<32-3> コロナ院内感染 その3 重症化を防ぐ
<32-3> コロナ院内感染 その3 重症化を防ぐ
3)医者のやれることは少ない
この病院は認知症専門の精神科病院です。ケアが中心です。
発熱などに対する初期治療はしないので、医者はやることはあまりありません。重症化しそうな患者の治療が主な仕事です。
それは10人に満たない人数で(総数55人中)、それを治療すればあとは医者の仕事はありません。
といってもスタッフたちは病棟を走り回っています。私は少しでも彼らを手伝おうと、時間があれば電話番をやったり、処方箋などを東側の階段に持っていく運搬係をやりました。
電話番や運搬係をやりながら、私はスタッフたちの行動を見ていました。自分も感染するかもしれない状況下でも、黙々と師長の指示に従って患者のケアをしている姿は、美しくも神々(こうごう)しくもありました。
「医療はアート(芸術)である」と言われています。真摯に生命と向き合う姿はまさにア―卜であり美しいと私には映ったのです。
4)重症化を防ぐ
初期治療はしないので、患者に熱があっても薬を処方することはしませんでした。数日するとその熱は、ほとんどが下がっていきました。
注意深く患者をフォローしていると、熱がなかなか下がらない人が出てきます。食欲もなく元気がない人が出てきます。その人たちを師長が私に報告してくれたのです。
「Aさんの具合がおかしいです」
私は、肺炎を合併していると想定して、肺炎治療一式の点滴を指示しました。
レントゲン写真は撮りませんでした。
病棟を閉鎖していますから、レントゲン検査をするには手間がかかるのです。
レントゲン室に患者を連れていくことはできません。
ポータブル器械を病棟に持ち込むと、その都度、器械を消毒しなければなりません。
認知症患者は指示が入らず、撮影時に複数のスタッフの介助が必要になります。
ただでさえスタッフが半減して、マンパワーが不足していました。
私は、肺炎を合併していると想定して治療をしてしまう方が、合理的であると考えたのです。
重症化が疑わしい人には、全員同じ点滴をするようにしました。重症化予防の約束処方を作成しておいたのです。治療をシンプルにしてスタッフの負担を軽くしたのです。
点滴して数日すると、点滴の効果の有無が分かってきます。熱が下がらないとか、バイタルが安定しないとか、元気がないとかで、分かってくるのです。
治療効果が少ない人には、ソルコーテフを5日間(ソルコーテフ200mgを3日間、続いて100mgを2日間 )使いました。するとほとんどの人は熱は下がり、容態も落ち着きました。
結局、第2病棟では、コロナの直撃とも言える侵襲で死亡した人は、1人でした。
他は、コロナの後遺症のように、1か月くらいかかって衰弱して亡くなった人が2人いました。
〈つづく〉
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│いのうげんてん作品
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│ 《 あなたの人生を振り返る 》《 自分の真実を取り戻す 》
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│②ノンフィクション-いのちの砦
│ 《 ホスピスを造ろう 》
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│③人生の意味論
│ 《 人生の意味について考えます 》
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│④Summary of Conversations with God
│ 『神との対話』との対話 英訳版
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