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カルテに書けない よもやま話  作者: いのうげんてん
2章 医者もいろいろ
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<18-3> 商売医者-患者集めのうまい医者

<18-3> 商売医者-患者集めのうまい医者


 世の中には「商売医者」とまでは言わないまでも、患者集めが実に上手な医者がいます。


 外来患者数が多いというのは、医者にとって一種のステータスで、医局では自然と胸を張れる材料になります。待合室が満席だと、なぜか本人の背筋まで伸びるものです。


 若い医者の頃は、さすがに患者さんも慎重です。しかし三十代半ばになり、いっぱしの技術も身につき、エネルギーが溢れてくると、その若さと熱意に患者さんは引き寄せられます。


 ところが五十半ばを過ぎると、体力も気力も少々落ちてきます。よほどの名医か、よほどの信頼関係がない限り、患者さんは再び若くて元気な医者に流れていくのが世の常です。


 さて、外来患者がやたら多い若手医師がいました。特別に高度な医療をしているわけでもありません。話がうまいのは確かですが、それにしても増え方が不自然です。


 そこで外来ナースに聞いてみました。


 答えは明快でした。


 自分の診療当番表を名刺のように作り、「次はこの日に来てください」と患者さんに配っていたのです。


 なるほど、これは効きます。


 風邪でたまたま来た患者さんや、本来の主治医が不在の日に来た患者さんまで、しっかり囲い込んでしまうのです。


 当然、医局は荒れます。患者の奪い合いが始まり、口もきかない医者が出てきます。


 ついには院長の私のところに来て、


「あの医者は病院の評判を落とします」


と告げ口をする始末です。


 私はこう答えました。


「他の医者を批判して、医局が殺伐とすることこそ、病院の評判を落としますよ」


 別の例もあります。


 大学から非常勤で日替わりに来る医師の中で、なぜか一人だけ患者数が突出して多いのです。同じ医局で治療方針は同じはずなのに、他の医師の二、三倍です。


 理由はやはり、「再診は必ず自分の外来に」と念を押していたからでした。


 週一回の外来に患者を集中させ、待ち時間は長蛇の列。熱意と責任感と見ることもできますが、腕に大差がないなら、患者さんのためになるかどうかは疑問です。


 患者さんの方から選んで集まる医者は、素直に称賛されるべきでしょう。しかし、自分で集めて待たせる医者は、少し考えものです。


 患者集めが異常にうまい医者ほど、自称「名医」であることが多いように、私には見えました。


 「待合室がいっぱいだと気持ちがいい」と豪語していた医者の顔が、今も忘れられません。


 外来患者数は、医者の力量を映す鏡であると同時に、虚栄心もよく映す鏡なのかもしれませんね。


〈つづく〉



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│いのうげんてん作品      

│               

│①著作『神との対話』との対話

│《 あなたの人生を振り返る 》《 自分の真実を取り戻す 》

│②ノンフィクション-いのちの砦  

│《 ホスピスを造ろう 》

│③人生の意味論

│《 人生の意味について考えます 》

│④Summary of Conversations with God

│『神との対話』との対話 英訳版

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