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9モフ目

お読みいただきありがとうございます

 ん。朝か。現実で12時間なのにしっかり一日分寝た感覚になるのは本当にありがたい。

 さあ、今日はワタツミと一緒に海に、って、あーーーーーーー!

 槍で満足しちゃってワタツミの鞍作ってないじゃん。作り終わった時間も時間だったけど。orz

 まあ、やっちまったものはしょうがないから、朝食取ってから作るか。

「きゅふー」

 淡雪さん。そのやれやれな感じは何ですか?

 はいすいません。やっちまったのは僕です。


 さて、気合を入れて作業のお時間です。

 材料はたっぷりある馬の革。

 現実にはないものだから試行錯誤しないといけないな。

 必要なのはワタツミの皮膚を傷つけない滑らかさ。ある程度のすわりの良さ。ずれない固定性。

 そんなことを思いながらできたのがこれ。


試作型海豚騎乗鞍 


イルカに乗るだなんて変態なことを考えて作られた鞍。そんな変態が運営は大好きです。でも近寄らないでください。


 おい。

 おい。

 うん。何も言うまい。

 ともあれこれで海に繰り出せる。

 っと、野営道具買ってないな。この際だ。必要そうなものを片っ端から買ってしまえ。金はまだある。


「きゅ~」

「どんどんいけー」

 僕は今ワタツミにまたがって海を進んでいる。かなり爽快だ。なにがいいってイルカなのに【馬術】で対応できているところだ。イルカなのに。海豚なのに。

 まあ豚術なんてスキルがあっても困るけど。ここの運営なら作りかねないのが恐ろしい。

 肝心のワタツミは、一晩たって完全に回復していた。ゲームのご都合主義万歳。

 速度はワタツミに任せて北に向かうこと一時間。そろそろ変化が欲しい。

「ワタツミ、潜ってみよう」

「きゅ~」

 鐙と鞍につけた持ち手にしっかり力をかけ、潜水の衝撃に備える。

 ワタツミの潜り方がいいのか、結局備えは無駄だった。もしかすると【潜水】のおかげかもしれない。

 今の熟練度で潜っていられるのはおよそ五分。目いっぱい使っても海底にはたどり着けないけれど、海中の様子は把握できる。

 ものの見事になにもいない。

 ここまでモンスター一匹遭遇していない。運営が想定している順番じゃないから未実装とか?

 そんなばかな。ワタツミがいる時点で実装されてる。とすると後は運か。

 そろそろ息苦しくなってきたのでワタツミに合図して浮上してもらう。

「ぷはっ。なにもいないな」

「きゅ~。きゅ!?きゅきゅっ」

 これぞフラグ。どうやらワタツミが超音波探査でこっちに向かってくる何かを見つけてらしい。さすがイルカ。

 海に出ているプレイヤーはまだ僕だけだろうからそっちの線はない。船影もないから、漁帰りのNPCという可能性もない。

「きゅ~♪」

 ん?心なしかうれしそう?

 すぐに見えてきたそれは、海面を漂っていた。それも無数に。


エチゼンクラゲ オス


漁師の嫌われ者。でも食べるとおいしい。運営のおすすめは調理後に千切りきゅうりとあえて。食べちゃう?食べちゃう?


 運営うぜぇぇぇぇぇ。

 でも、まあ、クラゲなら触手に触りにいかない限りダメージはないだろう。

 鞄から槍を取り出し、ワタツミに突撃してもらう。もちろん使うための【短槍】は有効化済だ。

 ワタツミはクラゲの隙をうまく見つけて進んでいく。すれ違いざまに、いざ、衝撃のファーストb……槍だから違うな。さあ、どうだ!

 結論。一撃で終わりました。槍を抜けばそのまま沈んでいく。

「あれ?剥ぎ取りは?」

「きゅ~」

 ワタツミもどこか悲しそう。

 そのまま何匹かしとめるも、全部沈んでいく。

「んー、これはあまりおいしくないか?」

 主に獲物的な意味で。

「きゅ~!」

 何を思ったかワタツミがエチゼンクラゲに突っ込んでいく。そしてそのまま鼻先で投げ上げた!

