列車に乗れない!?
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ナックスの修行を切り上げた夏希達はフェザーエルロット駅に着いていた。この駅は近代的な外観なので、田舎者からすれば見てるだけでワクワクしてしまう。内部も先進的でオシャレな雰囲気になっている。プラットホームで並びながら、列車を待っている間ナックスは雑談をしていた。
「俺、列車に乗るのは初めてだから緊張するなあ。早く文明の利器を堪能したいぜ」
列車を待ち焦がれるナックスにセラリスが共感する。
「こういうのってワクワクするよね」
ナックスはそわそわしながら、夏希に列車に関する質問をする。
「夏希は地球で列車に乗ったりしてたのか?」
「学校には電車で通ってたわ。あまり良い思い出はないけど」
昔から夏希が満員電車に乗るとよく痴漢に遭っていた。気が強い夏希は尻を触られる度に痴漢を鉄拳制裁していたのは言うまでもない。
「お、やっと来たか」
おしゃべりをしている間に列車が目視できる距離まで近付いたことにナックスが気付く。列車はモダンな見た目で、ナックスの好奇心を刺激しまくる。列車がホームで止まると夏希は思い出に浸るのをやめた。
「よし、列車デビューだ!」
ナックスが興奮しながら列車の中に入ると予想外の事態が発生する。突然列車の出入り口がジリリリリリン!と不安になるような音を出したのだ。
「な、なんだ!?なんの音だ?」
慌ててナックスが振り返ると、出入り口に取り付けられている警報器が音を出していることに気付く。
「どういうことかしら」
夏希達が困っていると、駅員達が走ってやってくる。駅員達はなぜか渋面だ。
「失礼ですがあなた達は能力者なのでは?」
駅員の質問に嫌な予感がしながら夏希は答える。
「そうですけど。何か問題があるんですか?」
「大いにあります。この街では能力者は列車に乗ってはならないという規則がありますので」
不条理なルールを聞いたナックスは駅員に食って掛かる。
「なんだそりゃあ。なんで能力者は列車に乗っちゃあ駄目なんだよ」
納得いかないナックスに駅員は淡々と理由を説明する。
「フェザーエルロットでは、能力者は悪魔の使者とされて忌避される存在だからです」
アルセデスの一部の土地では、能力者は悪魔の使者として扱われ忌み嫌われている。このフェザーエルロットも能力者への差別意識が根強く残っていた。
「なあ、頼むよ駅員さん。俺達どうしてもツインドラに行かなきゃならない事情があるんだよ。大目に見てくれ」
駅員は仏頂面でナックスの要望を却下する。
「厳栄軍がそうであるように能力者はいつだって災厄をもたらしてきました。どのような事情があろうと例外は認めません。私はこの駅の最高責任者として、あなた達を列車に乗せる訳にはいきません。それとできるだけ早くこの街から退去してください」
厳栄軍の度重なる暴虐が、能力者の悪いイメージを助長しているようだ。駅員の無情な態度で、取り付く島がないことを夏希達は悟った。
◇
「困ったわね」
「困ったなあ」
「困りましたね」
列車に乗れないことが判明した夏希達はどうすればいいのか分からず街中を歩いていた。国内で列車を利用できる場所は少ないので、この街の列車に乗れないと首都ツインドラに行きにくくなるのだ。当然一刻も早くツインドラに行きたいセラリスは気を落としている。
「まさかフェザーエルロットが能力者に偏見を持ってる街だったなんて…」
ナックスは街の中央にある巨大な赤い建造物に目を向ける。
「それにしてもデカい塔だな」
フェザーエルロットは歴史のある街で、古い建物が沢山並んでいる。古い街並みを観光する者は多い。街の中央にそびえ立つ翔天紅の塔はフェザーエルロットの名所だ。翔天紅の塔は文化的価値が高く、地元民の誇りなのである。誰がどういう目的で建立したのか謎だが、十年聖戦の頃から存在する塔らしい。
「さてと…」
夏希が突然立ち止まって後ろを向く。
「どうしたんだ?夏希」
夏希は不思議がるナックスに返事をせず後ろに向かって喋る。
「人通りの少ない場所に来てあげたわよ。そろそろ出てきなさい」
夏希がそう言うと、どこからか男の声が聞こえてくる。
「気配は完璧に消してたつもりだったんだがな…中々良い勘してるじゃねェか。ねえちゃん」
建物の陰から白い口髭を生やした初老の男が出てきた。男は茶色い甲冑を装備している。
「生憎こういうのには敏感なの。アンタ達は何者?厳栄軍?」
老兵は不快そうに否定する。
「あんなクソ組織と一緒にするんじゃねェよ。オレ達は傭兵だ」
老兵が喋っている間に建物の陰からぞろぞろと仲間達が出てくる。実はナックスはこの老兵に心当たりがあった。
「もしかしてあんた…ジャン・バトロインか…?」
「ほう、オレを知ってんのかボウズ」
「ナックス、この男を知ってるの?」
ナックスが老兵の解説をする。
「敏腕の傭兵だよ。色んな紛争地帯で戦功をあげてる有名な腕利きだ」
「そのベテラン傭兵がアタシ達に何の用?」
夏希が問うとバトロインはセラリスに視線を送る。
「オレ達の目的はそこにいる金髪の女だ。大人しく引き渡した方が身の為だぜ」
目当てはセラリスだと分かった途端ナックスはムッとする。
「なんで傭兵がセラを欲しがるんだよ」
「某国からの依頼だよ。聖戦の巫女を捕えてこいってな。報酬はたっぷりもらう手筈だ。女をよこさないと痛い目を見るぜ。いや、痛い目を見る程度で済めばいいがな。コイツでぶった斬られたら命の保証はできねェ」
バトロインは鞘から剣を抜いた。
「セラリス、アタシから離れないようにしなさい」
セラリスは夏希の後ろに移動する。
「はいっ」
ナックスはファイティングポーズをとる。
「セラは俺達が守る!」




