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カルテに書けない よもやま話  作者: いのうげんてん
   私の診療心得
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<4-8-3> 私の診療心得 ⑧-3 「死と向き合う」ー ターミナルケア(終末期ケア)における看取り

<4-8-3> 私の診療心得 ⑧-3 「死と向き合う」ー ターミナルケア(終末期ケア)における看取り


 急性病の場合はまた違いますが、慢性病が次第に進行して終末期にいたった場合は、ターミナルケア(終末期ケア)における看取りが大切になります。


 「自然に」「安らかに」「人間らしく」が、ターミナルケアにおける看取りのキーポイントだと私は思っています。


 この看取りのために、治療とケアの技術を駆使して、苦痛症状のコントロールをします。


 治療の面でいえば、栄養補給、薬や酸素の投与、胸腹水の排液、喀痰吸引などの技術があります。全く経口摂取が出来なくなった時、1日500mlの補液が、浮腫を生ずることなく倦怠感を軽減するといわれています。


 痛みや倦怠感には、モルヒネなどの鎮痛剤とステロイド剤をじょうずに使うことが大切です。


 ホスピス医時代に、肺がんが肺全体に転移して、今にも窒息しそうに苦しむうら若い青年に、モルヒネと麻酔薬を静注したことがあります。眠るように亡くなられました。


 認知症の患者さんは、徐々に衰弱していくことが多いので、あまりモルヒネの適応になることはありません。10年間で15人ほどに私は投与しました。


 前話で書きましたように、家族が死を受容できない時は、受容できるよう心理的なフォローをしたり、その時を待つこともあります。


 看取りの時、ナースが涙ながらに死後の処置をしているのを、当院でよく見受けます。私はそれを見てまた感動するのです。患者さんへのナ―スの強い思い入れに、主治医として感謝の思いが溢れ出るのです。


 ホスピスでは患者さんが亡くなると、患者さんを囲んで、スタッフや家族が、15分間ほどのお別れ会をします。これは、グリーフケア(グリーフとは悲嘆の意)の一環として、おこなわれています。


 当院ではお別れ会はしていませんが、私は、家族の皆さんやスタッフといっしょに、黙祷をささげています。


 最初の頃は、死亡の宣告をすると、すぐにモニターの片付けや処置の準備をしていました。


 そして黙祷は私ひとりでやっていたのですが、私がそうするのを見て、だんだんスタッフたちや家族も、いっしょに手を合わせて黙祷するようになりました。


 今では死後処置の前に、全員で黙祷をささげています。


 その時私は、「魂は神のもとへ、肉体は大地に帰ります」とお祈りしています。


 そして最後に、ご遺体に向かって、「長い人生お疲れさまでした」、そしてスタッフや家族に対して、「皆さん、お疲れさまでした」と言葉をかけるようにしています。


 ホスピス医の平方眞医師はいいます。


「緩和ケア(ホスピス)病棟ができる前は、私たち医療者が最善を尽くしてできるだけのことをして看取ったとしても、『あそこの病院はお父さんが最後につらい日々を過ごしたところだから、なかなか足が向かない』と言う家族が多くいました。しかし、緩和ケア病棟ができてからは、患者さんが亡くなって一週間ほどの間に、ほとんどの家族が『お世話になりました』と挨拶に来てくれるようになりました。」


 家族に感謝される看取りを目指したいと私は思っています。


〈つづく〉



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│いのうげんてん作品      

│               

│①著作『神との対話』との対話

│《 あなたの人生を振り返る 》《 自分の真実を取り戻す 》

│②ノンフィクション-いのちの砦  

│《 ホスピスを造ろう 》

│③人生の意味論

│《 人生の意味について考えます 》

│④Summary of Conversations with God

│『神との対話』との対話 英訳版

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