プロローグ
初めて小説を投稿いたします。読みにくい点等あるやもしれぬと心配しておりますが、何卒よろしくお願いいたします。
「ミランダ!」
(あぁ…またこの夢…)
自分に力があったなら彼女を皆を救えたのだろうか。逃げることしかできなかった自分が虚しくてたまらなかった。
あれから何年が過ぎたのだろう…。
名を変え、姿を変え各地を巡り技を極めてきた。昔よりは幾分力も高まっただろう。だが…まだ足りない。あいつらを倒すには、まだ…。
「神眼を持つ者か。」
闇を切ることのできる守護者の存在を知ったのは幼い頃に読んだ本でだった。伝説だと思っていた。何もかも。自分自身がこんな身体になるまでは…。
「エレボス!」
(そうか…もうすぐ決闘の時間だったな…。)
今日が最後の闘いになる。数年前にこの闘技場に初めて来た時は大いに馬鹿にされたものだ。背の低さと幼い顔立ちから本気を出さずに見くびるものが昔から多かったが…。
しかし、名のある闘技場として古くから多くの者が集まるこのヴリュクス闘技場の荒くれ者たちにも同じような態度を取られた時は流石にうんざりした。
その後、一瞬で彼らをまとめてなぎ払ってからはスター扱い。まだまだ未熟だというのに。しかし、それももう終わりだ。
(ようやく出会えた…。彼が神眼の守護者に相違ない)
会場の入り口前に立つとグラディエーターの一人が声をかけて来た。
「エレボス…ほんとうにアイツとやりあう気か?今日の相手はいつも戦ってるやつとは違う気配がする。用心しろ。さすがのお前でもやられるかもしれないぞ。」
彼は自分をここまで強く成長させてくれた恩人だった。彼と別れることは寂しいがこれも神眼とともにあいつらを倒すためだ。
「師匠…確かに戦うことはないのかもしれない。でも僕は弱い。力を試したいんです。この先の戦いのためにも…。彼に協力を仰ぐには言葉ではなく力で挑みたいんです。」
「そうか…。忠告はしたぞ。自分の力の限界を忘れるな。」
手に馴染んだ二刀の短剣を手に取ると会場へと踏み出す。
そこには黒髪の青年が静かに佇んでいた。
「遅かったですね?来ないんじゃないかとヒヤヒヤしましたよ…。では始めましょうか…。」
彼がサッと手を上げると突然一陣の風が吹き渡った。
「クッ…!」思わず腕で顔を覆う。
気づくと彼の姿はかき消すように消えていた。
(なに…?!これは…。まさか…。)
気づいた時には遅かった。
彼は神眼じゃない。あいつらの仲間だ。
どうやって自分の居場所を知ったのか。正体に気づいたのか…それはどうでもいい。
闇の蠢く気配がする。
冷や汗をぬぐい短剣を構え直す。
限界が来るまであらがおう。そして、あいつの行方を追うんだ。
彼女のために…。