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カルテに書けない よもやま話  作者: いのうげんてん
2章 医者もいろいろ
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<21> 病気だらけの医者-薬好き

 何を隠そう、病気だらけの医者とは、この私めのことでございます。


 「<8> 変わったお医者-薬好き・薬嫌い」で書きましたように、私ほど薬好きの医者はそんなにはおりません。医局の引き出しを見れば、薬の山。医者なんぞより、患者になっている方が、様になるほどです。


 私は医者になってから、精神科をかわきりに、外科、皮膚科、内科を経験しました。精神科と外科という言わば医学の両極にふれましたから、たいがいの薬は飲んだことがあります。(婦人科だけはありません←(^ω^)当たり前。)


 飲んだことのある薬を、ざーっと上げてみますと、風邪薬、鎮痛剤に始まって、睡眠薬、精神安定剤、降圧剤、高脂血症剤、胃薬、麻酔薬、心臓、肝臓、アレルギーの薬、漢方薬ひいては塩酸モルヒネにいたるまで、自分で試しているのです。


 これは、自分で試さなければ人様には使えないなどという高尚な思いはほんの少しで、ほとんどは自分が薬好きなためであります。


 おかげで、薬の良さ悪さは、よく分かります。薬について書かれた本はたくさんありますが、医者が自分で飲んでその功罪を説いた本は、めったにはお目にかかれません。


 こんなこともありました。


 ある麻酔薬ですが、注射薬はあっても経口薬がありません。がん末期の患者さんに、毎回注射するのはかわいそうなので、どうしても口から飲ませたいと思い立ち、製薬会社に問い合わせたところ、


「そんなやぼなことをした人はいないので、データーありません」


とのつれない返事。


「しょうがない、ひとつ自分で試してみよう」


と一念発起。


 病院の薬局長に、


「飲んで死んじゃうことはなかろうね」


 おそるおそる聞いてみると、


「大丈夫じゃないですか~」


 たよりなさそうな口振りです。


 人体実験は、まだ病院が終わらない夕方6時頃開始しました。まんいち、苦し~いとなった時、助けてもらうためです。注射のアンプルから、まず一口。味は悪くありません。もう一口。計2CC飲みました。


 だいたい経口薬は、30分もすれば効いてきます。30分しても、大丈夫そうです。大事を取ってその日は、いつもより遅く帰宅しました。


 何も知らない女房は、


「今日は遅かったのね~?」


 その理由を聞いて、


「馬鹿なことしないでよ!」


 びっくり仰天して叫びました。


 だんだんけだるくなってきました。身のおきどころがないとは、このことでしょう。深夜の2時か3時、ベッドで寝返りを打つばかりで、あまりのけだるさに、寝付けないといったところでした。


 幸い命に別状はありませんでしたが、二度とこの薬は飲むまいと思いました。


 薬好きということは、とりもなおさず、病気がちということです。そうです、私は病気だらけの医者なのです。そんなに病気していて、よく医者がつとまるなとお思いの方もおられましょう。心配ご無用、そこは名医(迷医?)でございます。自分で病気になっては、自分で治しているのでございます。


 「無病息災」という言葉があります。これは、病気をしないで健康であることをいうのですが、医者の仲間うちでは、「一病息災」をすすめています。


 病気が全く無いとついつい油断して、定期検診などを怠ってしまいがちだからです。1つぐらい病気があると、本人は健康に注意を払います。それによって病気も早期に発見でき治療できることから、一病息災を良しとしているのです。


 私にとってのこの「一病」は、高脂血症でした。


 30才頃に病院でやった職員検診で、コレステロールが240と高めに出たのです。それが見つかってから、自分の健康管理に火がついたのです。


 昔から偉い先生は、医者は病人の苦しみを知るために、病気になってみるべきだと言っています。確かに、自分で病気をしてみると、教科書では分からないその苦労が分かります。


 そこで私の病気体験談を、次話からひろういたしましょう。この体験談を参考に、皆さんは病気だらけにならぬようご用心下さいませ。


 最初の病気は、健康管理に私を目覚めさせた生涯の友「高脂血症」です。


〈つづく〉


┌───────────────

│ いのうげんてん作品      

│               

│①カルテに書けない よもやま話 

│②ノンフィクション-いのちの砦 

│③著作『神との対話』との対話  

└───────────────



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