<7> 医者の仕事は驚くことばかり-裸を見る
医療行為は医者でない者がやれば犯罪になるものばかり。素人が他人の膚に刃物をあてれば傷害罪が成立しましょう。他人を丸裸にしてワイセツ罪に問われない職種が、他にありましょうか。まさに医者は犯罪と隣合わせ。それだけにこの仕事には倫理性が強く要求されるのです。
医学的には、“見る”は“診る”と書いた方が適切ですが、医者になりたての研修医時代は、“見る”という表現の方がぴったりときます。
診察室で先輩の横に付いて、患者を診ます。うら若い娘が入ってきました。型通りの問診を終えると、先輩は聴診器を耳にセットします。それが合図のように、付き添った看護師が、恥じらう娘の服に手をかけるが早いか、パッと脱がせて、上半身を裸にするのです。
女性の裸を目の前でまじまじと見たこともないうぶな私などは、ドキッとして一瞬目をそらしたものです。(←(^ω^)息子よ、起きるな!心の中で叫んでいました。意味分かるよね)
そして聴診器で聴診したり、手で触診したり、と書けば何の変哲もないのですが、これを医者以外の人がやったら、それこそ痴漢というまぎれもない犯罪となるのです。
それが時には、性器や肛門など、本人(←(^ω^)独身の場合だけどね)以外は、誰も見たことも触ったこともない秘部にまで及ぶとなると、正直言って穏やかならぬ気持ちになったものです。
同僚の研修医も、若い女性患者さんの胸を打診するとき、手が震えて、うまく打診できないと、苦笑していました。
ご存じのように、打診というのは、左の中指を患者さんの身体にあて、右の中指でたたいて、診断するものです。手が震えると、なかなか中指に当たらないのです。
「この先生、しんまいね」
と思われたら最後、ますますあせってしまうのです。
話が少々それますが、老婆心ながらついでに申し上げますと、今まで私が赴任した病院は十指にあまりますが、どこの病院でも、理事長や病院長など、要職にある人には、配偶者以外の愛人が、必ずおりました。もちろん、平の医者も似たりよったりでしょうが、それはあまり明るみに出ることは少ないようで、話題にもなりませんでした。
しかし要職にある人は別ものです。そこここに噂が飛び交います。
ひどい場合は、病院内を第1夫人と第2夫人が、交互に出入りするニアミスまがいの事態もありました。職員はどう対応してよいものやら分からず、見て見ぬ振りをしていました。
またある院長は、夫人同伴と見まがうほどに愛人を連れ、病院に来ていました。最初の頃はあまりの堂々たる2人の振る舞いに、てっきり正妻と思っておりましたが、それが愛人と判明して(というより当の本人が、平気でそれを打ち明けるのです!)びっくり仰天しました。
純白の衣を着ていて、医師は清廉潔白な職種と思いきや、そちら方面は相当乱れていることを知り、愕然としたものです。
そういう私も要職に就いたことがありましたが、幸か不幸か1人として寄ってくる物好きはおりませんでした。少しばかり寂しい思いは、正直言って、あったのでございます。