そろそろ私の胃に穴あきそうです…(仮)
私、佐藤葵はあまり目立つのが得意ではない。なのに私の毎日は普通には進んでくれない。とまあ、カッコつけて現実逃避しても現状は変わらないわけなんですけど…。友人よやめてくれないだろうか…。
「ちょっと!そのバッサバッサするスカート邪魔なんですけど!もっと隅を歩いてくれない!!???」
「なんですって!?あなたこそそんな短いスカートで汚い足をお見せするなんて周りがかわいそうだと思いませんの?」
華月生徒に喧嘩を売るのはやめてくれ!!!
私の通う通う森塚学園と金持ちの御坊ちゃま、お嬢様が通う華月学園はすこぶる仲が悪い。なんでも学園長同士が仲が悪らしい。明らかに原因それなのでは!?とは思っていても口には出せない。私は小心者なものでね。
「あまり目立つのはやめてよ、恵。」
「無・理!!!あいつらが存在してる限り喧嘩を売り続ける!!」
「そんな自信満々に言われても…。」
さっきから苛立っているのは一応親友である飯田恵。黙っていれば可愛い女の子なのだけれど…。とにかく華月学園のが大っ嫌いなんだそうです。
「大きい事件だけは起こさないでよねー。」
「あんな奴らに四六時中イラついてるのも嫌だし、これくらいにするよ。ごめんねーいつも巻き込んじゃって!なんかあいつらを視界に入れるとこうなんか、体の内から憎しみというか怒りが湧いてくるというか!!」
「はいはい、落ち着いて。気分転換にどう?駅前に新しいカフェができたらしいんだけど行かない?」
「え?行く行く!!イラつきも吹っ飛んだー!」
そりゃ良かった。これで1日平和に過ごせるだろう。恵の肩越しにクラスメイトが助かったという顔をしているのが見えて思わず苦笑してしまった。
「すごい!おしゃれ!!落ち着くわー荒んだ心も癒されるー。」
「そう言ってもらえて良かった。値段はちょっと高めだけどたまに自分のご褒美に来るにはいいお店だよね。」
放課後になり約束通りカフェに連れてきた。ちょっと大げさに騒ぎすぎな気もするが喜んでもらえて本当に良かった。やっぱり恵は笑顔が一番だ。毎日華月学園に喧嘩を売ってる恵だが、華月学園が関わらなければ普通の可愛い女子高生なのだ。
「今日はいつも荒れて疲れてる恵にご馳走するね。」
「そんな悪いよ!自分の分は自分で払うよ。」
「ううん、いいの。今度は恵がわたしにごちそうして。」
「もう、そう言われたら断れないよー。ゴチになります。」
ああ、今日は平和に1日が終わりそうだ。これで後は何事もなくここから出て、帰れれば「あらぁ?ここに何か場違いな方がいらしてよ。」…帰れませんね。
いや実はお店に入った瞬間不味いとは感じていた。駅前のカフェだし、いないってことは考えてなかったけど、まさか恵と毎日言い合いをしている女子生徒がいるとは思っていなかった。帰るのも不自然だし、入るしかなかった。だから恵の視界になるようにさり気なく席に着いたが、あちらから絡んで来ると思わなかった。って、現実逃避してる場合じゃなかった!
「め、恵。」
思わず声をかけたが意外にも恵は落ち着いていた。
「場違いなってどうゆうこと?私はこのお店に入っちゃいけないって?」
「あら、そう聞こえてしまいましたか?毎朝お猿さんのようにキーキー鳴いてる貴方がこのようにおしゃれなお店にいて不思議に思ってしまって。ごめんあそばせ。」
ああああああ、それ以上煽らないでくれ!!恐らく恵はここがお店の中だから抑えてるだけだ。その証拠にさっきから握った拳がありえない速さで震えている。
「ご友人も可哀想ですわ、貴方のような人に付き合わされて 。無理矢理付き合わせているのではなくって?」
ふと恵の震えが止まった。傷ついた顔をしてる。頭が真っ白になる。
「あんた!私がさっきから黙って聞いてやってるからって!!!」
バンッ
「私は恵に付き合わされてるわけじゃないよ。私が好きで恵と一緒にいるの。そこ勘違いしないで。それに非常識なのはどっち?毎日言い合いをしている二人を見てるから、貴方だけが悪いわけじゃないのは知ってる。でもここはお店の中なの。公共の場。分かってる??分かったなら外でやりなさい。」
っは!やってしまった。私もこの子のこと言えないじゃん。お店で説教とかああああ。
「あ、葵?」
恵もすごい顔して私を見ている。私は財布から諭吉さんを出して、二人の腕を掴んでお店を飛び出した。
「ご、ごめんなさい!!」
2人の腕を掴んで無我夢中で走って公園まで走ってしまった。それも含め2人に謝った。
