瑠璃色の瞳
僕、優一の隣に住んでいるのは瑠璃ちゃんだ。
僕は、初めて瑠璃ちゃんにあったとき、一目惚れしてしまったんだ、彼女の瞳に。
ガラス玉のように透き通っていて、それでいて、何もかも、
未来をも見透かしているような、目の力の強さ。
その目は、それはそれは美しかった。
だけど、瑠璃ちゃんは謎に包まれた少女だった。
どこの学校に通っているかわからないんだ。
(え?何で名前を知っているのかって?表札に書いてあったからさ。)
背は僕より少し低いぐらいで、小学4,5年生ぐらいに見える。
(ちなみに僕は、6年生!!)
瑠璃ちゃんは、瞳もきれいだが、姿や顔もかなりカワイイ。
紙はちょっと茶色っぽくて、少しカールしている。
顔立ちは、ちょっと外国人っぽい。(ハーフかな?)
着ているのは、いつも赤いチェックのワンピース。
ほんっっとうにかわいくて、瑠璃ちゃん人形見たいのがあってもおかしくないと思う。
学校の靴箱に、ラブレターが100通ぐらいはいっていてもいいんじゃないかと思える。
一言でたとえるなら、春の風と光に包まれた、花の妖精という感じだろうか。
今まで僕は、瑠璃ちゃんに話しかけたことがない。
だって、向こうは僕のこと知っているかわからないし、
いざ話しかけようと思うと、体が固まって、一歩も歩けなくなるんだ。
でも僕は、今日こそは話しかけるまで家に帰らないと決めた。
瑠璃ちゃんは、いつ現れるかわからないので、僕のうちの玄関先で待っていることにした。
太陽が真上に昇って、ちょっと沈んで、ちょっと暗くなって・・・
夕方、ついに瑠璃ちゃんが出てきた。
瑠璃ちゃんは、すたすたと歩いていってしまったので、僕はあわてて追いかけた。
「留、瑠璃ちゃん、どこに行くの?」
瑠璃ちゃんはくすっと笑って、歩いていってしまった。
「あ、待って・・」
ドシ―――ン
僕は勢い余って転んでしまった。
ああ恥ずかしい・・・
顔を上げると、瑠璃ちゃんが僕を見ていた。
そこは見たこともない、一面のお花畑。
(こんなとこあったっけ?)
彼女が口を開けた。
「優くん、ダイジョウブ?」
あ・・・僕の名前知ってたんだ・・・
僕は感激した。
でもそれは、瑠璃ちゃんが僕に向けていった、最初で最後の言葉だった。
僕が立ち上がろうとしたその瞬間、いきなり強い風が吹き荒れた。
僕は目を閉じ、再びあけたとき、彼女はもうそこにはいなかった。
僕がたっていたのは、お花畑ではなく、いつもの空き地だった。
「瑠璃ちゃん、瑠璃ちゃん!!」
僕は叫びながら探したけど、彼女はいなかった。
彼女の家に行くと、表札が消えていた。
30分ぐらい待ったけど、彼女は帰ってこなかった。
僕は仕方なく家に帰り、母さんに瑠璃ちゃん見なかった?と聞いてみた。
すると母さんは、
「瑠璃ちゃん?何言ってるのよ、お隣はずっと空き家だったでしょ。」
と軽々しく言った。
そんなはずはない・・・
瑠璃ちゃんは本当に妖精だったのだろうか。
それとも幻だったのだろうか。
いや違う。
瑠璃ちゃんはいたんだ。
あの澄んだ瞳、あの唇で僕の名前を呼んだ。
あれは幻でも何でもない。
瑠璃ちゃんはいたんだ。
これは僕の淡い瑠璃色の初恋。
読んでくださってどうもありがとうございます。ホント感謝です。はい。