↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR

キャンディ味の白昼夢のよう

作者: 杏人
掲載日:2014/06/19

 はじめましての投稿になります、カラヒトです。

 くだらない、だからこそ有り触れている。だとすれば、感情移入しやすい!?

 そんな短編小説です。

1.

 「暑いね。」

 彼は言う。スラリとした長身、モデル体型とでも言うのか。

 端正な顔立ち、本人は適当に自分で切ってるという髪は、彼の繊細さが適当にやっても体現される、そんな生まれながらのイケメンって感じの印象を私に与える。……いやいや、それはもしかすると彼の事が気になるからこそ、そんな風に色眼鏡で見ちゃってる、のかもと思いながら彼の顔を盗み見て、そうじゃないなと確信。……それ以前にイケメンが生まれながらなのは当たり前じゃ?

 「そう、だね。」

 何か返事しないと!と思い出して、取ってつけたように言った。言い終えてすぐ、失敗だった!と思った。「どこかで涼む?」とか、そういう気の利いた事、言った方が絶対よかった。

 『はぁ』と音にならないような微かな溜息を漏らして、全部出しきる前に慌てて途中を飲み込んだ。その理由はもちろん、彼に私がつまらないと思ってるだなんていう誤解を与えない為!

 

2.

 結局、どこかで涼もうかって言い出したのは私ではなく彼だった。

 適当な喫茶店を選んで入店。選んだのは私だった、涼しさを求めているってのが彼のとりあえずのご要望。私にとっては神様の思し召しくらい大事なご要望です、ええ。いち早く応えなければ!

 「二名様でよろしいでしょうか?」とのウェイトレスさんの愛想のいい言葉と綺麗な声。

 この喫茶店に看板娘なんてのが居るとしたら間違いなくこの人!って感じだ。女として私じゃ敵わないなぁ、もし彼がこの人を意識しだしたらどうしよう?なんて、心配性って言葉じゃ足らないような恐怖が私を襲う。

 「はい。」

 彼は、なんというか女性に慣れたイケメンのみが醸し出せる超越的な魅力を持った爽やかさで答えた。超越的って何を超越してるのかって?……それはもちろん、今一緒に居る人間の魅力、しかないでしょうね。

 「こちらの席へどうぞ!」

 そう言ってウェイトレスさんが、やっぱり私じゃ敵いそうにない女性らしさで席へと案内する。……この人だったら彼と対等の地平に立っていられそうだ。うん、一人で勝手に完敗。

 ―――しかし、思わぬミステイク!

 案内されたのはまさかのテラス席。いやいやいやいや、ちょいと待ちなさいよウェイトレスさん!この炎天下の中でやってきた喫茶店、ですよ?普通ガンガンに効かせてある冷房の恩恵が受けたいに決まってるじゃあないですか!ていうか普通一言聞かない!?

 ……でも、ちょっと待ってよ。お店選んだの私。テラス席のある店に入ったら、テラス席に通される可能性、あるに決まってるじゃん……。ああ、どこまでダメなんだ。気配りしたつもりが空回り。

 「ごめんね、ここテラスのあるお店だったから、入る前に一考するべきだったね。代わりに、というのもなんか恩着せがましいかもしれないけど、奢っちゃうよ。」

 とは彼の弁。おおぅ、そんなセリフがさらっと、とは……。この人はどれだけ女慣れしてるんだ、というかそれ以前に謝るべきはどう考えても私の方でしょう、何謝らせちゃってるんだ。

 「ああ、いえ、そんな、悪いですよ。お店選んだの、私ですし……。」

 だんだん声が尻すぼみになって行くのは当然、もっと気の利いた受け答えあるんじゃ?って思うからであって、そう思いながらもこう言ったのは結局そういう気の利いたが出てこなかったからで……。

 「いや、そんな事ないよ。なんだか君が俯いてばっかりだったから、暑いのかなって思ってさ。だから、ね?気を遣ってあげたつもりだったんだけど、ダメだったね。」

 おお、なんという事でしょう。どこかで涼む?って気を遣うべきだったって悔恨がまさか相手に気を遣わせる引き金になるなんて!眩しい、眩しすぎる、彼の気遣いが眩しすぎて、お天道様のもたらす高熱なんて目じゃないくらい私を苛む!

 

3.

