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カルテに書けない よもやま話  作者: いのうげんてん
   私の診療心得
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<4-7-5> 私の診療心得 ⑦-5 「良い思い出作り」ー 家族の罪悪感を解放する その2

<4-7-5> 私の診療心得


⑦-5 「良い思い出作り」ー 家族の罪悪感を解放する その2


 もう一人、罪悪感にさいなまれたキーパーソンがいました。


 50歳の男性です。


 74歳の母親Sさんが重度の認知症になって当院に入院しました。


 キーパーソンはその次男さんで、Sさんの入院後は、週に1回くらい面会に来ていました。


 彼自身も慢性腎疾患の持病を持っており、一般病院に通っています。


 ある時Sさんが、血性の嘔吐をしたので、禁食にして点滴の治療をしました。キーパーソンにその病状説明のために来てもらいました。


 病状説明を終えた後に彼は言いました。


「母親が認知症になり始めた頃、自分は仕事で家を離れていて看てやることができませんでした。


 それで母親の病気の発見が遅れて、こんなになってしまったのです。


 その自分が許せなくて……」


 うつ向いて申し訳なさそうに話されます。


 私は持論をとうとうと語りました。


「この病気は早期発見が難しい病気で、こうなったのはあなたのせいではありません。


 そんなに自分を責めることはないですよ。自分も病気を背負っている状況で、こうして毎週面会に来てお母さんを世話してあげているのですよ。


 責めるどころか自分を褒めてあげなさい。


 いくら過去のことを悔やんでも過去を変えることはできません。いつまでもその過去の出来事に執着するのはやめましょう。


 それよりも過去の出来事から得た教訓を大切にして、出来事そのものは手放しなさい。今日から新しい一歩むを踏み出すのです」(⇒豆知識)


 話している最中に、


「うわあ、こんな素晴らしい言葉、聞いたことがありません」


 そう叫んだのは、同席していた師長さんです。いたく感動してくれたようです。


 キーパーソンは静かにうなずいて聞いていました。


 それから1カ月ほどして、年1回病院で催される秋祭りに彼は参加してくれました。


 明るい表情で言いました。


「あの時の話、ありがとうございました。今は前向きに考えるよう努力しています」


 すべての人はそれぞれの人生の課題を背負って、それぞれの道を歩んでいます。


 私たち医療者は、その課題を完結させて上げるべく、患者さんやその家族に対峙していると思います。


 私はキリスト者として魂の存在を信じています。


 回診をしながらそれぞれの患者さんの魂に呼びかけます。


「あなたはどうありたいのですか……」


☆豆知識:手放す方法―心のブロック解除


 心のブロック解除とは、自分自身の成長を妨害している不安・心配・恐怖などの心的なブロックを除去することをいいます。


 こうありたいと思う自分に、そうでない今の自分を変えていく方法で、

心理学の「自律訓練法」の簡便な方法です。


 最も簡単やり方は、イメージで、部屋の天井に付いている電球を交換する方法です。


 変えたいと思う自分をイメージして今付いている電球を外し、それをゴミ箱に捨てます。そしてこうありたいと思う自分をイメージして新しい電球をポケットから取り出し天井に付け替えます。これだけです。変えたい自分に気付くたびに、すぐこれを行います。1分くらいでできます。


  挿絵(By みてみん)


〈つづく〉



┌───────────────

│いのうげんてん作品      

│               

│①著作『神との対話』との対話

│ 《 あなたの人生を振り返る 》《 自分の真実を取り戻す 》

│②ノンフィクション-いのちの砦  

│ 《 ホスピスを造ろう 》

│③人生の意味論

│ 《 人生の意味について考えます 》

│④Summary of Conversations with God

│ 『神との対話』との対話 英訳版

└───────────────


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