「葵顔あげてよ。葵ってば目立ちたくないのに私のために怒ってくれたんでしょ?ありがとう。嬉しかった。」
「でも、恵は我慢してたのに私のそれ台無しにしちゃったし…。」
思わず恵と二人の世界に入り込みそうになったが、もう1人の子を思い出した。
「あ、あの…貴方もごめんなさい。偉そうなこと言ったけど、私もお店で騒いじゃったし本当にごめんなさい。」
あれは私に非があるし謝ったけど何も反応がなかった。こりゃ、嫌味祭りかな。はは…って、ん?何も反応がないのはおかしくないか?それこそここぞとばかりに嫌味を言われると覚悟してたんだけど…。
「っ…。」
え…。泣いて、る…。
「え?ええっ??本当にごめんなさい。泣かせる気は無かったんです!!」
流石の恵も焦ってた。泣いてる子の周りで私と恵はアタフタしてるという変な構図が出来上がっていた。その子は声も出さずにひたすら涙を流していた。なんかこうして見てると辛いことを隠して陰で誰にも気づかれないように泣いてる子に見えてしまった。そう見えた瞬間、なんか落ち着いてしまった。
ポンポン
「っ…!!」
「ここには私たちしかいないのでたくさん泣いてしまって大丈夫ですよ。」
後から怒られるかなとか嫌味言われるんだろうなとかいろんな思いがあるけれど、この子がなくきっかけを与えてしまったのはきっと私だ。いや絶対。恵も落ち着いてこの場を見守ってくれた。
「落ち着きました?これ目が腫れてしまうと大変なので良かったら。今濡らしてきたばかりなので気持ちいいですよ。私のハンカチで申し訳ないんですけど。」
拒否されるかなと思ったけど、予想外にも受け取ってくれた。
「えっと…さっきはすみませんでした。泣かせてしまったし、おまけに無礼にも頭まで触れてしまって…。」
「…いえ、私こそ申し訳ありませんでしたわ。このくらいのことで涙するなんて不覚でした。」
おお、やっと受け答えしてくれた。
「あんたさ、なんかあったの?」
恵!?もう喧嘩はやめてくれよ!ハラハラしながら2人の話を見守ることにした。
「なぜ貴方にそんなことを言わなければいけないのかしら?」
「私さ前に華月学園の生徒とちょっとトラブったことがあったんだよね。そのせいで何かあるたびに華月学園の人を目の敵にしてた。あんたが泣いてるの見て少しは冷静になったよ。華月学園の生徒だからって一括りに考えちゃった。だから…ごめん。」
恵も色々考えてたんだ。
「私、実は恥ずかしながら友人がいませんの。」
「「へ?」」
「そ、その正確には私に集まってくる方達は私の親のコネを欲しがる方達ばかりで…。ちょっと貴方2人が羨ましかったわ。突っかかってたのも嫉妬していたからです。私こそすみませんでした。」
へーやっぱお金持ちってのも苦労してるんだ。こうやって話聞くまで知らなかったな…そういう話って漫画の中のだけだと思ってたし。
「ふーん。あんた名前は?私は飯田恵。」
「え、…小野寺恭子ですわ。」
「そう。じゃあ、恭子。今から遊ぶわよ。」
…ん?????待て。待ってくれ。何がどうなってそうなった。見守ると言ったけどこれは口出していいのか?ん??ほら小野寺さんも今までに見たことない顔してるよ。
「何突っ立ってんの!さ、行くよ。」
小野寺さんの返事も聞かずに私たちの腕を引いていく。これは一件落着ということでいいのか???小野寺さんも心なしか楽しそうっていうか嬉しそうだしいいか。
先日あんなことがあってから小野寺さんとは今でも仲良くやっている。毎日の言い合いはなくなり、代わりに世間知らずの小野寺さんに恵が庶民の遊びを教えてるってのがテンプレになってきた。最初の頃は周りも驚いてたみたいだけど、やっぱり言い合いよりもマシだと感じてるのかすぐにざわつきは収まった。
「だいぶ仲良くなったんだね。びっくりしちゃった。」
「話してみると結構楽しかった。あっちの話も興味引かれることばっかだし、もっと早く話し合えば良かったわ。あと、葵ともまた話したいって言ってたよ。今度2人でお茶しましょうって。」
「え、私と2人で?3人じゃなくて?」
「んーまあ、そこは疑問に思ったんだけど、恭子めっちゃ顔赤くして必死だったから思わずうんって返事しちゃてさ。嫌じゃなかったら一回でいいからお茶してあげてよ。」
小野寺さんが私と?2人で??疑問しかない。まあ、別に小野寺さんのことは嫌いじゃない。私も仲良くなれるならそれはそれで嬉しい。
2人の言い合いを見てハラハラすることもなくなったし、本当にこれで一件落着だな。