんだこりゃあ!?腕が凍った!?」

 チンピラ達は予想外の事態に狼狽する。少年はその隙にチンピラの腹に蹴りを入れた。

「ぐおっ!?」

 チンピラは激痛で倒れる。


「もう一度言うぞ。消えろ」

 少年は氷のように冷たい眼光でチンピラをにらみつける。

「このガキ能力者だ!」

「青い髪で氷の能力…おい、もしかしてこいつ『蒼き氷使い』じゃねえのか!?」

「厳栄軍の支部を潰しまくってるイカれた奴か!逃げろ!」

 実力の差を痛感したチンピラ達が一目散に逃げていった後、セラリスは少年に近寄って礼を言う。

「ありがとうございます。おかげで助かりました」

「この街は人口が多い分ああいうタチの悪い奴等も多い。気をつけるんだな」

 セラリスに忠告して、少年は立ち去ろうとする。

「あ、待ってください」

 セラリスが呼び止めると少年は振り向いた。

「お名前だけでも…」

「ゼロイド・ヴェルスパインだ」

 名乗り終わるとゼロイドはその場を去った。


「おーい!セラー!」

 声が聞こえた方向を見ると、夏希とナックスがいた。

「あ、よかった。」

 セラリスは安堵の笑みを浮かべる。

「ごめんねセラリス。ひとりぼっちにさせちゃって」

「大丈夫です。男の人達にからまれたけど、蒼き氷使いさんが助けてくれたので」

「蒼き氷使い?厳栄軍に楯突いてる能力者か…メリーポビーにいたのか?」

「うん。優しくて、かっこいい人だったよ」

 その言葉を聞いたナックスは複雑な心境になる。

「かっこいい…」

「嫉妬するな」

 夏希は呆れながらナックスの頭をコツンと小突く。

「悪漢にからまれてるところをカッコいい男に助けてもらうなんてベタ過ぎるけど、アンタが無事でよかったわ」

 セラリスに安心した表情を向ける夏希だった。

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