13モフ目
アッー!な表現が増えております
朝です。テント生活も慣れてきました。寝起きのモフモフを堪能しましょう。
横で寝ていたトトを寝床に引きずり込みます。
ぬくぬくです。
モフモフです。
耳の付け根を一通りコリコリしてから首周りを両手でわしゃわしゃします。
これも堪能したら腹側に手を回し、わきの下あたりをくすぐるように撫でます。
こうした一通りの儀式を経て、朝からつやつやな毛皮丸が出来上がります。
こほん。
今日はまた新しい島の探検だ。
夜のうちにワタツミが魚を取っておいてくれたようなので、ありがたくたき火で塩焼きにする。その間トトとシンシナティは野草をはんでいる。
リアル道草―とか言いたかったけど、そもそも道がないな。
島の探検なのでワタツミは送り返し、淡雪を召喚。
テントを片づけ、馬装を整えたら探検スタートだ。
あ、シンシナティさん。速度はトトに合わせてね。
どうやらこの島は一面草原のようだ。眠りひつじやホースがのんびり草を食んでいる。
近づいても襲ってこないのでどうにも戦闘がしづらい。
お客様の中に血の気の多い方はいらっしゃいませんか!?
そんなたわいもないことを考えていたら、出てきたのがステップニンジンとか。
スタッフがおいしくいただきました。
ひひーん
めえぇぇぇぇ
のんびり揺られていい加減眠くなってきたころ、急に周りの馬と羊が騒がしくなってきた。
「何事?」
見ればトトもしきりに耳を動かしている。が、さすがに周りが騒がしすぎて探り切れていないようだ。
そのうちに羊と馬の群れが地響きを立てながら走り出す。一方向を目指して。
草食動物といえども大型で、しかも群れ。そんなまっただ中で身動きが取れるはずもなく。やがてそいつは姿を現した。姿だけで言えば黒い馬。すべてが自分の物だというような足取りで、悠然と歩く。
デビルホース オス
魔獣化した馬。魔の力が黒として体毛に表れる。肉食。
なるほど。さっきのスタンピートはこいつから逃げるためか。
こちらをしっかりターゲットに見ているな。ならば先手必勝といこうか。
シンシナティに乗って突撃の槍を使うのは初めてだけどなんとかなるよね?
なんとかなるはず。
なんとかなってくださいお願いします!
「はっ!」
何度目の突撃だろうか。ヒットするも一割もデビルホースのHPは削れない。逆にデビルホースの体当たりは一撃で三分の一ほどシンシナティのHPを削ってくる。それ以後はなんとかかわし続けているけれど、いつ直撃を受けるかひやひやものだ。
まあ、デビルホースがこちらをなめきってるのかどうか知らないけれど、体当たりの回数がそこまでないのが助かっている。
このままだとじり貧だな。
【陰陽】はほとんど効果がないから諦めている。
オーガの時のような手は、そもそも鉈を持って接触ができない。
さてどうするか。
突撃の槍。
突撃隣のクロマグロ。
……嫌なものを思い出したけど、他に手がないか。
「出番だ淡雪!」
「きゅ?」
「シンシナティ。距離を開けた状態からあいつに追い付くことはできるか?」
「ぶるるるる」
うん。何をバカなことを言ってるって目だな。
「よし。淡雪。次にあいつに並んだとき、あいつの背中に飛び乗って尻尾の付け根にかみついてこい」
「きゅ!」
敬礼風味な淡雪。どこで覚えてくるの?
「シンシナティ。淡雪が噛みつき次第、あいつの後ろから突撃だ」
「ひひーん!」
やる気は十分だな。
「よし、作戦開始だ」
並走のチャンスはすぐに来た。が、ここで問題発生。淡雪が飛び移れない。淡雪さんマジ短足。すかさず僕は淡雪の首根っこを掴み、オーバースロー。見事淡雪はデビルホースの背中に降り立った。
「シンシナティ、あいつの後ろへ」
微妙に速度を落とし、三馬身ほど開けて後ろにつく。
「ヒヒーン!」
淡雪に噛みつかれて驚いたデビルホースが尻尾を振り上げる。
「今だ!」
突撃を開始。
槍の穂先はデビルホースの肛門へと迫り、
アッ――――――!
泡を吹いて倒れるデビルホース。
すかさず鉈を抜いてシンシナティから飛び降り、落下の勢いを利用して腹へ一撃。
の、つもりだったけど微妙に手元が狂って局部への一撃になった。
具体的には玉。
玉。
うん。他人事ながらひゅんってなった。
よほどのダメージだったのか、HPバーはその攻撃で砕け散った。
うん。
とっても微妙な空気です。
アイテム残さなかったのも微妙な空気に拍車をかけています。
「ぷう」
ここでトトが追い付いてきた。
さすがに馬の全力疾走に巻き込まれると危ないので、距離をとらせていた。
≪おめでとうございます。従魔:トト がレベルアップしました。任意のステータスに2ポイント割り振ってください。≫
おっと。戦闘に参加してなくても上がるのか。少々距離があってもパーティのくくりで経験値が入る、のか?
