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カルテに書けない よもやま話  作者: いのうげんてん
   私の診療心得
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<4-20> 私の診療心得 ⑳ 「私のカルテ記載法SOAP」

<4-20> 私の診療心得 ⑳ 「私のカルテ記載法SOAP」


 長い間医者をやっていまして、その経験から体得した、私のカルテ(主に入院カルテ)の記載の仕方を書いてみます。


1. 診断名は必ず記載する


 診察で病気を診断したら、書ける範囲で病名をカルテに記載します。必要に応じて考えられる鑑別診断も併記します。


 確定的な診断がつかない場合でも、疑い病名を記しておくことが大切です。夜勤帯など検査ができない状況でも、その時点での判断を明記することが求められます。


 そういう時は、おうおうにして曖昧な記載をしてしまうことがあります。


 すると、後に検査や手術、病理で診断が確定した際、記録が曖昧だと振り返りができないからです。


 明確に書いておけば「どこで診断を誤ったのか」「どの判断は正しかったのか」を追跡でき、診断力の向上につながります。


 曖昧なままでは反省も学びも希薄になってしまうのです。


2. 問題志向型記載(POS)を活用する


 カルテ記載法にはいくつか流派がありますが、私が長年実践しているのは「問題志向型記録(POS)」です。


 これは先輩医師から教わったものではなく、その解説本を読んで、独自に始めた記載方法です。


 「問題志向型記録」は、患者が抱える問題を中心に診療を組み立て、その解決を目標にしていく方法です。


 その実践形式が「POMR(問題志向型診療記録)」であり、その中核となるのが有名な SOAP です。


S(Subjective):主観的データ(患者の訴えや症状)

O(Objective):客観的データ(検査所見・身体所見)

A(Assessment):評価(診断やその根拠、鑑別)

P(Plan):計画(治療方針、検査計画、観察点)


 詳細は成書にゆずりますが、この4要素に分けて整理することで、診療のプロセスが明確になります。


 私の経験でも、SからPへと順に記載していくにつれて、病気の内容が整理されていくのが実感できます。


 SOAP形式は米国では常識となった方法ですが、日本ではいまだ徹底されていません。ベテランであればあるほど、古い書き方に慣れ、そのまま続けてしまうものです。


 同僚でこの形式で記載していた医師は、はっきり記憶しているうちでは、1人だけでした。


 そして、私の勤務病院に大学から当直に来る若い医師たちでさえ、この形式でカルテを記載しているのをほとんど見たことがありません。当直なので、簡略化してしまっているのかもしれませんが……。


 カルテは単なる記録ではなく、自分の診療を振り返り、成長させるためのツールです。診断力を磨きたいなら、今日から「明確に、問題志向で」書く習慣を始めてみましょう。


 研修医制度が定着した現今、先輩の指導医師が自らSOAPを使い、研修医に教えていってもらいたいと、私は切に願っています。


〈つづく〉



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│いのうげんてん作品      

│               

│①著作『神との対話』との対話

│《 あなたの人生を振り返る 》《 自分の真実を取り戻す 》

│②ノンフィクション-いのちの砦  

│《 ホスピスを造ろう 》

│③人生の意味論

│《 人生の意味について考えます 》

│④Summary of Conversations with God

│『神との対話』との対話 英訳版

└───────────────


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