護衛
始業式はつつがなく終わり、HRとなった。
「まあ2年生なんで知った顔も多いと思うが転校生もいる事だし端から順番に適当に自己紹介していってくれー。」
担任のやる気のない声で自己紹介が始まる。
各々名前と趣味など当たり障りのない自己紹介が続く。祐樹も名前と好きな音楽といった適当な自己紹介を済ます。
しかし祐樹は感じていた先ほど向けられたものと同様の刺すような強烈な視線を。
殺気とも言えるそんな視線を。
斜め後ろの美少女から。
何だこの視線は…。怖すぎるぞ…。
自己紹介も終わり授業の開始日など事務的な報告を受け今日の予定が全て終わる。
「じゃあ、明日からも遅刻せずになー。」
担任の声で皆一斉に下校となる。
祐樹も帰ろうとした時後ろから声をかけられる。
「橘君。ちょっといいかしら?」
そう、初恋と思えるほどの美少女から。
始業式の日に転向してきた美少女が俺に何の用があるというのか。
普通であれば祐樹は喜んでいただろうが、先ほどの強烈な視線を受ければ恐怖の方が上回るのであった。
「えっと白鳥さん?僕に何の御用でしょうか?」
若干の後ずさりと共に祐樹は尋ねる。
「貴方にちょっとしたお話があるの。一緒に来てくれるわよね?」
可憐な笑みを浮かべる美少女。しかし祐樹には見える、その目から放たれる拒否権はないという強い意思が。
「えっと…。それは強制だよね?」
白鳥はもう一度にこりと笑顔を浮かべはいと返事をする。
白鳥に連れられ祐樹は校門の前に停まっていた一台の黒塗りの車に乗せられていた。
運転手の顔は見えないが後部座席には祐樹と白鳥しかいない。どこへ向かっているのかと聴いてみた祐樹だったが返事は返ってこない。
沈黙が続く中車は走り続ける。
しばらくの沈黙の後白鳥が口を開いた。
「橘祐樹。貴方にはこれから我々の護衛の中生きてもらうわ。」
唐突にわけのわからないことを言われ祐樹は唖然としてしまう。
「貴方の命はこの世界の存続に関わるの。貴方が死ねばこの世界は破滅へ向かう事になるわ。」
我々?護衛?世界が破滅?何を言っているんだこの女は?今時中二病か?顔がいいのに何でこんな残念なことをやってるんだ?
そんな事が祐樹の頭の中を駆け巡る。
「えっと?はい?え?」
しかし口から出るのは情けない声だけであった。
「理解できないようならもう一度説明するわ。
貴方は我々の護衛の元生活してもらうと言ったの。本当は私達で貴方を監禁して閉じ込めておきたいところだけど上がそれを許さないから護衛という形になるわ。わかった?」
わかるわけがない。
「何を言ってるんだ白鳥さん?あんた正気か?
今更中二病ごっこは寒いぜ?」
「理解が遅くて困っちゃうわ。仕方がないから話すわ。貴方は特別な力を持っているわ。その力を狙う輩が貴方を狙っているの。さっきも言った通り貴方が死ねば世界は破滅するわ。今までは貴方に気づかれないように護衛をしていたのだけど、これからは貴方の側で護衛をする方がいいと判断されたわけ。いい?」
「いやいや特別な力と言われても。
一体何なのさ特別な力って?俺が狙われてる?俺が死んだら世界が破滅?どうしてそうなるのさ?」
祐樹は混乱の中精一杯疑問をぶつける。
「貴方自分の力を知らないわけ?」
そう言って白鳥は祐樹について話し始める。