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ガイは森に潜んでいた刺客の3人目を地面に叩きのめした。
武器で攻撃してきた刺客には自分の長剣を使ったが、正直なところ剣を柄から抜く必要もなかったかもしれない。
ガイの剣の腕は、「仲間内」でもその速さと力量に敵う者はなかなかいない。
倒した3人は、命までは奪ってはいないが、しばらく動けないほどの傷を負わせたうえに、3人とも気絶させておいた。
命を狙われたラヴィ本人に、彼らの処遇を聞いておくべきだと思ったのだ。
それと同時に、ラヴィの抱える「事情」をそろそろ話してもらおうかと考えていた。
追っ手に命を狙われ、隣国から川を流されてきて、これだけでもう「普通の娘」とは決して言えないだろう。
ラヴィはガイを巻き込まないために今まで口を割ろうとはしなかったが、刺客をラヴィのために倒したのだから事情を教えてもらうべきだろうとガイは思っていた。
ガイは普段から、厄介ごとにはあまり首を突っ込む事はしないのだが、今回はラヴィを放っておく事はしなかった。
あまりに警戒心の無い彼女が、心配になってしまったのだ。
3人の刺客が持っていた武器などを手にし、ガイはラヴィの待つ小屋へと足早に戻った。
すると、ラヴィは小屋の中で座りこんでいた。
その様子をみてガイは内心焦ってしまった。
やはり刺客に襲われてラヴィも怖くなり、それで腰を抜かしてしまったのだろうか、と。
「ラヴィ、大丈夫ですか?」
ラヴィの傍に屈んで、顔を覗き込むと、顔色が悪く不安げな表情が見えた。
「…えぇ。大丈夫…。ただ、覚悟は決めてたはずなのに…国から命を狙われちゃったんだと思ったら…」
呟くように、自分の言葉を噛み締めるように言うラヴィは、ただじっと床に刺さったままの矢を見つめていた。
その姿は、ガイにはとても小さく儚く見えた。
まだ出会って僅かだが、ラヴィの新たな部分を見た気がした。
ガイは、ラヴィが見つめたままの矢を片手で引き抜き、月灯りでよく見てみる。
すると、矢尻のすぐ際の部分、木製の矢柄に何か彫られている。
それは、ガイの知る、ある「印」だった。
そして、その「印」からラヴィが追われている事情が少し見えてきた。
「奥に入りましょう」
まずはラヴィを小屋の奥に促し、古い小さな椅子に座らせた。
火種で新たに火をおこしたガイは、ラヴィに向き直る。
「ラヴィ。今から追っ手達を縛ってきます。すぐに戻るので、ここで待っていてください」
ラヴィの顔を覗き込み、それだけ伝えるとガイは小屋から静かに出ていった。
ラヴィはまだ動揺が収まってはいなかったが、ガイの言葉は耳に届いており、彼に言われたとおりに動いた。けれど、頭を占めるのはあの矢柄の「紋章」。そして、この数日の出来事だった。