 悪いですよ、とか言いながらも結局彼の気配りを更に無碍にするわけにもいかず……という建前で、やっぱり暑かったから、アイスティーと一緒にパフェなんか頼んじゃった。

 「やっぱ、女の子は甘いもの、好きなんだねえ。」

 その、やっぱって言葉はそれこそやっぱり、過去の女性たちもそうだったって事……です、よね。つまりそれだけ見てきてる、と。心の中で自己解決。他にあるわけがないじゃあないの。

 彼は言ってから小動物でも見守るように私がパフェに手をつけている姿を眺めて、そしてアイスティーをエレガントに口に運んだ。椅子の上から伸びてる長い脚を組んでいる、何気ないその姿さえ格好よく見える。……正直私は脚を組む男性ってのが嫌いだ、偉そうで。というより、職場の偉そうな態度の上司がいつも脚を組んでるから。

 けど今目の前で行われている脚を組むって行為は魅力的に見える。アイスティーを飲むのと同じくエレガント。結局のところ、やる人の問題なんだなー、とか思いながらスプーンを動かす。

 「アールグレイ、嫌いだった?」

 不意に彼が言った。

 「え、あ、いえ、そんな事は!」

 彼の姿に見とれていたせいか否か、最初の一口から私のアイスティーは減ってない。

 「そっか、じゃあよかった。失態増やしっぱなしじゃ、恰好つかないからね。」

 そう言ってハハハと笑う。いえいえ、滅相もございません。あなた様は最高にカッコいいです、はい。と思っても遠回しの一言さえ言えないのが、恋愛ってものに慣れてない私の限界。

 ……ていうかそもそも紅茶の種類とかわかんない、アールグレイってのが紅茶の一種類ってことくらいが出せる知識の限界というくらいに。

 私の思うエレガントとは一体なんなのか?溜息が出そうになったので、紅茶で流し込んだ。少なくとも私の思うエレガントとはかけ離れた感じに。


うーん、この調子じゃあ、彼とのデートはこれっきり……なんだろうなぁ……。とかうすうす感じながらも、パフェも紅茶もがっついたりしなかった辺り、期待を捨てきれない証拠。私は惨めな女です、いけないですか!……誰に向かって自棄になってるんだ。

 

4.

 その後、買い物に付き合ってもらったりして―――と言ってもノープランだったから適当にぶらついたって方がきっと正しい―――、私とイケメン王子との初めてのデートは終了間近。

 このまま100mとちょっとくらい歩いたら、駅についてお終い。時は夕暮れ。大人のデートっていうには全然お早い終了です。つまり、その程度、なのかな……。とか思ってたら

 「実は、さ。女の子とデートするの、初めてだったんだ。」

 彼はそう言って、ついさっき(のように感じるのはそれだけ楽しかったって事か)、喫茶店で笑ったのと同じようにハハハと笑った。

 「えっと、その、ごめんね。君、可愛いから、緊張しっぱなしで、ダメなエスコートだったよね。」

 言い終えるより早く視線を落とす彼。落とした視線をどこか別の方へ―――私の目ではないどこかへ―――向けながら、

 「でも、さ。もしよかったらなんだけど、今度は僕から誘ってもいいかな?」

 「も、もちギ、もちろんです!」

 噛んだ。今までの人生で最高にロマンチックというかなんか褒められたっぽいとかそういうすごくデートらしくって、且つ私にとっては慣れてない事の集合体であって、それにしては短すぎる何かをそのまま言葉にした彼の突風に煽られて、私は噛んだ。何故だ、何故、私はこうなんだ……。とか、自分に辟易しながらも、私の心は完全に地面から離脱して、さながらこのまま天国へ……って感じです。

 「そっか、よかった。」

 彼はそう言って、心底安心したって感じに溜息を漏らした。なるほど、溜息ってこうやって使うのか、感心。とか変に冷静なのは、多分、私が思っていた彼の立っている地平ってのが私と同じ地平だったからって事が理由、なんだと思う。……この浮遊感だか高揚感だかがいつまで続くかはわからないけど、でも

 「あなたがよければ私は、いつだってお相手……、させて頂きます。」

 浮遊感的なのがそれっきりになったりしないように、ぎこちなく言ってみた。

 やっぱり彼は、女慣れしてるとしか思えないイケメン特有の爽やかスマイルでグッと頷いてくれた。

 ハミングライフという中村 航様の小説があるのをご存知でしょうか。これはGOING UNDER GROUND様の歌、ハミングライフに着想を得て書かれたものだそうで。作成における着想はそれと同じく、某アーティストの歌をモチーフに執筆しました。

 生憎と、小説家になろう!様の規定上、題材を特定させやすくする事もタブーであるとされているため、省くことになってしまいますが題材は「普通の女の子っぽい歌」です。

 なので、女性主人公の純愛短編小説。こういう、普通の女の子が主人公のファーストパーソンものって今まで書いた事がありませんでした。書けるんですよっていうアピールかも。(苦笑)

 私と彼とウェイトレスさんしか登場しません。固有名詞なしで攻めたのは、きっとまるっきり同じと言えなくてもこういう似た雰囲気のを経験した事がある女性ってのは多いだろうから、敢えて固定化させませんでした。

 もしほんの少しだけでもお楽しみいただけたなら、有難いです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。