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ゼロイドVSウルフバンチ

「このシャバ憎がっ!」

 ウルフバンチのサーベルが、ゼロイドの氷の剣と激しくぶつかる。何度も刃を交差させると、ウルフバンチは後方にジャンプして間を切った。

「『フィアーアシッド』!」

 ウルフバンチが右手からドクロの姿をした硫酸を放出すると、ゼロイドは氷の盾を造って防御する。今度はゼロイドが氷のナイフを飛ばすが、ウルフバンチはそれをサーベルで弾く。

「ぎゃあッ!」

 弾いたナイフが部下に刺さったが、ウルフバンチは気にせず戦闘を続行する。彼からすれば仲間の命なんてどうでもいいのだ。

「『フィアーアシッド』!」

 またドクロの姿をした硫酸が飛んできたので、ゼロイドはそれをかわす。すると硫酸は彼の後方にある街路樹に命中する。破損した街路樹がゼロイドに向かって倒れてくる。

「!?」

 街路樹をかわしたゼロイドを、ウルフバンチが斬り裂こうとする。

「!?」

 ゼロイドは氷の剣で、サーベルを受け止めた。

「チッ」

 奇策が失敗したので、ウルフバンチは再び後方にジャンプして間を切った。しびれを切らした彼は決め手に訴える。

「くらいやがれ『ケルベロスアシッド』!」

 ウルフバンチは地獄の番犬の姿をした硫酸を放出する。これは彼の奥の手だ。

「『堅氷壁(けんひょうへき)』!」

 強固な氷の防壁がゼロイドの前に出現する。だが地獄の番犬は壁を貫通して、彼に襲いかかる。

「うっ!?」

 硫酸がぶつかったゼロイドは苦悶の表情を浮かべる。これはかなりのダメージだ。


「ここをてめえの墓場にしてやるっ!ジャリがっ!」

 ウルフバンチは接近して、サーベルでとどめを刺そうとする。

「ジョニー・ウルフバンチ、これほどの力量とはな。オレの切り札を使うとしよう」

 ウルフバンチはサーベルを振り下ろす。だが、その斬撃はゼロイドに届かない。

「!?」

 辣腕の海賊であるウルフバンチが攻撃をはずすなんて、彼らしくない過失だ。

「このっ!」

 もう一度攻撃するが、また斬撃はゼロイドに届かない。

「どうなってんだっ!?間合いがつかめねえっ!」

 これがゼロイドの秘策『怪氷酔界(かいひょうすいかい)』だ。放散した微細な氷の乱反射が目の錯覚を生み間合いのズレを引き起こしたのだ。


「チッ!」

 斬殺することを断念したウルフバンチは再びケルベロスアシッドを放出しようとする。だが、それは間に合わない。

「うっ!?」

 先にゼロイドがウルフバンチを斬り伏せた。

「安心しろ。命は取らない。オレは殺生を好まないんでな」

「クソッタレ…!…この俺がこんな青ビョウタンに…」

 惜敗したウルフバンチは無念そうに気絶した。子供に後塵を拝したことが屈辱なのだ。

「ウルフバンチ船長がやられるなんて…」

 自分達の船長が敗れたので、船員一同はどよめく。こうなったらもう退くしかない。



 魔力を回復した夏希達は街中を走っている。街並みは王都にふさわしい美しさだが、今は観光している余裕なんてない。

「早く厳栄軍を撃退しないとね」

 彼女達が走っていると、前方から誰かが歩いてくる。その老人はたくましい肉体で、眼光が鋭く冷たい。老人が発する強烈な威圧感のせいで、夏希達は物怖じする。全身の肌がビリビリして、心が折れそうだ。逃げ出したい気持ちになる。

「アンタ、何者!?」

 冷や汗を流す夏希が問うと、老人は淡々と答える。

「ワシは不堂厳栄。厳栄軍の総帥じゃ」

 こんなところで意外すぎる人物に遭遇したので、彼女達は慄然とする。

「アンタがあの不堂厳栄…!?」

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