まあいいや。
ファーラビット:トト Lv:8 up
HP:58 up
MP:27 up
STR:10
VIT:10
DEX: 7
AGI:11
INT: 5 up
MIN: 5 up
淡雪を抜いてしまったな。というか、淡雪はなぜレベルアップしない。
これはあれか。ドラゴンは成長に時間がかかるというお約束のあれか。
まあ、いいや。そのうち育つだろう。
≪おめでとうございます。従魔:シンシナティ がレベルアップしました。任意のステータスに2ポイント割り振ってください。≫
ホース:シンシナティ Lv:4 up
HP:82 up
MP:16 up
STR:21
VIT:18
DEX: 3
AGI:32 up
INT: 5
MIN: 5
シンシナティには速さで頑張ってもらう。今みたいな状況で追いつけないとか嫌すぎる。
さて、デビルホースは他にもいるのかな?
見つかりません。デビルホースがいません。
まさかフィールドボスなのか? それはないと思いたいけれど。
まあ、見つからないのはしょうがない。
帰ってきた羊たちでも狩ることにしようか。
「だああああああ!」
絶賛羊の群れに襲われています。デビルホースを倒した途端、みんな戦闘狂になりやがる。攻撃力自体は低いので助かっているけれど、集団で追いかけられるのは恐怖だ。
炎槍を飛ばしたり、トトの回し蹴りで数を減らして、やっとの思いで追いかけっこを終わらせる。
そしてこれだけ倒したのにアイテムが一個もないとか。運営の嫌がらせか。
こうなったら羊の一匹でもテイムしてやる。
スキル:テイム:5 [4/6]
枠は十分あるな。
どこかに一匹だけの眠りひつじはいないものか。
「めえええ」
ご都合主義万歳。
三匹に待機を指示して、さあ、僕の物になるがいい!
近づいてもアクティブにならないな。ならば堂々と真正面から。
「スキル:テイム」
≪テイムに失敗しました≫
……なんだと?
「スキル:テイム」
≪テイムに失敗しました≫
ここに来てまさかの初失敗か?
いかん、いかんぞおおおお!
貴様は絶対に僕の物にしてやる!
「テイム!テイムテイムテイムぅぅぅぅぅ!」
≪テイムに失敗しました≫
≪テイムに失敗しました≫
≪テイムに失敗しました≫
≪テイムに失敗しました。プ≫
……おい運営。最後はいったい何だコラ。
「ふざけんなコラ!テイムだっていってるだろうがぁぁぁ!」
羊の顔の横から回し蹴りを叩き込むと同時にテイムを発動してやる。
発動できちゃった。
≪眠りひつじ メス のテイムに成功しました。名前を登録してさい。≫
そしてテイムできちゃった。
まさかな性格してないよな?こいつ。
眠りひつじ:ドリー Lv:2
HP:24
MP: 8
STR:11
VIT: 9
DEX: 5
AGI: 7
INT: 8
MIN:15
スキル:クッション 耐寒
≪召喚可能枠がありません。送還されます。≫
おい。消える瞬間、目がうるんでませんでしたか!?
うん。性格が際物な仲間が増えました。モフモフなのは歓迎するところなんだけど。
さて。
気を取り直して……取り直して!
この島でのやることはとりあえず終わったから、次の島に渡ろうか。今ならまだ日が高いうちに渡れるだろう。
次の島への上陸は簡単にできた。同中の海は全くモンスターがでない。
つまりは経験値が稼げない。
そんなわけでこの島に出るモンスターに期待するところだけれど。
とりあえず海から見えた様子では起伏はほとんどない。
大部分は森で覆われているようだけれど、上陸した海岸から島の中心方向へ向かって道が伸びている。
獣道程度だけど、明らかに誘導してるよね。
まあ、運営の意図にのってやろうか。
そんなわけでシンシナティにまたがり出発だ。
積層ムカデ メス
キチンの装甲を幾重にもまとった大ムカデ。体液は有毒。
しょっぱなからこんなの出ました。
有毒とか言われると触りたくないので【陰陽】で倒してしまおう。
うん。炎槍の呪文で一発だね。
僕のステータスは劇的に変わっているわけじゃないから、こいつが弱いのか、火にとことん弱いのか。前者であるなら楽だな。
≪おめでとうございます。従魔:トト がレベルアップしました。任意のステータスに2ポイント割り振ってください。≫
おっと。さすがに経験値を稼いでいたか。
ファーラビット:トト Lv:9 up
HP:62 up
MP:29 up
STR:10
VIT:10
DEX: 7
AGI:13 up
INT: 5
MIN: 5
淡雪とシンシナティのシステムメッセージはない。やっぱり種族によって成長の仕方が違うな。
これ以後の戦闘はなく、やがて獣道の終わりには開けた場所が広がっていた。
ただ開けているわけではなく、その中心にはストーンサークル、いや、ストーンヘンジといった方がいいかもしれない。
かなりあからさまな構造物だ。岩でできたπのような形。それが十六個、等間隔に円をえがいている。高さはざっと5mほどか。
中心にはヘキサグラムの中にペンタグラムが書かれた陣が一つ。
陣の真ん中に立っても何も起きないか。
トリガーの起動に失敗したか、フラグが足りてないかな?
