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ハクチユウム  作者: 月刊乙女
7/9

ハクチユウム Ⅶ




 ホテルを出てすぐ、つけられているのに気がついた。

 おおよそ二人。 上手い下手で言えば下手な方に分類されるであろうその尾行は、こちらが気の毒になるほどの殺気を放っていた。


 カーブミラーやガラスから背後をうかがう。 やはり二人、素人丸出しであった。 しかも二人ともまだ若い。


 アキバは路地が多い。 まくのは簡単だったが、せっかくのチャンス、私のことを追っかける様な物好きの顔を見てみようじゃないか。


 私は特に人気の少ない小道に入った。 そこで尾行者を迎え撃つ。


 ベタな作戦だが、今回の相手にはベターな対応だ。


 鳩尾にきれいに一発入り、不意打ちは成功した。


「まったくねぇ」


 呻き、アスファルトに倒れ伏す男に、さらにもう一発、もう一発、と徹底的に潰す。 男は胃の内容物を吐き出し、痙攣しだした。


 このにようやく二人目が駆けつけた。 二人目の男はどこで手に入れたのか、銃を持っていた。 相手が照準を合わせるより先に距離を詰め、銃を蹴り飛ばし、次いで横顔に蹴りを入れる。 脳震盪を起こし、世界が歪んで見えるであろう男の覚束ない足を払う。 あっけなくこけた男の首に足を入れ意識を奪った。

 三秒間の出来事。

 一人目の男を入れると十秒は超えるが。 三秒は今のところベストタイムだった。


「……まったくねぇ」


 と、ひとつため息をついた。 なかなかの満足感。 格好良く一服したいところだが、生憎私はタバコはやらないのだった(そもそも法律違反だ)。


「動くな」


 不意に後頭部に硬質な感触。 見えてないがきっと銃だろう。

 私は両手を挙げ。


「もう少し余韻に浸らせてくれないか」


 しくじった。 あの素人は囮だったか。 こっちが本命というわけだ。 だが、全く気配を感じなかった。 同業者か? 或いはその手の人間か。 どちらにせよ、囮とはいえ仲間二人をボコボコにしたのだ、今度は私がボコボコか? まったく、ついてない。


「ゆっくりとこっちを向け」


 指示に従い、後ろを向いた。


「…………!」


「よう、新十郎」


 こちらに銃を向けている男を私は知っていた。


「…………野崎、か?」


 野崎 守。 私のいる部隊で主にスナイパーを勤めていた腕利きの殺し屋。

 しかし任務で右腕を失い引退したはずだったが……


「どうして? お前、こんな所に」


「どうして? それはお前がアキバ(ここ)を嗅ぎ回っていたからだ」


「それってどういう…… なあ、腕下ろしていいか?」


「駄目だ。 挙げられる腕があるだけ感謝しろ」


「意味がわからない」 私は呟き、後ろを見やる。


「あれは、お前の仲間か」


 そんなもんだ、と野崎は答える。


「いいか、一つ忠告する。 速瀬道流に関わるな」


 私は笑った。


「どうして僕が速瀬道流について調べてるって分かるんだ?」


 銃口をこめかみに押し付け、野崎は眉間にしわを寄せた。


「いいからもうアキバ(ここ)には来るな。 分かったか」


 嫌だ。 というのが本音だが、ここで野崎とやりあうのは不味い。

 ここは一旦下がって様子を見た方が良さそうだ。






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