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カルテに書けない よもやま話  作者: いのうげんてん
1章 医者も人間
24/329

<23> 医者の仕事は驚くことばかり-手術のやり方が違う その3 手術手技が違う

その3 手術手技が違う


 大学の系列病院によって手術手技が違うのは、覚える者には迷惑千万。


 例を上げれば、血管を切断する方法に、血管を「しばってから切る」やり方と、「切ってから縛る」やり方の2通りがあります。


 「縛ってから切る」とは、切断する血管の2カ所を糸で縛っておいて、その真ん中をハサミで切るやり方です。(図1)


挿絵(By みてみん)

  図1 縛ってから切る



 「切ってから縛る」とは、血管を2本の鉗子(かんし⇒豆知識)ではさんで、その中間を切断してから、両端を糸で結紮(けっさつ※縛ること)する方法です。(図2)


挿絵(By みてみん)

  図2 切ってから縛る



 系列病院に勤める場合はいいのですが、そうでない病院に行くと、術式があまりに違うので、戸惑うことがあります。


 志村けんさんのコントみたいなことが起こります。(←(^ω^)この人、志村けんのファンなのだ)


「赤城の山も今宵限り」


 そうセリフを言って、けんさん演じる国定忠治が手を差し出します。


 本来なら子分が刀を手渡すところを、相撲の軍配だったり、手品の花だったりして、てんやわんやのコントがありますね。


 ちょうどあんなあんばいになります。


 手術台をスタッフが囲み低い声で、


「よろしくお願いします」


 軽く会釈して、執刀医が手を差し出すと、メスならぬハサミ(←(^ω^)まさか軍配はないよね)を渡されたら、みんなずっこけてしまいますよ。


 さらに手術全体のやり方にも違いがあります。と言っても、胃の手術なのに、胆嚢を取ってしまうということではありません。(←(^ω^)分かってます)


 胃の手術なら、どういう順番で切って、切断端をどのように処理し、吻合(ふんごう※断端どうしをつなぐこと)するかといったやり方の違いです。


 さらに、血管やリンパ節の処理、吻合のし方などの細かい手技にも違いがあります。


 私は、研修途中に精神科から外科に移った関係から、医局には属さず、方々の病院を渡り歩いて修業しました。(←(^ω^)俗に言う、どさ回り)


 なので、病院ごとの術式の違いを身をもって経験しているのです。


 特に、関東と関西で大きな差異があるように思います。それは私が、東西で働いた経験があるために分かるのです。


 例えば先ほど書いた血管結紮の場合、京大系では切ってから縛る、千葉大系では縛ってから切る、だったと記憶しています。


 病院ごとにやり方が違うと、習得が難しい反面、いろいろなやり方を覚えられて勉強にもなります。(←(^ω^)どさ回りの強みだね)


 手術は流れ作業です。


 平成天皇の心臓手術をされた天野先生も、たしかそう言っておられましたよ。チームが一丸となって手術に臨むことが、手術の良否を決めるとね。


 同じ系列の病院であれば、手術の手順がおおよそ決まっていますから、まさに流れ作業で手術することができるのです。


 かの有名アナウンサーのスキルス胃がんを手術されたH教授の手術現場に、第3助手として入れてもらったことがあります。


 それはそれは素晴らしい手さばきで、臓器が切ってくれと言わんばかりにクーパー(ハサミ)に引き寄せられてきます。


 しかも手術全体が流れ作業で、各スタッフの手順がしっかりと決められています。


 いつ、誰が、何をするかが完璧に決まっているのです。


 まるで、機械仕掛けのからくり人形を見ているようです。(図3)


挿絵(By みてみん)

 図3 浦島太郎のからくり人形



 ですから手術そのものが極めてスムーズで短時間です。


 通常は1時間半くらいかかる胃潰瘍の手術を、わずか30分で完了していました。(←(^ω^)へたくそな術者だと、開腹だけでもそれくらいかかっちゃうよ)


☆豆知識


《医学用語》


結紮けっさつ:止血や縫合のために、糸で組織をしばることをいう。


吻合ふんごう:吻合とは、手術における手技の1つとして、元々は分離している血管や神経などを人工的に接続することを言う。一方で、単に傷口を縫い合わせることは縫合と呼ばれる。


剪刀せんとう:はさみのこと。刃先の曲がった曲剪刀が好んで使われる。切るだけでなく、組織をはがしていく剥離操作にも活躍する。代表的なものはクーパー剪刀、メーヨー剪刀、メッツェンバウム剪刀など。


鑷子せっし:ピンセットのこと。把持する組織に合わせて様々な形状の鑷子があり、呼称も様々である。スウェーデン鑷子、ドゥベーキー鑷子、アドソン鑷子、マッカンドー鑷子など。


鉗子かんし:組織を把持する器具。はさみのような外見で、手元にストッパーがついており挟んだままにできる。挟む、牽引する、つぶす、開く、すくう、遮断する、など様々な用途に用いられる。コッヘル鉗子、ペアン鉗子、ケリー鉗子、モスキート鉗子、アリス鉗子など。(図4)


挿絵(By みてみん)

  図4 鉗子


参照:Wikipedia


〈つづく〉



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│いのうげんてん作品      

│               

│①著作『神との対話』との対話

│ 《 あなたの人生を振り返る 》《 自分の真実を取り戻す 》

│②ノンフィクション-いのちの砦  

│ 《 ホスピスを造ろう 》

│③人生の意味論

│ 《 人生の意味について考えます 》

│④Summary of Conversations with God

│ 『神との対話』との対話 英訳版

└───────────────





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