動かないものはしょうがない。あたりの森を探検しますか。
火喰いとかげ メス
火の力を栄養源にするトカゲ。そのおかげか体温が高く、動きが速い。
全長だけで言ったらシンシナティに匹敵するか。かなり大きいトカゲだ。
当然のことながら炎槍の呪文は使えないな。
「まずは一撃。ちぇいやああああ!」
「手刀!」
トカゲとの戦闘が長引いています。
トカゲの攻撃はすべてよけれているけど、それだけに面倒くさい。
淡雪とトトの攻撃は、ほとんど効果が出ていない。効果が出ているのは僕の手刀と、シンシナティの踏みつけだけ。
槍? すでに尻に刺さってますがなにか?
根元までずっぽしいってるのに動じねぇんだもん、こいつ。
パターン掴んでからはほとんど作業になっていて張り合いがありませんよ?
戦闘狂ではないけど、ゲームである以上楽しみたいよね。
火喰いとかげの皮
火に耐性がある。反面水には弱く、少しの水で痛むのが速くなる。
倒し切るのに二時間もかかってしまった。火力がまだまだ足りないな。
≪おめでとうございます。従魔:淡雪 がレベルアップしました。任意のステータスに2ポイント割り振ってください。≫
ラヌーゴドラゴン:淡雪 Lv:8 up
HP:92 up
MP:34 up
STR:10
VIT:10
DEX: 8
AGI:11 up
INT: 8
MIN: 6
≪おめでとうございます。従魔:トト がレベルアップしました。任意のステータスに2ポイント割り振ってください。≫
ファーラビット:トト Lv:10 up
HP:70 up
MP:32 up
STR:12 up
VIT:10
DEX: 7
AGI:13
INT: 5
MIN: 5
≪おめでとうございます。従魔:シンシナティ がレベルアップしました。任意のステータスに2ポイント割り振ってください。≫
ホース:シンシナティ Lv:5 up
HP:82 up
MP:17 up
STR:21
VIT:18
DEX: 5 up
AGI:32
INT: 5
MIN: 5
≪従魔:シンシナティ は 跳躍 を習得しました≫
よし。全員レベルアップ。
≪運営より全プレイヤーへお知らせします。只今、従魔が指定レベルに達しました。これに伴い、従魔のクラスチェンジが解放されます。クラスチェンジには特定の施設が必要なります。また、特定のアイテムが必要になる場合もあります。クラスチェンジの内容についてはあからさまなバグと思われるもの以外については運営では一切お答えできません。≫
なん、だと。
まさか、今のレベルアップがトリガーか?
可能性としてはトトのレベル10か。レベル10くらい、他のプレイヤーでも行っていそうなものだけど。
特定の施設。さっきのストーンヘンジが怪しいよな。
違ったら違った時で、とりあえず試してみるか。
「ものの見事に光ってるな」
ストーンヘンジの中の魔法陣。
どうやら施設はあたりのようだ。あとはどうやってクラスチェンジをするかだけど。
まさか、しょっぱなからアイテムいるとかないよね?
とりあえずは陣の中心まで行ってみようか。
≪クラスチェンジ可能な従魔がいます。選択してクラスチェンジを行ってください≫
陣の中心に来たところでシステムメッセージが流れ、今召喚してる三匹の名前がウィンドウで表示されてる。
淡雪とシンシナティの名前が暗く、選択できない。やっぱりトトか。
≪従魔:トトのクラスチェンジを行ないます。クラスチェンジ先を指定してください≫
表示されるのは
アンゴラウサギ
一択のみ。
指定しろってことは、複数ルートがあるパターンもあるんだろうな。
悩む必要がないからそのまま選択。
黄色いエフェクト光とともにトトの姿が変化する。
大きさとしては倍ほどだろうか。後ろ足の力も強そうだ。
そして何よりモフモフ度がアップしている!手触りもより滑らかに!より柔らかく!
ああ!
モフモフモフモフ
モフモフモフモフ
モフモフモフモフ
モフモフモフモフ
モフモフモフモフ
モフモフモフモフ
はっ
気づけば日が完全に落ちていた。
新生トト。なんて恐ろしい子。
そういえばステータスを確認してないな。
アンゴラウサギ:トト Lv:1
HP:98 up
MP:52 up
STR:24 up
VIT:18 up
DEX:11 up
AGI:20 up
INT:10 up
MIN:10 up
スキル:跳躍 蹴り 気配察知 耐寒new 急旋回new
すげー。かなりのパワーアップだ。そしてレベルは1からやり直しなのね。
これはかなりの戦力増強だな。
さて、野営をするのに海岸まで戻るのは面倒くさいな。今日はここでいいか。
テント設営はさくっと終わらせよう。
おやすみ。
トトは今日は僕の腕の中な。