<7> 変わったお医者-断食した医者
断食したお医者とは、何を隠そう私めのことでございます。
学生時代、私は医学より宗教に熱心で、いちじは、医者をやめて、キリスト教の牧師になろうと思ったほどなのです。
教会の牧師に相談すると、素質がないから医者になった方がいいとさとされ、あきらめたのです。(←(^ω^)その牧師は目利きだね)
聖書には、イエスキリストのゲッセマネの祈りが出て来ます。ゲッセマネの園で、キリストが神に祈るくだりです。この後、キリストは十字架の道へと歩むのです。
私も真似して小高い山頂で、徹夜祈祷をしてみました。返って来たのは、神の声ならぬ、蚊の大群だったのです。
「ああ、かゆい、かゆい」
気が散って、お祈りどころではありません。
宗教の素質無しと悟り、肩を落として山を下ったのでした。
さらに聖書には、イエスキリストが40日の断食をしたと書いてあります。
またもや、それをまねちゃったのです。
40日では死んじゃいそうで怖いので、1週間にまけてもらいました。1週間断食を2度もやったのです。
私のようにくいじの張った人間にとって、1週間何も口にしないのは、 ほんとうにつらいものです。
歩くのに腹に力が入らず、あっちへふらふら、こっちへふらふら。しゃべっても、これまた呂律が回らず、ふがふがむにゃむにゃ。
断食して2、3日しますと、頭がボーッとしてきて、私のような凡人には、悟りどころではなくなってしまいます。
「人はパン無くして生きられない」「腹が減ったら戦はできぬ」などと、逆に悟ってしまうのです。
昔の偉い人は、ほんとうに断食で悟りを開いたのかなと、疑ったりもしました。(←(^ω^)凡人のくせして、2回もよくやったねえ)
断食すると、見事に1日1kgずつ、体重が減っていきました。終了時には、56kgあった体重が50kgくらいになったのです。
断食を終えた時は、はしたなくも、頭に浮かぶもの全部、食べまくってしまいました。まるで餓鬼のようです。
気付いた時には、食道の真ん中あたりまで物が詰まってしまい、動くと出てきそうで、3時間ぐらい座ったままだったことを覚えています。
腹の減り過ぎも大変ですが、その逆はもっと大変ということを、その時知りました。
そんなこんなで、体重はたちまち60kgになってしまいました。まさにリバウンドです。
断食の効なく、「悟り」にはほど遠いと悟った私は、今度は托鉢をして家々を回ったのです。(←(^ω^)こんな医者に診てもらうのも勇気がいるねえ)
若かったとはいえ、なんとも無茶なことをしたものよと、医者になってから反省することしきりでした。(←(^ω^)トホホ)
〈つづく〉
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