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カルテに書けない よもやま話  作者: いのうげんてん
3章 病気だらけの医者
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<7> 糖尿病 その3 食後血糖値に注目

 この文章を書いている最中に、NHK番組『ためしてガッテン』(2012年11月21日)で、食後血糖値を下げる3つのコツが放送されました(http://www9.nhk.or.jp/gatten/archives/P20121121.htmlに載っています )。


 これから書こうと勢い込んでいた矢先に、先を越されてしまいました。ちょっとシャクな気もしましたが、見事にまとまった内容でしたので、それに沿って書いてみたいと思います。


 コツは3つあって、第1は、「食べる順番かえるだけ作戦」、第2は、「脳内ヤセ薬作戦」、第3は、「血糖値計るだけ作戦」と銘打って紹介しています。


 ここではストーリーの都合上、第3、第2、第1と逆の順で書いてみます。


 第3の「血糖値計るだけ作戦」は、簡易型の測定器で血糖値を計るだけで、炭水化物が多すぎる食事は血糖値を急激に引き上げ、運動すると血糖値が下がることを実感でき、生活習慣を変える手助けになるというものです。


 食後血糖値を知るということは、本人にとって強烈なインパクトがあります。何をどれだけ食べると血糖値がどうなるかを自分の目で確かめると、食事に注意しようというモチベーションがものすごく高まります。


 私が食事に真剣に取り組み始めたのも、血糖値測定器を自分で買って、まめに血糖値を計り出してからのことでした。それまでは減量のために、食事のカロリー量だけを気にしていたのですが、何をどのように食べたら良いのかという、食べ方にも気を配るようになったのです。


 第2の「脳内ヤセ薬作戦(ゆっくりと噛んで食べる)」は、噛むことによって脳内で増える「ヒスタミン」が満腹中枢に働きかけて、食欲を抑えるというものです。


 「早食い」は健康に悪いことは昔からいわれています。さらに最近では、「噛むことは脳のジョギング、認知症の予防にもなる」といわれています。


 しかし私には少々異論があります。ゆっくり食べることは良いにしても、よく噛むのは食べたものの消化を助けてしまい、食後血糖値を上げてしまうきらいがあると私は考えるからです。


 といって、よく噛まずに食べれば胃に負担がきますから、胃の弱い人には勧められません。


 私は胃が丈夫なので、昔からよく「ソバは喉越しを楽しむ」といわれるように、めん類などは、なるべく噛まずに飲み込むようにしています。めん類はGI値が高く(豆知識参照)、食後血糖値を上げてしまうのです。


 第1の「食べる順番かえるだけ作戦」は、食事をするときに、先にサラダ(生野菜)を食べるというもの。先に炭水化物の含有量の少ない、しかも、かさの多いサラダ(生野菜)をたくさん食べると、サラダにふくまれる食物繊維が炭水化物の吸収を遅らせて、食後血糖値の上昇が抑えられるのです。


 最近、医学会でも、食後血糖値が注目され、空腹時血糖で見落されていた糖尿病を発見するのに、食後血糖値が有効であるといわれています。


 空腹時血糖は正常なのに、食後のみが高いということは、インシュリン総量が不足しているというよりも、インシュリンの素早い分泌がなされないか、あるいはその効き方が弱い、すなわち、身体のインシュリン感受性が低下していると考えられてきているのです。


 食事はカロリーだけでなく、食事のメニューや食べ方(質)が重要なのです。糖分の吸収の早い食物は血糖を上げやすいので、吸収の遅いもの、例えば野菜などをまず食べて、その後、ご飯やパンなどの炭水化物を食べると、食後血糖値の急激な上昇を抑えるのに良いことが分かっています。


 私も体重が10kgも減って56kgになったのに、HbA1cはなかなか下がらなかったので、どうしてか不思議に思っていたところ、食後にのみ血糖が瞬間的に上っていたことに気付いたのです。


 そこで私は、「最初はサラダ作戦」をスタートしました。


 元来、野菜嫌いの私は、生野菜は好きではありません。「そんなの、虫けらみたいだ」といって食べなかったのですが、以後、毎食サラダに始まり、それに続いて念には念を入れ、炭水化物の含有量が少ないもの、かつ吸収の悪いものから順に食べています。食堂で同僚は、私の仕草をジーッと見ていて、「やってる、やってる」とニヤニヤしています。


 すると食後の血糖値は、食後1時間で120から130くらいに(HbA1cは5.3に)下がったのです。


 私の従兄いとこは、50代に心筋梗塞をやりました。空腹時血糖は、何度測っても全く正常でしたが、発病して10年たって初めてやったHbA1cが7.0だったのです。


 心筋梗塞を起こした当時は、血糖値は空腹時に測るのが医学常識でしたので、まじめに空腹時に血糖を測定していて、耐糖能障害を見逃がしていたのです。


 10年以上も病院にかかっていながら、今になって初めて、血糖が高いということが判明したのです。これは患者より医者に問題があったといえそうです。


 それ以来彼も、私が勧める「最初はサラダ作戦」をまじめに実践しています。そうしたら、HbA1c は、正常近くにまで下がってきているのです。


 次話では、「糖尿病予備軍卒業」と題して、まとめと補足を書いてみようと思っています。


* 豆知識


GI値(グリセミック指数 glycemic index) とは、食品の炭水化物50グラムを摂取した際の血糖値上昇の度合いを、ブドウ糖を100とした場合の相対値で表したもの。


 おおざっぱにいうと、GI値の低い食品とは、炭水化物の含有量が少なく、しかも消化吸収の遅い食品といえます。


 GI値のみに注目して必須の栄養素の摂取量が減少してしまえば、むしろ健康状態に少なからぬ悪影響を与えます。GI値は低ければ良いのではなく、穀物・野菜・果物等々といった種類別に、各々低GI食品を選んでバランス良く摂取すべきです。


分類  GI値   食品例


低GI  55以下  ほとんどの果物及び野菜、豆類、全粒穀物, ナッツ、フルクトース及び低炭水化物製品


中GI  56~69  全粒粉製品、バスマティ、サツマイモ、スクロース


高GI  70以上  ジャガイモ、スイカ, 白パン、白米、コーンフレーク、シリアル、グルコース、マルトース


 次のホームページには、各食品のGI値が詳細に掲載されています。

 http://www7.plala.or.jp/pon31/gi.html





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│ いのうげんてん作品      

│               

│①カルテに書けない よもやま話

│ 

│②著作『神との対話』との対話

│ 《 あなたの人生を振り返る 》

│ 

│③ノンフィクション-いのちの砦  

│ 《 ホスピスを造ろう 》

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