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カルテに書けない よもやま話  作者: いのうげんてん
   病院寸話(月例朝礼・会議などでの寸話)
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<3-2> 病院寸話 《4. トータルなヘルスサービス 5.マザーテレサ 6.病院の3つの目標》

<3-2> 病院寸話(月例朝礼での寸話)


《その4 トータルなヘルスサービス》


挿絵(By みてみん) 


 私は最近車を代えました。新しいジャンルの車に乗ってみたいと思い、四輪駆動車にしたのです。それで調子に乗って空き地の泥沼に入ってみました。


 そうしたらスタックして出られなくなってしまったのです。仕方なくJAFを呼んで来てもらったのですが、JAFはこういうのは自分たちの仕事ではないというのです。


 JAFは道路上でのトラブルのみだというようなことを言っていました。初めてJAFにもできないことがあるのを知りました。私は困りはてていたこともあって、


「それじゃあどうしたらいいのか」


 JAFの人に詰め寄りました。あまりはっきりとした返事をくれませんでした。


「警察がレッカー車の取り扱い店を仕切っているから警察に聞いて見たらいい」


というのです。


 JAFはノータッチです。詳細はあまり触れたくないような様子でした。


 JAFもあまり当てにならないなと思ったのですが、警察になぜ頼まなければならないのかは不思議に思いました。警察とレッカー車会社とは癒着しているのかと邪推したりもしました。


 それにしても、手配のノウハウが全く分からないのには困りました。どこにどのようにアプローチすれば、それがかなうのかが分からないのは、大変不安でした。


 結局その時は、その自動車のディーラーがすべてやってくれたので、事なきを得ました。


 これは病院でも言えることです。


 病院にくる患者さんも同じです。病気についてまったくの素人ですから、もし分からないことがあったら教えてあげなければならないし、たとえ当院の管轄ではないことであっても、どうしたらいいかを教え、他の病院なりを紹介したりして、ノウハウを教えてあげなければなりません。


 そういうトータルなヘルスケアを患者さんは望んでいるのです。


《その5 マザーテレサ》


挿絵(By みてみん) 


 マザーテレサが1997年9月に亡くなられました。私は、彼女の活動を収録したイギリスBBC放送のドキュメンタリー番組のビデオを感動をもって見ました。


 マザーテレサは最初は修道院で地理を教えていたのですが、三十代半ばのある時、イエスキリストに召され、インドのカルカッタ(現コルカタ)の貧民を救えと命じられました。


 彼女はカルカッタに独り赴き救貧所を作り、路上に倒れて見捨てられた人々を一人二人と連れてきて、世話をしたのです。それが、神の愛の宣教者会(ミッショナリーオブチャリティー)となって全世界に広がっていったのです。


 私は国際協力の仕事をしていましたので、マザーテレサとお話しする機会がありました。私たちの国際保健医療学会で基調講演をお願いしたのですが、当時では2年後のことでもあり即答は得られませんでした。


 ノーベル平和賞を受けた人でありながら、彼女のおごらない姿勢は驚嘆に値しました。突然の見ず知らずの私たちの話にも真剣に耳を傾けて下さいました。


 彼女はご自分の活動の中でいつも、


「何をしたかより、そこにどれほど愛を込めたかが大切です」


と訴えています。


 貧しき人々はキリストの分身であり、貧しい人々に触れる時、私たちはキリストのお体に触れているのです、そういう気持ちで愛を込めなければならないというのです。


 マザーテレサの行いは私たち医療者の手本です。


 毎日の仕事をただ単に給料を得るためにやっているのでは人生は寂しい限りです。仕事を通して、自分の愛の心を体現し自分自身を成長させるのです。それによって私たちの心の愛は深まり、魂も向上していくのです。それが人生の大きな目的でもあるのです。


《その6 病院の3つの目標》


挿絵(By みてみん) 


 私はこの病院の院長に就任するにあたり、次の3つのことを目標として掲げたいと思います。


 地域のための病院、患者のための病院、職員のための病院、この3つです。


 まず1番目ですが、病院は患者を中心とした家族あるいはその地域社会全体に対して、保健をつかさどらなければなりません。病気だけを見るのではなく、患者を一人の人間として見つめ、社会の一員として見つめる医療をやらなければならないのです。これは介護サービス、福祉サービス、訪問診療などに関係してくることです。


 2番目の患者のための病院は、当然の病院の業務ですので、詳細は他の機会にゆずります。


 地域のための病院、患者のための病院だけでは病院は成り立ちません。そこに働く職員たちのためにもなる病院でなければならないのです。それは採算の合う病院ということです。


 この病院が2回の倒産を味わい、そしてその城を守った職員たちによってまたこうして再開されました。安定した収入を得、楽しく働ける、職員のためにもなる病院、それも私たちの目標です。病院を存続させていくためにも、職員に報いるためにも、採算を度外視して成り立たないのです。それが、ひいては患者のため、地域のためになっていくのです。


〈つづく〉



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│いのうげんてん作品      

│               

│①著作『神との対話』との対話

│《 あなたの人生を振り返る 》《 自分の真実を取り戻す 》

│②ノンフィクション-いのちの砦  

│《 ホスピスを造ろう 》

│③人生の意味論

│《 人生の意味について考えます 》

│④Summary of Conversations with God

│『神との対話』との対話 英訳版

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