プロローグ
ゆっくりな投稿となってしまうかもしれませんが、出来る限り頑張ってすすめていきたいと思っています。
よろしくお願いします。
プロローグ
その夜は雲が晴れ、夜空に三日月が白く輝いていた。
森からは微かに、フクロウの鳴く声や、サワサワと風に揺れる木立の音が聞こえる。
ここ西国では普段と変わらない夜だった。
民は眠りにつき始め、城下街にある酒場からは灯りと陽気な声が洩れている。
まだまだ眠りにつかないのは、陽気な酔っ払い達と、城の警護につく兵士達くらいだろうか。
そんな、普段と変わらない夜なはずなのに、1人の若い少女が、夜の城内を必死で走っていた。
彼女の名はラヴィ。
17歳のごく普通な、城で働く少女だ。
しかし、ごく普通な少女は一般的に考えても、夜更けに城の中を走り回ったりはしないだろう。
ラヴィ自身も、何故こんな事になったのかと頭を抱えたい心境だ。
けれど今は頭を抱える暇すらなく、とにかく脚を動かさなければ。そう、脚を動かし「逃げる」のだ。
今はないが、時期に追手が現れるだろう。
ラヴィを捕まえて牢に入れ、最悪な場合は問答無用で処刑される可能性もある。
自分の想像にゾッとして身震いした。
勝手知ったる自分の職場でもある城の廊下は、夜間は燭台の灯りもなく真っ暗だが、今日は窓から三日月が白く輝いており、暗さに不自由することはない。
そもそも夜目が効くラヴィには、月明かりがなくとも問題はないのだが。
今夜の月の輝きは、逃げているラヴィには「不利」なものになった。
動揺からか、額から汗が滲み出ているのを感じる。
…どうしよう?まずは城から出る?それとも、誰かを頼る…?
自身に問いかけるように頭を動かし始めた矢先、遠く、だが間違いなく城内から、夜間に不釣り合いな声や音が聞こえた。
兵士たちの何やら叫ぶような声、バタバタと走る音。
まずい、もう探し始めている!
ラヴィは焦り、思考を1度止めて走るスピードをあげた。
だから、動揺したせいで気がつかなかったのだ。
走るその先の角に人の気配があることに。
角をラヴィが曲がった途端、彼女の腕は掴まれた。