表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/67

2モフ目

お読みいただきありがとうございます。

 目覚まし機能で起きれば6:00。現実世界の二倍の速度で過ぎていくこの世界の時間だけれど、それなりにすっきりするらしい。

「おはよう、淡雪」

「きゅい」

 身支度を整え、朝食を食べる間に今日の予定を決める。

「まずは何をするにしてもお金だよね」

 一応【徒手空拳】に対応したグローブと【皮革加工】用のセットは初期装備というくくりでもらっている。けど、当然初期装備は初期装備。性能は知れてる。

 ついでに【識別】は人物、モンスター用なのでアイテムの性能を調べるには別途【鑑定】を開放しなきゃいけない。


 ≪スキル:筆記 が有効化されました≫


 昨日図書館にこもっていた時には完全にスルーしていたシステムメッセージ。イベントログを見返してみれば【筆記】がちゃんと有効化されている。何ができるかよくわからんけど。

 とりあえずスキルを片っ端から覚えることと、金を稼ぐことを目標に進めますか。


 プレイヤー:毛皮丸 Lv:1


 HP:53

 MP:24



 STR:13

 VIT:10

 DEX:16

 AGI: 9

 INT:11

 MIN:10


 スキル:テイム:1[1/2]

    召喚:1

    徒手空拳:1

    皮革加工:1

    筆記:1

    識別:1


 テイムのところの数字はテイム可能枠かな?

 ≪初めてステータスを見るプレイヤーの方へ。ステータス初期値はチュートリアルでの内容をもとに算出しています。≫


 何でゲームのチュートリアルで体力測定をやらされるのかと思ったら。ってか何でAGIだけヒトケタだ! 僕がのろまだってか! 誰がのろまだ! 確かに脚は遅いけど大きなお世話だ!

 DEXはあれだ。リアルで物作りを趣味にしているのが効いているんだろう。

 それはともかく。

 狩りをしていろいろかせがにゃ。


 門を抜ければ街道の両側に広がる草原。プレイヤーは街道を行かず、両側の草原に散っていく。初期装備である麻の服、麻のズボン、端革の靴のままのアバターはほとんどいない。昨日一日で早くも装備を整え始めているんだろう。

 これは早くいろいろ揃えないとな。

 戦闘未経験者である僕が狙うのはウサギ。草原に幅広く分布している、初心者用モンスターだ。皮をはいでよし。肉を食べてよし。


 プレイヤーが群れる場所を避けること30分。ようやく獲物の姿がちらほら見えるようになってきた。

 誰も狙っていないウサギは、いた。淡雪を促し戦闘態勢に入る。

「きゅい!」

 淡雪に牽制させながら背後をとる。そのまま延髄に向かってこぶしを振り下ろせば。

 ウサギはその場でひくひくするだけで動かなくなった。

「あっれ一撃?クリティカルでも入ったか?」

 ≪初戦闘の勝利を確認。おめでとうございます。解体用ナイフがプレゼントされます。注意。このナイフは武器として装備できません。≫

 目の前の空中に、エフェクト光とともにナイフが出現する。木柄と革の鞘の何の変哲もない武骨なナイフ。

 このナイフで剥ぎ取れってことだよね、やっぱり。


 ウサギにナイフを突き立てるとすぐにアイテムにかわる。どうやら実際に捌かなくても解体はできるらしい。皮をはいで内臓抜いてなんてスプラッタとか勘弁してほしいからね。

 で、毛皮が残ったわけだけど。【鑑定】がないからアイテム名がわからないわけだ。

 毛皮のようなもの


 としかわからない。

 まあ、しょうがない。次だ。



ワイルドラビット オス


野生のウサギ。ウサギにしては毛が固め。


 次のウサギを【識別】してみれば、こんな内容だった。

 即、獲物として狩る。

 見つけた端から狩る。

 獲物を狩る

 狩る

 狩



 気が付けば太陽が頭上高くで照らしている。

 今のウサギでレベルアップもしたようだ。

 ≪おめでとうございます。プレイヤーがレベルアップしました。任意のステータスに2ポイント割り振ってください。≫


プレイヤー:毛皮丸 Lv:2 up


 HP:61 up

 MP:32 up



 STR:13

 VIT:10

 DEX:16

 AGI:11 up

 INT:11

 MIN:10


スキル:テイム:1 [1/2]

    召喚:1

    徒手空拳:1

    皮革加工:1

    筆記:1

    識別:1


 ≪おめでとうございます。従魔:淡雪 がレベルアップしました。任意のステータスに2ポイント割り振ってください。≫

 淡雪もレベルアップか。

 そういえば淡雪のステータスは一度も見ていなかった。



ラヌーゴドラゴン:淡雪 Lv:2 up


 HP:32 up

 MP:11 up



 STR: 9

 VIT: 9

 DEX: 3

 AGI: 7 up

 INT: 7

 MIN: 6


スキル:幼体


 幼体? プレイヤーのスキルリストにはなかったものだ。お? 説明みれるのか。


『幼体:モンスターの赤ん坊。睡眠の状態異常にかかりやすい』


 寝る子は育つか! いや、実際育つかどうかは知らないけど。

 腹も減ったし、ドロップアイテムも持ち切れなくなったから一度帰るとしよう。


 昼時のパツダはプレイヤー、NPC入り乱れて人であふれていた。こりゃ飯屋は確実に混んでるな。余裕ができれば料理も取得したいところだ。現実ではよく炭を量産してたけどな!