 えーと、うん。おもちゃですか。

 僕が背中に乗ったまま、鼻先で受け止めては投げ、受け止めては投げている。そして次に落ちてきたとき。

 ぱくっ

 オレサマオマエマルカジリ

 いや、丸呑み? ワタツミさん、おいしい?

「きゅ~♪」

 どうやらちょうどいいおやつのようです。

 ふむ。人間も食べれるのかね。手近にいたやつを刺殺して、今度は槍が抜けないように慎重に引き寄せ、解体用ナイフを突き立てる。

 …突き立てる。突き立て……あれ?アイテム化しない。


エチゼンクラゲ 


食用可。加工次第で肥料にもなる。


 丸っとアイテムになっていた。……まあ、釣り上げた魚が切り身だけ残すのもなんかいやだから、こんなのもありか。っていうか、ワタツミ用に買った魚も、魚としてアイテム扱いだったな。

 深くは考えまい。

 とりあえず10匹ほどはアイテムとして確保して。

「ワタツミ。一度降りるから、思う存分食べておいで」

「きゅ~!」

 背中から降りた途端にエチゼンクラゲの中に躍り込むワタツミ。尾びれで跳ね上げ口でキャッチする。

 ボールか何かなにか買ってやった方がいいのだろうか。


 ≪おめでとうございます。従魔:ワタツミ がレベルアップしました。任意のステータスに2ポイント割り振ってください。≫

 ワタツミが残りすべてのエチゼンクラゲを食べ終わったところでレベルアップが来た。つか、よくあの量食べきったよな。いったいどこに消えたんだ?

 まあ、いいや。


イルカ:ワタツミ Lv:2 up


 HP:48 up

 MP:28 up



 STR:10

 VIT:12

 DEX: 5

 AGI:20 up

 INT:21

 MIN:15


 とりあえず海の足として頑張ってもらえるようにしよう。

 そんなワタツミの背中にまたがること二時間ほど。僕らの目の前に島があった。

 これは。

「探検せざるを得ない!」

 だって男の子だもの。

「きゅ~?」

「とりあえず島を一周してくれるか?」

「きゅ~」

 島を一周するのにだいたい三時間くらいかかった。形はいびつなひょうたん。下側の膨らんだところに湾ができていて、その入り口は洞窟のようになっている。浸食でできた地形だろうか。どことなく赤い飛空艇で空を飛ぶ豚さんの本拠地のようなイメージがわく。今は湾に入ってきて砂浜に立っている。

日が落ちかけているから今日はここで野営だな。


スキル:召喚

我が呼び声に応えよ 汝我が友トト 来たりて現れよ


「ぷう」

「トト。今日はここで野営するんだけど、モンスターの気配ってあるかな?」

「ぷう」

 トトは鼻をうごめかせながら小刻みに耳を動かしあたりを伺う。

「ぷぷう」

 こっちを見つめて首を振るあたり、大丈夫なようだ。。

「きゅ~」

「ぷう」

 そういや、トトとワタツミがゆっくり顔を合わせるのは初めてだったか。陸上三匹は特に気にすることなくあっさり順応していたから忘れていた。普通接点ないもんな。

 しかし見つめあうイルカとウサギ。なんか違和感があるな。

 トトさん。数えるために踏みつけてはいけませんよ。

 まあ、数もいないしあれはシャチだけど。

「ワタツミ。今日はこのまま野営するから朝まで自由にしてていいぞ。夕飯は自分で獲ってくれると助かる」

「きゅ~」

 ワタツミは反転。見事なジャンプを見せてくれてから海に出ていった。

「さて、まずはテントを張りますか」

 波打ち際には張らない。満ち潮が怖いからな。

 幸いにもすぐそばに地盤がしっかりした草地がある。場所を決めたらテントを張るわけだが。

「どうすっかね、これ」

 当然というか、現実にあるようなワンタッチ式のテント何てものではない。棒二本を支えに帆布を張るだけの簡単なものだ。だけどそれは構造が簡単というだけで、張るのが簡単というわけではない。あちらを立てればこちらが立たず。

 結局テントひとつ張るのに一時間はかかってしまった。人型、まではいかなくても、手伝ってくれる従魔が欲しいかもしれない。

 疲れたので今日は食事をとって寝ることにする。


 明日は探検だ。


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