<3> 殿様は医師法のせいだ
医師法第17条には、「医師でなければ、医業をなしてはならない」とあります。
医業とは、医療行為を継続的に行うこと、つまり商売として行うことをいっています。
医業は全て、医師の指示のもとに行うのです。医師抜きでは医業はできないのに対して、医師は、ナース、薬剤師、レントゲン技師などが行なう全ての業務を、行うことが出来るのです。
何が医療行為(または医業)かということも、なかなか難しい話しです。
保健所の講習会に出席した時、医療行為の定義を講師に尋ねてみました。
答えられませんでした。
医療行為の定義云々で、現場は混乱しているのです。その実態を少し書いてみますね。
高齢者介護などの現場では、「"つめ切り"は医療行為で看護職員でしか行えないのか、それとも医療行為ではなく、ヘルパーでも可能か」といった問題が発生していると、ネットにありました。
厚生労働省医政局から、「原則として医行為ではないと考えられる行為」についての通知が出されています。( http://www.pref.shiga.lg.jp/e/imuyakumu/infomation/ikoui/not_ikoui.html を参照ください )
ちなみに、つめ切りは医療行為ではないとのことです。
これは切実な問題なのです。どんどん医療が家庭など病院の外に広がっていっています。以前には病院で行う医療行為だったものが、家庭でも出来るようになっているのです。
その典型は血圧測定ですね。血糖測定も自分で出来ます。
最近では特定の薬、例えばインシュリンなどは、自分で注射できるようになりました。
なのに2014年10月22日、「老人施設で違法医療行為 介護職員が血糖値測定」というニュースが、ネットに出ています。
介護職員の血糖測定はダメのようです。患者本人ならしろうとでも許されるのに、患者より医療には詳しいはずの介護士ができないだなんて、これもちょっと変な話しですね。
ここの施設長さんは、介護職員による血糖値測定を、「違法という認識はなかった」といっています。私めも知りませんでした。(←(^ω^)トホホ)
さらに在宅酸素療法といって、空気から酸素を取り出して高濃度の酸素を供給する器具が開発され、だいぶ前から自宅で使われています。これも患者本人か家族が操作します。
気管切開部の痰吸引を、自宅でも出来るようになりました。
在宅医療の重要性が叫ばれていますから、自宅で医療行為ができなければ困るのです。
救急救命士による気管挿管や点滴、最近では、ナ-ス単独の採血など、"医師の監督下において行う"が外れて、医師の特権ではなくなりました。
医者としては、手持ちの専売特許が減って、さびしい限りです。
薬も病院でしかもらえなかったものが、国の医療費抑制の目論見もあって、市販されるようになっています。
昔は病院で、医者が慎重に処方していたものが、町の薬局で簡単に手に入るようになったのです。
「ガス〇ーテン」などと小気味よいかけ声の、テレビコマ-シャルがありますね。
この薬は、点滴の中にプリンぺランといっしょに入れて使ったりすると、禁忌だといって必ず保険請求で削られていました。なので、病院では慎重に使っていたものなのです。
副作用が能書きにいっぱいある薬が、巷で市販されるようになって、「あの能書きは何だったの?」と、医療者はボヤいています。
法律規制の少ないクリニック(=診療所:診療所とは入院ベッド19床以下の医療機関をいいます)では、スタッフは医師1人でも構わないのです。事務員からナースまでの仕事を、医師1人でこなしてもいいのです。
病院となると、そうはいきません。スタッフの人数から陣容まで、きちんと法律で決められています。
それを満たしていないと、お役所(この場合は保健所)から、きついおしかりをうけるのです。(←(^ω^)この場合は格調高く「指導」というんだ。柔道みたいだね)
さらに、災害現場などで最近よく耳にする「心肺停止」。「心肺停止10人、死亡3人」などとニュースに流れます。
どういうことかなと、不思議に思った人もおられるでしょう。これも、法律のなせる業なのです。
医師法20条には、医師が死亡診断するとあります。
心肺停止していても、医師の診断がないと、死亡とはいえないのです。だから「心肺停止10人、死亡3人」などという分かりにくい事態が、起きるのです。
人の生死まで決定するなんて、医者って、怖ろしい職業ですね。
こうしてざーっと見ただけでも、医者が特権意識をもつのは当たり前で、殿様になりますよね。(←(^ω^)殿様は医師法のせいだわ)
〈つづく〉
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