「淡雪。町を見て回って少し時間をつぶそう」 

「きゅい」

 港側にある商業区画に足を運んでみれば、プレイヤーの露店はまだまだ数が少ないようだ。リアルでようやく二日目の午前中。インしている人も物を売れるだけ生産してる人も少ないのだろう。

 って、道を埋めてるプレイヤーの数は? まさか平日午前中からログインしているのが多いのか? うん。深く考えるのはやめよう。

 多少なりとも開店しているプレイヤーの露店をひやかしてみれば。

「金属装備は皆無。皮革加工で多少先行してできたアイテムと、調薬のアイテムか」

 革になる前のまだ皮の状態のアイテムとポーションの類。プレイヤーの露店はそれだけで占められている。さすがに店はアイテム名の表示があるから【鑑定】がなくてもなんとかなる。最低限の情報だけどな。

 かといってNPCの露店はといえば。こちらは主に食料品などで占められている。

 全体的に見ればまだ見るべきものはないかな。


 皮と肉を換金するために冒険者ギルドにやってきた。ハンターギルドも兼ねるファンタジー世界の典型的なギルドだ。プレイヤーは一応全員登録済みという設定になっている。ランクもあるよ。

 現在番号札を握りしめ、買取の順番待ちだ。淡雪は送り返している。

 くそう。モフモフ成分が足りない。我にモフモフを与えよ。

 だんだん禁断症状めいてきたのをうつむいて耐えていると、視界に毛皮で覆われた尻尾が飛び込む。

 うん。僕にもモフモフの尻尾があったんだよな。

 ごくり。

「73番でお待ちの方―」

 おっと、呼ばれたようだ。

 うん。禁断の一線を乗り越えなくてよかった。

「お待たせしました。ウサギの毛皮と肉、各10個ずつで600Fになります」

 まあ、こんなものか。プレイヤーがかなりの量を持ち込んでるだろうし。でも、初期装備から脱却するには全然足りない。手っ取り早く金が稼げるアイテムかなにかないだろうか。

 まずは情報収集だな。冒険者ギルドには資料室があり、冒険者ならだれでも利用できる。一部スキルの情報は図書館より詳しいらしい。

「とりあえず【鑑定】とー、なんか便利そうなスキルはー……」

 スキル名鑑。これだ。

 ざっと流し読みをしてみたところ穴抜けが多い。いや、虫食いとか汚損ではなくて、字として読めないものが多い。読める個所はちゃんと日本語なんだけど、読めない箇所はよくわからん記号みたいなものになっている。これも何かスキルが必要なのかね。

 なにはともあれ【鑑定】とその他便利そうなスキルの覚え方はわかった。

 とりあえず冒険者向けのクエスト、依頼が張られている場所を確認しますか。


 依頼が張り出されている一角はプレイヤーがプレイヤーが黒山の人だかり。もといケモだかり。

 ざっと見てみるも高額報酬の依頼はみんな難易度高いんだよな。

 っと、一枚だけ、ほかの紙にうもれてるやつがある。


―求 竜の被毛!

  竜であれば種類問わず

   必要量 握りこぶしほど

    抜け毛も可

     委細相談

 報酬


「報酬、いち、じゅう、ひゃく、せん……」

 二十万F!?

 破格なんてものじゃないな! 依頼主は、錬金術師? なんかの触媒ってことかね。

 とりあえず紙を剥ぎ取って受付へ持っていく。

「すいません、受注お願いします」

「はい。っと、これAランクの依頼ですが」

「大丈夫です。たまたま僕の従魔が幼竜でして」

「なるほど。それでしたら破格の条件ですね。はい。受理完了しました。期限は二週間です。いってらっしゃいませ」

 外に出たら早速淡雪を召喚する。

 二度目となる立体魔法陣。

「ご飯に行こうか。淡雪」

「きゅい♪」

 結論から言えば飯屋は依然として混んでいた。多少の時間つぶし程度では変わらなかったようだ。たまたま人が少なめの屋台街があったから、昼はそちらでとることにする。


 二人分で100Fのシカ肉の串焼きはうまかった。

 食べ終わったところで露店街に戻ってくる。【鑑定】の取得条件、知らないアイテムを百個手に取って確認する、を達成するためだ。ま、すぐに終わるだろ。

 草草草草草

 毛皮毛皮毛皮

 たるたるったーるっ

看板もチェック。ぽえーん。

 ≪スキル:鑑定 が有効化されました≫

 そろそろ飽きてきたところでシステムメッセージ。


ラワンの櫛


ラワンで作られた櫛。木そのものの強度が高くないので歯がかけやすい。


 うん。丁度手に持った櫛が鑑定できた。淡雪の毛が必要だから、これ買っていくか。


 露店街から移動して、街の中央にある噴水広場。プレイヤーが死んだときにはここで復活することのなる。

「さて淡雪」

「きゅ?」

「お前の毛をちょっとわけてほしいんだけど」

「きゅ!?」

 びくっと固まった淡雪が微妙に後ずさりする。

「何も剃るとかそんな話じゃなくて。ブラッシングの時にでる抜け毛でいいんだよ。それだけでお金がうはうはだ」

「きゅー」

 それは安堵の溜息か。淡雪よ。僕はそんな鬼畜じゃない。期待されるなら尻尾の先までモヒカン状にしてやろうか。

「きゅきゅ」

「…淡雪さん。何でほほに手を当てて微妙にうつむいてるの?」

 まさか僕の思考を読んだ?まさかね。



 まさか、ね。



スキル名称が違っていたのを訂正しました

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