Sideクラスメイト
大変遅くなってすみません。
受験も受かって、引越しの準備もあって更新が遅くなりました。
これからもドタバタするので遅くなると思いますが見てくれると嬉しいです。
短くなりそうなのでよろしくお願いします!
一方泰斗が旅立ったすぐ後…
クラスの代表がいつものようにクラスの人数を確認する。
そして、泰斗がいない事に気付いた。
ある生徒が王女にその事を聞く。
「あのぉ、桐谷泰斗がいません」
「泰斗様は昨晩のうちに魔族に寝返りました。なんと、王様を暗殺しようとしてきたのです。結局暗殺を防止することは出来ましたが逃げられてしまいました。こんなことが許されるでしょうか⁉︎」
王女はすぐに泰斗がいない理由をでっちあげて、クラスメイト達に話した。
すると…
「許せない」
「なんて奴だ。もし今度現れたらタダじゃおかねぇ」
「桐谷くんが⁉︎なんでそんな事を⁉︎」
泰斗の事を何一つ知らない生徒達は“泰斗が魔族に寝返った”と言うことに激しく激怒した。
中には殺気をこめて言う者もいた。
おそらく泰斗に嫉妬していた男だろう。
この世界に来てから魔物などを殺しているうちに、“殺生”ということに不快感が段々と無くなってきているようだ。
「僕達は絶対この国を裏切りませんので安心してください、王女様‼︎」
祐介は王女に向かって宣言した。
王女はそんな祐介に好感度をあげる。
周りからもヒューヒュー、と囃し立てるような声も聞こえる。
「ありがとうございます、祐介様。私達も信じておりますわ。では、引き続き訓練頑張ってくださいませ」
王女はまるで夫を送り出すような感じで祐介に応える。
その事を友人に茶化されて、祐介は顔が赤くなる。
「よ、よし!行くぞ、お前たち!」
赤面しているのを誤魔化す様に祐介が訓練場へと急ぐ。
その後ろに他の生徒達が付いて行って、今日も訓練が始まった。
「はっ!」
祐介が【聖剣コールブラウン】を振るう。
それを騎士団長が受けて、蹴りを放つ。
祐介はそれを避けつつ、距離をとる。
そして、また剣を振るうのを繰り返す。
祐介はいつも騎士団長と組手をやっている。
団長曰く、成長するには実戦が一番だそうだ。
そのせいもあってか、祐介は黙々と技術を身につけ、あっという間に騎士団長を超えてしまった。
他の生徒達もチートがあるので、並みの兵士よりも圧倒的に強く、全員が騎士団の上位なみの強さになっていた。
「お疲れ様でした」
「お、おうお疲れ。それにしても、ドンドン強くなっていくなお前たちは。これじゃあ、騎士団長としての風格や威厳がなくなっちまう」
騎士団長オルガは苦笑いしながら、祐介に愚痴を漏らす。
祐介も苦笑いする。
「僕達も強くなるのに必死ですからね。それにチートっていう能力も持ってますしね。」
「チート?」
「はい、なんて言うか凄い能力やステータスを最初から持っていることをチートっていうんですよ」
「そうなのかぁ。確かにお前達はチートだなぁ。まぁ強いにこしたことはない。これからも精進していけよ」
「はい、ありがとうございました」
そう言ってオルガは訓練場を後にする。
祐介が周りを見ると他の生徒達も兵士達との訓練を終えてストレッチや休憩をしていた。
その中でとある女の子を見つけたので近寄る。
「やぁ、静香。調子はどうだい?」
「……どうでもいいでしょ。ほっといて」
そう言って祐介から離れていった。
その女の子の名前は中村静香と言う。
腰まで伸びた黒髪に真っ白な肌、目は大きく、その下には泣きぼくろがある。
身長はモデルの様に高く、170センチ。
スタイルは抜群というわけではなくスレンダーだが、妖精を思わせるような身体をしていて、男を魅了する。
実はこの女の子は八神祐介の彼女である。
女の子は嫌がっているが家の決めた相手なのでどうしようもなかった。
なぜ完璧超人の八神祐介を嫌がっているかというと、祐介が天然ハーレム野郎だからである。
先ほどの王女とのやりとりの様に女の子をその気にさせるようなセリフを次々と言うので、女の子が本気になってしまう事が多々ある。
しかし、一番の決め手となるのは静香には好きな人がいる、ということであった。
裕介は生まれて初めて自分に“靡かない女の子”ということに好意を持ってアピールするが彼女との距離は開く一方。
だが、祐介は諦めないで話し掛けようとするが全部スルーされる。
その事に心が折れそうになっていると王女が訓練場にやって来たので、そちらに顔を出す。
やはり、優柔不断のハーレム野郎なようだ。
side:静香
「あぁ、もう近寄らないでよ」
静香は誰もいないところで愚痴を漏らしていた。
それは先ほどの八神祐介とのやりとりのことであった。
八神祐介と会ったのはつい最近で、家の決めた相手ということだった。
好きでもない相手と結婚をする、そんな事は静香にとっては拒否する理由に十分だった。
いくら家の仕来りといっても静香には好きな人がいた。
それも初恋の相手。
静香は大人びた容姿とは裏腹に乙女のような性格をしていて、好きな相手と結婚するのが夢だった。
その好きな人は小学校の時の幼馴染。
実は静香は最近引っ越してきたばかりであった。
引っ越す前は親の都合でアメリカにいた。
そして、また親の仕事の都合で昔住んでいた町の近くに引っ越して来た、というわけだ。
「親同士が決めた許嫁なんて嫌なのに。
それに“あいつ”も私に気付かないし、何処かに行っちゃうし……
まさか、忘れてないわよね?」
どうやら静香の好きな人は一緒に異世界にとばされたのに静香に気付いてないらしい。
静香は引っ越して初めて高校に行った時、好きな人を見つけた。
しかし、緊張もあってか話しかけることができなかった。
静香は昔から容姿のせいもあってか、男の子に人気でいつも言い寄られていた。
そのせいで女の子からは嫌がらせを受けたり、無視されたりして友人があまり少なかった。
そんな経緯からか、静香は軽い人間不信を起こしていた。
そんな時助けてくれた人物。
静香にとってはヒーローで好きになるのも当然であった。
親の都合でアメリカに行くと決まった時、静香は一晩中泣いていた。
その人物と離れ離れになることなんて考えたくなかったし、嫌だった。
結局、好きな人には何も言わずに引っ越した。
そして現在に至る。
「ねぇあなたは何処に行ったの?また会って話がしたいよ、“泰斗”…」
静香は遠くに見える地平線を眺めながらそう呟いた。